Project 3: 最終配置部位において移動を終え、分化成熟して見事に整然と配列する仕組み(特に細胞間相互作用と細胞外シグナルによる制御)はどうなっているのか?
 左下図は、マウス胎生13.5日(E13.5)生まれの大脳皮質神経細胞の移動プロファイルをGFPによって可視化したものである。興味深いこと に、皮質板内を移動中は、個々の細胞は一つ一つ独立して移動しているように見える(矢頭参照)にも関わらず、辺縁帯(MZ)直下まで到達すると、そこに長時間停滞し、同じ時期に誕生した細胞同士が再び集まって濃縮して局在することがわかった(E18.5左下図参照)。この部位においては、個々別々に移動してきた細胞同士が集まって、ある特定の層を形成していく上で必要な新たな細胞間の関係を構築していくプロセスが行われている可能性が考えられた。また、細胞が 移動を終えるにあたっては、右下図に示すように、リーリンが局在する辺縁帯の直下においてその移動を終え、大きな形態変化や種々のマーカー分子の発現変化 を含む様々な現象が見られる。リーリンが欠損したマウス(リーラー突然変異マウス)やリーリンシグナルを移動細胞側で利用できないマウス(ヨタリ突然変異マウス等)では、皮質層構造の全体的な逆転が見られることからも、この辺縁帯直下での現象が正常な層構造を形成する上で非常に重要な意義を有することが示唆される。そこで我々は、この部位において分子・細胞レベルでいかなる制御が行われているのかに注目し、解析を進めている。
E13.5GFPResize GFP20X2Resize
将来第IV層を構成する細胞の移動プロファイル

 なお、Project 1において言及した、移動神経細胞を単一細胞レベルにまで分散後、培養下に再凝集塊を作らせる実験において、興味深い知見が得られた。すなわち、E14生まれの神経細胞(将来第IV層を構築する)は、共培養される相手が先輩細胞(将来V-VI層になる神経細胞)であるか後輩細胞(将来II-III層になる神経細胞)であるかに関わらず、再凝集塊の中心近くに再現性良く選別配置されることを見いだした。将来の第IV層細胞は、なぜいつも凝集塊の「中心近くに」選別配置されるのか?凝集塊の周辺に配置される他の層を構築する細胞と何が違うのか?この疑問に答えるため、細胞の多様なふるまいと細胞集団内での相互作用をモデル化し、計算機シミュレーションによるin silico実験を行った。その結果、2種の細胞のふるまいの違いに関して、凝集塊の「中心と周辺」に選別配置されるための十分条件を複数見いだした。

CellSegregation1Copy


計算機シミュレーションによる細胞選別現象の解析