NEJM勉強会

NEJM勉強会2003 第9回03/03/19 実施 Aプリント担当: 摩湯範子 (mayu-tky@umin.ac.jp)
Case 30-2002: An Eight-Year-Old Girl with Fever, Hemoptysis, and Pulmonary Consolidations

（Volume 347: 1009-1017）

───発熱、喀血と肺のコンソリデーションが認められた8歳女子───
【患者】８歳女子
【主訴】発熱，喀血，肺のコンソリデーション
【現病歴】
  患者は健康であったが入院6日前にエルサルバドルを訪れたおり咽頭痛、中等度発熱、乾性咳漱、食欲不振、日一回の嘔吐が生じた。入院3日前に空路ボストンに帰ったが、呼吸困難が生じた。入院2日前に喀血し、右側の耳痛を訴え微熱が持続した。入院1日前に喀血と呼吸困難が悪化し他院を受診したところ胸部X線写真で肺のコンソリデーションを認めた。ceftriaxone とazithromycが投与され、次の日にMGHに搬送され、入院した。

【生活歴,既往歴】
入院1ヶ月前に水痘とA型肝炎のワクチンを接種した。
動物との接触歴(-)、入院歴(-)。
2歳時の血算と血液中のPb値は正常であった。
3歳時に2回、尿路感染を生じ培養の結果 Escherichia coli が検出された。
多形性紅班（と診断された）が2回生じており、最近は入院13ヶ月前であったが生検による確定診断はされていない。
入院12ヶ月前、ツ反陰性であった。結核への曝露は判明していない。
入院9ヶ月前のLabo dataをtable 1に示した。
入院8ヶ月前、丘疹様紅斑が間欠性に上下肢に生じ”heat rash”と記載された。1か月ほど消退したが、現在再出現している。
入院5ヶ月前、再発する無痛性血尿の精査のため排尿時膀胱尿管造影と腎エコーが施行されたが異常なく、良性と判断された。
喘息(-)、薬剤アレルギー(-)、長期薬物服用(-)、体重減少(-)、血便(-)
【家族歴】腎疾患(-)、嚢胞性線維症(-)、自己免疫性疾患(-)。患者は一人っ子である。

【入院時現症】
<VITAL SIGNS> 127cm, 37.3kg, BT 38.3℃, BP 110/60 mmHg, PR 142/min, RR 33/min, SpO2 95 %(4l/minのO₂投与下)
<GENERAL> 蒼白、浅く速い呼吸
<NECK> n.p.
<HEART> Ⅰ→, Ⅱ→, Ⅲ(-), Ⅳ(-)
<LUNG> 右上葉に呼吸音の減弱を認める, no crackles or intercostal retractions
<ABDOMEN> n.p.
<RECTUM> n.p.
<SKIN>
・丘疹様紅斑を顔、手、脚にみとめる：約40の散在した病変から成り、それらは茶色、卵形でわずかに隆起している。両親によると、径1mmの斑が生じ数日後2-4mmの丘疹になり痂皮が生じて、潰瘍や水疱形成はないまま消失するという経過を取る。
・左大腿部の内側に1-2mm径の小水疱が形成する径1cmのcircle(+)
・点状出血(-), 毛細管拡張(-), 口腔咽頭病変(-), リンパ節腫脹(-), 便潜血(-), 滑膜炎(-),
<NEUROLOGICAL>  n.p.

【入院時検査所見】(Table 1を参照)
<CBC> WBC 6.5×10³/mm³ (Neu 66%, Mono 4%, Eosi 1%, Lym 29%), Ht 23.2% (MCV 79μm3), Plt 41.0×10⁴/mm³ ,ESR119mm/hr, Ret1.4%,
<CHEMISTRY> Glu 117mg/dl, iP 3.4mg/dl, TP 7.3g/dl, Alb 2.9g/dl, Glb 3.9g/dl, BUN 4mg/dl, Cre 0.4mg/dl, T.Bil, D.Bil, Ca, Mg, 電解質, AST, ALT, ALP; normal
<COAGULATION> PT14.6, aPTT w.n.l.
<尿沈査> normal, 白血球5-10個と赤血球 3-5個をlow-power視野(+)
<血ガス> O₂ 178mmHg, CO₂ 38mmHg, pH 7.43（O2投与5l/min下）
<CXR> (Fig. 1を参照)
肺野: 右上葉の完全な不透明化(+), 両肺下葉の融合する不透明部分(+), 胸水(-),
心臓, 縦隔, 骨組織:normal
<副鼻腔単純CT> (Fig. 2を参照)
左上顎洞, 右後方篩骨洞と蝶形骨洞に粘膜肥厚(+), 骨びらん(-), 骨破壊(-), 前頭洞の含気化(-), 乳突蜂巣の不透明化の散見(+), 眼窩:normal, アデノイドのわずかな隆起(+);年齢相応と思われる
<胸部造影CT>(Fig. 3を参照)
右上葉:ほぼ完全なコンソリデーション(+), 数区域にair bronchograms(+). 両肺下葉部:融合する結節陰影(+), 斑状のスリガラス様陰影(+), 数区域にair bronchograms(+). 空洞化(-), 胸水(-), リンパ節腫脹(-). 主気道, 心臓, 大血管, 骨, 上腹部:normal.
<小児耳鼻咽喉科へのコンサルト>
右中耳に膿(+), 左中耳に漿液の滲出(+). 両側上顎洞より化膿性の排液(+). 鼻中隔の前方部に浅い瘡痕(+), 鼻甲介に潰瘍化(-), 咽頭と扁桃の発赤(+), リンパ節を両側に触知(+), 喉頭:normal

【入院後経過】
  入院当日ceftriaxone と azithromycinの投与は継続され、 vancomycin と acetaminophenも追加された。午後、体温は38.9℃まで上昇し喀血が続いたが、喀痰の排出は無かった。入院2日目、体温は38.1℃でRRは30-56/minで変動した。再び尿所見をとったところ蛋白(-)、白血球(-)であったが多数の赤血球を認め(+)、数個の異形赤血球(+)、赤血球円柱を1個認めた。Labo検査所見はTable 1に示してある。血液、尿、咽喉の培養が行われ予備結果は陰性（培養結果はpending）、legionella 尿中抗原(-)であった。胸部Xp、胸部CT所見に変化は無かった。気管支鏡検査所見では気管支内に血液を確認したが明らかな出血巣については不明。吸引喀痰検体（唯一の喀痰検体であった）は極少量の上皮細胞を含み、好中球(-)、グラム陰性桿菌(+)、抗酸菌(-)。追加されたlaboratory testsの結果は未提出である。

  ある診断的手技が施行された．

Figure 1. Radiograph of the Chest Showing Nearly Complete Collapse of the Right Upper Lobe.
There are confluent opacities in both lower lobes.

Figure 2. CT Scan of the Paranasal Sinuses Showing Mucosal Thickening in the Left Maxillary Sinus (Arrow).

Figure 3. CT Scan of the Chest Obtained after the Administration of Contrast Material.
The image with soft-tissue windows (Panel A) shows complete consolidation in the posterior segment of the right upper lobe and nearly complete consolidation in the anterior segment of that lobe. The consolidated area outlines an air bronchogram. The image with lung windows (Panel B) shows patchy areas of ground-glass opacity in both lower lobes.