一般社団法人日本公衆衛生看護学会

研究なう

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広報委員会

配信例(研究なう25号 2017年7月配信)

—保健師活動へのヒントー

☆看護師求人でソーシャルメディアを使ってみると?
世界のソーシャルメディア利用者は増え続けており、フェイスブックを使う人は一日に19億人、リンクドイン(LinkedIn)の利用登録者は4億人を超えています(2016年時点)。最近では、利用者が多いこと、企業がページを立ち上げるコストが低いこと、積極的に求職活動をしていない人にも届くなどの理由から、ソーシャルメディアを使った求人活動に注目が集まっています。看護師不足は世界共通の問題であり、この研究ではベルギーで看護学生とすでに勤務している看護師を対象に、病院のフェイスブックとリンクドインのページが勤務先候補としての評価に良い影響を与えたかどうかを調べました。メールで参加を呼びかけた対象者を無作為に、(1)病院の求人広告だけを読む、(2)求人広告を読んでから同病院のフェイスブックページを見る、(3)求人広告を読んでから同病院のリンクドインのページを見る、の3つに分けてアンケート調査を行いました。勤め先としての同病院の「ブランド」を「効用的」な部分(職場の雰囲気、昇進の可能性、ワークライフバランスなど)と、象徴的な部分(病院全体の能力の高さ、先進性、誠実さ)の二つに分けて影響を見たところ、双方でソーシャル・メディアのプラス効果が見られました(統計的に有意な差があった)。また、ソーシャル・メディアページの文体も重要で、親しみを感じさせる温かい文章だと感じるかどうかが、ソーシャル・メディア効果に影響を与えていることがわかりました。

Carpentier, M., Van Hoye, G., Stockman, S., Schollaert, E., Van Theemsche, B., & Jacobs, G. (2017). Recruiting nurses through social media: Effects on employer brand and attractiveness. Journal of Advanced Nursing. doi: 10.1111/jan.13336
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jan.13336/abstract

☆米国の保健師活動の効果を検証
米国公衆衛生協会(APHA)の公衆衛生看護部門は1996年に、「公衆衛生看護は看護学、社会科学、公衆衛生学による知識を用いて、集団の健康を増進し守る実践を指す」と定義しています。このレビュー論文では1990年から2010年までの20年間に米国で行われた保健師による健康のための介入とその効果について報告した論文計64点を検討しました。研究の対象になった介入のほとんど(74.5%)は対象者の自宅で行われ、対象となった人口グループはハイリスクの母子、続いてハイリスクの大人と子どもなどでした。健康に良い影響をもたらすための仕組みとしては母子を対象とした教育・行動変化(67.2%)が最も多く、続いて、慢性疾患をもつ大人・子どもの行動変化(21.9%)、スクリーニング(6.3%)、予防(4.7%)となっています。介入の結果を生理的学的なもの(コレステロール値、体重、血圧、出生体重、流産など)、行動に関するもの(食事、禁煙、減煙、掃除、親子関係、母乳育児、健康的な生活、薬物使用、雇用、病気の自己管理など)ほか全部で5つのカテゴリーで見たところ、結果を測定した研究のうち、生理学的なものでは48%、行動に関するものでは約6割で統計的に有意な改善が見られました。効果を計る研究のデザインとして最も多かったのはランダム化比較試験(RCT)でした。

Swider, S. M., Levin, P. F., & Reising, V. (2017). Evidence of Public Health Nursing Effectiveness: A Realist Review. Public Health Nursing. doi: 10.1111/phn.12320
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/phn.12320/full

☆高齢者とそうでない人で異なる、交通事故による負傷のパターン
歩行中の高齢者が交通事故に遭うのは自宅付近が多いと一般的には思われていますが、道路の状況や車の速度などの環境要因がどのように関係するかについて詳しいことはわかっていません。この論文では福岡県久留米市で2002年から2008年までに救急車が出動した事故のうち、負傷したのが歩行者だったケース(計545人、18歳未満と事故現場で死亡を除く)を対象に、負傷者の年齢と事故の状況などの関係を検証しました。病院へ搬送後、入院した場合を「重傷」とすると、重傷者の割合はケガをした人のうち、高齢者(65歳以上)で約3分の1だったのに対し、18-64歳では9.8%でした。怪我の程度にかかわらず事故にあった時間は、65歳未満の場合は4分の1が夜8時から深夜12時までだったのに対し、高齢者の事故は4割が午前8時から午後4時に起こっており、生活時間帯の違いを示唆しています。多変量解析の結果、高齢者の重傷事故は(1)自宅からの距離とは関係がない、(2)社会経済的な状況が良い地区ほど事故が起こりやすい、(3)幅が5.5メートルを超える広い道路での事故が多い、ことがわかりました。(2)については生活に余裕のある高齢者は自立しており、外出が多いため、(3)は広い道路では車の走行速度が速いためではないかと分析しています。

Nagata, T., Takamori, A., Berg, H. Y., & Hasselberg, M. (2012). Comparing the impact of socio-demographic factors associated with traffic injury among older road users and the general population in Japan. BMC Public Health, 12, 887.
https://bmcpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2458-12-887 オープンアクセス

☆子どもと青少年のヘルスリテラシー研究、多様な定義とモデル
子どもから青年期にかけては心身の発達だけでなく、健康行動や習慣が確立される時期でもあり、この時に正しい健康知識や習慣を身につけることはその後の健康を大きく左右すると考えられています。健康行動の研究ではヘルスリテラシーが注目を集めていますが、これまで子どもに関しては、親のヘルスリテラシーが子どもの健康にどう影響するかに着目したものが主流でした。このレビュー論文では、18歳未満の子ども・青少年のヘルスリテラシーについて取り上げた論文30点(英語とドイツ語)の内容を検討しました。この中でヘルスリテラシーの定義は計12あり、対象としては12歳未満、13-18歳、3-18歳など、年齢を特定したものがいくつかあり、学校保健関係者との話し合いを通じて開発したものも1点ありました。リテラシーの内容については、健康情報にアクセスして応用する力に重点が置かれており、リテラシーの目的(リテラシーがある場合に期待される効果)としては、健康について適切な判断をする、理解した上で選択する、自らの健康に関する環境を管理する、生活の質を維持・向上させる、健康を維持・増進する、健康リスクを減らす、などがあげられています。

Broder, J., Okan, O., Bauer, U., Bruland, D., Schlupp, S., Bollweg, T. M., . . . Pinheiro, P. (2017). Health literacy in childhood and youth: a systematic review of definitions and models. BMC Public Health, 17(1), 361. doi: 10.1186/s12889-017-4267-y
https://bmcpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12889-017-4267-y オープンアクセス

☆知的障害持つ子、誕生からの1年を支えるカギとなる情報は?
知的障害を持つ赤ちゃんが誕生した場合、親にどう伝えるかなどについての研究は多くありますが、その後の育児については、医療従事者が親をどう支援すればいいかはよく知られていません。オーストラリアで行われたこの研究ではダウン症、脳性マヒなどの子を持つ親11組にインタビューを行い、子どもの生後1年までにどのような情報が必要と感じたかを探りました。同じ研究者らによる昨年の論文では、親が必要とするサポートは感情面、情報、他の親とのつながりの3つと報告しており、今回はこのうち情報サポートについて詳しく分析しています(昨年の論文については「研究なう」2016年9月号ですでにお知らせしています。)親たちが必要とする情報は大きく分類すると(1)診断を受けた障害について、(2)子どもの具体的なニーズにあったケアについて、(3)利用可能な支援やサービスについての3種類でした。こうした情報を自分で探そうとすると「一か所ですべて揃うということはなく、見つけるのに苦労した」、「(インターネットの)検索エンジンに頼って、間違った情報にたどり着いてしまった」といった意見がありました。親と接する機会の多い看護師・助産師がこうしたニーズを理解した上で、情報提供していくことが重要と結論づけています。

Douglas, T., Redley, B., & Ottmann, G. (2017). The need to know: The information needs of parents of infants with an intellectual disability-a qualitative study. Journal of Advanced Nursing. doi: 10.1111/jan.13321
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jan.13321/abstract

2016年の論文は下記。
Douglas, T., Redley, B., & Ottmann, G. (2016). The first year: the support needs of parents caring for a child with an intellectual disability. Journal of Advanced Nursing, 1–12. doi:10.1111/jan.13056
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jan.13056/full

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