心エコーでの左室拡張機能の評価
 
 
等容拡張期(isovolumic relaxation time: IRT) 70-100 msec
E/A比 0.6-2.0
加速時間(acceleration time: AT)  
減速時間(deceleration time: DT) 150-250 msec

 
  左房から左室への血流は,拡張早期と心房収縮期に二峰性にわたって流入する.前者がE波で後者がA波である.E波は左房-左室の初期圧較差を反映するのに対し,A波は心房収縮による左室の充満を意味する.聴診上,E波は3音に相当し,幼児および若年者では正常者でもしばしば3音が聞かれる.左房-左室の血流増大の場合には3音亢進となり,代表例としてはMRがある.心不全のときも3音が聴取されることがある.A波は4音に相当する.加齢によって左室拡張早期の弛緩とその後の充満が障害され,E波は低下し,代償的に心房収縮(A波)が大となり,E/A比は逆転する.高齢者で生理的3音が聞かれず4音が聴取されるようになることと符合する所見である.
 
左室拡張機能に障害があるときは…
・  収縮期の駆出が終了すると左室圧は下降しはじめるが,左房圧以下になると僧帽弁が開放し流入が始まる.この下降スロープが緩やかになるため,2音(駆出の終了時)から僧帽弁開放までの時間(IRT)は延長する.
・  十分な伸展をみないため左室拡張期圧が低下せず,結果として圧較差が小さく,E波は低下する.
・  E波後の心室充満も遅くなる.これは減速時間の延長として反映される.
・  心房の機能が保たれていると代償機転が働き,心室への流入を増やそうと心房の収縮が強くなる.したがってA波は高くなり,E/A比は小さくなる.


  【引用】心エコーの読み方,考え方 2版 JR東京総合病院副医院長 羽田 勝征 著