NEJM勉強会2003 第33回03/11/19 実施 Aプリント 担当: 唐沢 康暉 (karasawa-tky@umin.ac.jp ) Case 15-1995: (Volume 332: 1363-1370)
【患者】70歳女性 【入院原因】知覚鈍麻(obtundation)、失語、片側不全麻痺 【現病歴】 5年前から高血圧の治療をうけている。 入院の4ヶ月前、乳癌のため腫瘍摘除、放射線治療が行われた。(腋窩リンパ節の所見は正常) 入院の46日前、心房細動が発症したため他院でwarfarinとquinidine治療開始。 入院4週間前、血小板数が13万(他の血算は正常) 入院前日まで調子はよかったが、足の静脈のまわりで挫傷,打撲傷bruisesが出来たと訴えた。 入院当日、他施設の検査でプロトロンビン時間が17秒(INRは2.3) 午後4時まだ元気であったが1時間後、リクライン椅子の上、口から血を流して、鈍くなっている(obtunded)ところを発見された(痙攣はなし)。家族がたたき起こしたところ、彼女が言葉を理解していなく、右手足が動かせなくなっていることがわかった。救急車に乗っている間、急激に知覚鈍麻になったのが気付かれた(rapid obtundation was noted)。呼吸は喘鳴(stertorous)。当院に運ばれた。 【服薬歴】warfarinとquinidine以外に、ranitidine, とhydrochlorothiazideを服用 【入院時現症】 <VITAL SIGNS> BT 36.8℃, BP 220/115 mmHg, PR 84 /min reg. RR 8 /min <HEENT> [Eye] pupils 3mm (光に反応して2mm) [Oral Cavity] 口腔内に出血 [Neck] 柔軟 <HEART> リズムが不整。 <LUNG> clear <ABDOMEN> normal <EXTREMITIES> 弛緩している。 <SKIN> 数え切れないほどの点状出血がびまん性に散在(特に足と腹)。斑状出血、紫斑、リンパ節腫脹はない。 <その他> 乳房は正常で、左乳房と腋窩に手術痕 <NEUROLOGICAL> 身体所見をとっている間、患者は無反応であった。有害刺激(noxious stimuli)を片側にすると除脳姿勢(decerebrate posturing)になるが、目的のある引っ込みは見られなかった。doll's-head maneuverと角膜反射は障害されていない。アキレス腱反射は++++(両側でclonus)。足の裏を刺激しても無反応であった。 【入院時検査所見】 <CBC> WBC 15500 /mm3 (Neu 87%, Mono 2 %, Lym 10 %, Baso 1%), Ht 33.6 % (MCV 87 μm3), Plt 0.4×104/mm3 <COAGULATION> PT 12.5 sec (control 10.3 ), PTT 27 sec., <CHEMISTRY> LDH 219 IU/l(110-210), Na 136 mmol/l, K 4.1 mmol/l, Cl 103 mmol/l, Ca: 8.2(mg/dl)., Mg: 0/6 (mmol/l). Glu(随時) 177 mg/dl, UA 7.2(mg/dl) CO 20.4 mmol/l TP, Alb, Glb, Bil, BUN, Cr iP, AST, CK, AMY, ALPは正常範囲。 <U/A> 沈渣で白血球4コと赤血球75コ(強拡大) <ECG> リズムは正常でレートは88で、不完全右脚ブロック。 <CT> 左前頭葉に実質内出血(5×5×4cm)。脳室内、くも膜下に血液。脳梁と脳梁槽に出血。広汎性に脳は浮腫状である。左から右への鎌下ヘルニアと下降性テントヘルニアが見られる。脚間槽が消失しており、脳幹が圧迫されている。(造影なし) <その他> 薬物の乱用スクリーニングテストは陰性。 血液中Quinidine濃度は2.6(mg/liter)で正常。 【入院後経過】 非常に入れにくかったが、緊急経鼻気管内挿管をおこない、機械による換気が開始された。Phenytoin sodium, ceftriaxone, dexamethasone を経静脈的に投与し、マンニトールの注入が始められた。 2時間半経って、患者の瞳孔が散大し、8mmで固定され、角膜反射が消失した。doll's-head maneuver 、カロリック刺激(冷)に反応しなくなり、除脳姿勢が両側性に自発的に見られるようになった。血圧が80/40mmHgに低下しため、生理食塩水を静脈から投与した。血小板を6単位注入した。 ある診断的手技が施行された. |