Project 2: 神経細胞の誕生部位から最終配置部位への移動は、どのような制御を受けて正しく行われるのか?
1)興奮性神経細胞の移動と配置
 発生中の大脳皮質において、脳室面近くで誕生した興奮性神経細胞は、どのように辺縁帯直下へと移動するのか?従来の研究では、A) 脳室帯にその細胞体があり、脳表面にまで伸びる線維を有する「放射状グリア細胞」の線維(「放射状線維 radial fiber」)を足場として、先導突起を持った細胞が移動する(「ロコモーションlocomotion」:“教科書的”な細胞移動様式)、または、B) 移動細胞自身が脳表面に至る突起を有し、それを短縮させながら脳表面へと細胞体が移動する(「細胞体トランスロケーションsomal translocation」)とされてきた(模式図A, Bを参照)。

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 一方、当研究室では、発生過程の子宮内マウス胎児脳に任意の遺伝子を外から導入し、GFP等によって細胞の挙動を可視化しつつ導入遺伝子の影 響を調べることのできる手法を開発・報告した(子宮内胎児脳電気穿孔法、特許出願済み)。また、スライス培養を用いて、このように可視化した移動神経細胞を共焦点レー ザー蛍光顕微鏡下に継時的に多点観察する方法(共焦点多点タイムラプス観察)を確立した。これらの手法により、上記2種の移動様式とは全く異なる第3の移動様式を発見し、多極性移動(multipolar migration)と命名した(模式図C)。多極性移動では、多くの突起を細胞体周囲に盛んに出し入れするが、細胞体自身は不規則な軌跡をとりつつゆっくりと皮質板に向かって移動するのが特徴である。以上の3種の細胞移動様式を上記の手法により可視化したものが次のムービーである。


大脳皮質神経細胞の移動様式
A) ロコモーション

B)
細胞体トランスロケーション

C) 多極性移動

 また、多くの大脳皮質神経細胞の移動は、従来考えられてきたような単純なもの(教科書的には「ロコモーション」)ではなく、多極性移動の時期を途中に含む主に3つの連続した段階を経て達成されることを見出した。

スライド1



2)抑制性神経細胞の移動と配置

 大脳皮質の興奮性神経細胞が皮質の脳室面近くで誕生して放射状に移動するのに対し、抑制性神経細胞は終脳腹側に位置する基底核原基で誕生し、脳表面に平行に移動して大脳皮質に至ることが知られている(図1)。抑制性神経細胞の皮質への正常な移動・配置は、神経回路網の興奮・抑制のバランスを保つために必須であるため、てんかん等の神経疾患に関連すると考えられている他、抑制性神経細胞の異常が病態に関わると示唆されている精神疾患も多い。
 基底核原基は3つの領域に区分され(図
2)、それぞれの領域からは異なる種類の抑制性神経細胞が誕生する。我々は、移動の3次元プロファイルを明らかにするため、基底核原基の各部位に局所的に遺伝子を導入する手法を確立(図3)して、それぞれの領域に由来する抑制性神経細胞の移動様式を可視化した。その結果、尾側基底核原基(CGE)の抑制性神経細胞は多くが尾側に向かって移動し、尾側大脳皮質及び海馬に至ることを見いだした。この移動経路は従来報告がなかったため、尾側細胞移動経路(Caudal migratory stream, CMS)と命名した。そして、このCMSを制御する責任分子として、転写制御因子COUP-TFIIを見いだした。
 抑制性神経細&$N0\F0!J?^#1)基底核原基の=B$!J?^#2!K基底核原基の=B$#2局所遺伝子導~(図3)