我々の脳の神経細胞は、最終配置部位で誕生するわけではなく、ごく限られた特定の部位で誕生し、その後長い距離を移動して最終配置部位へと到達する。そこでは、細胞の誕生時期や形態、線維連絡様式等の共通の特徴を持った細胞同士が集合して、複雑な回路網を形成するための基盤を形作る。この整然とした配置が乱れると、構成要素としての細胞はすべて揃っていても、多細胞システムとしての脳の機能は異常になってしまう(ちょうど、「福笑い」の顔が、「顔」とし ての機能を果たせないように)。
 大脳皮質では、興奮性神経細胞の多くは脳室面及びその近くで誕生し、脳表面の辺縁帯直下まで放射状に移動してその移動を終える。その過程を繰り返すことにより、早生まれの神経細胞ほど最終的により深層に配置され、遅生まれの神経細胞ほどより浅層に配置される(“inside-out”様式。ただし、辺縁帯<将来の第 I層>の神経細胞は例外。以下のアニメーションを参照)。その結果、脳表面に平行な6層から成る見事な多層構造が形成される。



そこで我々は、

1) 神経細胞誕生時において、その後の挙動・最終配置に関していかなる制御が行われるのか?

2) 神経細胞の誕生部位から最終配置部位への移動は、どのような制御を受けて正しく行われるのか?

3) 最終配置部位において移動を終え、分化成熟して見事に整然と配列する仕組み(特に細胞間相互作用と細胞外シグナルによる制御)はどうなっているのか?

の主として3つの側面から、機能的神経細胞社会の形成機構の解明を目指した研究を行っている。




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