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NEJM勉強会 2003 第24回 03/07/16実施 Aプリント 担当:春原 光宏 (mitsuhiro.sunohara＠nifty.ne.jp) Case 6-2003: A Nine-Year-Old Girl with Progressive Weakness and Areflexia Volume 348(8): 735-743）
【患者】UAE(アラブ首長国連邦)出身の９歳女性 【主訴】進行性の脱力感と無反射 【現病歴】 生来健康であったが、3ヶ月前に歩行障害が起こった。近医でビタミン欠乏症と診断され、治療を受けたが改善しなかった。1ヵ月後、つま先をつけて歩くことができず、しゃがんだ状態から立ち上がることができなくなった。別の医師の診察で、四肢の近位・遠位両方に筋力低下がみられ、反射は完全に消失し、足の振動覚が減弱していた。腰椎穿刺では、CSFのタンパクは48mg/dl（normal(9歳);<33mg/dl）、WBCは3 cells/mm3であった。5日間immunoglobulin i.v.(0.4g/kg/day)を受けた。 4ヶ月前に家族でエジプトに旅行しており、運動会でリボン賞をもらった。3ヵ月半前に風邪をひいた。両親によると、下痢・発熱・発疹・消化不良・膀胱障害はみられていなかった。両親はいとこ結婚である。患者は第一子であったが、他に健康な3人の子供がいる。ワクチンは全て受けていた。 病状は改善しなかったため、U.S.に送られ、MGHに入院となった。 【分娩発達歴】正常 【既往歴・服薬歴】特になし 【入院時現症】 <VITAL SIGNS> BT 36.6℃, BP 107/69 mmHg, PR 101/min., RR 20/miin. <BODY WEIGHT> 29kg <PHYSICAL EXAMS> n.p. except neurological exams below. <MMT> proximal arm (4/5), forearm and intrinsic hand muscles (4+/5), proximal leg (3/5), distal leg (2/5) <DTR> all deep tendon reflexes are absent except right triceps (trace) <VIBRATION> toes; diminished greatly, knees; absent, fingers; moderately abnormal <PROPRIOCEPTION> toes; abnormal, fingers; slightly abnormal <WALKING> needs assistance, steppage gait with a wide base 【入院時検査所見】(see also Table 1) <MRI (Gd-enhanced; brain and entire spine)> abnormal nodular enhancement along the surface of the conus, clumping and enhancement of the nerve roots distally <NCS (NERVE-CONDUCTION STUDY)> sural responses; absent (bilaterally), right ulnar sensory response; normal, right median sensory response; low with conduction velocity preserved, mortor responses; absent throughout with conduction velocities as slow as 5m/sec and conduction block in the median forearm segment, F waves; absent throughout <NEEDLE ELECTROMYOGRAPHY> substantial active denervation in the leg, no recruitment of motor neurons in the gastrocnemius muscle 【入院後経過】 5日間immunoglobulin i.v.(0.4g/kg/day)が処方された後に退院となり、毎日理学療法・作業療法を受け、週に一度診察を受けた。 3週間後再入院した。MMTは、proximal arm (3/5), forearm and intrinsic hand muscles (3-/5), hip flexion (3+/5), ankle dorsiflexion (2/5), toe movement(1/5)であった。DTR・振動覚は上記の入院時現症と変化なかった。温度覚は障害されていなかった。足の固有知覚が消失していた。5日間immunoglobulin i.v.(0.4g/kg/day)が再び処方された。 ある診断的手技がなされ、治療を追加したところ症状に改善がみられた。 
＜補足―NERVE-CONDUCTION STUDYについて―＞ 神経伝導速度検査（NCS）では、主に運動神経伝導速度（MCV：Motor nerve Conduction Velocity）と、知覚神経伝導速度（SCV：Sensory nerve Conduction Velocity）を測定する。 MCVでは、運動神経を近位部と遠位部の2点で別々に電気刺激をし、末端の支配筋で活動電位（Ｍ波）が起こるまでの潜時の差から、伝導速度を割り出す。SCVでは、synaptic delayはないので、知覚神経の1点を電気刺激し、その神経の誘発電位を導出することで、求めることができる。 さてF波は、末梢運動神経に超最大刺激を与えると、逆行性に背髄に達した後、前角細胞をバックファイヤーさせて、再び遠心性に筋肉に到達した刺激による活動電位をみるもので、運動神経近位部や神経根の伝導検査に用いられる。 H波(Hoffman反射)というものもあり、これはM波が誘発されないような弱い刺激で低域値の��a線維(求心性)が興奮し、後根から単シナプス反射を通じて前角細胞へ達した刺激によるもので、背髄前角ニューロンの膜興奮性を反映するとされる。 
参考 神経内科ハンドブック 医学書院 愛知医科大学付属病院 中央臨床検査部HP http://www.aichi-med-u.ac.jp/kensa/ |