NEJM勉強会2003 第29回03/10/22 実施 Aプリント 担当: 摩湯 範子(mayu-tky@umin.ac.jp) Case 24-2003: A 10-Year-Old Girl with Recurrent Bouts of Abdominal Pain (Volume 349 (5): 486-494)
【患者】10歳女性 【主訴】腹痛、嘔吐、発熱 【現病歴】 患者は生来健康であった。18ヶ月前、右下腹部に強い痛みの発作が数度生じた。それぞれのエピソードは1,2時間継続し時には悪心、嘔吐が生じたが軽快していた。 6ヶ月前、右側腹部痛のため他院を受診した。腹部echo検査を施行し、何も発見されず。 1ヶ月後、腹痛発作が生じたため当院を受診した。来院時、患者は平熱で痛みは無かった。診察では直腸診所見もふくめ異常がなく、便潜血は陰性であった。大腸には糞便が大量に詰まっていた。食道と胃、十二指腸球部、小腸、食物通過時間は正常。わずかに胃食道逆流が認められた。(検査結果をtable1に示した。) 入院1ヶ月前、腹痛はほぼ毎日生じ始めた。痛みは腹部全域より生じ、時には背部や鼡径部に放散し、嘔吐も伴った。患者は便秘であり、下剤が処方された。 入院1週間前、嘔吐を伴わない痙攣性腹痛が再発し、別病院を受診した。尿検査、血算は正常で腹部超音波検査では腸内に大量のガスと糞便を認めるのみであった。 入院4日前、経過観察のため当院を受診したが身体所見に変化は無かった。腹部単純Xpでは大腸内の糞便を認め、腸内ガスに異常はなく、腹腔内にはfree airを認めなかった。 再び下剤が投与された。 4日後、腹痛が再発して数回嘔吐し、発熱をみとめた。患者は当院へ入院した。 【既往歴】 帝王切開にて出生(母親の高血圧のため) 1型糖尿病(インスリンにてcontrol中だがこの1ヶ月間に血糖値は200-300mg/dlまで上昇するエピソードがあった) 腸機能異常、体重減少、入院歴、アレルギー、偏頭痛、関節痛いずれもなし。 【家族歴】 彼女の母親と母方の叔父に糖尿病。二人の兄姉は健康。 クローン病、セリアック病、過敏性胃腸症候群、乳糖不耐症、自己免疫性疾患、肝障害、甲状腺機能障害いずれもなし。 【入院時現症】身長141cm、体重30.1kg <VITAL SIGNS> BT 37.8℃, BP 105/70 mmHg, PR 110 /min irreg., RR 24 /min <GENERAL> 蒼白、意識清明<NECK> n.p.<HEART> n.p.<LUNG> n.p. <ABDOMEN> 柔らかい,圧痛(+),Mass(-),反跳痛(-) 肝臓と脾臓は触れない,骨盤上部~右下腹部を中心にvoluntary guardingが顕著 <SKIN>発疹、リンパ節腫脹、点状出血、打撲傷はなし 直腸診:異常なし 便潜血反応:陰性 【検査結果】table1,2に示した。 <CHEMISTRY> table1参照 <CBC> table2参照 <U/A>糖、ケトン体(++),蛋白微量陽性,尿沈渣正常 その他:H.pylori呼気検査(-)、ランブル鞭毛虫症糞便検査(-)(経過中に施行) 【画像所見】 <AXR>Fig.1参照。小腸ループ状ガス拡張像(わずか)、骨盤より生じる軟部組織腫瘍 <腹部骨盤echo>臍付近より膀胱まで達する腫瘍、巨大でechogenic、1cm径の多数の透過性領域を含む。骨盤内に腹水あり。 <カラードップラー>腫瘍は血管豊富ではないがいくつかの静脈を含有している。肝臓、脾臓、膵臓、腎臓は正常。 <腹部骨盤造影CT>Fig.2参照 下腹部から骨盤内に6×6×10cmでcysticかつsolidな巨大腫瘍。 右側卵巣を同定できず、右側の卵巣静脈と広間膜は腫瘍へ達する。尿管は同定。 左側では卵巣はわずかに腫脹。 中程度の腹水、両側に少量の胸水あり。腸管の拡張や壁の肥厚は明らかではない。 腹部リンパ節、肝臓、胆嚢、腎臓、膵臓、脾臓、副腎、骨は正常。 <骨盤MRI>ほぼ正中にheterogeneousな腫瘍を認める(15×7×10cm、二葉構造、多数の小嚢胞を含む、腫瘍内での出血所見あり、石灰化、脂肪組織なし、Gd造影で強調されず)。右卵巣は認めず、左卵巣はわずかに腫脹。中程度の腹水あり。右尿管はわずかに拡張。 来院3時間後、患者の体温は39.3℃に上昇した。ある診断的手技が施行された。 |