NEJM勉強会2003 第30回03/10/29 実施 Aプリント 担当: 城田 松之(shirota-tky@umin.ac.jp)
Case 29-2003: A 60-Year-Old Man with Fever, Rigors, and Sweats
(Volume 349 (12): 1168-1175)
───発熱・悪寒・発汗を生じた60歳男性───

 
【患者】60歳男性
【主訴】発熱・悪寒・発汗
【現病歴】60歳の男性が6月半ばに発熱・悪寒・発汗のためにクリニックを受診した。
その10日前から食思不振、咽頭痛、全身的な筋肉痛、関節痛、頭痛、不快感、そして発熱(39.3℃まで)を認め、明らかな悪寒、夜間の発汗、階段を昇る時の呼吸困難を伴った。咽頭痛は来院時には大体おさまっていた。
咳、悪心、嘔吐、下痢、黄疸、軽い便、排尿障害、発疹はなかった。内服薬はアトルバスタチンだけで、スルフォナミドにアレルギーがあった。
 次の1週間、患者体温は37.8℃〜39.4℃の間にあった。1週間毎日悪寒があった。発作の間、歯は震え、コップを持つと水がこぼれた。不快感が強くなり、尿が暗くなった。体重は3.2kg減少し、階段を昇る時の呼吸困難は続いていた。
 そして、患者は感染症コンサルタントに評価された。
【生活歴・既往歴】
<住所>ボストンの北部の森林地帯 <職業>同地域で座業をしている
<旅行歴>Cape Cod、Martha’s Vineyard、Nantucket(すべてMassachusetts州にある)に旅したことがあるが、過去数ヶ月は一度もない。また、合衆国の外に出たことはない。
<刺咬>過去2ヶ月間に何度かダニにかまれた。犬を飼っているが、犬にかまれたことはない。
<喫煙・飲酒歴>なし
<その他>脾摘、生肉の摂取、輸血、副腎皮質ステロイドの使用、HIV感染のリスクファクターはなかった。身体のどこの部位にも紅斑に気づいたことはなく、ネズミやウサギに曝露された記憶もない。
【処方】この病気の間、抗生物質をまったく飲んでいない。
【現症】
(初回診察時)
<VITAL SIGN> BT 38.1℃。
<HEAD>皮疹、結膜の充血、強膜の黄疸はない
[Mouth & Phalynx] normal
<LUNG> clear <HEART> heart sounds: normal
<ABDOMEN> 特記すべきことなく、肝脾は触知しなかった。
滑膜炎はない。
(1週間後)
<GENERAL STATUS> 発熱なく良好
<VITAL SIGNS> PR 95/min, RR 16/min, afebrile
<SKIN> petechiae(-)
<HEAD> conjunctival injection(-) <NECK> supple
<LUNG> clear <HEART> heart sounds: normal
<ABDOMEN>肝臓は右肋弓下2cm腫大、脾は触知しなかった。
<EXTREMITIES>小出血と手の蒼白のほかは正常。
<LYMPHATICS> lymphadenopathy(-)

 
【検査所見(Table 1)】
(初回診察時)
<CBC> Hct 37.0%, WBC 3.5×103/mm3 (Neu 54, Lym30, Atypical Lymphocytes 4, Band forms 5, Mono 7), Platelets 9.4万/mm3, MCV 86μm3, Red cells: normal
<CHEMISTRY> Conjugated bulirubin 0.7mg/dl, T.bil 1.4 mg/dl, Glucose: normal, Na 136 mmol/l, K 4.2 mmol/l, Cl 96mmol/l, Bicarbonate 25.5mmol/l, Ca 8.4mg/dl, BUN, Cre, CK, ALP: normal, AST 94U/l
<U/A>濁、オレンジ色。pro(+++), bil(+)、glu(+-), ket(+-), uro(+-), WBC 20〜50/hpf, RBC 5-10/hpf, 顆粒円柱3-5/hpf、中等度の上皮細胞、そして多量の細菌を認めた。
<感染症>血液と尿の培養はnegative、咽頭の培養からはA群β溶連菌は検出されず。ライム病の病原体であるBorrelia burgdorferiに対する抗体のELISAは陽性であったが、急性感染か慢性感染かを区別することはできなかった。
<SEROLOGICAL TEST> 抗DNaseB抗体(-)。
(1週間後)
<CBC> Hct 29.9%, WBC 4.9×103/mm3 (Neu 51, Lym23, Atypical Lymphocytes 1, Band forms 3, Mono 19, Eos 2, Baso 1), Howell Jolly bodies (+), Platelets 18.6万/mm3
<CHEMISTRY> Cre, CK, ALP: normal, AST 115 U/l, ALT 103 U/l
<感染症> Western Blotによると、B. burgdoferiに対する少量のIgM、IgG、IgA抗体が検出され、最近の感染による病初期段階か、抗生物質を投与された過去の感染のどちらにも適合する結果であった。
<CXP> 非常に小さい左の胸膜の滲出物と、胸膜の肥厚を認めた。肺野と心縦隔の陰影に特記すべきことはなかった。

 
ある診断的手技が施行された。