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NEJM勉強会2003 第12回 03/04/23実施 Aプリント 担当：藤田 大司 Case 3-2003 A 36-Year-Old Man with Renal failure, Hypertension, and Neurologic Abnormalities (Volume348:333-342) 【現病歴】36歳、右利きの男性が発作と重度の高血圧を主訴に入院した。 患者は過去に、18年間にわたる薬物使用歴（静脈内注射、注射針の共用、ヘロイン、コカイン）がある。 入院１年前に不正薬剤の使用をやめたところ、体調がすぐれなくなったことがある(vaguely unwell)。 入院3ヵ月前、左足指にひりひりした感じが生じ、麻痺してきた；このとき、反復性の嘔吐、盗汗、間欠的な下痢、腹部痛、発熱（自覚される程のもの）、体重減少 (16 ��) も認めている。すねから足首にかけての紅斑性狼瘡に気付いた；それは治癒するまで１ヵ月の間、漸増・漸減した。 入院５週前、別の病院にかかり、高血圧と診断された。この際、B型・C型肝炎の検査を受け、陽性となっていた。非経口栄養にて対処され、3週間して退院となっている。 １週間後、左脚の震えが生じ、左腕に広がってきた。意識を失い、強直性間代性発作となった。２つ目の病院へと運ばれ、発作が再度認められたのでフェニトインNaとベンゾジアゼピンにて治療された。入院時の血圧は 240/130mmHg であった。尿に異常は認められなかった。血液検査の結果をtable 1と2に示す。ECGにて洞性頻脈と全誘導における非特異的STとT波の上昇が見られた(sinus tachycardia and diffuse, non-specific ST- and T- wave abnormalities)。髄液所見では細胞成分を認めず、培養にても何も生えなかった；糖 59 mg/ml (3.3 mmol/l) 、タンパク 71mg/dl であった。頭部CTでは頭蓋内出血の形跡は見られなかった。頭部MRIでは後頭部に低悪性度の新生物とおぼしきものが見られた ( A cranial magnetic resonance imaging study was believed to have suggested the presence of a low-grade occipital neoplasm.)。 ラベタロール、クロニジン、輸液、電解質が投与され、高血圧はおさまった。入院５日目に、フェニトイン、ラベタロール、クロニジン、トラゾドン、ブプロピオン、オメプラゾ?ル、塩化カリウム、(phenytoin. Labetalol, clonidine, trazodone, bupropion, omeprazole, potassium choloride)を処方されて退院し、外来にてフォローすることとなった。ところが、退院すぐして左足と足首の痺れと「刺すような痛み」を感じるようになり、異常感覚 dysesthesiaを伴うようになった。局所の筋力低下が出現してきたが、下背部や坐骨には痛みはなかった。退院3日目にして、当院へ入院となった。 患者は大学での会計係である。８年前にHIV検査にて陽性となったと言うが、その後の検査では陰性とのこと。アルコール乱用の既往があるが、15年前にきっぱりとやめた。１日に煙草を半パック吸う。頭痛、視野障害、発汗、間欠的発熱、肺部痛があったことを記憶しているが、いつ・どれくらいの間かは覚えていない。背部の外傷や血便排泄、下血は今までなかった。 【現症】admission on foot <vital> BT 36.1℃, PR 96, RR 20, BP 185/110mmHg <general appearance> 痩せており、年齢より老けて見えた。 <skin> すねから足首にかけて、茶色い斑点状の色素沈着と2?5mm径の凹んだ色素の虚脱あり <head> 小さな頚部リンパ節をいくつか触れる <heart><lung> 聴診にて胸部に異常を認めず <abdomen> splenic tip を触れる <extremities> 浮腫はない <nuerological> 見当識ははっきりとし、記憶・認知障害はない。瞳孔に左右差はない。上方視にて両目にわずかに垂直方向の眼振あり。追視障害を認めるが、サッケードは保たれている。Drift はない。 MMT： left hamstring 5/5, left quadriceps 5/5, left gastrocnemius 2/5、その他はすべて5/5。筋緊張は正常で、委縮や異常運動はない。 触覚、痛覚、温度覚は左足の外足と親指の付け根で低下していた( lateral aspect and ball of the foot)。左足の中部ではさらに低下していた。振動覚に問題はなく、足首以上の感覚は正常であった。 踵すね試験は両側でpoor だったものの、協調運動 coordination は正常であった。歩行は antalgic （鎮静的？） であり、左足をかばっていた。両踵と右つま先で立つことはできたが、左つま先では無理だった。Romberg は陰性。失調なくベッドの端に座ることはできた。DTRは、両腕は+、膝と右足首は2+、左足首では消失していた。足定部反射は flexor であった <urine> pro (3+), glu (かすかに+), WBC 0?2/LPF, RBC 0/LPF <血算> Ht 38.8%, Hb 16.3（入院１週間前）, MCV 84, WBC 14000 ( Neu 76 Lym 17 Mono 3 Eos 3 Baso 1), Reti 3%, plt 415000, ESR 107,（table 1参照） <生化> TP 7.3,g/dl Alb 2.0 g/dl, Na 132 mEq/l, K 3.3 mEq/l, Cl 91 mEq/l, CO2 27.3, BUN 35 mg/dl, Cre 2.7 mg/dl, ALP 376 U/l, GOT 83 U/l, LDH 470 U/dl（table 2参照） toxic agents の検索では、尿生化にてバルビツールを検出したのみであった。 <ECG> normal rhythm, rate 79/min, left ventricular hypertrophy あり <sero> syphilis (-) <頭部MRI> 年齢不相応の mild atrophy。T２にて increased signal density in the right periatrial white matter, right forceps major, and left parietal cortical and subcortical white matter を認めたが、グリオーシスか微細塞栓症を伴う虚血性変化により起きうるもので、非特異的であった。Massや異常な造影効果は認めなかった。 Diffusion-weighed sequence では急性梗塞の痕跡はなく、flow void は正常であった。 <経胸壁心エコー> 前尖を中心としたM弁のびまん性の肥厚を認める。所見は弁膜炎 valvulitisや vegitation と矛盾しない。Mild MRをカラードップラーにて認める。LVはわずかに拡張しているが、明らかな壁運動の異常はない。EF 54%であった。 【入院後経過】 フェニトイン、クロニドン、ラベタロール、ニフェジピン、ヘパリン、ブプロピオン、トラゾドン、塩化カリウム、コデイン-アセトアミノフェン（phenytoin, clonidone, labetalol, nifedipine, 少量 heparin, bupropion, trazodone, potassium chloride, codeine-accetaminophen） を処方された。体温は常時、正常であった。入院から3日間、血圧は測定する度に上がっていた。最高値は 180/140 mmHg。間欠的に嘔吐があったが、吐血はなかった。 入院２日目に神経眼科？(neuro-ophthalmologic)にコンサルタントしたところ、視神経乳頭浮腫を指摘された（両眼の乳頭の不鮮明化と左眼の綿花様病変 cotton-wool spots）。薬剤による拡張のため乳頭反射はとれず。 高血圧のコントロールのため、ICUに移る。身体所見に変化はなく、雑音などは聴取しなかった。生化学検査が施行された(table 1&2)。タンパク尿(4+)があり、沈査で変形赤血球と稀な細胞円柱を認めた。腹部エコーにて、右 10.8cm, 左 12.8cmであった。皮質の高エコーを認めるものの、水腎症はなく、巣病変はなかった。脾臓はやや肥大しており、腹水が少量あった。 入院3日目には気分が良くなってきた。頭痛はなくなり、悪心・嘔吐もなくなった。血圧は 150/70 - 170/100 mmHgで推移していた。Room air にて PO2 95mmHg, PCO2 44mmHg, pH 7.42 であった。ASO(-), Anti-DeoxyriboNucleases B (-)。尿検査では、クレアチニン 96mg/dl, タンパク 8030 mg/l であった。胸部X線で異常は認めず。腹部エコーにて胆嚢は膨張しており、胆石があったが、胆嚢炎はなかった。肝臓は正常であり、脾臓に特に異常はなかった。腎臓の所見は以前と変わらず。腰椎のガドリニウムMRIではL5とS1の間の椎間板のわずかな突出を認めるが、L5の脊椎すべり症はわずかであり、脊椎硬化・椎間板炎・骨髄炎・膿瘍の痕跡は見られなかった。 入院４日目には、経口降圧剤使用下で血圧は 150.90 mmHg であった。初めの病院からのデータでは（不完全なものであったが）尿素窒素とクレアチニンは正常とのことだった。HBs Ag(+) HBs Ab(-) が確認された。IgM HAV ab は陰性であった。HCV ab (+)でもあった。経食道心エコーでは経胸壁心エコーの所見と一致した。 入院５日目には血液検査が施行された（table 2）。葉酸・Vit B12 は正常であった。血液培養は６つとも陰性であった。 HIV 1/2 Abは陰性であり、rtPCRでは HIV-1 RNA は検出されなかった。HBsAg(+), HBsAb(-), HCV ab(+), ANCA(-)。ハプトグロブリン、補体,C3,C4はいずれも正常であった。 ある診断的手技が施行された。 
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