NEJM勉強会2003 第14回03/05/07 実施 Aプリント 担当:蔵野 信kurano-tky@umin.ac.jp) Case 11-2003: A 14-year-old boy with ulcerative colitis, primary sclerosing cholangitis, and paritial duodenal obstruction (Volume 348())
【患者】14歳男性 【主訴】嘔吐、腹痛 【現病歴】 3歳時、大腸内視鏡により潰瘍性大腸炎と診断。Mesalamine(炎症性腸炎に用いるサリチル酸)、短期間のAdenocorticosteroidによってコントロール良好。 《第1回入院(14ヶ月前)》 腹痛、掻痒、黄疸出現。ERCPにて狭窄があり、原発性硬化性胆管炎と診断され、ステント留置。胆管上皮の細胞診は反応性の変化のみで悪性なし。モルヒネ、プレドニゾロンで軽快。入院6日目退院。 《第2回入院(14週間後)》 腹痛出現。ERCPを行い、ステント置換、括約筋切開術。肝のcore-needle biopsyでchronic active hepatitis。抗生物質、hydrocortisone投与するも、翌日心窩部痛、右上服部の痛み、39.8℃の発熱出現。血液培養陰性、アミラーゼ・リパーゼ正常。CXRで左上葉の無気肺像。腹部エコーで胆管拡張はなかったが、膵頭が腫大し、heterogeneousであった。(もしかしたら最近の膵炎、Adrenocorticosteroidによるかもしれない)入院3日目、症状は軽快し退院。 《第3回入院(1週間後)》 発熱、数時間続く右上腹部の激痛。CTでステントは異常なし、腹腔内膿瘍なし。抗生物質投与で症状軽快し、入院5日後目退院。 《第4回入院(5ヵ月後)》 腹痛、ステント置換のため入院。入院2日目39.9℃の発熱。CTで急性無石性胆嚢炎と診断され、緊急腹腔鏡胆嚢切除術施行。胆嚢は急性胆嚢炎の組織像。入院7日目に退院。 《第5回入院(11日後)》 腹痛・発熱の再燃。CTで胆嚢窩、拡張した中心肝管にloculated(小房様の) airが見られた。膵管、総胆管も軽度拡張。ERCPで膵管の狭窄・肝内胆管が交互に拡張・狭窄を繰り返す。(硬化性胆管炎に合致)ステント置換され、入院5日目に退院。 《第6回入院(18日後)》 腹痛、便秘が出現。発熱、黄疸はなし。腸音正常。CTでは膵管、肝内胆管の変化なし。ただし腸はびまん性に肥厚し潰瘍性大腸炎に一致。プレドニゾロン、モルヒネ、非経口栄養がなされ、非経口栄養のまま入院10日目に退院。 《第7回入院(5日後)》 刺すような腹痛がコントロールできない。guardingを伴ったびまん性の著しい圧痛がみられたが、反跳痛はなし。非経口栄養がなされた。エコー上著変はなかった。その後、腹痛・圧痛は軽減し、アミラーゼも111Uまで低下した。入院9日目に退院。 《第8回入院(7日後)》 数日間、掻痒感、黄疸、悪心、黒い尿が続いた。体温は37.3℃、腹部は柔らかいが、著しい圧痛が見られた。抗生物質投与、ERCP、ステント置換がなされた。ERCPは硬化性胆肝炎、慢性膵炎に合致する所見だった。抗生物質投与継続し入院3日目に退院。 《第9回入院(10日後)》 腹痛が軽減せず、Peustow procedure( a lateral pancreatojejunostomy)施行のため入院。体表、強膜黄疸が見られた。腹腔鏡では腹膜癒着、肝硬変を伴わない胆汁うっ滞が見られ、膵臓は線維状で主膵管の拡張が見られた。また、近位の膵管は狭窄が見られた。門脈圧亢進の証拠は無かった。A Roux-en-Y lateral pancreatojejunostomyが行われた。この際の肝標本では肝外胆管の閉塞と原発性硬化性胆肝炎に合致する胆管の変化が見られた。入院6日目にERCPが施行され、2つのステントが留置され、入院11日目に退院。 《第10回入院(翌日)》 39.6℃の発熱、右肩に放散するguardingない腹痛、末梢の浮腫が見られ、CTで肝内胆管の拡張(特に左肝管)が見られ、もう一度CTを行ったら、肝内にΦ1,5cmの小さい低吸収の領域が見られ、その周りにより小さい、膿瘍・胆汁のうっ滞・拡張した胆管を示しているであろう低吸収の領域が見られた。血液培養が採られ、Vancomycin, Gentamicin, Metronidazoleが投与された。血液培養からはKlebsiella oxytocaが培養された。それを得てMeropenem, Fluconazole, Gentamicinに抗生物質が切り替えられた。Meropenを処方された状態で、入院10日目に退院。 《今回入院前エピソード》 退院後13日目では、状態は安定していたが、夜間嘔吐が出現。CT(図)で、胆管の拡張の程度は変わらず、膵頭ははっきりとしたmassはないが拡大、ステントはずれていないことが確認された。胃は拡張し、遠位部は狭くなっていた。退院21日後、経口摂取を不可能にするほどの食欲低下、嘔吐が出現し、夜間腹部激痛(びまん性だが右上腹部が最も強い)を訴え、入院となった。 【家族歴】胃腸疾患、自己免疫疾患の家族歴なし 【入院時現症・検査所見】 〔一般所見、バイタルサイン〕BT35.7℃、PR100、RR20、BP135/80mmHg 〔皮膚〕脱水傾向、黄疸あり 〔胸部〕心音・肺音N.P. 〔腹部〕手術痕の治癒は良好。腸音低下、やや腹部拡張、右上腹部に最強点をもつびまん性圧痛 〔血算〕WBC 8500×103/μL(Eos 8%, Mono 6%, Lym 25%, Neu 61%), Ht 27.0%, MCV 84fl, Plt 28×104/μL 〔生化学〕γ-GTPIU/L, T.Bilmg/dL, P 4.8mg/dL, BUN normal, Cr normal, Na 136mEq/L, K 4.2mEq/L, Cl 99mEq/L, Ca normal, Mg normal, HCO3 28.2mEq/L, glucose normal 〔凝固〕PT 13.6sec, PTT 30.1sec 〔上部消化管検査〕食道正常、胃が著しく拡張している。蠕動は正常。十二指腸には7cmの狭窄が見られる。 入院後、ある診断的手技が施行された。 検査値推移 1列目は入院の回数。6−9などは第6回入院の9日目という意味
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