Project1: 神経細胞誕生時において、その後の挙動・最終配置に関していかなる制御が行われるの か?
 大脳皮質の興奮性神経細胞は脳室帯 (VZ) 及び脳室下帯 (SVZ) で誕生し、脳表面(辺縁帯 直下)へと移動した後、誕生時期をほぼ共通にする細胞同士が集合して、皮質板 (CP) において層構造を形成する。この過程は、辺縁帯にあるカハール・レチウス細胞から細胞外に分泌されるリーリン分子によって制御されることが良く知られており、リーリンが欠損すると層構造は完全に乱れ、全体として逆転してしまう。我々は、移動神経細胞が誕生時期に依存して層を形成していく上で、各細胞が脳表面にまで移動して直接リーリンに触れることが必須であるのかを検討するため、発生期大脳皮質の中間帯 (IMZ) 及び脳室帯、脳室下帯の細胞を分散後、培養下に再凝集させる系を使って解析した。その結果、少なくとも胎生14(E14) 生まれの神経細胞(将来第IV層を構成)は、それ以前に生まれた神経細胞やその後に生まれる神経細胞と分離して、選別凝集する傾向を有することを見いだした。すなわち、脳室面近くで産生された大脳皮質神経細胞は、辺縁帯直下まで移動しなくても、既に移動中において、その後その誕生時期に依存して選別凝集するように運命付けされていることが示唆された。また、リーリン及びそのシグナル伝達分子の欠損マウスを使った実験により、この特異的選別凝集能は、リーリンシグナルとは独立に獲得されることを見いだした。神経細胞誕生時におけるこの選別凝集能の獲得は、最終的に移動終了後に誕生時期依存的な多層構造を構築していく上で大きな意義を有すると考えられ、今後追究すべき重要な問題の一つである。
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