NEJM勉強会2003 第23回03/7/9 実施 Aプリント 担当: 森川 真大 (morikawa-tky@umin.ac.jp)
Case 25-2000: A 69-Year-Old Woman with Pleuritic Pain and Pulmonary Arterial Obstruction
(Volume 343(7): 493-500)
───胸膜炎性の疼痛と肺動脈閉塞が認められた69歳女性───

 
【患者】69歳女性
【主訴】肺動脈閉塞
【現病歴】
発症前までは患者の健康状態は良好であった.
  入院の数ヶ月前から,ときどき乾性咳嗽が認められた.
  入院の10日前,落ち葉を集めた後に左側肩甲骨下に疼痛を感じた.その日の夕方に,疼痛は左乳房付近に移動して行った.
  入院の9日前,患者は突然左乳房下に胸膜炎性の激痛を感じた.めまい(dizziness)と発汗が認められたが呼吸困難や意識消失は認められなかった.他院受診するも,ECG上特記すべき異常なく,胸部レントゲン上(Fig. 1)左胸水が認められた.hydrocodone(opioid)とacetaminophenが処方された.
  入院の8日前,再び左側に胸膜炎性疼痛を自覚し,今回は呼吸困難と筋力低下を伴った.他院にて換気-血流シンチを施行したところ,左肺で血流欠損と換気低下が認められた.胸部CTにて左肺動脈を完全に閉塞し,右肺動脈にも進展する腫瘤が認められた.UCGにて肺動脈圧は75 mmHgと推定された.下肢のドップラーエコーにて特記すべき異常は認められなかった.
  ICU入室後,酸素,reteplase(t-PA),heparin,warfarinが開始され,症状は著明に改善した.
  他院入院3日目(入院5日前),換気-血流シンチを施行したところ,左肺の血流が全く認められなかった.胸部造影MRI(Fig. 2)にて肺動脈本幹と両分枝を閉塞する腫瘤が認められた.肺動脈造影(Fig. 3)にて管腔内の腫瘤が左肺動脈を閉塞し,肺動脈本幹と右肺動脈近位部を閉塞していた.
  他院入院4日目(入院4日前),血管内腫瘤生検を施行したが,うまくいかず有意な所見は得られなかった.その後4日間,患者にはときどき乾性咳嗽が認められた.
  他院入院8日目(入院当日),患者はMassachusetts General Hospitalに搬送された.
 
【既往歴】子宮筋腫(数年前,子宮摘出),リウマチ性多発筋痛症(1年前に診断,prednisoneで寛解)
【家族歴】両親と姉:静脈炎,父:頭蓋内血腫,前立腺癌で死亡
【生活歴】退職後の看護師.cigarettes (-)
 
【入院時現症】
<VITAL SIGNS> BT 37.6℃, BP 120/80 mmHg, PR 82 /min reg., RR 20 /min, SpO2 96 % (room air)
<HEENT> cyanosis (-)
<LUNG> normal vesicular sound, no crackles
<HEART> right ventricular heave, loud IIP, systolic ejection murmur (Levine II/VI)
<EXTREMITIES> clubbing (-), deep venous thrombosis (-)
 
【入院時検査所見】
<CBC> WBC 9700 /mm3 (Neu 66 %, Eos 2 %, Baso 1 %, Mono 6 %, Lym 25 %), Ht 36.3 %, Plt 24.2×104/mm3
<CHEMISTRY> BUN, Cre, electrolyte, Ca, iP, Glu: w.n.l.
<COAGULATION> PTT: 54 sec. (with heparin), w.n.l. (with protamine), Fib 400 mg/dl, ATIII, Protein C, Protein S: normal function
<U/A> RBC 3-5/LPF, WBC 3-5/LPF
<ECG> nsr, HR 91, inverted T waves in leads V1 and V2 and low upright T waves in lead V.
 
【入院後経過】
  培養用の尿を採取した.Heparin,prednisone,omeprazole,lorazepamを開始した.胸痛は和らいだが乾性咳嗽は持続した.また患者は軽度運動時に呼吸困難を自覚した.体温は36.6〜37.3℃.患者の血液型はOh(ボンベイ型)であり,Rh(-)であった.
 
  ある診断的手技が施行された.