NEJM勉強会2003 第2回03/01/29 実施 Aプリント 担当: 渡辺 広祐 (kwatanabe-tky@umin.ac.jp)
Case 21-2002: A 21-Year-Old Man with Arthritis during Treatment for Hyperthyroidism
(Volume 347(2): 122-130)
───甲状腺機能亢進症の治療中に関節炎を呈した21歳男性───

[患者] 21歳男性
[主訴] 関節炎、下肢潰瘍
[現病歴] 入院の15ヶ月前まで患者は健康だった。15ヶ月前、故郷のインドネシアに滞在中、下痢と発熱が生じて腸チフスと診断されたが(Widal反応陽性)、抗生物質投与にて症状消失した。その数週間後、移動性の多関節痛が出現したが、1・2ヶ月で症状は軽快していった。
  入院の13ヶ月前、患者は当院のリウマチ外来を受診し、左第3指PIP関節と右肘関節の腫脹を認め、シプロフロキサンとイブプロフェン投与開始された。2日後、皮疹出現したためシプロフロキサンはoffとしたが、イブプロフェンにより痛みはかなり軽快した。
  その3週間後の外来受診時には、痛みはかなり改善したものの、エビや魚を食べたときに「アレルギー反応」が起こり、手・前腕・上腕の腫脹、肘周辺の軽度痛みを伴う蕁麻疹(そう痒感は無い)が出現した事が3回あったという。診察上は活動性の滑膜炎を認めず、患者はアレルギー科に紹介されたが、受診しなかった。
  入院の9ヶ月前の外来受診時は、関節症状無く、ただアレルギー症状が若干認められるだけとの事だった。診察上、皮疹や滑膜炎を認めなかった。
  入院の7ヶ月前、関節炎が再発して、数日間続いた。その1ヶ月後には、心外膜炎を疑われてインドメタシン投与を受けた。
  入院の5ヶ月前、関節炎が再び生じたが、NSAID投与に良く反応した。
  入院の4ヶ月前の外来受診時は、甲状腺症状や関節症状を認めず、軽度の喘息を認めた。診察上、皮疹と眼の異常を認めず、甲状腺の重量は45gと計算され、甲状腺の結節性病変を認めず、肺野にwheezeを聴取した。関節の診察では異常を認めなかった。この時の検査でp-ANCAが陽性で、抗MPO抗体価は8540Uだった。
  入院の8週間前の外来受診時は、卵黄、卵白、魚、カニ、エビ、豚肉にたいするアレルギー検査の結果が中程度陽性だった。患者はエビなどを食べたあとに蕁麻疹と関節痛が出現し、また重い荷物を持っていると全身の筋肉痛が生じると訴えた。診察上は特に異常を認めなかった。
  入院の11日前、右足背の5cm×5cmの浅い潰瘍が数週間前から生じたと訴えて外来受診した。その後、左足背に有痛性の小水疱が出現し、中に透明の液体を含んでいた。この液体は、S.aureusが培養で陽性、抗酸菌は塗抹陰性、真菌培養陰性だった。
  入院の2日前、下肢の二つの病変から少量の出血があり、その翌日には右足の病変の近位部に、血液で満たされ圧痛を伴う水疱が新たに出現した。セファロスポリンが処方され、入院の当日には病変の切開ドレナージが行われた。下肢の腫脹と痛みが強かったため患者は入院となった。
[既往歴] 甲状腺機能亢進症(9年前発症しプロピルチオウラシル400mg/day投与開始。以後投与量は漸減し、現在50mg/dayにて、症状・甲状腺機能ともに良好にコントロールされている)
[家族歴] 母方祖母:甲状腺機能亢進症、父方祖父:甲状腺機能亢進症、叔母:"リウマチ"(詳細不明)
[生活歴] 喫煙30本/day、飲酒(−)、動物・昆虫接触歴(−)、インドネシアの郊外や森林地区には行った事はない
[入院時現症] <skin> rash(-), Raynaud's phenomenon(-)
<head and neck> thyroid gland : not enlarged, not nodular
<lymph node> not palpable
<chest> heart : faint systolic murmur was present  lung : normal vesicular sound, no rales
<abdomen> n.p.
<extremity> 右足背に3×3cmの潰瘍を認め、軽度の紅斑と硬結を伴い、膿や壊死や圧痛を伴わない。左足は足首まで紅斑を伴い、1×1cmの潰瘍と、切開ドレナージされた3×3cmの出血性の水疱を認める。水疱の境界は明瞭で、その周辺部は圧痛と浮腫を伴っているが膿や壊死は認めない。
<neurological examination> n.p. <rectal examination> n.p. <articular examination> n.p.
[入院時検査所見]
ラボデータは以下のTable参照。Chest XP正常、左足のXPで軟部組織の欠損を認めるが、骨の異常は認めず。便潜血(−)
 
ある診断的手技が試行された。