NEJM勉強会2003 第21回03/06/25 実施 Aプリント 担当: 岩佐 健史 (tiwasa-tky@umin.ac.jp)
(Volume 348(24): 2443-2451)
【患者】15歳女性 【主訴】左脚痛,背部痛,掻痒感,胸部リンパ節腫脹,肺野の多発結節像 【現病歴】 入院11ヶ月前より夜中に左臀部の疼痛で目が覚めるようになった.痛みは毎回1〜2時間続いたという. 数ヶ月後,下背部痛が出現したが,患者は競走馬に乗った影響だろうと考えて放置した. 入院5ヶ月前より,両側側頭部痛出現,頭痛は午後にもっとも酷くなり,時に羞明を伴った. 入院数ヶ月前,徐々に悪化する掻痒感が出現,掻痒は昼間に顕著で皮膚紅潮と発汗を伴い,抗ヒスタミン薬の内服は無効であった.患者は時に胸部圧迫感を覚え,深呼吸をするのに困難を覚えたが,起坐呼吸や呼吸困難を呈することはなかった. 入院1週間前に他院を受診.血液検査(table-1; Ht 40.8%, WBC 12,140/mm3(Neu 69%, Band form 6%, Lym 18%, Mono 5%, Eos 2%), Plt 386,000),MRIが施行された.MRI上(Fig.-1),後縦隔にGd造影効果(+)のmassが認められ,胸椎にT1-low, T2-high intensity, Gd造影効果(+)の病変が複数認められた.骨盤の骨髄部の信号が斑状になっており,また正常脂肪髄の部分が浸潤影で置換されていた.なお腰椎は正常,骨盤内にもmassは認めなかった.Massachusetts General病院に紹介受診. 【生育・既往歴】 患者は正期産,正常分娩であり妊娠・出産に伴う合併症も一切認めなかった. 7歳:伝染性単核症.Lyme病 非常に優秀な高校2年生であり,最近は昨年親知らずを抜いた以外に病院受診・手術をしたことはない. 紅斑(-),夜間発汗(-),発熱(-),食欲不振(-),易疲労感(-),体重減少(-),咳嗽(-),悪心・嘔吐(-),排尿困難(-),便秘(-),出血傾向(-) 【薬物】acetaminophen, ibuprofen 【アレルギー】薬物に対するアレルギーは認めない 【家族歴】祖母(母方):子宮癌 【入院時現症】 <General Impressions> 外見上は健康 <VITAL SIGNS> BT 36.6℃, BP 100/80 mmHg, PR 113/min reg., RR 20/min <SKIN> 紅斑(-) <Lymph Node> リンパ節腫脹(-) <HEART> n.p. <LUNG> n.p. <ABDOMEN> n.p. <EXTREMITIES> n.p. <NEUROLOGICAL> n.p. 【入院時検査所見】(Table 1を参照) <CHEMISTRY> TP 9.0g/dl, Alb 4.5g/dl, Globulin 4.5g/dl, Na 142mmol/l, K 3.3mmol/l, Cl 95mmol/l, HCO3 27.5mmol/l, LDH 268U/l 【画像所見】 <頚・胸・腹・骨盤-造影CT> (Fig.-2) ü 両側の頚三角後部に2〜3個のリンパ節を認めるが,各々の大きさはφ1cm以下. ü 頚部にリンパ節腫脹,massは認めない. ü 上縦隔・傍大動脈・傍気管・気管分岐部リンパ節,両側肺門部に広大なリンパ節腫脹が認められる. (右肺門リンパ節は2.9×3.3cm,気管分岐部リンパ節は1.8×4.4cm) ü 両肺野に多発する結節影を認める.(右側:最大は下葉2.5×3.1cm,左側:最大は上葉2.5×2.5cm) ü 気道・心臓・大血管は正常であり,胸水・心嚢水は認めない. ü 肝臓・脾臓に多数の小さな低吸収域が認められる.胆管の拡張は(-) ü 腎臓・胆嚢・膵臓・副腎・腸管は正常.骨盤内臓器にも異常を認めず ü 左腸腰筋に隣接して1.7×1.3cmのリンパ節を認める. ü 左腸骨の後部に骨溶解像が認められる. 【入院後に行われた特殊検査】 <骨髄穿刺> 若干の骨髄過形成が認められるが,悪性の所見はない 【入院後経過】入院後,ある診断的手技が施行された. FigfFig.-1;胸椎内部に造影(+)の円形病変を認める(矢印) table-1;他院・MGH受診時の検査所見 Fig.-2;入院時の造影CT写真 |