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NEJM勉強会2003 第4回03/02/12 実施 Aプリント 担当：蔵野 信 (kurano-tky@umin.ac.jp) Case 31-2002: A 61-Year-Old Man with Headache and Multiple infarcts (Volume 347(15)) 【患者】 61歳男性 【主訴】 片麻痺、失語、意識鈍麻 【現病歴】 １ヶ月前まではハイチの家で問題なく過ごしていたが、右脚に痛みが生じた。２日後下肢のUSによる検査を受けたが、異常は発見されず、アスピリンを処方された。痛みはなくなったが、入院３週間前に、頭痛、悪心、吐気が生じたが、これらの症状はしばらくしてなくなった。２日後、平衡感覚に問題が生じた。肝USで腫瘍の疑い、便検査でEntamoeba histolytica（赤痢アメーバ）が見つかり、１週間メトロニダゾールが処方された。入院２週間前、平衡感覚の問題はなくなり、CT上脳に異常は見えなかった。入院１週間前、腹痛、間欠性頭痛が生じた。USAに渡航する際、名前を書くのに困難が見られ、増悪する会話の障害、再発する頭痛、右脚の衰弱が見られた。衰弱はまもなくして右上肢にも生じ、失語となった。覚醒した状態で病院に運ばれたがすぐに意識鈍麻が見られた。気管挿管が行われた。 【生活歴・既往歴】 ハイチの田舎で育った。喫煙は１８年前にやめており、アルコールは適量。Type2DMの既往があり、経口薬（詳細不明）を服用している。家族歴はDMの親戚が数人いて、妹（姉）が三回第三期に自然流産（原因は調べていない）、脳卒中、凝固系疾患の家族歴はなし。家族の話によると、患者は胸痛、呼吸困難、発熱、寒気、寝汗、体重減少、鎌状赤血球症、動物・結核への暴露はない。 【入院時現症】 (一般所見)体温36.4℃、脈拍137、呼吸数20、血圧165/75mmHg。身体検査では意識鈍麻で、刺激に対して最小の反応しかしない。 (体表）紅斑、点状出血、敗血症、リンパ節腫脹は見られない。強膜黄疸が認められた。 (肺・心)肺は清音。Grade２の雑音がapexに見られた（�掘檗法� (腹部所見)肝臓は硬く右肋骨弓下4〜5cm触れた。 (血流)血管雑音は聴こえなかったが、脈は左頚動脈(−）、右頚動脈、両側橈骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈(＋＋)。左下肢はふくらはぎより下は蒼白していて冷たく、左後脛骨動脈と足背動脈は脈が触れなかった。一方右足は温かく、右後脛骨動脈と足背動脈の脈は触れなかったが、Doppler echoで血流は確認。された。また末梢浮腫は見られなかった。 (神経学的所見）胸骨の圧迫に対して左上肢、左下肢を少し動かす反応をする。瞳孔は直径4mmで対称、反応性あり。Gaze preferenceなし。右上肢は弛緩していて、深部腱反射は両側ともにある。バビンスキー反応は見られない。 (尿)色はオレンジ。蛋白(++)、ビリルビン(+)、ウロビリノーゲン(±)、RBC3~5/HPF、WBC2/HPF、細菌少数/HPF。 (血液検査、生化学検査)→Table1,2。Ca, amylase, creatine kinaseは正常。 (血液ガス検査)PaO2 189mmHg PaCO2 37mmHg pH 7.33（酸素補充下） (心電図)心拍数140の洞性頻脈で時々早発のQRS complexを伴う。下壁おそらく外側の(acute?) MIのパターンであった。 (CXR)気管チューブは適切な位置に入っていた。左肺底に斑状無気肺が見える。他の部分の肺陰影、心陰影は正常あった。 (CT&MRI of the brain)多発性梗塞 →fig1,2 (CT of the abdomen) →fig3,4,5 【入院後経過】 患者はICUに入院した。尿標本、血液標本を採取し培養した。single dose ceftriaxoneとvancomycinが処方された。治療は他にアスピリン(325mg/day)、少量ヘパリン、通常インスリン、メトロプロロールを投与した。経食道エコーが行われた。（→fig6） 入院2日目、体温は37.7℃を超えなかった。検査値は少し変わった。(→table2) HBs-Ab(+), HBs-Ag(-), HCV-Ab(-), HIV-1-Ab(-), HIV-2-Ab(-), RF(-) .CXRでは両側肺底部の無気肺、左肺中部の無気肺の疑い。腎レントゲン検査では、左腎：下極の小領域(遅延相優位のtracerの取り込み)を除き造影剤の取り込み無し、右腎：正常の造影を示すが、排出は遅れている。CT study of the brain：前日と変化なし 前日の培養結果：すべて陰性 ある診断的手技が施行された． 
【画像所見】 (Dr. Pamela W. Shaefer) fig-1のCTについて。左前頭葉、左頭頂葉にlow density area、灰白質と白質の境界消失、local mass effect。左中大脳動脈の領域の急性梗塞を示す。また、両側性の小脳梗塞も認める。 fig-2のMRIについて。いくつかの血管領域に多発性急性梗塞像を示す。（最大の梗塞は左中大脳動脈に見え〈前頭葉後部、頭頂葉、側頭弁蓋部に広がる〉、他にも小さな梗塞域が左右大脳動脈、小脳などに見える。）亜急性梗塞域が右上、後下小脳動脈に見られる。MRAではWillis動脈輪に異常は無い。 (Dr. Brian C. Lucy) 腹部CTについて。両側肺底部の無気肺、肺のmassesまたはnodules、胸腔内リンパ節腫脹、大動脈・腸間膜動脈の異常がある。肝(fig-3)には両葉に多発性巣状領域（low density 2~20mm、造影で門脈相にモザイク状造影。右葉に多く、融合しているように見える）があり、実質には梗塞を疑わせる所見がある（low enhancementの領域）。胆管の拡張は無く、冠動脈、門脈は貫通している。腎(fig-4)は両腎に梗塞像に一致する低造影像が見えるが左腎のほうが梗塞が強いと考えられる。盲腸と上行結腸(fig-5)の壁は厚く、拡張などは見られなかった。画像所見としては非特異的であるが、結腸炎の所見である。上行結腸の周りの脂肪、肝右葉下面に非特異的な炎症性変化が見える。この所見はfocal ischemic colitisを示唆している。 (Dr. Mary Etta King) 経胸壁心エコーについて。MIの既往から施行した。長軸方向では、僧帽弁前尖がび慢性に肥厚していた。僧帽弁は乳頭筋の機能不全があり、不完全接合を示した。MRが見られた。大動脈弁はわずかに肥厚していたが、明らかなvegetationは見られなかった。短軸方向では左心室容量、収縮期機能は正常。Apical viewではapexの分節性機能不全、僧帽弁のび慢性肥厚、mild MRがDoppler echoで見つかった。計算された左心室ejection fractionは５２%であり、軽度心不全がある。食塩水が経静脈的に投与されたが、安静時、バルサルバテスト時ともに、右心房、右心室には濃い混濁化が見られたが左心房、左心室には見られなかった。造影では心臓内右左シャントは見られなかった。 fig-1 
fig-2 
fig-3 
fig-4 
fig-5 
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