|
NEJM勉強会2003 第20回03/06/18 実施 Aプリント
担当: 唐沢康暉 (karasawa-tky@umin.ac.jp http://www.karasawa.umin.jp/)
【患者】37歳 男性 【主訴・入院目的】３週間続く間欠的な発熱,腹痛,背部痛 【現病歴】生来健康。８ヶ月前に故郷ペルーをたち、陸路で米国を目指す厳しい旅に出かけた。４ヶ月間の旅路で、彼は木から果実を取っては食べ、河など水源があれば、そこで水を浴び、水を飲んだ。いくつもの熱帯雨林を通り抜け、何度も蚊に咬まれた。７ヶ月前、グアテマラで１０日間熱を出したが、治療せずに治った。翌月、四日間、熱が出て、水っぽい下痢になった（非血性）。五ヶ月前、メキシコでミルクを飲んだが、チーズは食べなかった。そうしたら、また一週間下痢になり、十一日間熱がでたため、一週間、抗生物質（詳細不明）で治療した。その後、メキシコを発ち、二ヶ月掛けて車で移動し、三ヶ月前にボストンに到着した。そのころ、排尿困難があったため、他院を受診し、そこで貧血を指摘され、“腎臓感染症”に対し、抗生物質を処方された。ツベルクリン皮膚試験は陰性、肝機能検査で異常値があると言われた。だが、治療後、軽快した。その後、しばらくの間、熱は起きなかった。 六週間前、“燃えるような”心窩部痛（放散なし）が起きた。痛みはあったが、食欲、活動性、食事量は変わらなかった。三週間前、痛みは左上腹部と左肩に移り、厳しさを増した。痛みは背中の上の方の左側に放散し、体を曲げたりものを持ち上げると強まった。同時に、間欠的に熱が出るようになり、大量の汗と悪寒をともなった。何日間か、黒色便になった。十日前、一度だけ、便の中に、真っ赤な血（fresh blood ）が混じっているのを見た。六日前、熱が再発。前回行った病院に行き、アモキシリン（半合成ペニシリン）と制酸薬を処方され、二日間飲んだ。彼は、その後、ついに、この病院に来た。 【既往歴】肝炎、黄疸、関節痛、食欲不振、嘔吐、吐血、便秘、咳、呼吸困難、血尿の既往なし。 【生活歴】大工。十二年間連れ添った妻がただ一人いて、ペルーに残してきた。彼女と離れて以来、貞操は守ったと言っている。動物や病人とも接触していない。海産物や肉を生で食べたことがない。 alcohol (-), cigarettes (-), illicit drugs(-) 【家族歴】母 十五年前に結核。 【入院時現症】 <GENERAL STATUS & VITAL SIGNS> BW ここ数ヶ月間で、体重が８ｋｇ減少した。疲れたようには見えるが、ひどく苦しんでいるようには見えない。発疹、皮膚外傷、リンパ節腫脹なし。 BT 40.0℃, BP 120/80 mmHg, PR 90/min , RR 18/min, O2Sat 96% (room air) <HEENT> [Eyes] conj: not anemic & not icteric, pupils: round & isocoric. [Ears & Nose] n.p. [Oral Cavity] tongue: n.p. [Neck] no goiter, bruit(-). <LUNG> clear <HEART> �帰�,�侠�,��(-),��(-), 前胸部にsystolic murmur（grade 2 放散しない）<ABDOMEN>柔軟、左上腹部をを深く触診すると、圧痛はあるが、防御はない。肝脾：触知せず。肋椎に圧痛はない <EXTREMITIES> normal 〔神経学的所見〕異常なし。〔直腸診〕異常なし。便潜血なし。 【入院時検査所見】(Table 1, Table 2 and Table 3. を参照) <CBC> WBC 5.8×103/μL(Neu 46%, Mono 4%, Lym 49%, Baso 1%), Ht 35.1%(MCV 78fl), Ret 0.5%, Plt 28.3×104/μL 赤沈 30mm/hr 〔凝固〕PT, aPTT Normal <CHEMISTRY> TP 8.1g/dL, Alb 3.5g/dL, Globulin 4.6g/dl, Na 136mEq/L, K 3.8mEq/L, Cl 99mEq/L, HCO3 23.2mmol/L Fe 15μg/dl, IBC(Iron-binding capacity) 254μg/dl, Fer 89ng/ml,BUN Normal, Cr Normal, T.Bil Normal, Glu Normal, UA Normal, Mg Normal, AMY Normal, Lipase Normal, ALP Normal, Ca 8.1mg/dL(cCa 8.6 mg/dl), iP 2.3mg/dL, GOT 49 IU/L, GPT 62 IU/L, LDH 232 IU/L 【画像所見】 <Chest X-P> 肺はclear。CTR 正常。胸椎の一つで、わずかに高さが低くなっており、わずかに変性している。 <胸部CT>異常なし。 <腹部、骨盤CT>脾臓に直径1cm以下のlow attenuationが二箇所。その後、繰り返しCTをとると、二つの脾臓にある低濃度の病巣はわずかであるが、より小さくなっている。 右腎臓の中極（midpole）に、直径0.9cmのlow attenuation：小嚢胞だと思われる。 <UCG> 僧帽弁逸脱症、僧房弁逆流症はない。三尖弁と肺動脈弁逆流が極微量ある。 ＜上部消化管内視鏡（三日目）＞食道と胃は正常、十二指腸粘膜はびまん性にうっ血し、やや浮腫様で、出血は見られなかった。十二指腸液には寄生虫はなく、生検で、十二指腸粘膜の表面に単球が中程度に粘膜固有層に浸潤し、リンパ球の分泌顆粒が増加していることが示された。 ＜下部消化管内視鏡＞異常なし ＜便＞便を染色すると、多くの雑菌があったが、好中球はなかった。培養では、生物は繁殖しなかった。寄生虫および卵検査では、二核アメーバ（Dientamoeba fragilis）の栄養型が二検体のうち、一つ検出されたが、寄生虫の卵はなかった。通常時と熱の発作の間に採血されたの末梢血塗抹標本を、ギムザ染色しても、マラリアやバベシア類の微生物は見られなかった。thick and thin ？？ 【入院後経過】 血液、尿は培養され、vancomycinとgentamicin が経静脈的に投与された。熱はピークでは、初めの三日間で38.5℃〜39.1℃、四日目で37.6°C 、五日目で37.9°C 、六日目で38.4°C になったが、ピーク時以外はほぼ毎日平熱である。四日目までに、だいぶ軽快した。全ての培養検体（６つの血液培養、ひとつの真菌血液培養、ひとつの尿培養）はすべて無菌であった。六日目、処方は硫酸鉄だけになったので、退院となり、外来でフォローアップすることになった。 【退院後一週間】感染症診療室を訪れ、毎日発熱し、高い時には39.4°になり、背中の左上部の痛みは続くと訴えた。 BT 39.0°C, PR 100/min , BP 120/75mmHg.潮紅（flushed）しているように見えた。発疹、皮膚外傷、リンパ節腫脹なし。<LUNG> clear <HEART> 前胸部にsystolic murmur（grade 2 ）<ABDOMEN>心窩部と左上腹部にわずかに圧痛。滑膜炎（synovitis関節炎）、性器、直腸の病変は見られなかった。検査データ（Table 1 and Table 2）。<胸部CT>胸部にリンパ節なし。 <腹部、骨盤CT>脾臓の二箇所の病変はサイズが小さくなり、かすかに見えるだけだった。嚢胞は右腎にみられた。末梢血塗抹標本のギムザ染色では生物は見られず、尿と血液標本は培養された。 【退院後三週間】 一週間は発熱がなかったが、その後毎日38.3°Cから39.2°Cまで熱発し、夜に寒気で身震いし、汗をかくと訴えた。左上腹部の痛みは間欠的にあるが、弱まった。吐き気、嘔吐、下痢はなかった。引き続き硫酸鉄のみの服用した。BT 38.6°C. 発疹なく、左鎖骨上窩に1cmのリンパ節、左腋窩に小さなリンパ節が触知された。前回の検体での、血液培養、マイコバクテリア尿培養、そして、さらにマラリア用のギムザ染色塗抹標本も陰性であった。検査データ（Table 1 and Table 2） A diagnostic procedure was performed. 
| ||||