NEJM勉強会

NEJM勉強会2003 第19回03/06/11 実施 Aプリント担当:宮垣朝光
Case 7-2003:
A 43-Year-Old Man with Fever, Rapid Loss of Vision in the Left Eye, and Cardiac Findings ───発熱、左眼の急性視力喪失、心臓に異常の見られた43歳男性───

【主訴】発熱、左眼の視力喪失
【現病歴】入院の6週間前に発熱、発汗、筋痛、右側の胸膜痛が生じた。3日後CXpを施行して、右の中下葉に肺炎像を指摘され、azithromycinを5日間投与された。治療により容態は改善したかのように見えたが、投与終了の次の日、再び悪化が見られた。入院の26日前に再度CXpが施行され、右側の胸水が指摘された。患者は胸腔穿刺および入院を拒否したため、levofloxacin 14日分が処方された。その後の入院21日前、14日前のfollow-upにて経過良好であり、CXpにても改善が見られた。しかし、levofloxacinを終了して5日後に、発熱、発汗、倦怠感、呼吸困難、起座呼吸を認め、働けなくなった。さらに、入院の2日前には左の視野に“brown spot”が見えるようになり、左眼に軽度の痛みも生じた。そのspotは6時間以上もかけて大きくなっていき、最終的に左眼の視力は手動弁にまで至った。そこで、患者の妻が付き添いで他院を受信させた。ECGにてPR 102 /secのsinus tachycardia、PR間隔220 msec、single ventricular premature beat、possible anteroseptal infarct of uncertain ageを認めた。また、頭部CTにては異常を認めず、CXpでは右肺に胸水、肺炎像を認めた。そして、血培を2 set取り、ceftriaxoneを投与され、当院へ転院となった。
【生活歴】生粋のギリシャ人でコックをしている。Alcohol：嗜む程度。Smoking：(-)。不正薬剤使用歴：(-)。HIV感染のリスク：(-)。ここ6年間は国外旅行はしておらず、最近は国内旅行もしていない。
【既往歴】Type 2 DM（metformin hydrochlorideにてcontrol）。喀痰、頭痛、頚部硬直の記憶はなく、知る限り心雑音、心臓疾患も指摘されたことはない。
【現症】
<GENERAL STATUS＆VITAL SIGNS> BT 39.7℃, BP 125 / 60 mmHg, PR 131 /min, RR 28 /min, 明らかにoverweightで皮膚は冷たく湿っていた.
<HEAD> [Eyes] 左眼は充血し、視力は手動弁. [Neck] 頚部硬直(-)
<LUNG> 左の肺底部に聴診にて吸気時にcrackleを、右肺底部に打診にて濁音、聴診にて呼吸音減弱を認める.
<HEART> 胸骨左縁にLevineⅢ/Ⅵ systolic murmur, LevineⅠ/Ⅵ aortic diastolic murmurを聴取.
<ABDOMEN> 肝・脾は触れない
<LYMPHATICS> neck / supraclavicular / axillary / inguinal：not swollen
<EXTREMITIES> rash(-), septic lesion(-), edema(+)
<NEUROLOGICAL> n.p.
【入院時検査所見】
<CBC> WBC 11800/μl(Neu 79%, Mono 4%, Lym 17%), Ht 30.2%, MCV 77 fl, Plt 16.3×104 /μl
<COAGULATION> PT, PTT：normal
<CHEMISTRY> BUN, Cre, Pi, T.Bil, D.Bil, Mg, GOT, GPT, Amy, lipase, CK isoenzymes, troponin T：normal, T.Pro 6.6mg/dl, Alb 2.1mg/dl, Na 133mEq/l, K 3.6mEq/l, Cl 104mEq/l, Ca 8.1mg/dl, HCO3- 21.8mEq/l, CK 23U/l, Glu 248mg/dl, HbA1c 7.4%, ESR 83 mm/hr
<U/A> Pro(++), Bil(+), RBC 100以上/HPF, WBC 5～10/HPF, bacteria moderate numbers/HPF, 顆粒円柱 0～2/LPF, 硝子円柱 5～10/LPF, toxin screening(-)
<ECG> PR 119/min，sinus tachycardia，PR間隔300msec，V1～V4でpoor R，anteroseptal infarct of uncertain age，nonspecfic ST-segment and T-wave abnormalities．ここで患者はnonsustained ventricular tachycardiaのエピソードが1回あったことを思い出した．
<CXP(Figure下左)> 右中下葉がX線非透過性で、右に胸水を認める．左肺は正常．心臓の大きさは正常上限．
<胸部CT(Figure下右)> 胸水が両側に見られ、右に多い。一部液体が前方で小房化している。右中葉の外側区にconsolidationを認め、左下葉、右上葉に斑状のair-space diseaseを認める。心臓、大血管は正常。縦隔内にリンパ節腫脹が見られ、最大のものはφ1cmで気管傍リンパ節であった。肺門部リンパ節腫脹は見られなかった。

【入院後経過】入院当日、眼科的検査が至急施行され、左眼の眼内炎があり、前房に蓄膿、色素・フィブリン沈着、硝子体細胞があり、底部が見難くなっていることが指摘された（Figure上）。左眼の視力は30cm指数弁で、右眼には異常はなかった。診断的硝子体穿刺が施行され、vancomysin、ceftazidimeが眼内注入された。次に血液検体2つと喀痰が採取され、vancomycin、gentamicin、ceftriaxoneが開始された。入院2日目頭部MRIが施行されたが、患者が閉所恐怖症であったため、眼窩の周囲は上手く取れなかった。取れた範囲では異常所見はなかった。 Labo dataはBUN, Cre, Pi, Mg, CK, CK isoenzymes, troponin T, thyrotropin：normal, Ht 28.6%, WBC 17500, Neu 84%, Plt 23万, Na 133, K 4.4, Cl 96, Ca 8.0, HCO3- 24.2, Glu 391であった。次に腰椎穿刺を施行し、脳脊髄液は無色透明でRBC1個/mm3、WBC3個/mm3(Neu 38%, Lym 22%, Mono 40%), Pro 23mg/dl, Glu 129mg/dl(7.2mEq/l)であった。培養はpendingで、前の病院での培養ではpenicillinに感受性のあるStreptococcus pneumoniaeが生えたとのことであった。10：15頃患者の心拍が35に血圧が80/40mmHgに低下し、チアノーゼを認め、呼吸困難が増悪した。2l/minO2吸入下でPaO2 80mmHg、PaCO2 37mmHg、pH 7.40であった。気管内挿管が施行され、100％O2、昇圧剤投与がなされた。ECGでventricular rate 35/minで、心室波形の拡大が認められた。そのリズムは完全房室ブロックによるものと思われたが、かなりの体動によるartifactのため細部は詳細不明であった。

ある診断的手技が施行された。