第15回日本臨床工学会 一般演題抄録集 2005年5月21日(土)〜22日(日)

001

当院における透析液清浄化の取り組み

002

各種洗浄消毒剤による末端透析液配管におけるバイオフィルムの除去効果

砂川市立病院 臨床工学科

足達 勇1、中島 孝治1、三浦 良一1、中鉢 純1、佐々木 勇人1

みはま病院1、東京慈恵会医科大学付属青戸病院 血液浄化部2

土屋 正二1、山本 淳1、武田 稔男1、内野 順司1、村上 康一1、坂井 健彦1、河野 孝史1、吉田 豊彦1、重松 隆2

【はじめに】現在、透析液清浄化の指標としてET活性値を用いているが、透析液ラインに細菌が存在するとバイオフィルム等の形成からET活性値の上昇が懸念される。そこで当院では、透析液ラインに実際にどの程度の細菌が存在するか培養を行った。その結果、多数の細菌が検出され、透析液清浄化の必要性を改めて知る事となった。対策として、当院ではRO水ラインに12〜13ppmの次亜塩素酸Na封入による定期的な消毒を行い、RO水及び透析液中の細菌数低減を図り得たので報告する。【方法】消毒は週一回、ROタンクから個人用透析装置、B液粉末溶解装置、多人数用透析液供給装置までのラインを12〜13ppmの次亜塩素酸Naで1時間封入した後で水洗した。細菌培養は消毒実施前の状態と消毒開始から8週間後を比較した。R2A培地を用いて、定量培養とメンブレンフィルター法(以下MF法)で行い、試料採取場所はROタンクと供給装置貯留タンクから行った。【結果】消毒実施前、Burkholderia picketiiが定量培養においてはROタンクで2cfu/ml、供給装置貯留タンクで15cfu/ml、MF法においてはROタンクで5cfu/500ml、供給装置貯留タンクで約100cfu/500ml検出された。消毒開始から8週間後、Pseudomonas aeruginosaをMF法において供給装置貯留タンクから3cfu/500ml検出した以外は検出されなかった。【考察】結果より、RO水ラインの汚染はそれ以降のライン汚染にも影響を及ぼしていると考えられ、このラインの管理は極めて重要である事がわかった。しかし手動で行うには、安全面、時間、手間の問題で医療スタッフに負担がかかるという欠点もわかった。【結語】透析液清浄化にRO水ラインの消毒は有効である。今後は手動では手技が煩雑という点から、自動消毒機能付のRO装置への更新をする事が望ましいと思われる。また、清浄化の指標として、ET活性値に加えて定期的な細菌数の調査をしていく事を提唱したい。

【目的】各種洗浄消毒剤によるバイオフィルムの除去効果について比較した。

【対象】6年7ヶ月使用した末端透析液配管(テフロン管)。洗浄パターンは1%酢酸による酸洗浄と100ppm次亜塩素酸ナトリウムによる封入消毒を毎透析後に実施。

【方法】テフロン管の断片を、RO水(コントロール)(1)ヘモクリーン50倍希釈液(2)100ppm次亜塩素酸ナトリウム(3)50ppm弱電解酸性水(4)1%酢酸(5)0.4%ノンスケールCL(6)アムテック100倍希釈液の各液が入ったスピッツに24時間封入した後、テフロン管の表面をマイクロスコープで撮影し比較した。

【結果】ヘモクリーン、アムテック、弱電解酸性水、ノンスケールCLで次亜塩素酸ナトリウム、酢酸、に比し、バイオフィルム様物質の除去効果を認めた。

【考察】価格、機器及び配管内への残留性、環境・人体への影響、取り扱いについて各洗浄消毒剤を比較すると、安価で容易に使用可能な洗浄消毒剤である弱電解酸性水、ノンスケールCLは、バイオフィルム形成の温床となりえる炭酸塩の析出を防ぐことにより、細菌の付着と繁殖を防止し、エンドトキシンの低減化に寄与していると考えられた。

【結論】ヘモクリーン、アムテック、弱電解酸性水、ノンスケールCLでバイオフィルム様物質の除去効果を認めた。

003

透析液清浄化におけるHEMOCLEANの有効性の検討

004

過酢酸系除菌剤MINNCARERによる透析液中の細菌への効果

五輪橋内科病院 臨床工学科1、五輪橋内科病院 循環器内科2、札幌医科大学 第二内科3

齋藤 孝明1、浅野 順義1、木村 篤夫1、小林 尚子2、矢野 俊之2、小早川 洋2、中川 基哉2、高田 正玄2、買手 順一3、浦 信行3、島本 和明3

埼玉医科大学 血液浄化部1、医療法人蒼龍会 寄居本町クリニック2、埼玉医科大学 腎臓内科3

塚本 功1、村杉 浩1、大浜 和也1、山下 芳久1、島田 佳博2、菅原 壮一3、鈴木 洋通3

【背景と目的】HPMや内部濾過促進型ダイアライザの普及にともない、透析液の清浄化や水質管理が重要視されている。最近では透析液に混入した細菌による生体への影響も懸念されている。今回我々は透析液ラインの洗浄剤としてHEMOCLEANを使用し、従来法(次亜塩素酸ナトリウムと酢酸の併用)とのendotoxin(ET)値、細菌数を比較、検討した。

【方法】従来法およびHEMOCLEAN使用期間において、週1回<原水、軟水化装置後、RO装置後、供給装置前、A原液、B原液、供給装置後、精密濾過フィルタ(1st)後、患者監視装置後、精密濾過フィルタ(2nd)後、カプラ直前>の各ポイントにおいてET値と細菌数を測定した。ET値測定にはエンドスペシー法(Wellreader SK603)、細菌数測定は標準寒天培地、R2A寒天培地を使用し培養時間はそれぞれ48時間、168時間とした。

【結果】従来法でRO装置後、供給装置前、患者監視装置後においてETが、供給装置後及び精密濾過フィルタ1st後において細菌が検出された。また、カプラ直前ではET値が測定感度以下であるにも関らず細菌を検出した。HEMOCLEAN変更後は供給装置後の透析液ラインのET値は全て測定感度以下であり、細菌の検出も認めなかった。

【考察・結語】HEMOCLEANによる透析液ラインの洗浄は、ET値を測定感度以下に保つことができ細菌の検出もなく、透析液の清浄化に有効であった。また、ET値が測定感度以下でも透析液の汚染要因である細菌が検出されたことから、清浄化の指標にはET値だけではなく細菌数の測定も有効であると考える。今後はRO装置内の洗浄等を含め更に透析液の清浄化に取り組んでいきたい。

【目的】透析液清浄化の指標としてエンドトキシン(ET)値を用いることは一般的となり、多くの低減化対策および臨床効果について報告がされている。近年生菌数測定を行い、清浄化に努める施設も増えつつあるが研究報告は少ない。そこで我々は洗浄消毒剤を変更しETおよび細菌数の双方を測定することで、透析液清浄化の新たな指標および洗浄消毒方法として透析液中細菌に対する過酢酸系除菌剤MINNCARE(以下ミンケア)の効果について検討した。【方法】従来3年間行ってきた次亜塩素酸Naおよび酢酸の併用方法からミンケアに変更し、変更前後でET値及び生菌数の採取ポイントを原水、ROタンク出口、透析液供給装置、コンソール(供給装置側・末端)とした。またET値はトキシノメーターミニ(和光純薬)を用い、生菌数はR2A寒天培地に検体1ml塗付してクールインキュベータにて25℃・7日間培養し測定を行った。【結果】透析液供給装置において消毒剤変更前の生菌数が100〜200CFU/ml程度であったが、変更後1週間で4CFU/mlまで減少した。ETカットフィルター通過後のコンソールにおいては変更後の生菌数0CFU/ml、ET値は平均0.77±0.14EU/Lであり、3ヶ月および6ヶ月後においても変化を認められず安定して推移した。【結語】ET値および生菌数の双方を測定することは透析液清浄化の水質評価法の一手段として効果的であると考えられる。また透析液中の生菌数をコントロール可能な洗浄消毒薬として過酢酸系除菌剤ミンケアは有効であると思われる。

005

透析液の細菌検査用培地が細菌数に与える影響と透析液のクリーン化対策との関連性

006

オンラインHDFにおける個別洗浄の有用性

JA長野厚生連 篠ノ井総合病院1、同腎臓内科2、同検査科3

高橋 延之1、塩澤 勉1、小林 正宏1、田村 克彦2、長澤 正樹2、田中 美弥子3、児玉 和子3

特定医療法人 北楡会 札幌北楡病院 臨床工学技士科

山野下 賢1、山口 千秋1、松原 憲幸1、安藤 誠1、月安 啓一郎1、宮岸 勇樹1、富岡 佑介1、那須野 優美1、四十万 千枝1、住田 知規1、鶴谷 敬之1、清信 一貴1、小塚 麻紀1、土濃塚 広樹1

【目的】エンドトキシン(ET)測定法の確立により、超純化透析液の供給が可能となった。しかし、ETは近年の測定法であり、従来の透析液管理は細菌検査のみで行っていた。当院では、ウシの心臓抽出液を組成とした低栄養培地であるハートインフュージョン寒天培地(HI)による透析液の細菌培養検査を、開設から30数年間、毎月行ってきた。HIの培養条件では37℃で24〜72時間で判定を行っていたが、従属栄養細菌である水棲菌の検出には更に低栄養のR2A培地で長時間常温培養する必要が言われるようになった。今回、透析液組成の変化、RO装置の導入、新築移転によるシステムの変更等を経験し、変更前後の細菌数の変化と、培地による検出細菌の違いを、ET検査と合わせて検討したので報告する。 【方法】酢酸透析から重炭酸透析への変更、装置の消毒方法、RO装置の導入などの各イベント前後の細菌数の変化と、培養の条件による変化を、retorospectiveに検証した。また、当院のPVDFループ配管2系統の始点、中間、末端の各コンソールのカプラー前に、無菌操作可能な日機装社製サンプリングポートを設置し、それぞれのカプラー前後の透析液を採液した。測定培地は、1)HI(37℃、7日間)、2)R2A(20℃, 7日間)、3)ET定量検査(和光純薬)を使用し、採液方法、配管、消毒薬、クリーンカプラー、カプラー内エタノール消毒、ETCF等の有無の違いによる細菌数とETとの関連性を比較した。【結果】移転などのイベント前後では細菌数に変動が見られた。また、培養温度・時間の測定条件の変更では、HIで検出されなかった細菌も、R2Aで検出する等の変化が見られた。各細菌検出ポイントでのET値との関連性については認められなかった。【結論】細菌の検出とET値との関連性は低いと考えられ、透析液のクリーン化はET測定と共に、細菌培養をも含めたトータル的な水質管理が重要であると言える。

【はじめに】当院では週6日、8時〜23時の間で透析を行い、その後次亜塩素酸ナトリウム及び土曜は酢酸を併用し消毒を実施している。様々な治療を行っている中で特に、HPM膜を使用したオンラインHDFコンソールの付着物は、稼働時間が長いこともあり十分に除去されていない。消毒濃度を高く設定しても、コンソールの早期劣化や配管の腐食等が懸念される。そこで定期的にオンラインHDFコンソールを対象とした個別洗浄を行う必要性が生じた。今回我々は付着物の除去に個別洗浄が有用であるかを検討した。【対象及び方法】セントラル配管より供給される透析液を使用したオンラインHDFコンソール4台を対象とした。1台は通常の定期消毒のみとし、3台は定期消毒+個別洗浄とした。消毒薬はエンドトキシンカットフィルタ(ETCF)に対応しているエバクリーン−500、ダイラケミNY、ECO−200を使用した。コンソール別に消毒薬を変更し、付着物の変化(目視)、残留塩素、ET等を測定した。ETCFの薬剤による劣化等を考慮し、廃液流量も比較検討した。評価は個別洗浄前後および週末透析日に行った。【結果】個別洗浄を行った3台は定期消毒のみのコンソールに比べ、チューブ類への付着物を除去できていた。廃液流量に差異は見られなかった。ET値は4台とも1EU/L以下を維持していた。【考察】真菌、細菌等の免疫活性化物質の存在を考慮すると、より多くの付着物を除去する個別洗浄は、治療の安全性を高めていると考える。欠点として個別洗浄は作業性が悪く治療台数の増加には対応できない。現在は消毒薬として多くのものが市販され、施設の状況に合わせた消毒薬、消毒方法の選択肢が広がってきている。今後は多人数透析液供給装置の洗浄消毒剤の変更を考慮する必要があるが、消毒システムが確立されるまでの間、治療の安全を保つ手段の一つとして、個別洗浄の併用を行うことは有用であると考える。

007

日機装社製透析用監視装置DCS-27の安全性の検討〜エラー発生面から〜

008

日機装社製ブラッドボリューム(BV)計を用いて作成した除水プログラムとBV警報併用の臨床評価

東京女子医科大学 臨床工学部1、東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 血液浄化療法科2

宮尾 眞輝1、鈴木 聡1、金子 岩和1、峰島 三千男1、秋葉 隆2

つくばセントラル病院 ME室

高橋 圭子1、柏倉 蓉子1、市橋 和明1、小川 亨1、浜田 あゆみ1、袴塚 祐司1、並木 暢也1、中山 裕一1、三上 孝宏1

【目的】透析装置には様々な機能が追加されるようになってきたが、操作が複雑になり、ヒューマンエラーを誘発させる要因になっている。治療条件の設定や変更など、装置への操作は人が行う行為であるが、装置特性により誘発されるエラーを未然に防止することが可能である。今回、装置の違いによるエラー発生率の低減について検討した。【方法】平成14年3月から平成16年12月までの報告で、装置特性が関係すると考えられた103件を対象にパレート分析を行った。また、当透析室に新たに設置された日機装社製透析用監視装置DCS-27を使用することにより、報告されたエラーがどれだけ低減可能かを定量評価した。【結果】パレート分析よりスイッチ入れ忘れが全体の約半数を占めていた。また、DCS-27の装置特性によりエラー発生を69%低減させることが可能となった。【考察】ヒューマンエラーをゼロにすることは非常に困難である。しかし、操作者への依存度が高い装置操作では、人への対策立案ではなく、操作性や操作方法など装置への対策立案が重要であると思われる。

【目的】循環血液量をモニタしながら血液透析を行う事により、血液透析中の著しい血圧低下を予防することが最近では可能である。日機装社製BV計を使用して得たデータを基に作成した除水プログラムの有用性について検討したので報告する。【対象及び方法】対象は血液透析中の血圧低下による透析困難症をきたす維持透析患者5名(平均年齢54.6歳、平均透析歴3年5ヶ月)とした。除水プログラム作成に先立って均一除水透析を3回行い、BVデータと血圧データを症例毎に得た。それを基に症例ごとの除水プログラムを作成し、臨床使用した。具体的にはBV曲線の近似式を求め、それを基に各時間帯の除水量を決定した。但し、血圧低下しやすい時間帯が分かっている場合はあらかじめその時間帯の除水量は少なく設定した。又、血圧低下ポイントのΔBVをBV警報点2とし、それに達したら自動で除水速度が0となり、BV警報点2を上回って5分経過したら除水プログラムへ手動で戻した。BV注意警報点1はBV警報点2への到達予防として、BV警報点2の1/2の値とし、下肢挙上ポイントとした。【結果】除水プログラムとBV警報を用いることにより、3症例において著しい血圧低下の予防が可能となり、3症例中1症例は血液透析終了時離床困難の頻度を減少できた。1症例は血圧低下を伴わない頭痛や背部痛のために除水を停止し、除水プログラムを活用できなかった。【まとめ及び考察】日機装社製BV計を有用に使用するには、各症例に合った除水プログラムの作成とBV警報値の設定が重要であった。又、除水プログラムとの連動の必要性が感じられた。

009

透析終了後採血時の血流量の検討−正確なKt/Vを算出するために−

010

旭化成メディカル社製PS膜APS-25SAの性能評価

公立学校共済組合 北陸中央病院 臨床工学室1、同 透析室2、同 第一内科医長3

西手 芳明1、上山 信2、蟹谷 美香2、池田 由香2、小泉 万里子2、島田 優美恵2、前田 真紀2、坂下 繁2、小野江 為人3

仁真会 白鷺病院 臨床工学科1、仁真会 白鷺病院 研究室2、仁真会 白鷺病院 診療部3、仁真会 白鷺南クリニック 診療部4

松岡 秀和1、高山 明希1、高田 茂和1、南 伸治1、平田 純生2、加藤 禎一4、山川 智之3

【目的】透析終了後採血は血流量の違いによって、再循環(AR)の多い患者ではBUN値に差違が出現する事がある。それにより、算出されたKt/Vを過大評価する症例もあると考えられるため、透析終了後採血時の血流量の変更によるKt/Vの変化を検討したので報告する。

【方法】血流量が充分な患者51名を対象に、透析終了直後(透析時血流量150〜250ml/minにて)および50ml/minに変更して1分後にそれぞれ2回採血し、算出した透析前後BUN比(R)やKt/Vを比較検討した。

【結果】R±SDは0.29±0.08、0.30±0.08、Kt/V±SDは1.57±0.32、1.52±0.31で大きな変化はなかった。6名の患者において直後と血流量変更後の差が比較的大きく、これらの症例はARが多いものと考えられたがR±SDは0.29±0.03、0.32±0.03、Kt/V±SDは1.50±0.10、1.37±0.08で有意差は認めなかった。

全症例で50ml/minに血流量変更後採血の方がR、BUN値は高値であった。

【考察】透析終了後採血は血流量を50ml/minまで下げ1分経過後採血を行うと、ARの影響を受けにくいと考えられた。大部分の患者では差は見られなかったが、一部ARが多いと思われる患者では、直後より血流量変更後採血の方がBUN値が比較的高く、直後採血より得られたKt/Vは正確でない可能性がある。

【結語】透析終了直後と血流量を50ml/minに変更1分後のBUN値を比較することによりARの多いと思われる症例を発見することができた。

これらの症例では終了後採血の工夫や穿刺部位の検討が必要と考えられた。

透析終了後採血の手技・手順の統一化を図る。(マニュアルの作成)

【目的】APS-25SAの溶質除去性能、生体適合性について、FB-250Fと比較検討する。また、血流量増加による溶質除去性能に対する効率も検討する。

【方法】維持透析患者8名を対象とし、FB-250F、APS-25SAをクロスオーバーで使用し、クリアランス、除去率、Alb漏出量、生体適合性を血流量200ml/minで比較検討した。APS-25SAは、血流量250ml/min時におけるクリアランス及び除去率、Alb漏出量について比較した。

【結果】APS-SAは、FB-Fに比し小分子量物質のクリアランス、除去率で有意差がなく、β2-MGで高値を示した(p<0.05)。透析中のWBC、PLT、C3aの経時的変化は、APS-SAがFB-Fに比して低めに抑えられた。Alb漏出量は、FB-250Fで1.57±0.45g、APS-SAで0.97±0.17gと有意に低値を示した(p<0.01)。QB250ml/minにおける透析では、QB200ml/minに対してクリアランス、除去率でα1-MGを除く項目で有意に高値を示し(各々p<0.05)、Alb漏出量は、0.85±0.26gと有意に低値を示した(p<0.05)。

【結論】APS-SAは、FB-Fに比し小分子量物質のクリアランス・除去率がほぼ同等で、低分子蛋白の除去性能に優れており、Alb損失量は少なかった。また、血流量増加による小分子量物質・低分子蛋白におけるクリアランス・除去率への効果が期待できる。

011

従来法による大動脈脈波速度の血圧補正の意義

−長期予後からの検討−

012

人工炭酸泉作成装置の試作

みはま病院1、東京慈恵医科大学付属青戸病院2、東邦大学医学部付属佐倉病院3

内野 順司1、武田 稔男1、村上 康一1、坂井 健彦1、河野 孝史1、重松 隆2、吉田 豊彦1、白井 厚治3

医療法人あかね会 中島土谷クリニック1、医療法人あかね会 土谷総合病院 人工臓器部2

中尾 司1、宮本 照彦1、谷川 智彦1、川西 秀樹2、森石 みさき1

【背景】大動脈脈波速度(PWV)は、非侵襲的に動脈硬化度を測定可能で、その有用性が数多く報告されている。本邦でも拡張期血圧で補正した長谷川原法でのPWVが測定されてきた。しかし、欧米では補正法そのものを疑問視する意見もあり、血圧補正を行なわないPWVを用いてきた。両方法は、現在まで長期的臨床評価は行なわれていない。そこで今回、両方法を用いた場合での長期予後からの検討を行なった。

【目的】従来のPWV=(AF×1.3)/(T+TC)式(AF:大動脈弁口〜大腿動脈距離,1.3:定数,T:頚動脈波と股動脈波立ち上がり時間差,Tc:大動脈弁口部〜頚動脈伝播時間)は、血圧で変動するが、その非補正値と補正値の有用性を長期予後から検討する。

【対象】87年に長谷川法PWV(PWV-200)を測定した107名(F/M:49/58)、年齢47.8±10.7歳、透析年数7.2±4.1の透析患者。

【方法】PWV(m/sec)非補正値、長谷川法での補正値それぞれ、7.6以下を低値群、7.7〜8.3を中間群、 8.4以上を高値群に分け、死因を心筋梗塞、脳血管障害に限定し、低・高値群の年齢をマッチし、それぞれ17年生存率を比較した。生存率はKaplan Meier法、有意差検定Log-rank testを用い、統計学的有意差をp<0.05とした。

【結果】生存率は、非補正の低値群、高値群で0.879、0.601と有意差が無く、補正した場合0.938、0.644と有意差を認めた。

【結論】従来のPWVは血圧補正を行うことで、長期予後への意義が生じると考えられた。

【緒言】糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者の増加に伴い、血行改善効果があると言われる人工炭酸泉が注目を集めている。今回、廃棄コンソール部品とダイアライザーを用い、温度調整可能で安価に人工炭酸泉を作成する装置を試作したので報告する。【方法】水10lを加温しながらダイアライザー透析液側に700ml/minで循環させ、液化炭酸ガスボンベよりダイアライザー血液側に200 ml/min及び300 ml/minにてCO2を送吹して溶解させた。作製した人工炭酸泉CO2濃度は、血液ガス分析装置ABL700にてCO2分圧を測定し換算式を用いて算出した。ダイアライザーは、東レTS2.1UL(TS)、日機装FLX-15GW(FLX)、二プロFB190UH(FB)を使用しCO2濃度を各ダイアライザー間で比較・検討した。【結果】20分後の溶存CO2濃度は、CO2流量200ml/minで、TS:497.0±49.8ppm、FB:555.8±43.9ppm 、FLX:616.0±21.4ppmであり、CO2 流量300ml/minでは、TS:680.7±96.5ppm、FB:772.0±40.3ppm 、FLX:883.3±106.8ppmであった。CO2流量200ml/minのTSとFLXの間に有意差を認めたが、その他では有意差を認めなかった。統計学的な差は無かったが、最も膜面積の小さいFLXにおいて、水中に効率よくCO2を溶解できる傾向にあり、溶解率が膜の素材や構造に依存する可能性が考えられた。また、反復使用しても膜破損などの問題は認めなかった。さらに、ヒーターによって温度調整ができ、使用時までの保温など容易な温度管理が可能であった。【結語】廃棄になったコンソールの部品を用い、ダイアライザーを介してCO2を溶解させることにより、1000ppm程度の高濃度炭酸泉を安価に作成することが可能である。

013

プライミング済みダイアライザ保存期間の検討

014

ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の経験

横浜第一病院 臨床工学部1、横浜第一病院 診療部2

岡本 智之1、新井 京音1、鈴木 安信1、本間 崇1、兵藤 透2、千葉 哲男2

土浦協同病院 臨床工学部 1、同腎臓内科2

関 貴弘1、高野 真史1、倉持 龍彦1、寺田 紀子1、小林 正和1、菅澤 英治1、上野 信一1、藤井 琢磨2、松井 則明2

【目的】透析医療において、安全・感染予防の面から標準的な透析操作等のマニュアルが透析医会から提案されている。これにより安全な血液透析が行えるようになってきている。プライミングにおいては、汚染対策の面から透析開始直前に行うことが望ましいとされている。しかし透析室においては、患者さんの入院・手術・検査等により、透析日の変更が発生することがある。このように当日準備を行っても使用しないことがあり、破棄しなければならない場合がある。今回プライミング後において、安全に使用できる保存期間の検討を行なった。

【方法】ダイアライザは、ウェットタイプ旭化成メディカル社製AM-BC-15F、ドライタイプニプロ社製FB-150Pを使用した。検査項目は、エンドトキシン・細菌学的検査とし、測定項目は、周囲温度・湿度とした。測定間隔は、プライミング直後・3時間後・24時間後・48時間後の血液側・透析液側よりプライミング生理食塩水をサンプリングした。ダイアライザの保存は室温保存とした。

【結果】エンドトキシン測定結果は、すべてにおいて測定限界以下となった。細菌学的検査は、生菌数の培養試験を行ったが、結果は全て陰性となった。

【考察】今回の測定結果より、室温保存においてエンドトキシン、細菌学的検査ともに問題が無く、周囲温度や湿度が今回と同様であれば、48時間までの保存が可能であると考えられた。

【結論】・生理食塩水置換後のダイアライザは、室温で保存可能である。

     ・プライミング済みダイアライザは、48時間まで保存可能である。

【はじめに】抗PF4−ヘパリン複合体抗体(HIT抗体)陽性にてHIT2型と診断された1例を経験したので報告する

【症例】56歳男性、糖尿病性腎症により透析導入となった患者

【既往歴】糖尿病、大腸癌手術、ストーマ造設、眼科レーザー治療

【経過】初回透析時より回路内凝血を頻回に繰り返した。そのため抗凝固剤量をヘパリン4000単位/HDから6000単位/HDと増量したが回路内凝血は改善されなかった。抗凝固剤をヘパリン・アスピリン剤の併用や低分子ヘパリンへ変更しても同様であった。また、透析導入5日目にシャント音が消失し拍動も触知不能となり、血管拡張術・血栓吸引術を施行したが血流再開せず、透析用留置カテーテルを大腿静脈へ留置した。しかし脱血不能によるカテーテル入れ替えを繰り返した。定期血液検査により血小板数の減少を認め、透析回路に白色血栓が見られたため、HIT抗体を調べたところ陽性と判明しHIT2型と診断された。その後抗トロンビン製剤(アルガトロバン)へ変更し安定した透析が可能となった。

【考察】度重なる回路内凝血に対しヘパリン量の増量や、透析用留置カテーテルの凝固防止にヘパリンを充填することは日常的な対応策であり、本症例においても行なった行為である。しかしHIT症例に対しては禁忌であり、重篤な合併症を引き起こさないためには、ヘパリン製剤の使用を断つことが最も効果的である。透析患者におけるHITは、導入から間もない時期に繰り返し起きる回路内凝血や、血小板数の減少等から容易に疑いを持つことができる。透析中のトラブル対応にあたる臨床工学技士・看護師がいち早く疑いを持ち、主治医に報告することで早期診断に貢献できるのではないか。

【結語】臨床工学技士・看護師がHIT早期診断のキーマンと考える。加えてHIT症例に対するメシル酸ナファモスタット、アルガトロバンの早期保険適用が望まれた。

015

自動返血による血液廃棄と患者Ht値の短期における影響について

016

ボタンホール穿刺患者の静脈圧上昇改善の試み

仁友会 北彩都病院 臨床工学科1、同内科2、同泌尿器科3、仁友会 泌尿器科内科クリニック 臨床工学科4

山本 勝仁1、小西 康智4、石川 幸広1、井関 竹男1、小林 武2、石田 裕則3

秋田赤十字病院 臨床工学課1、秋田赤十字病院 内科2

小林 久益1、松田 光喜1、永井 悠1、熊谷 誠1、尾留川 敦1、山岸 剛2

【目的】透析医療において装置の自動化が進み装置による自動返血が可能となってきた。当院において返血時、回路内の血栓等の懸念から動脈側に生食を逆流させない手技のため動脈側穿刺針と一部の血液回路内の血液を残し廃棄されている。今回この廃棄される血液と患者のHt値について検討したので報告する。

【対象・方法】外来維持血液透析患者12名(男性10名、女性2名)年齢49〜79歳(平均年齢59.5歳)透析歴2年7ヶ月〜31年6ヶ月(平均透析歴16年2ヶ月)に対し自動返血機能を追加した監視装置TR−2000MVと専用回路(東レ社製)にて返血を施行した。使用する針により患者を外套針(A群:6名)と翼状針(B群:6名)に分け、自動返血施行前の透析前Ht値、自動返血施行後、1ヶ月後、2ヵ月後の透析前Ht値の変化とEPO投与量について検討した。返血後に残される血液充填量は外套針、翼状針、血液回路でそれぞれ0.5ml、1.5ml、0.8mlである。

【結果】施行前、施行後、1ヵ月後、2ヵ月後のHt値はA群では32.1±4.7%、32.4±4.0%、32.5±3.5%、32.6±3.9%でB群では35.1±2.3%、35.6±2.5%、35.6±1.9%、33.6±3.3%であった。EPO投与量はB群の2名について減量された以外は投与量の変更はなかった。

【考察・結語】透析毎でA群においては1.3ml、B群では2.3mlの血液が残るが自動返血施行後2ヶ月の経過ではB群で若干の低下か見られたが血液喪失による影響は少ないと思われる。使用する穿刺針を充填量の少ない外套針に変更するなど対応するとともに長期の経過を観察していきたい。

【目的】透析患者の穿刺時の疼痛軽減やシャントの合併症予防にボタンホール穿刺が普及してきている。今回、当腎センターにおいてボタンホール穿刺を導入したときから、透析開始30分以内に静脈圧上昇による警報発生が頻回に見られるため、穿刺方法を変更し静脈圧上昇の頻度を比較したので報告する。【対象及び方法】ボタンホール穿刺患者11名(男性4名、女性7名)を対象とした。方法は、静脈側・動脈側の順に穿刺する通常穿刺と、その逆の動脈側・静脈側の順に穿刺する逆穿刺で、それぞれの方法で3回透析を施行し、透析開始後の静脈圧上限警報の有無による比較を行った。【結果】通常穿刺では静脈圧の上昇は15%と高かったが、逆穿刺を施行した方法において3%と静脈圧警報の発生頻度が低い結果となった。【考察】静脈圧上昇の原因については、ボタンホールに挿入する際に血管壁を探りながら穿刺をするため、シャープ針に比べ血液凝固作用が活発になることが一因と考える。実際に静脈圧上昇時に、静脈側留置針内に付着する凝固物を確認している。この凝固物は、穿刺後から透析開始までの血管内留置時間が長いほど発生しやすいと考え、通常穿刺の逆である動脈側・静脈側の順に穿刺した方法ではその留置時間を短縮できるため、静脈圧上昇の抑制に繋がったと考える。【結論】通常穿刺に比べ留置針内の凝固物の発生を軽減させるため、動脈側・静脈側の順に穿刺した方法が、静脈圧上昇を抑えることができた。

017

当院における医療機器管理活動について

018

当院における医療機器中央管理の現状

日本赤十字社 長崎原爆病院 検査部1、日本赤十字社 長崎原爆病院 事務部2

伊東 正二1、副島 武1、小丸 検造1、山口 博司2

横浜総合病院 ハートセンター

池邊 紗織1、上屋敷 繁樹1、田中 太郎1、官野 高明1

当院での臨床工学技士の活動は平成8年より3名の技士で、血液成分採取装置を用いて末梢血幹細胞移植(PBSCT)のための末梢血幹細胞採取(PBSCH、通称:HARVEST)業務を現在まで通算98回行なってきた。医療機器管理活動については平成15年2月より検査部所属の臨床検査技師のまま臨床工学技士としての辞令を受け、院内の医療機器の把握業務から開始した。平成15年7月より輸液ポンプ70台、シリンジポンプ12台の保守点検業務を中心に活動しているが、病院側からは人工呼吸器の保守点検や心臓カテーテル検査の補助業務などへの業務拡大を要望されている。しかし検査業務と兼務のため現状では積極的な活動ができにくい状況にある。また医療機器管理活動を含め臨床工学技士としての将来の業務展望が不明確で、また同等施設での活動内容などの情報の入手が容易でないため、自施設だけの状況でしか対応できない状態である。さらに医療機器に関する分野はかなり広くかつ日進月歩であり、各種の関連情報の収集とその管理などについても苦慮しているのが現状である。医療を取り巻く環境も年々大きく変動しており、今後も容易にスタッフの増員が期待できない現状では、いかにして少人数でも運営可能な効率的医療機器管理活動の方向性(院内管理業務と業者への委託管理との役務分担)を模索中である。当面の目標としては院内での医療機器管理部(仮称)の組織化、医療機器管理に関わる院内各種委員会の設立や参画、情報収集能力の拡充、医療機器管理ソフトの導入、教育活動への参画などを通して院内での臨床工学技士業務の認知や信頼感の醸成などを経ながら今後の活動を展望していく予定である。今回は当院での臨床工学技士の活動を報告し、会員各位からの御助言などを頂ければと考えている。

【背景】最近、大きく取り上げられている様に、医療機器安全に対して、厚生労働省が正規に医療機器管理室の整備事業を開始するなど、医療機器安全管理の必要性について重要視されてきた。当院では、これまで医療機器安全の管理体制があまり充実されてこなかった。その為に、医療機器の修理を経費のかかる業者に依頼したり、病棟間の貸し借りにより、院内の機器の配置状況が把握できていなかったり、また、各部署ごとの医療機器購入の為、各種医療機器の設置状況がアンバランス等の問題点があった。【目的】当院において、医療機器中央管理システムを実施し、その後、システム運用前後での状況変化を調査、比較検討した。【方法】院内の各部署における、すべての医療機器設置状況について一斉調査を行い、MEで中央管理できる物に関しては、2004年10月より医療機器中央管理システムを開始した。次に、中央管理対象である医療機器の使用頻度の高い看護師約100名に対して、システム運用前後での状況変化をアンケート形式で調査した。【結果】アンケートの結果、システム運用前では、医療機器管理がされていなかった事、また、医療機器の修理は79%が業者に依頼していた事、対応が遅くコストもかかる為、業務効率が悪かった事が判明し、システム運用後は、98%の人がMEによる中央管理を必要としており、中央管理により安心して機器を使用できるようになった事、又業者に修理を依頼するより対応が早い事など、良い評価を得ることができた。【まとめ】保守点検をした機器を貸し出すことにより、スタッフの安心感を得ることができた。MEによる機器管理の必要性を実感できた。ME機器の保守管理、修理によるコスト低減、事故発生防止の安全性、部署間での共有化による業務効率の上昇が期待できる。中央管理を行う上で、看護部との連携は非常に重要であり、勉強会を行うなど、今後も看護部とのコミュニケーションを取っていきたい。

019

当院での医療機器中央管理の現状

020

当院の医療機器管理システム 〜6年間の運用を通して〜

ベルランド総合病院 医療機器管理室

山本 桂1、村中 秀樹1、茨田 友香1、玉石 遊子1、高橋 史子1

医療法人社団 新日鐵広畑病院 臨床工学科1、同外科2

金田 新作1、三浦 伸一1、井場 結香1、戸田 幸喜1、福岡 正人2

【はじめに】

当院で医療機器の中央管理を始めて8年が経過した。その間何度も、管理方法をより安全で利便性の高いものへと変更してきた。そこで、現在当院で行っている機器管理について紹介する。

【変更点】

以前は点検の記録を手書きによって管理していた。それらのファイルは別々に存在し、点検内容を記したマニュアルも個々に存在した。今回、記録時間短縮とペーパーレス化するためにパソコンでの管理に変更した。なおファイルの立上げには2次元バーコードを使用し利便性を向上した。

病棟機器点検業務では、貸出機器の一覧をプリントアウトし、紙を用いて手書きでチェックしていたが、その後小型ノートパソコン、現在はPDAを用いて業務を行っている。また、以前は持ち帰った機器の連絡を院内用コードレス電話(PHS)を用いていたが、現在はポケットベルを使用している。

【結果】

パソコンの機能を活用することで、集計機能が充実した。日常点検、定期点検のそれぞれに点検記録簿・マニュアルが存在したところを、パソコンの画面内で記録と同時にマニュアルも参照できるようになった。以前は記入漏れが問題であった定期点検済みのチェック表も、記録ファイルとリンクしているので記入の必要は無くなった。

病棟での点検時に、以前は両手が空くことが無かったが、PDAは小型で軽量であるため、制服のポケットに収めることが出来、点検以外の業務もあわせて行うことができるようになった。

私達は患者様の療養環境の向上にも積極的に取組んでおり、PHSの使用では病棟での静寂を保てない上、患者様との会話の妨げになっていたが、ポケットベルの使用でその様な問題も無くなった。

【今後の改善点】

個々の機器にファイルが存在する為点検内容や、仕様の変更時等に時間がかかる。バーコードを使用しているが、貸出はカードにて行っている。パソコンでの記録では点検者の名前は表示されても自筆ではないという問題点がある。

【目的】当院の臨床工学科は医療機器メンテナンス室・集中治療部・中央手術部(滅菌室を含む)・人工透析科・光学医療診療部・心臓血管造影部に配置され、医療機器管理は各配置部署ごとにバラバラであり、管理体制やローテイションなどを考慮の上で、科内の統一した管理体制を6年間実施したので途中経過を発表する。

【方法】データベースソフトFile Maker社「ファイルメーカーPro5.5」を用いて、MEナンバー・医療機器基本情報・貸出返却・修理など計6個のファイルを使用している。また、サーバーを立ち上げ、院内ネットワークを利用して一元管理をした。

【結果】このシステムを利用することにより、(1)ボタンを押すことで自動入力や選択入力など入力操作が容易になった。(2)タッチパネルとバーコードを利用した貸出返却集中管理の効率がよくなった。(3)点検表を作成することで管理しやすくなった。(4)メンテナンススケジュールにより、点検の漏れがなくなった。(5)点検や修理時のスケジュールが解りやすくなり、また報告書の作成が容易になった。

【まとめ】医療機器管理システムを作成し使用することで一元管理が容易になり、スタッフとの伝達事項等の効率がよくなった。また、今後の科内のローテーションがしやすくなったと考えられる。また、凡用ソフトを利用することによって低コスト・構築が追加可能である。今後はPDAを利用した管理体制にも取り組みたいと考えている。

021

医療機器中央管理における問題点 ―14年経過した今考えるべき事―

022

医療機器の部品管理の実際

旭川赤十字病院 救急部 臨床工学課1、救急部2

奥山 幸典1、太田真也1、貝沼 宏樹1、佐藤 あゆみ1、陶山 真一1、飛島 和幸1、脇田 邦彦1、見田 登1、住田 臣造2

亀田総合病院 ME室

市川 とし子1、鈴木  茂樹1、近藤  敏哉1、森  信洋1、赤穂  靖貴1、岡田 隆1、八反丸 善裕1、高倉  照彦1

 当院においては平成3年より人工呼吸器をはじめ中央機器管理業務を行ってきた。中央管理開始当初は管理機種、台数共にそれほど多くはなく、3名という少ない人数で臨床業務の合間をみて、各病棟巡回、機器の貸出業務等を行っていただけのものであったが、中央管理の利便性などから年々管理機種、台数が増え、現在に至っては日常の臨床業務に加え、58機種、総計825台の機器の管理を7名の技士で行っている状況にある。 しかし同時にこの経緯の中では薬事法改正並びに医療法施行規則改正が行われ、また医療機器絡みの事故と共に訴訟件数も増加するなど、年々保守管理の重要性が高まりつつあるのも事実である。 当院においては過去2度にわたり医療事故を経験したが、医療事故が発生した場合、その事故に直接関係する、しないに関わらずその周囲で使用されていた全ての機器に関しての保守管理記録の提示を求められるのは必至である。特に自分たちの管理機器において保守管理記録が全く存在しないような状況では、我々臨床工学技士にも責任が課せられる危険性が生じる。これらの教訓を生かすべく、現在は中央管理している全ての機器に関して、徹底した保守点検の実施を目指し業務を行っているところであるがマンパワーの制約により100%には至っていないのが現状である。 管理対象機器を年々増やしてきたが、それに伴いリスクも増大している状況にある。ただ闇雲に管理機器を増やすのではなく、リスクマネージメントを考慮した上で中央機器管理を行う必要があり、また管理下に置いたからには徹底して保守管理をする心構えが必要である。

【目的】
当院では、医療機器の院内修理を実施するために、部品をME室で管理保管している。従来の部品管理は、修理を優先に考え、多くの在庫部品があった。在庫部品は病院の資産であり、臨床工学技士は適正な部品管理を行う必要があるため、今回現在の管理方法を検討した。

【方法】
医療機器は輸液ポンプ(テルモ社製STC-502・503・506・508、TE-161・171)を対象とした。適正な部品管理を、輸液ポンプの台数・型式・在庫部品数・使用部品数・修理件数および稼働率から求めた。

【結果】
輸液ポンプは313台であり、在庫部品は143種類352個、総額約350万円であった。1993年から2004年までに未使用であった在庫部品の割合は、STC-502・503:約10%、STC-506:約50%、STC-508:約30%、TE-161・171(1999年から2004年):約90%であった。バッテリー以外で使用頻度の高い部品は、STC-502:薬液防止カバー、STC-503:前パネルユニット、STC-506:フィンガー部ゴムパッキン、STC-508:筐体ユニット、TE-161・171:ホールクランプであった。型式別による稼働率と修理件数の相関係数は平均0.95であった。

【考察】
適正な部品管理を行うためには未使用であった部品の費用を明確にし、部品に対する費用意識を向上させる必要がある。今後、修理内容を予測した部品管理が求められ、データの精度、信頼性を向上させるため、バーコードを利用したコンピューター管理に移行することによって在庫水準を把握していきたい。

【結語】
型式別による稼働率と修理件数に相関が認められた。在庫部品の総額が高額であった。修理効率と在庫管理の合理化を両立させた部品管理を実施しなければならない。部品管理のPDCAサイクルの確立が重要である。

023

医療機器管理データベースネットワークに関する研究

024

市販データベースソフトを利用した医療用備品の管理−院内定期巡回への試み−

北海道工業大学大学院 工学研究科 応用電子工学専攻1、北海道工業大学 福祉生体工学科2、手稲渓仁会病院 臨床工学部3

相川 武司1、菅原 俊継2、黒田 聡2、木村 主幸2、有澤 準二2、古川 博一3

三豊総合病院 MEサービス科

福岡 和秀1、松本 恵子1、角野 令子1、近藤 千裕1、田上 佳奈1、西山 登司雄1、今村 愛美1、片岡 三香1、笹山 奈美子1、久保 諭1

【目的】

コンピュータの高性能化と低価格化によって様々な分野でIT化が進み、病院でも電子カルテやオーダリングシステムの導入が大規模病院を中心に進められている。しかし、多くの中小規模病院では導入と維持管理に莫大な費用が掛かるため、その導入を見合わせている、もしくは導入の予定がないというが現状である。医療機器に関しては市販の医療機器管理データベースがごく一部の病院で導入されている程度である。病院内で使用される医療機器の数は増加傾向にあるため、その管理を従来の記録用紙で行うのは難しく、点検漏れなどの不適切な管理による医療事故の恐れが考えられる。また、医療機器の管理を独自の方法で行う場合、市販のソフトウェアでは管理が困難であり、その仕様を変更する必要がある。

【方法】

医療の安全性が問われている現在、医療機器を適切に管理することは医療機器に係わる医療事故を未然に防ぐためにも重要課題である。そこで、我々はフリーソフトのデータベース用いて医療機器の情報、点検予約・履歴、修理履歴を管理するシステムを構築した。

【結果】

自らシステムを構築することで独自の医療機器管理方法に柔軟な対応ができ、導入や維持管理の費用を抑えることができる。本報告では、構築した医療機器管理データベースの概要を示し、臨床の場で応用を試みた。その結果、基本的なデータベース設計仕様は満足していることが判明した。なお、今後、臨床の場と共同研究をさらに行うことにより、適切な機器管理方法を検討して行くことが可能である。

【はじめに】近年、医療機器の中央管理化が進み、各施設では管理方法の工夫がなされている。しかし、血圧計・酸素湿潤器・壁掛け式吸引器・車椅子などの医療用備品(以下備品)は、臨床工学技士管轄ではなく、多くの施設では個別部署または事務部で管理されていると思われる。当院では、部署毎で個別管理し、不足時には部署間での貸借が主流であった。つまり、過剰および不足部署があり保有台数に較差がみられた。また、備品台帳の数も不確かであり、事務部でもその実数は把握されていなかった。そこで、我々臨床工学技士部門で備品も中央管理出来ないかと考え実践したので報告する。【方法】まず、備品の使用状況・数を把握するため、院内巡回を実施した。そして、中央管理する対象備品を決定しID番号を付けた。また、市販データベースソフトである「ファイルメーカーPro6(ファイルメーカー社製)」(以下ファイルメーカー)を利用し管理した。【結果】巡回の結果、倉庫・戸棚などに眠ったままの備品が存在した。それらは「使用されていない」・「故障しているが修理すれば使用できる」・「修理不能」に分けられた。そして、「ファイルメーカー」を利用し、ID番号をもとに中央管理用の備品台帳を作成した。また、部署毎に適数を設定することで、過不足を解消するとともに遊休機器をなくすることができた。さらに、定期巡回を実施することにより使用中の機器に対して点検をおこない、現場で直接スタッフに、使用方法や注意事項を説明することができた。【考察】今後更に、管理する備品の種類を増やしていきたい。そして、「ファイルメーカー」の活用方法を改善していくとともに、病院情報システム(院内イントラネット)の利用も検討し、各部署への公開ならびにリアルタイムでの管理を目指したい。また、定期巡回を継続することにより、故障の低減および早期発見につながるものと考えられた。

025

汎用ソフトを使用した医療機器管理システムによる運用

026

バーコード管理によるME機器の貸出、返却 〜有用性と問題点〜

りんくう総合医療センター 市立泉佐野病院 CE室

河野 栄治1、渕脇 栄治1、中谷 暁洋1、岩本 匡史1、石原 太輔1

日産厚生会 玉川病院 臨床工学科1、日産厚生会 玉川病院 透析科2、株式会社 田中三誠堂3

大崎 英忠1、大友 怜奈1、松崎 幸香1、小貫 隆央1、杤木 佐和子1、和田 みゆき1、元良 俊太1、井上 博満1、今村 吉彦2、岡村 裕介3

【はじめに】医療機器管理の必要性また、安全性が求められる昨今、当院においても臨床工学室が中心になり、機器管理・貸し出し業務を行っている。しかし、400床弱の当院であっても管理機器の数は1000台を超え、また専門の機器管理システムを導入するにも、コスト面の問題もあり導入に踏み切れない現状があった。そこで、1998年から汎用ソフトにて医療機器管理システムを構築し運用している。今回、汎用ソフトによる管理システムを用いて得られた効果を報告したいと思う。

【本文】当院の機器管理システムは<機器管理台帳><機器保守修理記録><部品発注記録>及び<機器貸し出しシステム>で構成されている。また、互いのData Baseがリンクされており保守・管理・記録までを臨床工学室が一元管理している。これらを汎用ソフトを使用することにより、専門ソフトの高性能・多機能には劣るものの、導入コスト削減につながった。管理システムの導入は機器修理費用の削減・機器貸し出しの円滑化が可能となった。また従来機器の貸し出しはノートにて行っていたが、未記入による貸借、使用状況が劣悪なものがあったが、それらも減少した。貸し出しシステムは各病棟への貸し出し状況の把握が可能になり、貸し出し機器の不足時に、具体的な数字を提示する事により、未使用ポンプの返却を効果的に促す事が出来た。

【考察】医療機器の管理は必要不可欠であり、それらは効率よく運用され、コスト削減にも寄与しなければならない。今回、<医療機器管理システム>を自作にて構築することにより、導入コストの削減を図り、また、Data Baseを分析検討することにより機器の使用方法の誤りが減少した事も確認された<貸し出しシステム>は管理されていると言う意識が返却・機器取り扱いの向上にも繋がっていると考える。

【結果】導入コストの削減が可能であった。保守管理業務が向上した。貸し出し業務が円滑に運営されるようになった。

【目的】 当院臨床工学科では、平成7年7月よりME機器の中央管理を行ってきた<現在人工呼吸器14台、輸液ポンプ63台、シリンジポンプ16台>。しかし、ME室に常時人員を確保できない現状から、ME機器の貸出期間、貸出部署の把握に支障を来すことがしばしば見られた。そこで、今回我々は簡便なバーコード管理による貸出、返却業務を可能とした田中三誠堂社製ME機器管理ソフトCE Assistantの試用を経験し、その有用性について検討した。【CE Assistant導入前】 当院では、CEが血液浄化業務等と兼務していることからME室に常駐することが困難な状況である。その為、使用機器の把握は病棟スタッフが貸出し・返却表へ記入し、CEがME室のホワイトボード上のマグネットを移動する方式であった。しかし、貸出・返却表への記入ミスや漏れにより、不明機器の増加や未点検機器の貸出が行われ煩雑であった。【導入後】 CE Assistantはバーコード連携機能が標準装備。オプションの自動貸し出し受け付けサービスは貸出画面のレイアウトを任意に変更が可能である。さらに利便性の向上を目的に、液晶ディスプレイにタッチパネルを採用した。その結果、貸出〜返却の流れが簡便化され、使用機器の把握が容易となった。【結果及び考察】CE Assistantは未点検機器の貸出を防止する機能が装備されている。このことから、未点検機器の貸出がなくなり、返却後点検が確実に実施できた。今後の課題として、貸出・返却時バーコード読み取りの徹底実施には、CEによる病棟スタッフへの啓蒙活動が非常に重要であると考えられる。

027

医療機器の中央管理における貸出/返却システムについて

028

統合型医療機器管理システムの開発

東京大学医学部附属病院 医療機器・材料管理部

新 秀直1、長江 祐吾1、小田 祐貴1、勝又 恵美1、田中 克己1、玉井 久義1、大江 和彦1

福井県済生会病院 診療部 医療機器管理室1、福井県済生会病院 診療部2

辻岡 和孝1、五十嵐 茂幸1、出口 繁雄1、吉村 美香1、米田 陽子1、土屋 良武2

近年,厚生労働省における医療施設等整備助成事業に医療機器管理室施設整備が追加され,医療機器の中央管理が社会的にも重要視されつつある.当院では, 2001年10月より,人工呼吸器,輸液ポンプなどの医療機器を中心に中央管理を本格的に開始した.しかし,中央管理を開始するにあたり,機器の貸出/返却を誰がどのように実施するかということが問題となった.そこで,今回当院における医療機器の貸出/返却システムについて,その方法と問題点を報告する.従来の貸出/返却システムは,看護職員が貸出台帳へ記入し,搬出するという方法であった.しかし,この方法では,多くの貸出/返却機器が発生した場合には看護職員に負担が大きく,また,貸出の管理も非常に煩雑であった.この問題を解消するために,院内PHSが採用されている当院では電話連絡が簡便であると考え,電話により依頼をしてもらい,外注職員がコンピュータへの貸出/返却登録や搬送をするシステムに切替えた.新しいシステムでは,多くの貸出/返却登録に対応するために,タッチパネル入力およびバーコード管理を採用した.また,臨床工学技士不在時にも,医療の知識がない外注職員だけで貸出対応ができるように,貸出可能機器には写真を用いて解り易く明示した.2004年1月から10月の10ヶ月間に,延べ輸液ポンプ17022台/16847台,シリンジポンプ9784台/9678台,人工呼吸器1297台/1294台,その他4193台/4102台の貸出/返却依頼に対応することが可能であった.当院のシステムは多くの貸出/返却依頼に対して対応可能である.しかも,機器を使用する側の医師や看護職員にとっては電話連絡だけという簡便さであり,有用であると考える.しかし,この簡便さにより,安易に医療機器を使用してしまうという問題も新たに発生し,今後経済的観点からも考慮したさらなるシステムの検討が必要である.

【目的】従来使用していた、市販の医療機器管理システムを拡張、使用するために、貸出・返却情報、機器基本情報、点検情報、資産情報等の医療機器情報の一元化を考慮にいれた、独自の統合型医療機器管理システムを開発した。

【方法】院内LANを利用したC/S形式のシステムとし、院内の各部署で機器情報の共有を可能とした。機器の貸出・返却業務は従来の紙媒体による、手書きの管理台帳から、タッチパネルおよびバーコードリーダによるコンピュータ入力形式に変更し、貸出状況を各病棟のパソコンから、閲覧できるようにした。各種機器情報、保守履歴情報に関しては、旧システムのデータ、及び機能を継続し、また別システムで管理していた、点検情報を保守履歴情報と連動させ、データの一元化を図った。また資産管理として、機器マスタに購入日、購入価格、耐用年数を入力することで減価償却の照会が可能になり、院外修理に関しては、資材課及び経理課で伝票処理、修理金額の入力をすることで、機器のランニングコストの把握が可能になった。

【結果】開発期間5ヶ月(週1〜2日)物品管理機能で、貸出履歴(アリバイ管理)が可能になった。病棟においてのME室にある貸出機器台数把握が可能になった。機器情報の一元化が可能になり、リレーショナルデータベースを用いたことで、情報の管理が容易になった。

【結論】独自開発のため、院内の運用に応じたシステム設計が可能であった。既存システムをバージョンアップした場合に比べ、導入コストの削減ができ、システム拡張においても容易に対応可能になった。今後、定期点検チェック機能、機器マニュアル閲覧機能などを追加する予定である。

029

ME機器中央管理システムの現状と問題点

030

病棟ME機器中央管理化システムの院内LAN上での運用―Webデータベースの開発―

横浜船員保険病院

久高 好夫1、渡辺 薫1、山口 修1、高木 宏一1、小林 智之1

東邦大学医学部付属大森病院 臨床工学部1、東邦大学医学部付属大森病院 電算室2

舘野 琢哉1、高岡 敏行1、花渕 喜久夫1、新川 英樹1、元木 康裕1、小山 信彌1、湯浅 幸夫2、中村 茂2

【目的】当院ではデータベースソフトと院内LANを利用して、ME機器中央管理システムを構築し運用しているが、その現状と問題点について報告する。【方法】 使用ソフトウェアはマイクロソフト ACCESS2000、ME機器中央管理システムでは窓口業務としてポンプ類、パルスオキシメータなどの貸借管理モジュール、テレメータ、カウンターショック、人工呼吸器などのメンテナンスモジュール、病棟現場ではME機器使用状況入力モジュールが稼働している。【結果】貸借管理モジュールで、貸出日から1ヶ月経過したものはリスト上赤色で表示され、返却を促がせるようになり、借りたままで放置ということを防止できるようになった。修理依頼をLAN上のパソコンに入力依頼され、修理報告も同ファイルに入力しているので、履歴も含めて各部署で閲覧できるようになった。ME機器使用状況入力モジュールでは、各部署でのME機器の動きが遠隔で確認できるようになり、効率的な運用が可能になった。【問題点】ME機器使用状況入力モジュールは、1日1回各部署において、ME機器の所在の確認と入力を依頼しているが、頻繁にME機器を利用する部署は入力に滞りはなく、あまりME機器を利用しない部署は入力が滞る。この点からは利用する機会が少ない部署の、ME機器に対する意識の低さが伺われる。ME機器に対する意識に差が生じてしまったことの一因には臨床工学室とのコミュニケーション不足が挙げられ、双方が思いを伝え合うようなコミュニケーションの重要性を改めて感じている。また各部署の意識を高める方策としてME機器中央管理システムにできることは何かを模索することも今後の課題と考えている。

平成11年6月、各病棟で管理されていた機器を一元化管理し、効率的な運用を行うと共に常に機器の点検、整備を行い安全性の向上を図ることを目的として病棟ME機器の中央管理化を開始した。平成13年1月より院内LAN環境が整った事で、工学部と各病棟間の情報交換に院内LAN端末の活用を検討した。その一つとしてWebデータベースを構築、当院電算室の協力を得てプログラム制作を行ったので報告する。

031

院内LANを利用したME機器の情報提供

032

機器・設備安全管理懇話会設立の経緯と現況

特定医療法人慈泉会相澤病院 ME課

平澤 綱基1、高見澤 昌慶1、清水 千代美1、磯野 愛1

医療法人敬和会 大分岡病院 ME部1、国家公務員共済組合連合会 新別府病院 2

深田 昌司1、宇都宮 精治郎2

【目的】ME機器の中央管理を行う臨床工学部門は、機器や設備の点検を通してハード面の安全性を確保するほか、安全性に関する情報を収集・発信したり、取り扱い講習会を開催するなどして、ソフト面からも安全性を確保する責務がある。当院では、定期的にME機器に関する院内講習会を開催しているが、勤務の都合などで参加できるスタッフが限られてしまっている。そこで今回、各部署の端末からいつでも閲覧できるように、院内LANを利用したME機器に関する情報提供サイトを作成したので報告する。

【方法】このサイトは、端末のブラウザを使って、院内ホームページに貼ったリンクから開く。提供している情報は次の通りである。(1)機器使用状況: Microsoft Accessで作成した「ME機器管理システム」のデータアクセスページにリンクしており、人工呼吸器など中央管理されている機器の最新の待機状態が確認できる。(2)オンラインマニュアル:院内講習会で使用している資料等を中心とした、看護師向けの機種別操作マニュアルを閲覧することができる。 (3)ME課連絡先:ME課の所在地、および各部門担当者のPHS番号が確認できる。(4)ME NEWS:院内外で報告された安全性に関する情報や、ME機器に関連した講習会の情報、また新規納入機器の情報などを掲載している。(5)ワンポイントアドバイス:機器を安全に使用するために最低限知ってもらいたいポイントを、イラストや写真を多用し、わかりやすい言葉で説明している。

【結語】この情報提供ページの開設以降、利用したスタッフからは、内容がわかりやすく、役に立つ、また部署の端末からいつでも手軽に閲覧でき便利であるなど、好意的な意見が寄せられている。しかし、全てのスタッフが閲覧している状況にはまだなく、今後はより確実に情報を伝達する方法について検討する必要がある。

【会発足の経緯】新別府病院及び大分岡病院には、数年前より機器・設備の保守管理についての研修、医療機能評価認定取得を目的に多職種の方が来院され、両病院のME部門責任者がこのような施設が一同に会する場を設けたらどうか、と協議した。両人とも所属はME部門であり臨床工学技士(CE)であるが、設備面は「施設課」や「設備課」などが管理している施設が多い。ME機器のみならず、医療ガス設備等まで含んだ保守〜安全管理を議論するには、CE以外の職種の参加が必要であると考え「職種は問わない」方針とした。安全管理面では、リスクマネージャーが活躍している施設が多く、この面からのアプローチも必要である。ME機器はCEが保守管理を行うべきであるが、人工呼吸器などは、臨床現場では看護師が使用することが多く、看護師からも意見も取り入れるべきである。このような経緯の元、平成16年7月に設立集会を開催し、暫定的に会長等の役員が決まった。【会の目的、現状】機器・設備関連の医療事故が社会問題化しているが、厚生労働省の取り組みや医療機能評価等の動向を見るにつけ、安全管理が重要となってきている。ME機器の保守管理は、医療職種であるCEが担っているが、医療ガス等の設備まで含めた安全管理は、CEのみでは不可能である。さらに、ハードウエアのみならずソフトウエアの側面からのアプローチも必要だと考え、安全管理部門責任者やリスクマネージャーも参加し、疑問に思ったことや、管理方法など方法論等、情報交換することが目的であり、医療機能評価、ISO9001、14001の認定取得及び更新のため、具体的な方法や改善事項を議論している。会のOUTCOMEの部分として、ME機器の管理体制・ME機器勉強会の数・機種数とME機器関連のインシデントレポート数のアンケートを取り、医療安全に最も関与する項目を統計学的に検討したので、報告する。

033

透析室の事故防止対策の検討、4年間を省みて

034

当院における院内感染の予防と対策

腎友会滝川クリニック 技術部1、腎友会岩見沢クリニック2

恒遠 和信1、杉尾 勝巳1、田村 洋1、鈴木 保道1、菅原 剛太郎1、千葉 栄市2

医療法人 社団仁友会 尾道クリニック

村上 健太1、細谷 亜紀1、中司 唯1、迫野 豊1、宮迫 保江1、成田 憲司1、下岡 和貴1、下井 晶勝1、内 久敏1、落合 真理子1、浜口 直樹1

【目的】近年、高齢透析例、糖尿病透析例の増加が顕著で透析業務は一層複雑かつ煩雑になり、透析室スタッフは重大事故のリスクを抱えながら業務をしているのが現状である。今回、当施設の過去4年間の透析室でのインシデントを含む事故について、特に抜針事故を中心に検討しその防止策を検討した。

【対象】平成13年1月から平成16年12月までの事故報告書に記載された抜針事故13件(男10、女3)を対象とした。

【結果】抜針事故は、平成13年度4件(1.9%)、14年度6件(4.5%)、15年度2件(1.9%)、16年度1件(1.0%)である。年齢は70歳代6件(46.1%)、80歳代2件(15.4%)と半数以上が70歳以上であり、透析歴5年未満が7件(53.8%)と半数を占めた。blood accessの穿刺針は、ベニューラ針が10件(76.9)%、金属針が3件(23.1%)、抜針側は、静脈側(返血側)が9件(69.2%)、動脈側(脱血側)が4件(30.8%)である。出血量は100ml7件、200ml3件、300ml、600ml、700ml各1件でいずれも輸血せずに、生理食塩水の急速注入で対処し、幸いにも後遺症、死亡例はなかった。原因は、固定テープの接着不良が5件(40.0%)、穿刺肢(腕)の屈曲等が誘因になったものが4件(33.4%)、極度の掻痒が2件(13.3%)、痴呆による自己抜針2件(13.3%)であった。対策としては、テープの接着不良については粘着力の強く、発汗などへの耐久性の高い皮膚にやさしいものを選び、穿刺肢の屈曲に対してはテンションのかからない位置に固定すると共に、出血の有無を直視出来るように定期的な観察を義務付けている。

【結語】最近、高性能センサー付きコンソールが開発されているが、決して油断することなく、穿刺部位と血液回路を観察することが肝心である。

【はじめに】
今回我々は、厚生省(現厚労省)より示された『透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル』とその後に発生した感染事故を参考に院内感染の防止対策を見直し、業務内容の改善を行ったので報告する。

【改善内容】
1.透析開始時

以前は穿刺・機械操作を1人にて行っていたが、改善後は穿刺1名、機械操作1名による2人体制とした。

2.透析後の採血、注射薬注入時および止血後の処置

以前は素手により透析後の採血・注射および止血後の処置を行っていたが、改善後はディスポーザブル手袋を装着し、これらの処置を行うようにした。

3.透析終了時

以前は動脈側の針を抜き、その針を終了用の生理食塩水に刺して返血を行い、返血後に静脈側の針を抜いていたが、改善後は生理食塩水を補液ラインより動・静脈側に流して返血し、その後穿刺部の紙シーツを開いて動・静脈側の針を抜くようにした。

4.透析終了後の片付け
以前はゴムボタンに穿刺針を刺しそのまま医療廃棄物として捨てていたが、改善後は穿刺針を血液回路からはずして針箱(新規に設置)へ廃棄し、動・静脈側アクセス部は動・静脈側液面調整ライン等に接続して廃棄するようにした。

5.感染物の処理
ディスポーザブル手袋を外す際、感染の可能性があるガーゼや紙シーツなどは手袋にくるみ、その手袋を裏返しにして廃棄するようにした。

6.手洗い
手洗い用を自動水栓とした。また、ハンドソープも足踏み式とした。

7.院内感染に対する勉強会
全職員参加の感染予防に関する勉強会を繰り返し行い、院内感染に対する意識をさらに高めた。

【結  語】
今回、院内感染の可能性のある業務の改善を行ったが、改善したことによる業務への支障をきたすことはなかった。今後も、院内感染を防止するための工夫を行うとともに、職員各々が院内感染に対する意識を高めていくことが防止対策の第一歩と考えた。

035

透析専門クリニック開設における臨床工学技士のかかわり

036

肝移植における臨床工学技士の役割

医療法人 青藍会 大場内科クリニック 臨床工学部

安藤 昇1、河野 仁子1、中村 徳雄1、桧山 文彦1、菊池 修一1、大場 正二1

北海道大学病院 臓器移植医療部1、手術部2、光学診療部3

太田 稔1、泉山 千恵子2、小倉 直浩2、岩崎 毅3、加藤 伸彦2

【目的】当院は2004年2月1日に新設開院した透析ベッド51床の透析専門クリニックである。開院までの道のりは、地域や社会情勢の変化、医療経済など様々な面で複雑多難な事象に直面した。しかし、新設開院してこの1年を振り返ると、今まで築き上げた実績がまがりなりにも功を奏し、順調に患者の治療を行い推移している。この貴重な経験の中で、臨床工学技士として関わってきた事をまとめ、活躍できる分野を考慮し、未来への参考になることを検討した。【項目】1)建築完了までの過程、2)開院までの組織的、機材的準備、3)患者推移、4)開業後の業務、5)運営上のトラブル、6)今後の課題、7)その他。【結果、考察】我々、臨床工学技士の業務は、生命維持管理装置の操作及び保守点検を主な業務と謳われているが、実際は多分野で活躍が望まれ組織経営、医療安全に貢献しているのが実状と思われる。これからも、計り知れない異種難題に直面するだろうが、患者の治療や安全などに医師、看護師、その他医療スタッフと共に協力しあうことが重要であろう。

本邦では世界に先駆け1987年に臨床工学技士法が施行され,呼吸・循環・代謝などの分野において生命維持管理装置を中心とした医療機器の操作・保守管理が幅広く行われるようになった.現在,これらの医療機器が重要な役割を果たしている分野の一つとして移植医療がある.とりわけ生体肝移植分野の発展は大きい.生体肝移植は1989年11月に胆道閉鎖症による末期肝硬変の小児患者に第1例目を施行したことにより小児を中心として発達し,2004年1月には保険適応が拡大され小児成人を問わず末期肝不全の治療として肝移植が定着してきている.北海道大学病院では1997年9月から2004年12月までに124例の肝移植(生体肝移植119例,脳死肝移植4例,ドミノ肝移植1例)を施行してきた.北大病院の肝臓移植は中央診療部門である臓器移植医療部が中心となり,兼務ではあるものの1名の臨床工学技士が配置されている.その役割は,術前の脳症改善や術中・術後での移植肝の機能補助,また腎機能低下に対する腎補助などを目的とした血液浄化療法を54%の症例に施行し,手術中では腹腔内の高度癒着と門脈圧亢進を伴う20%の症例に対して術中の循環補助(静脈-静脈,門脈-静脈バイパス)を施行している.また,術後の全例に人工呼吸器を使用しその操作をおこなってきた.肝臓移植において欠かすことのできない血液浄化・補助循環・人工呼吸療法の経験を踏まえ移植医療という新たな分野での臨床工学技士の役割と今後の展望について報告する.

037

カプラ評価の基準化を求め―次世代カプラがなぜ普及しないかー

038

透析用血液回路の標準化へ向けた福岡県臨床工学技士会の取り組み(第一報)

日立造船健康保険組合 因島総合病院

西 宏行1、近藤 隆司1、濱本 恭子1

本村内科医院1、福岡県臨床工学技士会2

高取 清史1、井福 武志2、小畑 日出登2、本田 裕之2

【目的】カプラは透析液が流れる中で唯一大気と触れ又、汚染されているカプラジョイントと接触し汚染されてしまう。対策として色々なカプラが開発されているが、現在各施設において各採取方法でカプラ評価を行なっているのが現状である。採取方法に違いがあれば結果は大きく違いカプラの過大過小評価となり良い物が使えず、悪い物を使用してしまう可能性が出てくる。そこで我々はカプラの採取方法を検討しカプラ評価の基準化を求め検討したので報告する。【方法】従来カプラを用いダイアライザーに接続しダイアライザー通過後に設けたサンプルポートより採取。カプラに滅菌カプラジョイントを接続し直接ビーカーに採取する方法にて経時的に採取を行いエンドトキシンの測定と細菌培養を行った。途中カプラを回転させ同様に採取した。新たに通常カプラを用い滅菌カプラジョイントを接続採取、同カプラを用い同様を数回繰り返し採取する。【結果】ダイアライザー通過後採取はカプラに直接カプラジョイントを接続採取より早い経過時間にてエンドトキシン、細菌培養も検出されなくなった。しかしカプラを回転させると再度エンドトキシン値は上昇、培養も陽性となった。従来カプラはカプラジョイントを接続する度にエンドトキシンは検出された。【考察】カプラ採取は、通常透析時と同様な再現性を行い採取することが望ましく、ダイアライザーを通過後採取は過少評価になりやすい。カプラにカプラジョイントを接続採取しエンドトキシンが検出された場合カプラを動かせば再度エンドトキシンは放出される。これらより初回にエンドトキシンが検出されない次世代カプラの開発、評価に今回の採取方法は有用だと思われた。【まとめ】確立されたカプラ評価が行われない限り次世代カプラの開発は進まないと思われ、カプラ評価の基準化が必要と思われた。

【目的】日本臨床工学技士会(以下:日臨工)内において、「透析用血液回路の標準化委員会」が組織化され、2004年3月には血液回路の標準化に関する報告書が上げられている。福岡県臨床工学技士会(以下:福臨工)においても、理事会の定例議案とし、安全な血液回路の標準化への実現に向け取り組んできた。今回、県内の血液回路に関する調査結果と日臨工の提示する血液回路図仕様との比較検討を行ったので若干の考察を加え報告する。【方法】福臨工理事会の承認を得て、血液回路メーカー6社の協力のもと、県内にて使用されている透析用血液回路の規格数および形状(構成部品を含む)等について調査し、その集計結果と日臨工から報告された標準化血液回路の仕様と比較検討を行った。【結果】県内で使用中の血液回路は、総数209規格が存在した。日臨工が提示している標準化血液回路の仕様との比較の結果、アクセスポートは、原則禁止事項となっているゴムボタンが75%、動脈側液面調整ライン付39%、ヘパリンラインの位置はポンプセグメント上流が18%等であった。【考察】血液回路の標準化へに向けて、2004年1月から取り組みを開始してきたが、メーカー協力の基に得た結果と日臨工推奨の血液回路仕様との違いも見られた。今後、血液回路の標準化を進めて行くには、安全性・操作性を第一に配慮できる各施設現場の声を調査する必要があると考える。また、調査実施は透析スタッフに県内標準化血液回路の取り組みの認識向上と本邦における標準化へ取り組みの情報提供に繋がると考える。【結語】福臨工技士会における透析用血液回路の標準化へ向けての取り組みについて具体的に報告した。標準化血液回路を作成するためには、県透析医会と福臨工の共同で、県内全透析施設にアンケート調査を実施し更なる現状を把握し、操作性・安全性を重視した血液回路の標準化に向けて取り組んでいる。

039

透析用血液回路の標準化へ向けた福岡県臨床工学技士会の取り組み(第二報)

040

安全な血液回路を目指して=血液回路のルアーロック式の必要性と注意点について=

特定医療法人 雪ノ聖母会 聖マリア病院 臨床工学室1、福岡県臨床工学技士会2、福岡県透析医会3

井福 武志1、本田 靖雅1、高取 清史2、平安 敬一郎2、本田 裕之2、隈 博政3

本村内科 

高取 清史1、伊福 加奈子1、横江 英樹1、本村 謙一1

 近年、透析医療においても安全性の確立に向けた活動が着実に普及している。事実、安全操作のガイドラインとして、2001年に日本透析医会より「透析医療事故防止のための標準的透析操作マニュアル」が作成され、日本臨床工学技士会(以下:日臨工)内においても「透析用血液回路の標準化委員会」が組織化された。さらに、2004年3月には標準化に関する報告書が上げられた。しかし、全国の調査報告によれば約3000種類以上の血液回路が存在し、回路の離断や抜針等で血液回路に起因するインシデント等の件数が著明に低減したとは云いがたいとの報告もある。福岡県臨床工学技士会(以下:福臨工)においても、第一報にて報告したように安全面のみでなく医療経済面からも血液回路の種類削減は必然事項として、標準化への実現に取り組んできた。県内では、209規格の透析用血液回路が存在し、調査結果の平均値を基準として標準化回路を試作したが、操作性等の面での課題が残された。そこで、可能な範囲で標準化できる血液回路の試作を目的として、安全性・操作性を第一に考慮できる各現場の声を調査し、それを反映させる事が標準化透析用血液回路への近道にではないかと考えた。同時に、透析施設スタッフへの認識向上を目的とした。調査方法としては、福岡県透析医会と福臨工が共同で県内173施設に対しアンケート用紙を配布し、その内容は1.施設背景に関して、2.マニュアル、報告書の認識度、3.使用中の透析用血液回路に関して、4.透析療法の操作手順に関して、5.血液回路の安全対策に関して等の調査を実施した。今回、以上の内容について、その集計結果と若干の知見を加えて報告する。

【目的】2002年4月より、血液回路の全ての接続部をルアーロック式への変更が進められており、当院においてもダイアライザー接続部と留置針の接続部についてルアーロック式への変更を行った。しかし、血液回路とダイアライザーの接続部より、自動プライミング中に生食の漏れや透析中の血液漏れを経験した。そこで、漏れの原因を調査し新しいルアーロックへの改良を行った。また、接続部についてルアーロック式の必要性と注意点について検討したので報告する。【方法】1)各社の血液回路とダイアライザーの接続部と留置針の接続部について、種類や構造について比較。 2)血液回路の形状の違いにより、各接続部にかかる圧力の差を測定。3)ダイアライザーの接続部の血液回路を2層構造のルアーロック式に変更した。【結果】血液回路とダイアライザーの接続部については、各社ダイアライザーの形状に違いがあり、現状のルアーロック式では、接続状態によっては漏れの発生が考えられる。ルアーロックを2層構造にする事により密閉性と締め付けが強化された。また、血液回路の内部圧力測定を行うことで、形状の違いによる静脈表示圧と留置針との接続部の圧力に差が出る場合が認められた。【考案】血液回路の安全性を向上させるためにはルアーロック式への変更は不可欠であるが更なる改善が必要と考えられる。血液回路接続部の内部圧力は静脈表示圧のみでは把握できないことがあり血液回路接続上留意する必要がある。今後、血液回路側の接続部だけでなく、ダイアライザーや留置針側の接続部についても統一化の必要性があると考える。【結論】今回、血液回路のパーツの検討を行い、血液回路側の接合部を2層構造にする事で安全性が向上した。また静脈表示圧と留置針との接続部の圧力を同時に測定し差が生じることを確認できた。

041

血液透析における抜針事故の電気的検出に関する基礎的検討

042

ニードルレスポート(NLP)用アダプター形状(内径)と薬液注入時の安全性について

広島国際大学 保健医療学部 臨床工学科

清水 希功1、横田 大将1、小林 寛1

あさなぎ病院透析センター1、富山医科薬科大学 和漢薬研究所臨床科学研究部門 臨床利用分野2

稲垣 均1、浜崎 景2、浜崎 智仁2

【目的】血液回路内のインピーダンスのモニタリングにより、血液透析中の抜針事故を検出することが可能か否かについて基礎的な検討を行った。【方法】筒状銅電極を挿入した1対の翼状針チューブを透析回路に接続し、血液の導電率に調整したNaCl溶液で回路内を満し、ダイアライザには透析液を灌流した。翼状針チューブ内の電極間のインピーダンスをLCRメータにて測定し、翼状針先端を2本とも生食バッグ内に刺入したときをコントロール、動脈側針のみを生食バッグ内に刺入したときを抜針状態として、両者のインピ−ダンスを比較した。また電極挿入部位を透析液回路に変えて同様に行った。さらにLCRメータを用いず一般的な計測器によってインピーダンスをモニタリングする方法についても検討を加えた。【結果】翼状針チューブ内のインピーダンスの平均値±SD(n=5)は、コントロール12.6±0.1kΩ、抜針状態317.4±18.8kΩであり、明らかな有意差を認めた。しかし電極を透析液回路内に挿入したときは、有意なインピーダンス変化を認めなかった。またインピーダンスモニタリング法として、回路上の電極間のインピーダンス(XΩ)に任意の値の基準抵抗(SΩ)を直列に接続し、これらの両端へ発信器より高周波正弦波を印加し、電極間、基準抵抗の電圧をそれぞれVx、Vsとして測定し、インピーダンス=S×Vx/Vsとして求めることが可能であった。【考察】抜針の電気的検出感度を高めるためには、針に近い部位でのインピーダンスを計測する必要があり、実際での測定には翼状針の加工等の問題が残るが、電気的には十分な安全性が確保され、回路離断や針の血管からの逸脱の検出への応用も考えられた。【結語】生食バッグを用いた基礎的検討において、翼状針チューブ内に挿入した電極間のインピーダンスをモニタリングすることより、抜針状態を早期に検出することが可能であった。

【目的】透析中において薬液をシリンジにて血液回路のNLPより注入する際、血液が多量にシリンジ内に流入し危険な場合がある。この原因と対策について検討した。【方法】金属針用ポートとNLPの2種のポートが併存している血液回路を用い、透析中において、21G金属針および3社3種のNLP用アダプター(以下アダプターと略す)を10mlシリンジに接続し、ポートに挿入した時、シリンジ内に血液が5.0ml流入するまでの時間をそれぞれ10回測定した。またこれら3種のアダプターの内径も調べた。【結果】21G金属針は(mean±SD)18.6±0.7秒で、3種のアダプターのそれは、5.8±1.4秒であった。21G金属針の内径は0.58φであり、アダプターの内径の平均値は1.4φであった。【結論および対策】現在市販されているアダプターは金属針に比し、すべて内径が過大であるため回路内の血液が多量にシリンジ内に流入することを確認した。各社、21G金属針の内径まで細径化したアダプターを市販することを安全対策として切望する。

043

人工呼吸器を安全に使用するための取り組み

044

当院での人工呼吸器の管理について −経験やレベルに左右されないチェックリストの作成−

大津赤十字病院 救急技術課

佐藤 義則1、正圓 浩史1、吉川 朋良1、上杉 美也子1、安藤 賢志1、中出 和男1、西村 和典1

八重瀬会同仁病院 血液浄化療法センター

謝花 留美子1、奥野 耕治1、喜屋武 隆1、宮里 朝矩1

【はじめに】

当院は887床を有し、病棟単位はICU・NICUを含め22病棟単位である。各種ME機器は当課において保守・点検・整備を行い貸し出している。近年医療事故の1つに人工呼吸器の関わる事が数多く発表され、当院においてもそれらの対策に苦慮している。今回、我々臨床工学技士と看護師等で人工呼吸器の安全対策に取り組んだので報告する。

【背景・目的】

2003年度の機能評価受審より人工呼吸器の動作中点検を1日1回行っている。大きな事故を未然に予防は出来ているが、まだインシデントレポートの報告から勘案すると100%安全な域に達していない。より安全性を高めるために、当課としては人工呼吸器装着患者のモニタリング機器の整備を充実させると共に、看護部にもアンケートを行い今後の参考にした。

【実施内容】

・各病棟へ、人工呼吸器使用に関する徹底教育

・人工呼吸器の回路に関すること

・動作中点検の充実

・人工呼吸器装着患者はナースステーションの近くに集め、遠くになる場合は無線警報装置を使用する

・緊急トラブルに備え、蘇生バッグを人工呼吸器1台に付き1つ用意する

・人工呼吸器1台に付き、常設のSPO2モニターを1台用意する

・人工呼吸器装着患者の検査などによる搬送時のマニュアルの作製

【検討及びまとめ】

・現時点で全てを達成出来てはいないが、モニタリング装置の充実と共に、マニュアルの作製などを図った事で、人工呼吸器に関わる医療安全の水準が高くなったと思われる。

・医療安全に取り組んだ結果、チーム医療の向上に役立った。

【目的】人工呼吸器を、技士不在の状況で緊急に新しく回路を組み立てて使わなければならないときに、医師及び看護師が迅速に対応出来なかったことが問題となった。今回人工呼吸器操作及び管理の問題点を列挙し改善策を検討した

【対象】従来の人工呼吸器の管理方法を対象とした。概要は 1)使用した人工呼吸器は、臨床工学技士だけで点検整備管理した 2)使用中は定期の回路交換時に機械点検と回路交換の指導を行っていた 3)使用中のトラブルに関してはオンコール体制で対応した

【方法】従来の人工呼吸器の管理方法の問題点を挙げ対策を検討した。問題点として 1)人工呼吸器の機種が統一されておらず使用頻度も少ない 2)定期の回路交換時のチェック方法が統一されてない 3)回路セットの内容にバラツキがある 4)備品の紛失が多い。対策として 1)統一性があり経験やレベルに左右されない保守マニュアルを作り、定期点検の内容に、目視操作による外装点検、備品の有無や操作に必要なチェック表を作成した。2)患者の状態把握と設定内容の確認を医師の立ち合いのもとに看護師が行った

【結果】人工呼吸器使用時に関して、技士不在でも対応でき、さらに備品の紛失が軽減し、その他問題点も明白になった

【考察】人工呼吸器を使用している病棟において、人工呼吸器チェックリストを看護師が施行することにより、臨床工学技士がより早く合理的に使用中人工呼吸器の把握点検が可能となった。さらにその場で操作方法を担当看護師に直接説明し操作精通が向上したことが、今回の問題点の解決に繋がったと思われた。また、今までのトラブル事例を基に点検項目を入れたことが、使用者が注意するようになったと考えられた

【結論】保守管理マニュアル、作動チェック表の変更や追加をすることで、より多くの医療従事者が人工呼吸器操作に精通し緊急時に対応できるようになり、その他問題点も解決した

045

小型超音波ネブライザの比較検討

046

当施設におけるレンタル人工呼吸器の利用について

順天堂大学医学部附属順天堂医院臨床工学室1呼吸器内科2

高濱由起子1、深澤伸慈1、鈴木廣美1 、鈴木 勉2 、福地義之助2

健和会 大手町病院 中央医療機器管理室

金子 芳一1、吉野 博人1

【はじめに】ネブライザの粒子発生方法には、ジェットや超音波を利用したものがある。今回、私達は超音波を利用した新しいコンセプトのネブライザ、エアロネブ ゴー(Aerogen社製)を使用する機会を得た。

このネブライザの特徴は1000個の孔があるパラジウムニッケル合金を超音波で振動させ粒子を発生させることにある。現在、類似した小型超音波ネブライザにメッシュ方式のNE-U22(オムロン社製)がある。そこで、この両製品について性能、価格、操作性について比較検討したので報告する。

【対象・方法】性能はin vitroにてBreathing simulatorを用いた実験を参考にした。薬剤はβ2stimulantで吸入試験を行い、吸入率(%)、吐出速度(ml/min)、治療時間(min)等を比較した。

【結果】性能比較は、NE-U22、エアロネブ ゴーで吸入率(%)28±2;31±4、吐出速度(ml/min) 0.29±0.01;0.45±0.04、治療時間(min)12;6と、エアロネブ ゴーで良好であった。

【考察】粒子の径や吸入率(%)、吐出速度(ml/min)、治療時間(min)等では、エアロネブ ゴーが良好であった。NE-U22は超音波とメッシュを利用し粒子を発生させるメッシュ方式のため、メッシュ部分に目詰まりが発生し幾つかクレームを受けた。価格帯ではエアロネブ ゴーが高価であったが、操作性ではエアロネブ ゴーは部品が少なく操作が簡単であった。一方NE-U22は部品が小さく高齢者には扱い難さが感じられた。

【まとめ】今回、エアロネブ ゴーを取り扱う機会を得、両製品を比較した。性能比較の結果、エアロネブ ゴーはNE-U22より良好な結果を得た。また、操作性も部品の少なさから高齢者には比較的に取り扱いやすい製品と考えられた。

【はじめに】当施設では、人工呼吸器の不足に対しレンタル機で対応してきた。また、既存機器は老朽化が目立ってきたので2000年頃より更新を検討してきたが、新機種が出揃うまでレンタル機にて対応してきた。これは、当院では研修医も多く、看護師のローテートも多いことを考慮し、多数の機種が混在し操作性をはじめ操作者の誤認識などによるインシデント対策の一環として決断した。最近4年間の現状を報告し、レンタル機の有効な利用法について考察を加える。【現状】当院の中央医療機器管理に関わる臨床工学技士は2名であるが、1名は臨床技術提供兼任であり、中央医療機器管理に専念できるのは1名のみである。機種選定は、医師、看護師を対象にデモンストレーションとヒアリングを実施し、操作性の類似の点から従来機であるCV2000からの後継機種であるCV4000αを選択することとなった。過去4年間の人工呼吸器レンタル台数の月平均は10.2台、最大18台、最小6台の月間レンタル台数であった。2004年にレンタルしたCV4000αは28台で総稼働時間は約58,300時間、1台あたりの平均稼働時間は約2,082.1時間、最長稼動時間は約5,388時間(11患者に使用)、最短稼働時間は約192時間(2患者)であった。レンタル機を多数利用していると、レンタル機の定期点検までの期間が可能な限り長いものを提供頂いていても稼働中に点検時期となる装置も少なくない。4年間のレンタル中に実施された6ヶ月点検は33回、1ヵ年点検30回、オーバーホールは3回であったが、すべて代替機が準備され、点検費用等の発生は無かった。【考察】医療機器の中で人工呼吸器は最も重要な装置の一種であるが、少ない人員で管理すべき装置は数多くある。購入した人工呼吸器の定期点検を6ヶ月毎に実施した場合、10台のCV4000αでは概ね1ヶ月分の勤務日数に相当する時間を定期点検に要することになる。レンタルの利用について考察を加えたい。

047

院内呼吸器勉強会を経験して(今後のアンケート調査)

048

ジャクソンリースに気道内圧計を組み込んだ呼吸管理

社団善仁会 小山記念宮中病院 診療技術部 臨床工学科

菅谷 行雄1、大? 達也1、阿部 吉正1、井筒 宏之1、木之内 真紀子1、瀬戸 広美1、菅谷 由紀子1

東海大学 医学部付属八王子病院 MEセンター

梶原 吉春1、河村 吉文1、長谷川 由美子1、藤井 誠二1

【目的】看護師に対する呼吸器の安全な使用方法について、今後どのように勉強会を進めていくかをアンケート調査により検討したので報告します。

【対象および方法】対象は、勉強会に参加してくれた看護師120名のうち、後半に参加してくれた33名としました。方法として、勉強会終了後に5分程で行えるアンケートをしていただきました。アンケートの項目は、全9項目です。そのうち、アンケート9に関しては、多数回答を可としました。

【結果】参加した看護師の経験年数は、平均6.6年でした。職種は、25名が看護師であり8名が准看護師でした。勉強会の時間は、60〜90分が適当とされました。勉強会開始の時間は、業務終了15分後17:30からの開始で76%が良いと答えました。勉強会のスケジュールは、妥当、良いスケジュールであるが全員を占めました。講師(臨床工学技士)の話し方や勉強会の内容については、4名において内容を整理して欲しいとの意見がありました。今後本内容の勉強会を行う期間は、半年に1度のペースにて行うという意見が多いようでした。今後、呼吸器について、より深く追求する為の勉強会内容としては、呼吸器の使用中ケアおよび呼吸器の緊急事態と対策の項目が33件中20件以上ありました。

【考察およびまとめ】今回の呼吸器に関する管理(使用前準備〜使用後まで)の勉強会を行った直後に今後の勉強会の必要性についてアンケートをしましたが、看護師の経験年数に問わず、勤務終了後(17:30分)より60〜90分の勉強会を半年に1回のペースで行っていくことを望んでいたようです。更には、一歩踏み込んだ呼吸器に関する勉強会では、呼吸器の使用中ケアおよび呼吸器に関する安全対策の勉強会を望んでいることが判明しました。

【結語】アンケートの結果を基に今後も勉強会を実施することで看護師の安全性に対する意識が更に高まるであろうと言えました。更には、受ける側の看護師もそれを望んでいました。

【目的】

吸引時のジャクソンリースによる用手的人工呼吸はどのように行われているか調査を行い,従来の気道内圧計無し用手的人工呼吸器と気道内圧計を組み込んだ用手的人工呼吸器とで比較検討した.

【対象・方法】

当院の呼吸管理に携わるスタッフ31名を対象に,呼吸器の設定と同様の一回換気量,気道内圧,呼吸回数を目標に用手的人工呼吸器にて操作してもらい実測量を測定した.次に,disposable気道内圧計(MERCURY MEDICAL社製)を組み込んだ用手的人工呼吸器で同様の実測量を測定した.呼吸器の設定は一回換気量500ml,呼吸回数12回,気道内圧20 cmH2Oとした.ラングシュミレーターはSMSモデル肺(SMS社製)を用いて気道抵抗を20cmH2O/l/秒,コンプライアンスを50ml/ cmH2Oに設定した.測定装置にはレスピキャルとスパイロメーターを用いた.

【結果】

従来の用手的人工呼吸器では一回換気量538±154ml,気道内圧24±10cmH2O,呼吸回数17±5.6回/分.気道内圧計を組み込んだ用手的人工呼吸器では一回換気量494±34ml,気道内圧20±0.8cmH2O,呼吸回数15±4.5回/分であった.(n=31)

【考察】

従来の気道内圧計を付属しない用手的人工呼吸では一回換気量,気道内圧共に非常にばらつきが多く見られた.気道内圧計を付属した用手的人工呼吸では一回換気量は正確に送気できるようになり,ばらつきも少なくなった.気道内圧もマノメーターを目視できるため安定した.これにより呼吸管理の面で気圧外傷や低換気を防止できると示唆された.今回の調査を施行し,従来の用手的換気は盲目的に行い,患者の肺にストレスを与えていたことを実感させることができた.また,経験の浅いスタッフには用手的換気バックにかかる圧力を体験させることができ,教育的な面においても有効であると思われた.

【結語】

ジャクソンリースに気道内圧計を組み込むことで,人工呼吸器と同様の呼吸管理ができ,吸引操作時の安全性が向上した.

049

HMEブースターによる安全性の向上をめざして

050

NPPVマスク酸素投与部位の基礎的検討

平塚共済病院 臨床工学科

富永  哲史1、小林 剛志1、鳥本 倫之介1、梅田 雄一1、片桐 大輔1、野島 純子1、成瀬 真1

群馬県立心臓血管センター 臨床工学課

前田 恒1、戸田 久美子1、宇津木 里佳1、遠藤 裕介1、花田 琢磨1、中嶋 勉1、安野 誠1

【目的】人工鼻に温度と湿度を補うMEDISIZE社製加温加湿システムHMEブースター(HME-B)を使用し、院内導入を目指して安全性の向上と喀痰吸引の有効性を看護師アンケートから検討したので報告する。

【方法】CICUにて人工呼吸器を必要とする患者にHME-Bを使用した。喀痰状態をネブライザー(NEB)未使用にてチャンバーを用いる加温加湿器(CHA)と比較し、操作性、移動性、NEBの必要性、喀痰の質、回路内の水の有無、業務の増減に関して計6項目を看護師アンケートから評価検討した。

【結果】操作性は簡単で回路が簡素化されて良好であった。移動性はCHAを使用しない為簡便である。NEBの必要性と喀痰の質はHME-Bで対応でき、取りやすくなった。回路内水の有無は患者口元とHME-B間に少量確認された。業務の増減は排水作業がない為、減少すると回答が得られた。

【考察】以前、水分貯留による回路閉塞が起こり、換気不良となる事故が発生した。原因はNEBを呼気側に誤接続し薬液が貯留した事、さらにCHAの結露が加わった水分を回路構成が短い為、ウォータートラップ(WT)が横転し回収できない事であった。最初の対応策として、NEB使用方法の徹底と回路の延長を行った。さらなる対応策として回路内の水に着目した。最適な加湿を行うには回路内に結露が必要であるが、HME-Bは患者とY字管の間に設置する為、CHA、WT、ヒートワイヤー、温度プローブを外した単純回路となる。従来のCHAを使用しないため、水の閉塞事故、排水作業による接続漏れの事故減少が考えられる。今後、長期使用患者へのHME-Bの有効性とコスト面を検討し、院内導入を目指してゆきたい。

【結論】HME-Bは人工呼吸器の回路内に溜まる水による閉塞事故の減少が考えられ、NEBも不必要となるため、安全性の向上と喀痰吸引の有効性において有用であった。

【目的】NPPVにおいてマスク既存の酸素ポートからの酸素投与と回路からの酸素投与について比較検討する。【方法】フルフェイスマスク(テイジン社製)を使用し、マスクからの投与と蛇管からの投与について、酸素量を変化させ鼻腔内に留置したカテーテルより酸素濃度を測定した。NPPV装置はNIPネーザルA(テイジン社製)を使用した。設定はS/Tモード、IPAP10cmH2O、EPAP5cmH2Oとし、被験者は鼻呼吸で1回換気量400〜500ml、換気回数20回/min、リーク量0〜10L/minとなるように呼吸を行った。また、換気回数、1回換気量による酸素濃度の変化、リーク量による酸素濃度の変化、フルフェイスマスクの違いによる酸素濃度の変化について検討した。【結果】測定した酸素濃度は以下の通りであった。酸素ポートからの投与では、3L/minの酸素流量で27.2±1.0%,5L/min-36.8±1.8%,10L/min-53.1±4.0%。また、回路からの酸素投与では、3L/min-37.5±2.6%,5L/min-45.6±4.4%,10L/min-76.1±4.3%。換気回数40〜50、1回換気量200〜300ml、の頻呼吸では、31.8±9.8%の低下率が得られた。リークに関しては、30〜40L/minの場合、酸素流量3〜10L/minで42.4±9.0%の酸素濃度低下率が得られた。【考察】テイジン社製フルフェイスマスクを使用した場合、付属の酸素ポートからの酸素投与に比べ、蛇管からの投与が効率的であることが示された。これは、酸素ポートからの投与では酸素が体内へ吸気されること無く直接呼気孔へ通り抜けていくのに対し、蛇管からの投与では呼気時に回路内へ酸素がある程度蓄えられ、吸気時にその濃縮された酸素が体内へ吸気されるためと考えられる。【結語】テイジン社製フルフェイスマスクを使用した場合において、効率の良い酸素投与口は蛇管からの酸素投与であることが示唆された。

051

新生児人工呼吸管理における加温加湿について

052

身体障害者療護施設における人工呼吸器管理

社会福祉法人 聖霊会 聖霊病院 臨床工学部1、社会福祉法人 聖霊会 聖霊病院 小児科2

塩田 展也1、山口 信行2、平岩 克規1

北里大学東病院 MEセンター部

白井 敦史1、花田 卓哉1、岩崎 共香1、内田 有美1、小林 馨1、瓜生 伸一1

【はじめに】新生児人工呼吸管理はさまざまな環境温度の中、実施されている。その環境温度の違いによる加温加湿性能、及び加温加湿器の設定を検討したので報告する。【方法】新生児人工呼吸器BaerCub、加温加湿装置MR730(Fisher&Paykel)を用い、環境温度の違いとして、保育器内の設定温度(32℃、36℃)、インファントウォーマ(加温なし(28℃)、加温あり(33℃)、過加温(40℃))の5種類の環境温度の中、MR730の設定(37℃−2℃、37℃±0、39℃−2℃)、口元温度プローブ位置(保育器外、送風口、口元)、呼吸器回路(チャンバー出口、Yピース先端、挿管チューブ先端)における加温加湿性能評価をモイスコープ(スカイネット社製)にて測定した。【結果】インファントウォーマ、加温なし(28℃)、MR730(37℃−2℃)では、AH:31.3mg/L、T:31.9℃であり、環境温度が低ければ、挿管チューブ先端でのAH,Tは低くなった。また、極端に加温した場合(40℃)、Yピース先端ではRH:77.8%、AH:40.1mg/L、T:40.2℃となり、相対湿度が極端に低下した。保育器設定(36℃)、MR730(39℃−2℃)ではAH:38.6mg/L、T:36.5℃、保育器設定(32℃)、MR730(39℃−2℃)ではAH:36.2mg/L、T:34.8℃と差が生じた。挿管チューブ先端の温度は環境温度による影響が大きく、温度プローブから挿管チューブまでの約5cmの距離でも温度低下は最大6.9℃の差が生じた。保育器内に温度プローブを入れた場合、保育器温度32℃、36℃の場合も温度プローブの位置の違いによるデータに違いは無かった。【結語】新生児人工呼吸管理中の環境温度は加温加湿性能に影響を与え、環境温度に合った呼吸回路(温度プローブの位置)、加温加湿器の設定を選択しなければならない。

 北里大学東病院MEセンター部では昭和61年の開院以来、病院内および在宅における人工呼吸器の管理を行ってきた。今回我々は身体障害者療護施設における人工呼吸器管理を行う機会を得たので、その現状と問題点について報告する。 平成15年4月身体障害者療護施設神奈川県立さがみ緑風園の移転に伴い、当施設における学校法人北里学園への医療看護部門業務委託が行われた。当施設は重度身体障害者(主に肢体不自由)に安全で快適な生活の場を提供するとともに、地域の方々への各種支援を行う施設である。医療看護部門業務委託として施設内に診療所を設置するかたちで、常勤医師1名(診療所長)、非常勤医師、看護師、理学療法士、作業療法士などスタッフが配置されている。臨床工学技士は配置されておらず、協力医療機関として北里大学東病院が診療所との連携を図っている。移転に際して業務の見直しを行い重度意識障害者やALS患者の利用を可能にするため、機能面においても強化・再整備を行った。そのため現在人工呼吸器2名、NIPPV1名のALS患者が入所している。日常の人工呼吸器管理は看護師が行っており、当センターはHMVと同じ扱いで2週間に1回臨床工学技士が出向き、機器の点検および回路や物品の補充を行うなどのバックアップを行っている。

053

人工呼吸器装着患者の搬送に関わる臨床工学技士の役割

054

誤穿刺事故防止機能付き新型透析用留置針の使用経験 〜誤穿刺事故防止に向けて〜

埼玉医科大学 血液浄化部1、埼玉医科大学 MEサービス部2

秋元 照美1、三輪 泰之1、塚本 功1、大浜 和也1、樺澤 寛二2、関口 敦2、見目 恭一2、山下 芳久1

医療法人社団 明生会 東葉クリニック千葉1、千葉県臨床工学技士会2

池澤 正雄1、桜木 理香1、井竹 康郎1、宮崎 正一1、町田  一哉1、宇津木 盛厚1、佐藤 忠俊1、三浦 國雄2

【はじめに】人工呼吸器装着患者に対する他施設への搬送を臨床工学技士(CE)が協力することの現状と対策を検討した。【対象と方法】対象は1999〜2004年に他施設へ搬送した人工呼吸器装着患者5例。人工呼吸器はCV5000・E100S・iVent201・レスピロテックを用いて酸素濃度21〜100%、他施設までの所要時間は30〜60minで当院救急車または民間搬送車を使用し移動を行った。方法は患者移動の連絡を受けてから、搬送を考慮した人工呼吸器・モニタ・その他のME機器の選定と確保さらに搬送車への設置を行った。【結果】人工呼吸器装着患者の搬送について1.ガス供給源は救急車において最大7,000Lボンベであるためガス消費量が少ないまたはタービン内蔵装置を選定、2.救急車のインバーター容量は最大15Aであるため消費電力およびバッテリー搭載装置を選定、3.車内スペースおよび振動の影響に対して小型で固定しやすい装置の選定が必要であった。【まとめ】人工呼吸器装着患者の搬送についてCEが協力することで1.供給ガス不足による人工呼吸器の作動停止、2.電力低下による各機器の停止、3.作業スペース不足や機器転倒・転落等のリスクが減少し、患者および機器の安全性を高めることが可能であったと考えられる。

【目的】誤穿刺による感染リスクは重大な問題であり、事故を未然に防ぐことが必要である。今回、誤穿刺事故防止機能として、リキャップを必要としない新型透析用留置針を使用し誤穿刺防止に向けて評価をしたので報告する。

【方法】誤穿刺の発生状況調査と日本シャ−ウッド社製セ−フ機能付きクランピングチュ−ブ針(以下、安全針)を臨床使用し、スタッフ20名に対して操作性・感染性・安全性・評価のアンケ−ト調査を実施した。

【結果】誤穿刺事故は当院及び県内施設においてリキャップ時に多く発生していた。操作性は簡単65%・普通25%・少し難しい5%・難しい5%、感染性は無い85%・不明15%、安全性は安全95%・普通5%、評価は有用95%・不明5%であった。

【結語】誤穿刺による感染症の被害と経済面のリスクは大きく安全対策への取り組みが望まれ、リキャップを必要としない安全針は誤穿刺防止に有用な留置針であり、今後の繁用を期待したい。

055

新しい除水システムによる持続緩徐式血液濾過(SCUF:slow coutinuous ultrafiltration)

056

東レ社製TR-2000MV透析監視装置(プライミング・返血・抜液機能付き)の使用経験       

京都医療センター 医療技術部 臨床工学

柳澤 雅美1、井上 裕之1、三浦 洋樹1

仁友会 北彩都病院 臨床工学科1、同内科2、同泌尿器科3、仁友会 泌尿器科内科クリニック 臨床工学科4

鈴木 精司1、山本  勝仁1、小西  康智4、石川  幸広1、井関  竹男1、小林  武2、石田 裕則3

【はじめに】旭化成メディカル社製血液濾過用装置(ADP-01)は、利尿剤の反応性が著しく低下したうっ血性心不全治療の為の新しい除水システムである。今回ADP-01を使用する機会を得たので報告する。【方法】うっ血性心不全患者に対し、SCUFを施行した。本システムの構成は、装置(ADP-01)、専用血液回路(CHF-01)、持続緩徐式血液濾過器パンフロー(APF-01D)である。ブラッドアクセスは、上肢の静脈に16G静脈留置針もしくは留置カテーテルから採血、返血を行った。除水速度は血液ポンプ流量と除水ラインのローラークランプで調整を行った。【結果】本システムは、治療中の血圧低下が少なく600〜1400mlの除水が可能であり、呼吸困難感の改善傾向も得られた。血液流量は20〜30ml/min、施行時間は1〜6時間であった。施行場所として、病棟での使用も可能であると考え、循環器、呼吸器内科病棟でも施行した。施行中に脱血不良が起こり中止を余儀なくされる症例もあった。【考察】このシステムは、肺うっ血を合併する利尿剤抵抗性の心不全患者に、簡単な操作で除水を行うことができたが、ブラッドアクセスを静脈留置針か留置カテーテルで施行した為、時間経過により脱血不良を起こす事があった。安定した血流を得るには、Wルーメンカテーテルの留置が必要であると思われる。ICU等で迅速に対応できる体制が整っていれば、静脈留置針による静脈確保でSCUFを施行することができ、Wルーメンカテーテル挿入による感染のリスクも軽減し、より安気に施行できると考えられる。現システムには装置の改良や回路の改善を求める点もあり、今後更なるシステムの構築が必要と考える。【まとめ】SCUFによる除水は、ブラッドアクセスに課題はあるが、簡便な持続緩徐式除水システムとして評価できる。今後更なるシステムの構築により、有用なシステムになると考える。

【目的】透析業務を行う中でプライミング及び返血時の集約した業務量を改善することは、透析治療の安全と医療スタッフの効率の良い動線と業務の効率化に有用である。今回我々は東レ社製TR-2000MV透析監視装置(以下TR-2000MV)にプライミング・返血・抜液機能を付加させた改良型TR-2000MV透析監視装置(以下改良型TR-2000MV)を臨床使用したので検討した。【方法】TR-2000MVで従来から行っているプライミング及び返血と改良型TR-2000MVでプライミング・返血・抜液工程を施行した場合の作業時間、機能の安全性や専用回路の安全性、業務の効率化について比較検討した。【結果】プライミング及び返血工程は、工程自体のプライミング時間は短縮にならなかった。返血時間は同等であった。しかし両者とも無人での工程が可能であるため集約業務の中での業務の効率化や人員削減に繋がった。プライミング時の気泡排出性能は問題なく行われた。返血時の安全性の比較では改良型TR-2000MVは動脈側への返血をなくす為回路にクレンメを設け動脈側から静脈側に一方向で行い安全な返血が行われた。返血後の抜液工程(130秒)が追加されたが作業時間には大きな影響はなかった。専用回路は東レ社製H-502-TRPを用いたが一部の変更依頼を行っている。【考察】返血スタッフや抜針スタッフを決めることでスタッフ動線が更に改善すると思われた。朝のプライミングはタイマーによる自動プライミングが可能であるが今後の検討課題としている。効率の良い業務を目指す為には機能をフルに活用できる環境作りが必要と思われた。【結語】改良型TR-2000MVは透析治療の安全性が保たれ、業務の効率化にも大きく貢献した。

057

除菌洗浄剤の洗浄力評価法の検討

058

各種エンドトキシンカットフィルタの性能評価(第一報)-繊維状活性炭使用の有無による比較検討-

あさひ病院 臨床工学室

佐藤 和弘1、佐野 博之1

川島病院1、川島鴨島クリニック2

鈴江 信行1、播 一夫2、水口 隆2、水口 潤1、川島 周1

【目的】透析機器に使用する洗浄剤として洗浄力の有無は必須条件である。今回、当院で従来から使用してきたQC-70STとQC-70STの進化版の商品であるECO-200を使用し、洗浄力比較試験及びその評価法について検討した。

【供試資料】供試薬剤はアムテック(株)製塩素系除菌洗浄剤ECO-200及びQC-70ST、またコントロールとしてRO水を使用した。被洗浄物は透析装置ライン付着異物を採取後、水懸濁液としPVDFメンブレンにて濾別成膜後自然乾燥したものを使用した。

【試験方法】RO水(No.1)、ECO-200(No.2-1:50倍希釈液、No.2-2:200倍希釈液)、QC-70ST(No.3-1:50倍希釈液、No.3-2:200倍希釈液)の計5系で、被洗浄物の浸漬試験を実施した。浸漬時間は1h及び20hを実施、試験液量を200mlとし、温度条件を25℃に設定した

【評価方法】a)分散状態の観察:被洗浄物の分散状態を観察し評価した。(静置浸漬法)

 b)重量測定:浸漬液をPVDFメンブレン上に濾別し、重量測定して溶解度を算出した。

 c)濾過メンブレン染色:洗浄実施後のメンブレンを分割し、それぞれポンソー3R及びPASで染色試験を実施、蛋白及び糖脂質の残存状態を評価した。

【結果】洗浄力傾向はECO-200≧QC-70ST>RO水となり、ECO-200の方がQC-70STと同じ希釈倍率であっても洗浄力が高いことが分かった。

【考察】今回行った試験法により洗浄力の定量評価が可能であることがわかった。また付着異物は易除去性の付着物と難除去性の付着物に2分されたが、易除去性付着物は糖蛋白質成分、難除去性付着物は糖脂質成分であると推察された。

【まとめ】今回の試験法は洗浄力評価に有効と思われる。またECO-200は従来品QC-70STよりも洗浄力が高く、透析機器の洗浄剤としてより有用であると考えられる。

【目的】大量液置換HDFでは、安全確保のためエンドトキシンカットフィルタ(ETCF)の使用は必要不可欠である。しかし顆粒状透析液用剤由来と思われる不溶性微粒子の存在が報告され、こうした不溶性微粒子のETCFへの影響が懸念される。今回、我々は各種ETCFへの繊維状活性炭(ACF)使用の有無による影響と、長期臨床使用における各種ETCFへの影響を検討し報告する。【方法】A原液作成後に、ACF設置の有無による各種ETCFへの影響を検討するため、1.中空糸外観のSEM観察および膜付着異物量の測定,2.透過流量試験,3.ET吸着試験および濾過試験,4.膜の強伸度試験を実施した。【結果】ACF設置によって膜付着異物量は少なく、透過流量低下も小さい傾向が認められた。一方、三ヵ月間の使用によって透過流量の増加するものが確認され、濾過実験によっても膜細孔径への影響が観察された。またETCF三ヵ月の臨床使用では中空糸膜強伸度の低下は認められなかった。【考察】ETCFを長期間使用するためには、ACF設置は必須である。また透析液清浄化実現にはETCFの選択は重要であると思われる。

059

関連病院におけるME機器管理の構築〜小規模病院における機器管理支援〜

060

ME機器管理業務の一部委託化に関する報告 第2報

JA北海道厚生連 旭川厚生病院 臨床工学技術部門

成田 孝行1、木村 吉治1、伊藤 貴之1、古屋 香1、丸山 雅和1、白瀬 昌宏1

西神戸医療センター1、株式会社 やよい2

加藤 博史1、児玉 哲也1、野田 真一1、市原 文1、上崎 勝生1、中村 充輝1、西川 誠治2、藤野 聡樹2

【目的】JA北海道厚生連は道内に18病院を所有している。当院は、平成6年よりME機器管理を実施しているが、臨床工学技士不在の厚生連関連病院においては、ME機器管理がされていないのが現状であった。今回、我々は臨床工学技士不在病院に対し医療安全を目的としてME機器保守管理、ME機器学習会を中心としたME機器管理支援業務を実施したので報告する。【方法】1.対象病院:美深厚生病院、2.管理方法:データーベース管理(Microsoft Access)3.業務内容ME機器保守管理(定期点検、修繕、トラブル対処)ME機器学習会、4.業務間隔1ヶ月に1回業務出張。【考察】ME機器管理支援業務を開始し、1年半経過し開始当初は、ME機器の劣化などが多く見られ部品交換、修繕などの機器が多くあった。人工呼吸器、麻酔器などの生命維持管理装置などの定期点検件数が33件、その他ME機器の点検件数が74件、修繕件数が66件、緊急時トラブル対処2件であった。学習会も計15回の学習会を実施しており、人工呼吸器の使用方法、シリンジ・輸液ポンプの使用方法などの学習会を実施し知識向上を図っている。管理支援業務を開始し支援先病院の状況から、医療機器の状態、スタッフの知識などから支援業務は必要であり継続することが大切であると思われた。当院は管理体制もある程度整った状況にあるが、支援先病院に関しては、今後も機器管理の充実を図り、安全な医療情報提供をしていくことが大切である。また、厚生連は地域医療を重要視する機関であり、必ずしも病院が都市だけとは限らず町村にも医療施設があり、そのために当院が基幹病院として医療情報提供、技術提供をしていかなければならないと考えている。【結果】ME機器支援業務を実施しすることで医療への安全の向上を努めることが可能と思われた。今後もME機器の保守管理、支援体制の確立がさらに必要であると考える。

【はじめに】およそ、1年前にME機器管理業務の一部委託化を導入し、その成果が挙がり始めている。そこで、それらの効果と今後の課題について検討したので報告する。【結果】処理件数:機器の点検は10.7%増加し、修理は62.2%増加した。院内での修理は全体の78.7%であった。業務軽減:1日あたり約2時間(50時間/月)の、業務量の軽減ができたが、臨床業務の激増により超過勤務の削減には至っていない。管理ソフト:機器情報はバーコードでの管理が可能となった。管理ソフトに大きなトラブルはなく、施設の要求に合致したものとなった。開発中の機能も多く、年間数回更新している。教育:委託職員への教育はほぼ終了し、一部の点検業務は委託業者のみでも可能となった。また、院内講習会などにも積極的に参加させている。さらに、委託業者を交えた業務カンファレンスを2ヶ月に1度開催している。マニュアル:機器固有の詳細なメンテナンスマニュアルを作成し、作業マニュアルとして使用している。経済性:委託料金に変更はない。(臨床工学技士人件費の60%程度)【課題】1.委託職員の移動による業務効率の低下が懸念される 2.委託業務の範囲を見直し再設定する必要がある 3.点検機器と管理ソフトの接続について、メーカーと調整が必要である  4.修理点検件数の更なる増加 5.対価効果の証明 などが今後の課題だが、個々に対応が可能だと考えている。【結語】ME機器管理業務の委託化は、検体検査や医事会計などの委託業務と同様に有用性が高いと考えられる。そこで、認知度を向上させ十分な対価効果を得るために、それ全体の持続的な改革が必要である

061

ME機器管理の外部委託について

062

新病院移転に伴う臨床工学技士の役割

群馬県立心臓血管センター 臨床工学課1、鈴鹿医療科学大学 医用工学部 医用電子工学科2

安野 誠1、中嶋 勉1、花田 琢磨1、遠藤 裕介1、宇津木 里佳1、前田 恒1、戸田 久美子1、立崎 健一2

君津中央病院 臨床工学科

佐々木 優二1

【はじめに】臨床工学技士の業務は臨床技術提供とME機器管理である。どちらも医療の安全確保のためには疎かに出来ない業務である。しかし当センターにおいては業務時間のほとんどを人工心肺業務や心臓カテーテル室業務などの臨床技術提供の業務に費やすことが多くなったために、定期点検などが実施できないことや時間外勤務が増加するなどの問題点が発生してきた。そこで平成16年1月より外部委託会社から専任者1.5名の派遣を受け、臨床工学課 課長の下でME機器管理業務に当ったことの報告をする。【対象と経過】平成16年1月から3月まではME機器管理台帳の整理、過去の履歴の登録、機器管理マニュアルの整備などを行う準備期間とした。導入当初の対象機器は522台であった。平成16年4月から実稼働となった。これに人工呼吸器、人工心肺装置、血液浄化装置などの生命維持監視装置は含めなかった。【結果】導入当初、日常点検2機種、定期点検6機種、総数522台であった。平成16年10月より日常点検3機種に、定期点検は10機種に、総数582台となり、蘇生バック27セット、ジャクソン・リース32セットを管理の対象に加えることになった。人件費としては、外部委託の場合:年間契約費用550万円、職員が行った場合(経験3年目と臨時職員):600万円が見込まれる。経費の削減としては、保守契約費165万円、修繕費17万円、合計182万円の経費が節減できた。また4月から12月までの業務内容を全てメーカー依頼に換算した場合は、必要経費として1238万円と試算された。職員の時間外勤務は平成15年:1名あたり平均58時間/月、平成16年は平均54時間/月で横ばいであった。【まとめ】院内ME機器管理に外部委託を導入し、機器管理の対象が拡張でき、経済的な負担も発生しなかった。

【はじめに】臨床工学技士の業務は臨床や保守点検など多種多様である。この度我々が経験した病院建築や移転業務はそう何度もあることではない。病院の移転にどのように関わり携わってきたのか、また臨床工学室設計と新たに始めたME機器の中央管理についてあわせて報告する。【詳細】新病院建築計画は主に臨床工学室や手術室、集中治療室の建築に参加し、新規購入ME機器は購入計画から納品および点検・設置までを受け持った。大多数にのぼる移設機器を選定し購入希望を望む部署との調整は大変な作業であった。移転に伴う患者搬送は平成15年7月12・13日両日に、入院患者数216名、救急体制は維持されたままおこなわれた。ME機器の搬出や人工呼吸管理下患者を中心にサポートにあたった。【結語】病院移転にはいろいろなセクションが協力し合って計画的におこなわなければならない。臨床工学技士は施設設計から新規購入ME機器、はたまた患者搬送まで重要な仕事に欠かすことができない職種である。これらの実績は私たちにとって自信となり病院に対し十分に貢献したと考える。

063

ME室開設と臨床工学技士業務

064

保守管理における安全性と経済効果

特定・特別医療法人 雄博会 千住病院

久田 晋也1、小松 貴子1、龍 則道1、浦 秀子1

仁友会 泌尿器科内科クリニック 臨床工学科1、仁友会 北彩都病院2

小西  康智1、千葉 誠1、森 勝則1、江幡 俊明1、水永 光博1、安済 勉1、石川 幸広2、井関 竹男2、石田 裕則2

【背景・目的】近年、医療機器は著しい進歩を遂げているが、医療機器に関する事故も発生しており、より安全な医療機器の提供と適切な使用が望まれている。当院では2004年2月にME室を開設、同年9月より本格始動した。そこで、ME室開設前後における臨床面、保守管理面での変化・問題点について検討した。【方法】ME室開設前後の機器の貸出件数、院内修理件数等の変動を調査した。又、人員配置と業務内容、問題点についてまとめた。【結果】機器の貸出件数は開設前後3ヵ月を調査したがほぼ同数で変動はなかったが、院内修理件数は開設前の17件に対し開設後34件であった。ME室開設間もない時期は、ME機器中央管理システムが病棟スタッフに深く浸透してないことによる戸惑いが生まれる問題があった。ME室開設後の臨床工学技士の業務配置は透析センターとME室との日別ローテーションとなっているため新人への指導状況の把握が困難であった。【考察】 ME室開設したことにより医療機器保守管理・修理を中心に時間を確保でき、院内修理件数の増加によりコスト削減が可能になった。今後、医療機器保守管理の質の向上、院内スタッフとの密な連携を高めていく必要がある。

【目的】透析監視装置の安全性と性能維持の為、定期点検を実施している。部品稼働時間、保守点検の履歴をデーター管理することにより、予測できる事故を未然に防ぐ事が出来ているので報告する。【方法】不定期点検を平成2002年7月より1回/M点検に変更し、部品稼働時間、自己診断結果を記録に残し、部品交換を行った際には発生状況・作業内容・稼働時間等を記載した報告書を作成し、データー管理を行なった。【結果】2000年8月より2002年6月のメンテナンス状況は補修・調整13件、部品交換5件。2002年7月より2004年12月では補修・調整48件、部品交換111件である。主要部品交換時期は、Uシール、メーカー推奨8000時間に対し最大10312時間。電磁弁ダイアフラム4000時間に対し最大12510時間の使用が可能であった。5割をメーカーに依存していた修理が、2002年7月以降は159件中4件である。【考察】データー管理を基に、メンテナンスを実施している事から、故障率が減少し稼働率のアップが図られた。これは、経済的かつ安全な保守管理が行えていると思われる。しかし、データー管理は必要な項目に従いデーター入力を行っていけばよいが、臨床工学技士のメンテナンスに、技術格差が見られる事も結果として表れた。この問題を改善すべく、マニュアル作成、技術講習会への積極的な参加を確立させ、さらに、保守管理における安全性と経済効果へと繋がる努力が必要と思われる。【結論】今回明確となった問題点の早期解決を図りながら、更なる安全性と経済効果の追求に勤めた保守管理体制を継続させていきたい。

065

輸液ポンプの流量精度の検討 −輸液チュ−ブによる影響−

066

シリンジポンプの流量誤差について

金沢医科大学病院 ME部1、金沢医科大学 一般・消化器外科2

土谷 勇吾1、大森 政幸1、中川 透1、知久田 博1、洞庭 政幸1、内山 充司1、荒木 忠1、松本 圭司1、中川 重則1、高島 茂樹2

JA北海道厚生連 札幌厚生病院 臨床工学技術部門

橋本 佳苗1、完戸 陽介1、森久保 忍1、石川 俊行1、室橋 高男1

【目的】輸液ポンプ点検において流量精度チェックは特に重要な点検項目の一つである。しかし、その測定結果はポンプと輸液チュ−ブの複合誤差(測定系の誤差は無視)であり決してポンプ単体、固有の精度ではない。従って、同規格であってもチュ−ブを換えれば当然、測定精度に影響(チューブの内径精度が主因)する。今回、輸液チュ−ブによるポンプ流量への影響度把握を目的として、同規格の複数チュ−ブを使用し流量測定を実施、比較検討を行った。【対象と方法】輸液ポンプ(テルモ社製、TE-112新品)3台と同規格で異なるロットの輸液チューブ(テルモ社製、TS-U350P027、ロットA:3本、B:5本、C:5本)を使用し、流量(水道水)は120mL/時間と25mL/時間、測定時間は15分とし電子天秤(島津製作所社製UW4200H)を用いて測定、比較した。【結果】流量120mL/時間の場合、輸液ポンプP1での各ロットの輸液チューブでの流量誤差の平均値±SDはロットA:6.6±0.71%、B:4.2±0.66%、C:3.0±0.71%となり、ロットAの輸液チューブの場合では他のロットの場合と有意(p<0.05)に精度が低下した。またロットAはロットCより全ての輸液ポンプで有意(p<0.05)に測定量が多かった。流量25mL/時間でもほぼ同様であり、何れも許容域(≦10%)内ではあるが、流量精度へのチューブ差による影響は大であった。【結語】輸液チュ−ブによる差、影響は予想外に大きく、許容域を超えた場合、ポンプのみならずチュ−ブ精度を疑うことも重要である。チュ−ブチェック用として適正に精度調整された基準ポンプの保持は不可欠である。また測定には電子天秤を使用したが高精度、PCに直結、長時間自動測定、自動校正機能と使い勝手も良好。さらに何よりポンプテスタ−に比べ格段に低コストであり、その有用性を強く実感した。

【はじめに】シリンジポンプで昇圧剤使用中におけるシリンジ交換時、ポンプを一時停止するため血圧下降がみられる事がある。その他の要因はないかと考え、数々の環境を想定し輸液ポンプテスター(IDA4)を用いて測定した。その結果、若干の知見を得たので検討を加え報告する。【方法】シリンジサイズを20ml、30ml、50mlと変更し、10ml/hrにて測定した。次に点滴スタンドへ固定する高さを測定器より0cm、40cm、80cm、-40cmと変更し10ml/hrにて測定した。そして延長チューブの長さと太さを変更した5条件で10ml/hrにて測定した。最後に設定流量を1ml/hr、10ml/hr、20ml/hrと変更し上記全ての条件で測定した。【結果】シリンジサイズが大きいほど設定流量に比べて開始時流量に大きく差が生じた。次にシリンジポンプを80cmへ固定した場合、他の条件に比べ開始時流量に大きく差が生じた。そして太く長いチューブでは、他の条件に比べ大きく差を生じた。また、すべてのスタートアップカーブより開始時流量には差が生じ、設定流量の3%以内に入るのに1ml/hrでは2時間以上を要した。【まとめ】同じ装置でも使用環境、方法で若干流量に差がでる事がわかった。そのため適正なシリンジサイズ、シリンジポンプの設置高、延長チューブの選択が必要である。また高精度を保つためには、病状が許す範囲で低流量ではなく、注入液を2倍以上希釈する等の時間当たりの流量を増やしての使用が望ましい。すべての条件で開始時の流量誤差が大きい事から、装置によるルート分の早送りして押し子との隙間を減らすなどの工夫が必要と考え今後の課題とし検討する予定である。

067

リースによる輸液ポンプ、シリンジポンプの機種統一化

068

アンチフリーフロー機構の新展開−輸液ポンプTOP-7100の使用経験−

慶應義塾大学病院 医用工学センター

植田 健1、陣内 真1、森田 雅教1、柴野 豊彦1、茂田 綾1、大石 愛光1、冨永 浩史1、又吉 徹1

名古屋市立東市民病院 臨床工学技士1、西尾市民病院 臨床工学室2

清水 芳行1、河合 紀幸2

【はじめに】当院では、輸液・シリンジポンプを各病棟(25病棟)で分散管理していた。総数は、輸液ポンプ182台、シリンジポンプ275台で3社8機種が混在していた。今回、医療機器管理室を開設し、リースによる輸液・シリンジポンプの機種統一化を行ったので報告する。【分散管理・多機種混在の問題点】分散管理の問題点として、保守点検の不備、看護師の負担増、不適正使用などがあった。多機種混在の問題点として、操作ミスや専用回路を多品種揃えるため、トラブルや無駄なコスト発生などがあった。【方法】病院側に医療機器管理室の設置を要請した。また、各病棟での稼働率を調べ、用度課と現状+機器追加購入か、リースによる機種統一かを検討した。次に看護部と機種統一化に向けて機種選択を行った。【結果】厚生労働省・都健康局の指導もあったため、医療機器管理室が設置された。平均稼働率は約45%であった。ただし稼働率は病棟によって格差が大きく、常時100%に近い病棟からほとんど使用していない病棟まであった。コスト的にはメンテナンス付リースの方が機種追加購入より高額であったが、安全面を考慮し、全台入れ替え、リースによる機種統一を選択した。機種は使いやすさから輸液ポンプはテルモ社製TE-161S、シリンジポンプはテルモ社製TE-331Sとした。また、リース台数は今後の使用率増加を考慮して、輸液ポンプを220台、シリンジポンプを300台とした。導入前に臨床工学技士とメーカーで全病棟に対し新機種の操作法および注意点の説明を行った。【考察】機種を統一することにより、操作、点検、マニュアル作成が容易となった。全病棟に対し、操作法および注意点を説明したことによって操作法が統一し、安全性が向上した。【結論】中央管理と機種統一することにより、安全性は向上した。また、看護師の負担は軽減し、適正な使用、効率的な運用が可能となった。

【はじめに】平成15年3月の厚生労働省通知「輸液ポンプ等に関する医療事故防止対策について(医薬発第0318001号)」を受け、各社様々な医療事故対策を施した輸液ポンプを発表している。輸液ポンプ関連の事故の中でも、特に患者に重篤な影響を与える可能性のあるフリーフローの防止対策は、単に人的エラーの防止を考えるのみでなく、機器設計上フリーフローが起こりえない安全対策を講じることが可能ならば、事故のリスク自体を大きく軽減させることができる。今回我々は、従来の輸液ポンプのフリーフロー対策とは一線を画した、(株)トップ社製TOP−7100を使用する経験を得たので、装置に特徴的なフリーフロー防止対策や、現状での問題点等もあわせて報告する。

【本装置でのフリーフロー防止対策】フリーフロー事例の多くは、輸液回路のクレンメを閉じずに輸液ポンプのドアを開け、ドアオープン時に機能するチューブクランプ機構を意図的に解除するか、機構自体の動作不良により発生している。TOP−7100のフリーフロー対策では、輸液回路の脱着をドアを開けて行うという概念を排除し、フリーフロー防止クリップが装備された輸液セット取り付けアタッチメント付専用回路をワンタッチで装置本体に取り付ける方式が採用されている。また、この専用回路を使用する事により、従来のチューブ装着ガイドでは完全には防止することが困難だった装置内部での輸液セットの不適切な装着(たわみや蛇行)を防止することが可能である。

【問題点とまとめ】一時的な点滴から輸液ポンプ管理、再度落差点滴管理という患者の状態変化に応じた輸液精度管理をこの専用回路のみでは行うことができず、輸液セット交換時の人的エラーのリスクや、交換に伴う経済的負担が現時点での問題点であり何らかの対策が望まれるが、フリーフロー防止対策としての本装置のコンセプトは評価できるものである。

069

ニプロ新シリンジの性能評価

070

高周波電流によるメス先破損の経験

琉球大学 医学部 泌尿器科1、琉球大学医学部附属病院 ME機器センター2

小田 正美1、迎里 陶一郎2、外間 実裕1、大城 吉則1、菅谷 公男1、小川 由英1

自治医科大学附属病院 臨床工学部

繁在家 亮1、柳館 直美1、進藤 靖夫1、高橋 俊郎1

【目的】昨年、二プロ株式会社がテルモ仕様ニプロ新シリンジを製造販売するに至った。ニプロ新シリンジは、テルモシリンジと同等の形状にし、シリンジポンプ使用時に製造元シリンジによる切り替えを行わなくてよい新シリンジとしたが、このニプロ新シリンジが、テルモシリンジポンプで正確に動作するかを流量、残量警報時の残量、閉塞圧の面から検討した。

【方法】シリンジポンプの種類はTE-332(テルモ社)を使用し、シリンジポンプ内部の設定は、テルモ仕様にした。シリンジは、ニプロ新シリンジ(N社)、テルモシリンジ(T社)を使用した。シリンジの種類は、20 cc で行い、ロット番号の違う3種類を使用し、流量測定は、各々5回測定した。測定方法は、国際規格に規定されている方法を用いた。注入速度は、5 ml/hr で2時間行った。また残量、閉塞圧警報がなるまで注入し、その時点の残量、閉塞圧を測定比較した。

【結果】N社の20 cc シリンジのロットの違う3種類の平均誤差は、−3.37±1.56%、−4.21±4.12%、−2.01±1.54%で各々に差はなかった。T社では、−4.04±3.42%、−3.26±3.40%、−1.52±2.95% で各々に差はなかった。残量警報時での残量は、N社が1.19±0.04 cc、T社は1.44±0.08 ccであり、T社が有意に多かった(p<0.001)。閉塞圧測定では、N社が608.8±27.7 mmHg、T社が671.6±51.5 mmHgでありT社の方が高かった(p<0.04)。

【結論】テルモシリンジポンプTE-332を使用し20 cc ニプロ新シリンジの性能評価を行ったところロット番号による精度の違いはなかった。テルモ社製シリンジとでの比較は、5 cc/hr の速度で違いはなかった。残量試験、閉塞圧試験において違いが見られたが、ばらつきに差がないことから臨床使用においては問題がないと思われた。

【はじめに】今回、電気メス使用中にメス先電極(以下メス先)の破損を経験し、その原因と対策について検討した。【経過と方法】2004年4月電気メス(Valleylab社製フォース FX-C)を開胸器内で操作中、メス先の胴体部分から開胸器に火花が飛びメス先部分を破損した。メス先とControlpencil(以下CP)の交換を行なったが数分後、同様の現象が起こった。使用の再検討を考慮したがその後問題は発生しなかった。破損状況からメス先の接続部分に導電性液体が浸入したために通電したものと推測し、接続部分の液体浸透実験と擬似回路による出力実験を行なった。浸透実験は接続部分にインドシアニングリーン色素を浸し、接続内部への浸透距離を計測した。出力実験では開胸器に見立てた金属とCPの距離を0.5〜1.0mmで配置し、接続部分の乾燥状態と浸潤状態における切開および凝固モード30〜120Wの空打ち出力を行なった。またメス先先端からの通電時も同様に実験を行なった。【結果】浸透実験では接続部に浸透した色素は内部の金属部分まで着色していた。出力実験においては接続部分が乾燥状態で空打ちを行なっても火花は見られなかった。浸潤状態では凝固モード30Wで容易に火花が飛び、120Wの高出力では今回の事例と同様の破損が見られた。またメス先先端からの通電時では、高出力および浸潤状態でも破損はなかった。【考察】今回の破損原因は導電性液体の浸透と空打ち操作および開胸器との距離等の条件が重なり、空打ちされた電流が接続部分の液体を通過して、メス先胴体部分から開胸器へ流れたために起こったものと推測された。対策として接続部に浸入する液体を除去するかまたは空打ち操作をしないことが高周波分流の防止には重要で、術者に対し技術的な情報提供を行なっていくことも必要である。【結語】電気メスを使用して安全に手術を遂行するためには、機器の性能を熟知して使用することが重要であると考えられた。

071

手術室における内視鏡装置管理の改善について

072

手術室での臨床工学技士の業務展開

埼玉医科大学総合医療センター MEサービス部

中村 貴博1、御手洗 哲也1、森田 高志1、石井 正晃1、本田 博一1、佐川 澄明1

聖隷浜松病院 臨床工学室

北本 憲永1、鈴木 克尚1、神谷 典男1、鈴木 政則1、原 季実子1、原 真介1、伊藤 敬1、鈴木 有美1

【目的】当院では手術室に臨床工学技士2名を配置し業務を行っている。近年、内視鏡下手術は急増しており、内視鏡及び患者使用中の安全管理が重要になってきている。今回、内視鏡装置を安全かつ誤操作が起きにくいように使用するための改善を行ったので報告する。 【対象及び方法】対象は2000年4月から2004年11月まで当院で行われた内視鏡下手術、3757件で発生したトラブルを元に検討した。内視鏡装置(モニタ、カメラ本体、光源装置、記録装置を電気信号ケーブルで接続している)は9台、カメラは8種類。【結果】トラブルで多くを占めていたのがヒューマンエラーによるものであった。特に内視鏡下手術が複数同時に行われる時や、他の技士が対応できない時にあった。また、手術室のアイソレーションアラームが鳴ることがあり、装置の漏れ電流を測定したところ、装置単体では問題ないものの、装置全体を接続した状態で測定すると許容範囲外であった。その他の機器トラブルとしては光源ランプ切れ、配線ケーブルの断線等が発生した。【考察】ヒュ−マンエラーの内容は配線間違い、画像記録忘れ、光源のスタンバイ解除忘れ等があり確認をすれば多くは防げる事であった。そこで、急な引き継ぎ時や技士が急に離れても準備状況がわかるよう確認チェックシートを作成し各モニタに取り付けて確認できるようにした。また、配線ケーブルが正しく接続されていないと画面が映らないように各装置の配線を直列に変更した。これらによりヒューマンエラーを少なくすることができた。また装置全体に絶縁トランスを設置し漏れ電流を抑える電気的な安全対策を行った。【結論】チェックシート導入によりヒューマンエラーが少なくなった。また、漏れ電流は絶縁トランスを用いたことにより少なくなった。以上の事から内視鏡装置の安全管理において、臨床工学技士の果たす役割は大きいと考える。

【はじめに】当院の臨床工学室(現在スタッフ18名)は、1992年に麻酔科管理下に手術ME室として発足した。その当時3名の技士により、人工心肺を中心に業務を展開していたが、現在では手術室だけで8名の技士が医療機器の操作・管理に参加し、業務展開を行っている。今回、手術室での臨床工学技士(以下、CE)の関わりから現在までどのように業務拡大を行ってきたか報告する。【経過】発足当初はCEの認知度が低く、決められた業務も少なかったことから、手術室内での力仕事や蛍光灯の交換、術中写真、天井の水漏れなど雑用的なことを率先して行った。それと同時に麻酔医指導の下、全身麻酔導入時の麻酔介助、人工呼吸器設定、術中の換気条件変更など今後のICU・病棟での人工呼吸器業務の展開も考え業務参加した。その後、内視鏡・顕微鏡手術、特殊機器のセッティングなど、時間の許せる範囲で各科手術に参加した。翌年2名の増員が行われ、ルーチン業務として確立していくようになった。その後、医師・看護・施設課から、医療機器の操作・管理は依存され、徐々にCEが認知されてきた。同時に病棟での業務展開が開始され日常業務に追われる状況となった。また、看護師の医療機器離れは進み、トラブルは発生してから処理することが増加した。そのため予防的処置を行っていく必要性を強く訴え3名の増員が行われた。その結果、滅菌前の点検業務、術中の使用前点検など患者へ使用される前の点検業務を充実することが可能となった。また、術中のSEP、MEPなど誘発電位測定、眼科手術の全例立会い、術中放射線イメージ装置操作介助、ナビゲーション機器操作など業務展開を継続しており、すでに次の増員を検討中である。【まとめ】CEの業務は多岐にわたり参加することが可能である。率先して業務参加することで医師・看護師との信頼関係を築くことが可能となり、病院として臨床工学技士が広く認知され、業務展開と増員が容易となる。

073

当院における手術室機器管理業務

074

麻酔器の保守管理における現状について

財)甲南病院 人工腎臓部 臨床工学室1、中央手術部2

荒川 隆宗1、土谷 武嗣1、三好 千鶴1、藤井 清孝1、岡本 綾子1、井上 紀子1、保月 栄一1、武本 博子1、藤森 明1、津田 三郎2

帝京大学医学部附属病院 ME部1、帝京大学医学部附属病院 麻酔科2

玉城  聡1、小川 竜徳1、五十嵐 敦哉1、後藤 隆久2

【はじめに】当院では、臨床業務と機器管理業務があり、機器管理業務においては平成7年より、病棟で使用しているME機器について保守管理を行ってきた。購入から破棄・更新に至るまで保守管理を行うなか、手術室内の機器においては、一部しか管理していないという現状に至っていた。そこで、手術室の多種多様の機器について点検マニュアルを作成し、保守管理業務を行った。当院での手術室管理業務の現状について報告する。

【経過及び現状】各メーカーから、操作及び点検方法の説明を参考に点検表を作成した。技士のできる範囲で保守業務を行い、機能的・電気的試験を行った。また、消耗品をストックすることで、定期的に部品の交換が行え、機器の耐久性や信頼性にも繋がっている。月に一回は、手術室スタッフとカンファレンスを開き、作業報告書を提出している。作業報告書は、交換部品や状態などを表記し、スタッフに分かりやすいようにしている。 

【結果】臨床工学技士が点検することで、機器の劣化具合や消耗品・フィルターなどの交換目安が把握でき、部品をある程度ストックすることで緊急の対応も可能となった。また、作業報告書を作成し合同でカンファレンスを開いたことで、機器の情報を交換することができ、手術室スタッフにも機器管理に対する認識は高まっている。

【まとめ】医療機器が進歩していくなか、手術室で様々な機器を取り扱うのは非常に困難である。しかし、臨床工学技士が機器の説明や点検をすることでヒューマンエラーや事故を未然に防ぐことができる。また、カンファレンスを開くことで機器の情報を提供してくれるメリットもあり、効率の良い機器管理業務が行える。臨床工学技士が保守管理に携わることは、コスト削減や安全面にも繋がり、手術室での機器管理業務は必要だと考える。

【はじめに】近年,麻酔器の安全性を向上させるために,それまでは別々に開発されていた麻酔器とモニター機器を組み合わせることによって麻酔ワークステイションという発想が生まれた。その後麻酔器および周辺機器を自由に選択できる方式として,麻酔ワークステイションをもう一歩発展させた形で麻酔システムという概念が生まれた。それらのシステムは機能と安全性を維持するために日常および定期的な保守管理が重要である。

【目的】ME部では麻酔器の機種統一により効率的な保守管理を目指して,メーカー主催のメンテナンス講習会にて修練を行った。今回,麻酔器について部品交換および総合点検を行ったので報告する。

【方法】2004年12月から2005年1月にかけて9台の麻酔器(GE横川メディカルデーテックスオメダAestiva/5)について12ヶ月部品交換を行い定期点検マニュアルに従い点検を行った。

【結果】部品交換および定期点検は1台あたり3時間程度を要した。定期点検を行うことで内部リーク1台とガスリンクシステムの調整不良が3台発見された。

【考察】当院手術室では,昭和53年より技士が常駐派遣されたことによって麻酔器の保守管理が始まった。近年医療機器におけるリスクマネジメントのあり方に関しての報告が多数報告されている。中でも多機種の機器が存在することでの誤操作などは機種を統一化することで減らせることができる。消耗品の増大や保守管理の面からも統一化のメリットは大きい。また院内で臨床工学技士が行うことで1台あたりは部品代金のみで,作業工賃と出張費のコスト削減につながる。定期点検を行うことで臨床トラブル事例や,不具合の早期発見や,メーカーへの迅速な連絡対応が取れる

【結語】部品交換と定期点検を行うことで不具合の早期発見につながった。

075

手術室における波形ファイリングシステムの構築

076

術中誘発電位測定との関わり

伊勢原協同病院 臨床工学室

末永 貴久1、西ヶ谷 淳平1、水谷 千咲香1、漂川 大輔1、山根 雄介1、上村 克美1、上田 健史1、茅野 敬典1、谷口 洋二1、安藤 純一1

聖隸浜松病院 臨床工学室

鈴木 克尚1、神谷 典男1、北本 憲永1

【目的】当院手術室では、GE横河メディカル社製S/5患者モニター及びS/5iCentralネットワークコンピューター(以下S/5iCentral)を導入し、ベッドサイドで術中モニタリング、ナースステーションでは遠隔監視をそれぞれ実施している。以前は長時間波形の保存が不可能であった為、今回新たに波形ファイリングシステムをGE横河メディカル社と共同で開発し、運用したので報告する。【方法】当院の6室ある手術室にはLANポートがそれぞれ設置してあり、各手術室のS/5患者モニター(現在計3台)とS/5iCentralはイーサネットスイッチを介してLAN接続されている。今回新たにS/5iCentralに波形ファイリングシステム(データ取り込み用端末、サーバ、外部メディア記録用操作端末)を接続し、サーバ内蔵ハードディスクへのデータ取り込み、DVD-Rなどの外部記憶メディアへのデータ保存、保存波形のプレビューなどの各機能を使用し評価を行った。【結果】以前は不可能であった長時間波形の保存が可能となった。保存データに患者氏名や術式などの付加情報を入力する際や、外部記憶メディアへのデータ書き込み操作に習熟を要することがわかった。【考察】長時間波形の保存と、外部記憶メディアの利用が可能となり、長期間の波形保存が可能であるが操作は多少難しいため、より良いユーザーインターフェースの開発が今後の課題であると思われた。【結論】波形ファイリングシステムは手術室での長時間波形の保存に有用である。

【目的】誘発電位測定による術中モニタリングは神経伝導路の物理的障害や中枢神経の虚血の同定を確認できることで、様々な分野で応用されている。当院では、臨床工学技士(CE)が手術室に常勤し、24時間対応可能であること、特殊治療機器にも精通してきた経緯もあり、術中誘発電位測定を各科より依頼される。今回CEと誘発電位測定の関わりについて報告する【対象および方法】2002年12月から2005年1月までに測定依頼のあった116例について依頼科、測定項目、測定方法につていて調査した。誘発電位記録装置のシステムは日本光電社製ニューロパックMEB-2216、運動誘発電位の刺激装置はDigitimer社製MultiPuls Stimulator D185(電気刺激)、Magstim社製Magstim200/bistim module(磁気刺激)を使用した。導出電極は皿電極およびディスポ電極を使用し、装着には1〜2名で行った。【結果】116例中、脳神経外科(脳外科)44例、心臓血管外科(心外科)3例、整形外科79例。脳外科では聴性脳幹反応(ABR)9例、体性感覚誘発電位(SEP)6例、経頭蓋的電気および磁気刺激による運動誘発筋電位(MEP)17例、脳波7例、心外科ではSEP 2例、SEP+MEP 2例、整形外科はSEP+MEP 82例であった。整形外科では2004年7月からせぼねセンター開設とともにヘルニアを除く脊髄脊椎に関する手術全症例に対し脊髄機能モニタリングを行っている。SEP、MEPの電位変化は術前のcontrol波形から振幅50%以下の低下、潜時10%以上の延長で神経機能異常と判断し術者に報告している。【考察】誘発電位測定は術後の麻痺予防だけでなく脊椎の除圧が行われることで麻痺の軽減傾向が確認できる。そのため、医師の信頼を得て業務を確立していく必要がある。また、MEPは麻酔の影響を受けやすいため、麻酔科医とも綿密な打ち合わせが必要である。【まとめ】術後麻痺予防や術後評価にもつながり、手術の安全確保と質向上につながる。CEの重責を担う業務のひとつとして考える。

077

人工呼吸器の使用中点検のためのチェックリスト作成とその使用経験

078

開心術中に補液・輸血ポンプが誤動作した一例

東京大学医学部附属病院 医療機器・材料管理部

佐藤 美保子1、新 秀直1、玉井 久義1、大江 和彦1

日本赤十字社和歌山医療センター 手術室1、日本赤十字社和歌山医療センター 医療機器中央管理室2、日本赤十字社和歌山医療センター 麻酔科3

前田 充徳1、南村  秀行1、朝日 雄一郎2、伊良波 浩3

【はじめに】当院では2001年10月より人工呼吸器(13機種77台)の中央管理を本格的に開始した.管理の概要は,専従臨床工学技士4名による保守点検業務と機器搬送専従職員2名による搬送業務よりなる.しかし近年,人工呼吸器に関わる事故報道が後をたたない.そこで事故防止対策として,臨床工学技士による人工呼吸器の使用中点検について見直しを行い,2002年10月よりチェックリストを用いた使用中点検を開始したので,その方法,経過を報告する.【チェックリスト】チェックリストはメーカー推奨の点検項目を基本に,過去のインシデント情報等を取込み独自に作成した.具体的には,アラーム設定が適切か,回路接続に不備はないか,機械的作動に異常はないか等である.また,日常臨床で点検を行うということをふまえ所要時間等の効率性にもある程度配慮した.その後2003年9月,12月に新たなインシデント発生に対応したチェックリスト改訂を行った.【実際の運用】人工呼吸器の事故は回路交換時に多く発生すると考えられるため,人工呼吸器導入時及び通常1週間毎の回路交換後に臨床工学技士が病棟巡回を行い,チェックリストに基づいて確認を行った.【点検の結果】2年2ヶ月の間に,延べ2427件の使用中点検を実施した.その結果,281件の問題点(設定不備34件,呼吸回路不備41件,呼吸器本体関連132件,加温加湿器等の周辺機器関連59件等)が指摘された.尚,問題点発見時には各病棟に情報をフィードバックできるよう病棟巡回時やニュースレター,看護師向け人工呼吸器勉強会等で注意喚起を行っている.【最後に】使用中点検を行うことで281件のトラブルを重大事故に発展する前に防止することができ,安全管理上有用であると考える.今後は随時チェックリストの改訂や過去のトラブル事例から学び,さらに安全性の高い人工呼吸器の管理を行う必要がある.

【目的】開心術中にニプロ社製補液・輸血ポンプMP-300?(以下輸血ポンプ)の流量が突然変わる誤動作を経験した。今回、原因及び改良を行った内容について報告する。【現象】設定値10ml/minの流量が160ml/min(最高値)に変化した。アラームの発生や流量表示に変化はなく、モーター音、ローラー回転数の異常により発見された。最高値であったかは後日、モーター音やローラー回転の目視確認にて判断された。この輸血ポンプは機種変更により整備してから約1ヶ月後の機種であった。【方法】流量をBIO-TEK社製ポンプテスターIDA-4Plus?にて測定した。また、手術中にME機器の電磁ノイズをノイズ研究所社製EMIノイズセンサーFVC-777にて測定した。【結果】流量の測定を長時間にわたり施行したが異常を認めなかった。電磁ノイズ測定では500K〜30MHzの高周波で30mA以上のノイズが電気メスと電気メス使用時に超音波診断装置の経食道プローブから測定された。【考察】電気メスのメス先より発生した電流の一部や空中に放出した電磁ノイズが経食道プローブに流れ、輸血ポンプのフロントパネルに接触することで内部に流入したと推測された。このノイズにより流量を制御するCPUが誤動作したと考えられたため、模擬試験を行ったところ同現象を再現出来た。【改良点】経食道プローブ、超音波診断装置とME機器との非接触を徹底した。メーカーは不具合事象と注意喚起の通達、フロントパネルの裏にアーシングしたアルミフィルムとフロント部にカバーを取り付ける対策を行った。【結語】開心術中に輸血ポンプの誤動作を経験した。原因は電気メスから発生した電磁ノイズが経食道プローブを介して輸血ポンプに流れたためと推測された。原因を究明し的確に対応したことで安全に使用出来る環境となった。 

079

ネブライザヒータの点検方法について

080

低圧持続吸引器の定期点検をはじめて

横浜栄共済病院 ME科

佐藤 邦昭1、中川 孝太郎1、間中 幸一1

東京大学医学部附属病院 医療機器・材料管理部

勝又 恵美1、新 秀直1、小田 祐貴1、長江 祐吾1、山本 裕子1、玉井 久義1、大江 和彦1

【はじめに】当院ではネブライザヒータの中央管理を2002年から行ってきた。今回定期点検の温度測定方法を改定したので報告する。使用している機器は二機種であり、今回温度測定方法を改定したのは小林メディカル社製インスピロンヒータの一機種であり、管理台数は34本である。測定方法はメーカー推奨方法を参考にした。【方法】ボトルに水道水を400ml入れインスピロンヒータをセットして、ダイヤル5で30分運転する。30分後の水温をボトルの最低水位ラインで測定する。正常温度範囲は55℃(−7℃+5℃)とした。使用した温度計は、エムケーサイエンティフィック社製デジタル温度計FC-300Sで測定範囲が−50℃から+300℃。測定誤差は±1℃である。温度測定時の測定場所を固定するために、専用のセットを作製した。期間は平成16年2月から12月の11ヶ月間とした。【結果】測定回数138回、正常範囲内113回、異常温度25回であった。異常温度のうち15本は製造から5年以上経過しておりメーカーにて修理不可能であるため廃棄更新した。残りの2本はメーカーにて再調整、8本は保障期間内のためメーカーにて無料で再調整を行った。【考察】今回の点検方法改定は、加温異常による医療事故を防ぐ上で有効であると思われる。温度点検方法を改定し安定した温度測定が行えるようになり、長期使用機器の適切な廃棄時期を特定できた。しかし、測定方法のダイヤル設定位置の誤差が拭いきれないことが、今後の検討課題である。

【はじめに】当院では27台の低圧持続吸引器(浜医科工業,サーボドレイン2000TM)を中央管理している.管理形態としては,MEセンターへの貸出依頼に対し,外注職員による病棟への機器搬送,そして1人の患者に使用後,再び回収し清拭及び終業点検を行うというものであった.ただし,終業点検としては,外観点検,動作試験等の簡単な項目のみであった.そこで,2004年1月からより詳細な項目を含んだ定期点検を開始したので,その方法とこれまでの経過を報告する.【チェックリスト作成】まず定期点検用チェックリストを作成した.チェックリストは,メーカー作成の定期点検項目を基に,当院での故障事例を取入れて独自に作成した.点検間隔は4ヶ月とした.また複数の臨床工学技士が関与する際に,点検水準が一定となるよう点検マニュアルも作成した.【経過】2004年1月からの11ヶ月間に延べ53件の定期点検を行った.そのうち,外装の破損15件,吸引圧低下2件,部品紛失4件等が発見された.またほとんどの機器で吸引チューブと外装内部に廃液等による汚れが認められた.点検中,点検者の操作ミスによる吸引ポンプ内部への洗浄液吸引3件,バッテリ抵抗測定中にショート1件が発生した.そこで,内部抵抗測定冶具の改良等,人為的ミスを防止する対策を行った.【考察】定期点検を実施することにより,終業点検では発見できない外装内部の破損を早い段階に発見でき,外装交換となる前に対処できる.さらにバッテリの劣化や漏れ電流の異常が発見される等の可能性があり,臨床使用上での安全性,及び経済性を高められると考えられる.また点検結果を記録に残す事により経時的な性能劣化や消耗品交換の時期などの判断材料として利用できる可能性がある.また定期点検を契機に内部構造を理解することができ,機器管理上有用であると考える.一方で,点検者の人為的ミスが発生し,このような点でのリスク対効果にも考慮する必要がある.

081

圧力トランスデューサーが患者血圧から受けるバックプレッシャーによるキャピラリー流量変化の検討

082

母子周産期総合医療センターにおける臨床工学技士の役割

東海大学 医学部付属八王子病院 MEセンター

梶原 吉春1、河村 吉文1、長谷川 由美子1、藤井 誠二1

埼玉医科大学総合医療センター MEサービス部

須賀 里香1、金山 由紀1、出口 友恵1、山口 由美子1、森田 高志1

【目的】

圧力トランスデューサーはカテーテル先端の詰りや鈍りを防ぐため,加圧バックを用いて圧力をかける事により,一定流量のヘパリン加生理食塩水が流れる構造になっている.そこで患者側の圧力が変化した場合や加圧バックの圧力が変化した場合のヘパリン加生理食塩水の流量(以下持続注入量)を比較検討した.

【方法】

加圧バックの圧力を100,300,600mmHgに設定し,患者側からのバックプレッシャーがない状態と,加圧バックを300mmHgに設定し,患者からのバックプレッシャーを模擬的に150,300mmHg加えたときの状態を作成し,持続注入量を測定した.圧力トランスデューサーはサフティキットDPT−9000シリーズ(川澄化学社製)とDT-XX(BD社製)を使用した.測定期間は開始直後から24時間施行した.

【結果】

バックプレッシャーのない状態の持続注入量はDPTで1.5,3.1,5.9ml/h.DTで2.8,4.4,9.9ml/hであった.バックプレッシャーを加えた状態では,DPTで1.7,0.8ml/h.DTで3.6,0.1ml/hであった.

【考察】

トランスデューサーの添付文章では持続注入量は3ml/hと記載されているが,この値は患者からのバックプレッシャーが0mmHgの値であり,バックプレッシャーが加わることで持続注入量は減少していくことが明らかになった.患者の血圧が高い場合には持続注入量はわずかしか流れないため,カテーテル先端の凝固や鈍りの原因となる事が示唆された.また,加圧バックの圧力が減少したときも患者側圧力と差圧がなくなるため,持続注入量は減少する.

【結語】

圧力トランスデューサーの持続注入量は患者のバックプレッシャーにより変化するため,圧力トランスデューサーのカテーテル管理として,ヘパリン加生理食塩水の残量だけでなく,加圧バック圧力と血圧との差圧を観察することも重要である.

【はじめに】総合周産期母子医療センター(以下、周産期センター)は重篤な合併症を持つ妊婦の妊娠中から産後まで、そして最重症の新生児のケアを行う第3次医療施設である。当院では平成12年4月に同センターが開設に伴い、臨床工学技士1名が専属で配属された。今回、臨床工学技士の役割について検討した。【対象】周産期センター(未熟児集中治療室46床、母子胎児集中治療室46床、新生児室、分娩室、発達外来、産科外来、)に配置されている医療機器(呼吸器16台、シリンジポンプ40台、輸液ポンプ33台、パルスオキシメーター22台、保育器32台、経皮ガスモニター10台、分娩監視装置10台、血液ガス分析装置2台。【業務内容】勤務は月曜から土曜日の日勤帯としている。ただし、トラブルや急患発生時には呼出体制をとっている。主な業務内容は1.医療機器使用中の安全確認、2.医療機器の定期点検、3.操作者への教育、4.トラブル対処の4つである。医療機器の安全確認や定期点検については人工呼吸器を中心にチェックリストやデータベースを活用し行っている。看護師、医師の医療機器教育については、定期的な勉強会の開催している。また、専属の臨床工学技士を配属することは、日頃から看護師、医師との連絡体制が密になり、些細な質問や問題も遠慮なく話し合うことが可能となっている。これによりチーム医療の円滑化が可能となっている。【考察】患者の半数を未熟児新生児が占めている状況にあり、使用される機器は専門的な知識や技術が必要となっている。安全対策の充実を図る上でも、それらを専門的に管理し情報を提供する立場として、臨床工学技士の果たす役割は大きいと思われる。

083

IH式電磁調理器からの放射雑音がペースメーカに与える影響の基礎的検討

084

IH調理器による植込み型心臓ペースメーカへの電磁干渉

北海道工業大学 工学部 福祉生体工学科1、北海道循環器病院2

高橋 琴美1、熊谷 豪人1、池内 美香1、西村 美香1、佐々木 正巳1、黒田 聡1、木村 主幸1、有澤 準二1、稲童丸 範継2

北里大学医療衛生学部臨床工学専攻

二梃木 裕子1、廣瀬 稔1、佐藤 栄治1、小久保 謙一1、小林 弘祐1

携帯電話等の電子機器から放射される電磁波が、ペースメーカの動作に影響を与えることが危惧されている。ペースメーカの電磁障害(EMI : Electro-Magnetic Interference)は、ペースメーカがデマンド機構を持つようになってから報告が見られるようになったと言われており、その機序に心電波形の検出機構と刺激制御機構が関わっていることを暗に示している。一方、近年においてIH式電磁調理器が普及してきており、一般家庭内でも使われる機会が多くなってきている。IH式電磁調理器はその構造上、外部に強い高周波磁力線を放射する。そこで本研究は、そのIH式電磁調理器がペースメーカの動作に与える影響について実験的に検証することを目的としている。

最初に、IH式電磁調理器(交流100V入力,消費電力1,300W)から放射されている雑音(高周波磁力線)の信号波形をデジタルストレージ・オシロスコープにより観測した。その結果、大まかに10msecの周期で振幅を変化させている成分が認められた。さらに時間軸を拡大してみると、43.7μsec(22.9kHz)周期の波形、および、周期90.8nsec(周波数11.0MHz)の正弦波状の信号が認められた。

次に、心室用リードを接続したシングル・チェンバ方式の植込み型ペースメーカ(動作モード:VVI)をIH式電磁調理器の近傍に設置し、その動作状況をデジタルストレージ・オシロスコープにより観察した。この実験では、ペースメーカは自己レートで電気パルスを出力する状態で動作させた。そして、そのペースメーカにIH式電磁調理器からの放射雑音がリードを介してペースメーカ内部に侵入した場合、その放射雑音を心臓から発生している心電波形と誤認識して、電気パルスの出力が抑圧される現象が発生するか否かを確認した。その結果、100mVpp以上の振幅を持つ雑音波形がリードに誘起されていてもペースメーカは誤動作を起こさないことが確認された。

【目的】IH調理器による植込み型心臓ペースメーカ(以下ペースメーカ)の与える電磁干渉について使用する鍋の違い、およびペースメーカの刺激電極法(単極法、双極法)の違いについて検討することを目的とした。【方法】使用したIH調理器は、SM-130(昭和マツタカ株式会社製、定格消費最大出力:1300W、使用周波数:鍋検知時34kHz、加熱時25kHz)で、ホーロー鍋は鉄製(直径20cm、高さ12cm)、IH専用鍋はアルミニウム合金製(底面に有磁性ステンレス板を貼付、直径20cm、高さ9cm)を使用した。ペースメーカはMedtronic社製THERA SR 8962iを使用し、1)鍋の違いによる磁束密度分布、2)生体モデルでの刺激電極法の違いによる最大干渉距離(抑制試験、非同期試験)、3)刺激電極法の違いによる最大干渉距離と干渉範囲の測定を行った。【結果】加熱時の磁束密度(IH調理器上13cm)は、IH専用鍋のほうがホーロー鍋に比べ全体的に小さかった。電磁干渉は鍋加熱時において、IH専用鍋では単極および双極法とも認めなかったが、ホーロー鍋において単極法の抑制試験では23cmでペーシングパルスの延長、非同期試験では25.5cmで不必要なペーシングパルスの発生を認めた。また、刺激電極法の違いによる最大干渉距離はIH調理器の中心部と生体モデルの中心部を一致させた時に、両方の電極法ともにほとんど変わらなかったが、それ以外の位置において双極法では電磁干渉を認めなかった。【考察および結語】ホーロー鍋に比べIH専用鍋使用時のほうが磁束密度は小さくなり、ペースメーカに電磁干渉を与えにくいことが分かった。また単極法に比べ双極法のほうが電磁干渉は起こりにくいことが分かったが、IH調理器とペースメーカの位置関係により必ずしも双極法が安全とは言えないことも分かった。

085

ペースメーカー外来点検の工夫

086

ペースメーカ業務への取り組みと課題

亀田総合病院 ME室1、日本ライフライン株式会社2

山崎 隆文1、齊藤 建1、大石 杏衣1、熊井 良一1、小川 英彦2、川西 純一2

福岡市医師会成人病センター

浜 孝一1

【目的】
当院のペースメーカー(PM)外来では、通院患者の43.3%が80歳以上である。更に、車いすや杖を使用する患者(Pt)も年々増加傾向にある。今回、点検の際に介護用品を使用しているPtの実態を把握し、更にPM点検方法を工夫したので報告する。
【対象および方法】
PM点検時、介護用品(車いす、杖)を使用したPtを対象にした。従来は、車いすのPtはそのままで、その他のPtは、ベッド上で横になり点検した。今回は、全てのPtを座位のまま点検が行えるように工夫した。更に、PMプログラマのワンド(ワンド)を容易に固定できるショルダを開発し従来の点検方法と比較した。
【結果】
介護用品が必要なPM外来患者は、全体の19.1%であった。このPtの各月の平均点検数の割合は、2002年10.2%、2003年11.9%、2004年18.3%(0〜25.8%)で年々増加傾向であった。以前は、ワンドの固定が不安定で点検が中断することがあったが、我々が新たに開発したショルダではワンドの位置ずれが無くなるとともに、体型に応じたワンドの位置調整も容易に可能である。従来では、ワンドを片手で抑えながら点検を行うこともあり煩雑であったが、このショルダを用いたことで点検時間も短縮した。点検者は、両手が開放され1人でも点検や必要なデータ等の書き込みが可能になった。
【考察】
今後、PM患者の年齢の高齢化が進み、点検方法も様々な工夫が必要になるかもしれない。苦痛を与えず、点検を簡素化できる事が重要である。現在でも、PM点検患者の約半数が80歳以上であり、今後介護用品が必要な高齢者の割合は増加すると予想される。その時に我々がどのように対処できるかが今後の課題である。
【結論】
介護用品を使用しているPM外来患者は増加していた。 点検に際し、プログラマワンド用のショルダを使用したことで、PMの点検が容易になり時間短縮にも繋がった。

【はじめに】
平成14年4月の診療報酬改定に伴い、ペースメーカ(以下PM)移植術及び交換術(以下PMI)、において臨床工学技士(以下CE)の必要性が施設基準の中に明記され3年が経過した。
当院でもこの3年間に勝ち得た施設基準を無駄にすることなくCEが積極的にペースメーカ業務に関わってきたので、その業務内容とその間発生したいくつかの課題を報告する。

【PMIにおけるCE業務】
搬入前の準備として、電気メスと使用物品の準備を行う。当院ではシース、リード電極、プログラマーに関しては置き在庫にしてあるが、PM本体とアクセサリーについてはメーカー持込としている。
リードが挿入されるとリード位置決めの測定を行う。測定項目は心内心電図、自己波の波高値、電圧閾値、消費電流、スリューレート、10Vツイッチングテスト、1V深呼吸テストをメドトロニックのプログラマーを用いて行っている。

【データー管理】
ファイルメーカーによる患者管理を行っている。患者登録書を作成することによって,患者一覧表が作成され、フォローアップ記録の中に患者基本情報が入力される。

【PMチェックの手順】
PM手帳による前回までの作動状況を確認する。その後、前回のチェック日から今回までの作動状況を確認したのち波高値と閾値の測定を行う。測定後ドクターにデーターを確認してもらい設定値の変更があれば変更を行う。

【課題】
1.当院では、3社のPMを取り扱っているが各メーカーのプログラマーが違い操作になれるまでに時間がかかった。
2.新しい機能(PM本体やプログラマー)が追加された場合にはメーカーから説明を聞き把握するまでに時間がかかった。

【結語】
今後はPM機能の進化や術式の変化に対応するよう日頃からメーカーとの情報交換を密に行い、知識や技術の修得に努力し、診療に積極的に関わり重要な役割をはたしていかなければならないと考える。  

087

ペースメーカーの不整脈診断機能の限界と問題点

088

当院におけるペースメーカの管理について<メーカ主体の管理から病院主体の管理へ>

医仁会武田総合病院 臨床工学科 MEセンター

高垣 勝1、井上 武1、小谷 剛1、石橋 一馬1、清野 麻衣1、大野 進1、櫻井 登代子1、若松 浩1、山地 真寿1

医療法人財団 明理会 東戸塚記念病院

佐藤 武志1、緒方 聖也1、村上 浩司1、田口 奈緒子1、小林 智子1、馬場 速夫1、丹藤 敏次1

【はじめに】

最近のペースメーカー(PM)は頻拍性不整脈に対する診断、モード変更、予防など、その機能が非常に進歩してきている。これに伴いこれらの機能を適正に用いるためにも、その設定や心内心電図の確認が重要になってきていると考えられる。今回、これらのことを痛感する経験をしたので報告する。

【症例1】

77歳、女性。完全房室ブロックにてDDD PMを植込み。心房性の頻拍性不整脈の検出を認めたが、far field R oversensingによるものも混在し、かつfar field Rが心室イベントよりも先に心房側でセンシングされていたことから、PVABの変更では誤検出を避けることは不可能と考えられた。

【症例2】

66歳、男性。SSS+p-afにてDDD PMを植込み。1週間後に心室頻拍のイベントを27回認めたため記録された心内心電図を確認した。すべてのイベントはp-afであったが、1:1の房室伝導がある部分で心房イベントがブランキングに阻まれセンスされないためPVCの連続と判断されていた。本例では設定の変更による誤検出の回避は不可能であると考えられた。

【症例3】

59歳、女性。発作性心房細動+完全房室ブロックにてDDD PMを植込み。心房頻拍をPMTと誤認するエピソードを認めたが、これは心房頻拍レートがMTRに近似していたためWenckebachとはならず、ペースメーカーがPMTと判断する基準を満たし誤認されたと考えられた。これはMTRの変更により誤認回避が可能であると考えられた。

【考察】

以上の経験から、1)植込み時の電位確認では振幅のみならず波形確認も重要でありそのためには波形確認可能なPSA使用が望ましい 2)検出されるイベントは必ずEGMとともに評価する必要がありこの確認をもって検出の特異性を判断するほかない 3)特に上室性頻拍を合併する場合などは検出項目の多数設定を避け優先すべき項目に絞る方が合理的な不整脈解析ができる、などのことが考察された。

【背景】ペースメーカー移植術及びペースメーカー交換術の施設基準の中で、<臨床工学技士が1名以上常勤していること>による点数加算となる手術の施設基準が加わり、臨床工学技士(CE)の存在が必須要件になった。当院では、平成15年11月よりCEがペースメーカ(PM)植込み可能な体制、フォローアップに至るまで、一括管理を開始した。そこで従来のメーカー主体型と病院型管理の利点を比較した。

【方法】従来型(Ι群):H14年4月から平成15年10月(19ヶ月)、新規植込み数21名、PMチェック58件、メーカー立会い有。病院型(Π群):H15年11月から平成16年12月(13ヶ月)現在、新規植込み数21名、PMチェック254件、メーカー立会い無。以上2群をretrospectiveに解析してみた。

【結果】Ι群では術後フォローアップは1週間後にメーカーが最終設定を行ったのに対してΠ群では植込み後のフォローアップを毎日行う事により安静度が4日目からフリーとなり、術後の苦痛を和らげられると考えられた。またΠ群において、緊急時にも植込みからフォローアップに至るまで対応可能となった。植込み時においてΠ群ではCE1名が術中介助、1名がPMシステムアナライザ、プログラマー操作および外回り業務を行う。植込み後1週間は毎日PMチェック行い最終設定を行った後、退院の運びとなる。その後外来にて1ヶ月後、以降6ヶ月に1回フォローアップを行うようになった。

【考察】現在、院内スタッフのみで植込み可能な体制がとられ、緊急時にも即対応可能となった。院内スタッフにて管理することは患者、スタッフ共に安心感の向上につながるものと考えられた。今後PM業務において、医療の質の向上と病院経営の効率化にCEが大きく関わって行くものと思われる。当院で使用しているPMは2社であり、今後他社多様なPM患者への対応を検討していきたい。

089

当院MEセンターにおけるペースメーカー関連業務についての取り組み

090

Evolved MECC systemの開発と、臨床及び実験的検討

近江八幡市民病院 MEセンター1、近江八幡市民病院 循環器内科2

永福 啓一1、久永 浩司1、布施 匡也1、津田 稔1、板橋 達幸1、久郷 稔1、西野 貴久1、須貝 順子1、立川 弘孝2

近畿大学医学部附属病院 中央手術部1、近畿大学医学部附属病院 心臓血管外科2、近畿大学 医学部 免疫学教室3

佐竹 麻美1、古田 朋之1、中井 紀裕1、境 真生子1、小川 達也2、井村 正人2、岡本 健2、松村 治雄3、長嶋 隆夫1、宮澤 正顕3、佐賀 俊彦2

【はじめに】平成14年の診療報酬改正によりペースメーカー(以下PM)移植術およびPM交換術に関する施設基準に臨床工学技士(以下CE)の1名以上の常勤が明記された。これに伴い当院では平成16年4月からPM業務を開始したので報告する。

【経過】MEセンターは平成8年4月に手術室1名、透析センター4名の構成で、独立した診療部門として発足した。現在、手術室業務1名、血液浄化、ME機器管理業務に6名配属されている。従来のPM業務は全て循環器内科医師が施行していた。PM業務におけるCEの取り組みとして、CE3名を中心に植え込み時のプログラマー、Pacing System Analyzer(PSA)の操作は手術室業務のCEで、1週間後のチェック、PM外来でのチェック、患者情報管理は血液浄化、ME機器管理のCE2名で担当した。PM外来中における業務内容としては、閾値検査、感度検査、リード抵抗の測定、ヒストグラムの呼出し、電池の消耗度、リードの劣化度の検査、医師の指示があればPMの作動条件の変更等を施行している。患者情報管理においては市販のソフト(ファイルメーカー)を使用し、手術時PSAの測定データ、設定データ、コメント、外来時の測定、設定変更データなどを入力し、患者データの一括管理を行った。

【まとめ】平成16年10月よりPM業務を開始した。3種類のプログラマーの機能及び操作方法を習得するには、かなりの時間がかかった。今後更に、医師、機器メーカーとの連携を図り臨床経験を重ねPM業務の確立を目指し、臨床工学技士の必要性をアピールしたい。

【背景】近年、Minimal Extracorporeal Circulation(MECC)が、ヨーロッパ諸国で普及してきており、数々の報告がなされ始めてきているが、充分満足のいくシステムではなかった。

【目的】我々は、心臓手術の低侵襲化を図るために、evolved MECC system(eMECC)を、2003年4月よりCABG手術に導入し良好な成績を収めている。そこで、eMECCを、off pump  CABG(OPCAB)と比較検討し、その臨床及び実験的評価を目的とした。

【対象】2004年4月から2004年11月までの非透析患者のCABG症例のうち、eMECCを使用した15例とOPCAB15例を対象とした。

【方法】MECCは、遠心ポンプ(Jostra社製Rota flow)、膜型人工肺(Jostra社製Quadrox)からなる閉鎖回路である。eMECCは、この回路にソフトリザーバー、動脈フィルター、ベント回路、心筋保護回路を組み込み、吸引回路は自己血回収装置を流用した。心筋保護液はCalafioreの文献より考案したものを用い、細動発生器、Young氏液の使用により、速やかな心停止を得ることができた。今回、我々は、 eMECC群とOPCAB群を比較検討し、統計学的考察を加えた。

【結果】各々のデータは、Mann-Whitney's U testを用いて解析した。今回検討した臨床的データでは、有意差が認められたものはなかった。血液検査所見からは、有意差が認められたものがあった(p<0.05)。

【考察及び結語】eMECCは、術中の血行動態を安定させることができ、心停止下に確実にグラフトの吻合が行えた。さらに、システムの組み立て、操作が簡単であり冠動脈バイパス手術のassistant device としてOPCABに劣らない手術を提供できる可能性がある。

091

成人用膜型人工肺OXIA LPの臨床使用経験

092

先端形状の異なる2種類の体外循環用カニューレの溶血に対する作用の比較

昭和大学藤が丘病院 臨床工学部1、昭和大学藤が丘病院 心臓血管外科2

押山 貴則1、堤 博志1、東 哲士人1、鳥居 一喜1、小林 力1、田中 弘之2

恵み野病院 臨床工学科1、恵み野病院心臓血管外科2

小野 一浩1、鵜野 浩二1、岡田 泰徳1、菅原 愛子1、常川 健1、三浦 健1、高松 貴重1、日沖 一木1、宮本 和之1、大川 洋平2

【目的】近年、これまでの人工肺と同等の性能を持ち低プライミングの人工肺が開発されている。今回我々はJMS社製成人用膜型人工肺OXIA LPを臨床使用する機会を得たので報告する。

【対象】当院でおこなった定期手術による体外循環症例4例について検討をおこなった。

【方法】通常の体外循環症例において体外循環開始後10分、30分、60分、90分、加温36度到達時に人工肺流入血酸素濃度、人工肺流入血炭酸ガス濃度、人工肺流出血酸素濃度、人工肺流出血炭酸ガス濃度、人工肺吹送酸素流量対人工肺流入血流量比(以下V/Q)、圧力損失を測定した。

【結果】人工肺流出血酸素濃度、人工肺流入血酸素濃度は安定し、良好な酸素化能を有していた。人工肺流入血炭酸ガス濃度、人工肺流出血炭酸ガス濃度は安定し、良好な炭酸ガス排出能を有していた。これによりV/Qでは、0.7前後で安定した結果となった。また、圧力損失は100mmHg程度と少し高めではあったが安定した結果を得られた。

【考察】今回の検討では、症例数が少なかったものの安定したガス交換能、圧力損失となり臨床使用上有用であった。しかし、膜面積が少なく、低プライミングとなったことにより、体表面積が大きくハイフローになった場合のガス交換能、圧力損失等の検討が必要と考えられた。

【結論】JMS社製成人用膜型人工肺OXIA LPは、プライミング量の減少が可能で良好なガス交換能を有し、圧力損失は高めではあったが体表面積1.5m2前後での使用にあたっては安定した人工肺であり臨床使用に有用であった。

【目的】送血カニューレの形状の違いが、体外循環を用いた開心術における溶血にどのように影響するかを、血漿遊離ヘモグロビン値を測定して調べる。
【方法】単純回路を2個作製して一方にはエドワーズライフサイエンス社製ディスパージョンカニューレを、他方には比較用として同社のハイフロータイプ(カーブチップ)カニューレを接続し、Hct、温度、ACTを調整した豚血を遠心式心肺ポンプで循環させる。コントロールとして、同豚血を密封容器に入れ、循環させないで放置する。血液循環開始0分、30分、60分、90分、120分の各時点において、コントロールとそれぞれの回路から回路内圧、pH、Hct、Hgb、K+、PfHgbを測定した。ただしコントロールは循環させずに放置したため、回路内圧の測定は行わなかった。
【結果】回路内圧は、ディスパージョンカニューレがハイフロータイプカニューレより高かった。PfHgbは、循環0分においてディスパージョンカニューレ、ハイフロータイプカニューレのどちらも既にコントロールよりも高値を示しており、循環時間が長くなるにつれてコントロール、ディスパージョンカニューレ、ハイフロータイプカニューレいずれも値が高くなった。
【考察】特異的な先端形状をもつディスパージョンカニューレが比較的高い圧損ゆえ、高度の溶血を生じるものと考えていたが、今回の実験では回路内の接続部位における段差やチューブ径の変化が、溶血に大きな影響を及ぼすことが示唆された。

093

動脈フィルタの安全性・操作性についての性能評価

094

当院における心カテオーダリングシステムの構築

三菱京都病院 臨床検査・工学科

高田 裕1、仲田 昌司1、木下 真1、篠原 智誉1、岩崎 純子1、西澤 美穂1、大内 徳子1、兼田 尚枝1、青島 悟1、二谷 たか枝1、塚本 智子1、若宮 友彦1

東邦大学医学部付属大森病院 臨床工学部1、東邦大学大森病院 心血管インターベンション室2、東邦大学大森病院 心臓血管外科3

峯川 幹夫1、高岡 敏行1、田中 雅博1、山下 稔晴1、元木 康裕1、我妻 賢司2、小山 信彌3

【目的】今回、動脈フィルタのバブルトラップ性能を計測し、体外循環を行う上での安全性の評価を行った。また、動脈フィルタは、人工心肺回路の構成パーツの中でプライミングに最も時間を要するパーツであるため、プライミングの操作性についても評価を行った。
【方法】対象は、現在市販されている動脈フィルタのうち、8種類を選択した。・動脈フィルタバブルトラップ性能評価:測定条件は、Ht:約25%(濃厚赤血球+生理食塩水)、流体温度:32℃、ポンプ流速:4L/min、回路内圧:200mmHgとした。注入するairの量は、50mL、100mLとし、動脈フィルタ後に設置したバブルカウンター(CMD20:HATTLAND社製)にてバブル径、バブル数を注入直後から1分間計測した。・プライミングの操作性:プライミング液として生理食塩水を使用した。動脈フィルタのプライミングにあたって、プライミング前にCO2置換を行う群(CO2置換群)と、CO2置換を行わない群(CO2未置換群)、再度プライミングを行った群(再プライミング群)に分類し、プライミング時間の比較を行った。
【結果】バブルトラップ性能としては、50mLのairを注入した実験では、少しのばらつきはあるが、40μm以上のバブルのほとんどが動脈フィルタでトラップされていた。また、100mLのairを注入した実験では、8種類中3種類の動脈フィルタが40μm以上のバブルを100カウント以下の検出という結果となり、残りの4種類は200カウント以上のバブルを検知した。また、プライミング操作性実験より、もっとも操作性がよい動脈フィルタのプライミング時間は、CO2置換群で80秒、CO2未置換群で150秒、再プライミング群で185秒という良好な結果が得られた。
【結語】 今回の実験より、動脈フィルタのみならずシステムとしての安全性評価を行っていきたいと考えている。

【目的】心カテ業務に関わる作業の電子化は、パッケージソフトとして普及しておらず、未だに手がけている施設が少ない。そこで、既存のシステムの範囲内で改良を加え、心カテオーダリング情報システムの構築を試みた。

【方法】心カテ予約は当院における外来予約システムを改良。材料入力はバーコード併用の医事システムを専用に作成、画像は院内既存のIBM製放射線システムへ接続ソフトを作成、カテコア(Siemens社製)によるカテラボデータと左室解析・冠動脈解析(カテックス社製)はIBM社製院内オーダリングシステムと接続システムを作成、以上からなる心カテ専用院内オーダリングのシステムを構築した。

【結果・考察】心カテ予約は外来および病棟の端末から入力可能であり従来の伝票申込みに比し極めて効率よく運用された。しかし順番を変えるには管理者側の操作が必要であり電話連絡にて必要時対応している。オーダリングの情報はX線装置、Cathcor、画像解析に転送されるため、心カテ入室時のスタッフの事務的な作業も軽減され業務のスピードアップに繋がった。院内の画像システムに静止画を送り、院内X線所見システムと連動できた。また各解析データも院内オーダリングシステムに送信し、外来、病棟の各端末から結果の閲覧が可能となった。

【結語】心カテオーダリングシステムにより、心カテ、PCIのオーダーから出力まで一貫して行うことが可能となり業務が効率化された。今後、動画像ネットワークシステムの導入を行い本オーダリングシステムとの連動を計画しており更なる改良が期待される。

095

当院心カテ室での臨床工学技士の現状と問題点、及び透析患者へのPCIの現状

096

PCI施行中のPerforationに対しCover STENTで止血した1例

健康保険南海病院 臨床工学技士

河津 敏郎1

医療法人サンプラザ 新札幌循環器病院 臨床工学科1、循環器内科2

三輪 貴史1、砂山 篤志1、竹内 千尋1、佐藤 広樹1、海老子 貴弘1、菊地 一智1、荒道 昭男1、村元 信之介2

現在、当院の心臓カテーテル検査室(以下心カテ室)では医師5名、臨床工学技士(以下CE)1名、看護師3名(病棟より)が勤務しており、週3回(月水木)定期検査及び治療を行っている。当院心カテ室にてCEが勤務を始めて約1年が経過したので現状の報告をする。当院には現在CEが14名おり、内12名透析業務(1名心カテ兼任)、2名体外循環業務(1名ME機器管理兼任)となっている。当院心カテ室では昭和62年開設以来約7000例CAGを行っており、平成16年には年間900例のCAGを行っている(内PCI300例を含む)。昨年9月に臨床検査技師よりCEへ心カテ室勤務が変更になり、生命維持管理装置(IABP、PCPS、体外式ペースメーカー等)の操作や保守、管理がこれまで以上に期待されている。当院心カテ室には専属看護師がおらず、カテ中の物品出しやポリグラフの操作・記録、カテ室内の物品の管理及びIVUSやIABPの操作等は基本的にCEが行っている。薬剤の注入やカテ中の記録等限られた業務のみ看護師にゆだねているためCEの業務は大変多く煩雑になりがちである。また、心カテ室には高価な物品が多く、当院ではstentやballoonだけでも数千万円にも及ぶ在庫があり、管理が非常に大変である。今後、心カテ室での看護師との業務の連携や、物品管理、夜間の待機状況など改善していかなければならない点がいくつかあると思われる。また、当院透析室では約170名の患者に維持透析が行われており、心カテ室でも年々透析患者へのCAG、PCIが増加している。その中でもRotablatorでの治療が当院でも昨年から始まり、透析患者への治療の割合は非常に高く増加傾向にある。長期透析患者、DM、石灰化の強い患者が増える中、透析患者へのPCIは今後もっと増えていくだろうと思われる。

【はじめに】2004年5月12日Erective PCI施行中、右冠動脈segment 1にDirectSTENT留置の際Perforationになった症例に対し、(AbbottVascularDEVICES社製・Cover STENT JOSTENT Graftmaster)以下CSにて無事止血し、有効であった症例を報告する。
【症例】症例 80歳、 男性。主訴 胸背部痛。診断 労作性狭心症。危険因子 高血圧症、喫煙。現病歴 以前より高血圧症のため近医にて通院治療中。2004年3月22日、胸痛発作にて当院へ救急搬送され右冠動脈segment 1-90%に対しPTCA施行し、25%とした。心電図所見 ?,?,aVfでSTの上昇が見られた。臨床検査成績 血液検査では、CPKが675 IU/Lと高値を示した。CAG所見 右冠動脈segment 1に90%の再狭窄が確認された。超音波検査 冠動脈病変と一致して後壁から下壁にかけて壁運動低下が見られた。PCI所見 segment 1にDirect STENTを留置した。直後の血管造影でPerforationが確認される。システムバルーンで止血を試みるも改善見られず、 CSにて止血される。最終造影でsegment 1-0%で終了する。翌日CAG所見 STENTの中枢側から出血がみられ、PTCAバルーンで止血を行った。PCI後の経過 以後経過は良好である。
【考察】ParforationはPCIの際の重大な合併症であり、ケースにより心筋梗塞、心タンポナーデ,死亡等にいたる場合がある。止血等の救急救命処置に対し CSは、有効であると思われる。また、緊急開胸術の回避も可能であった。
【結語】止血等の救急救命処置に対してCSは有効であった。緊急開胸術の回避が可能であった。

097

心臓電気生理検査参加に伴う業務の拡がり

098

Brugada症候群において心室細動が誘発された1症例

聖隷浜松病院 臨床工学室

神谷 典男1、北本 憲永1

天理よろづ相談所病院 臨床病理部 CE部門

曽山 奉教1、柴田 正慶1、吉田 秀人1

【はじめに】高周波カテーテルアブレーション(ABL)は1985年から少数の施設で進められた比較的新しい不整脈治療で、当施設においても2002年4月から治療が開始された。院内では心臓電気生理検査(EPS)の操作は臨床検査技師の業務と考えられていたが、循環器医師の要望と病院のCEに対する認知度、そしてなにより我々CEが特殊な治療、新しい業務に参加していきたいという願いも重なり業務に参加することができた。そこで今回、EPSから始まったEPS業務の拡がりについて報告する。
【経過】CEが操作する機器は12誘導心電図と心内心電図を解析する装置(センチュリーメディカル社製EP-WarkMate)、電気刺激装置(日本光電社製SEC-4103)、高周波焼却装置(Medtronic社製Atakr)がある。当初は循環器医師・メーカの立ち会いを依頼しシステム操作取得と各症例のABL講習をお願いしながら専属者2名が業務を行った。積極的に参加していく中でABLだけでなくペースメーカ植込み、誘発によるVT,VFの確定診断検査、VT,VFの確定を元に植込み型除細動器(ICD)の業務、さらに両室ペーシング検査、両室ペーシングペースメーカ植込みとカテーテル室において業務が拡張できた。またペースメーカ植込み術参加からプログラマーの操作取得をはじめ、その経験から2003年4月からはペースメーカ外来でのチェックを行うようになった。2002年4月から2005年1月までのEPS関連症例数289例のうちABL118例、VT studyおよび両室ペーシングstudyを含む不整脈診断43例、ペースメーカ植込みおよび交換121例、ICD17例であった。
【結語】循環器関連のカテーテル室業務としてCEが扱うべき機器は数多く存在する。本来CEが取り扱うべき機器がメーカ立ち会いなどにより充足されるのではなく積極的に業務参加することで本来の病院での医療として有るべき姿になると考える。

【はじめに】
Brugada症候群はV1〜V2の特徴的なST上昇と右脚ブロック型および心室細動(以下Vf)を主徴とし、明らかな器質的心疾患を認めない疾患で、突然死症候群の1つとされている。今回Brugada症候群において電気生理学的検査にてVfが誘発された症例を経験したので報告する。

【症例】
47歳 男性、既往歴、家族歴特になし。就寝中、午前3時頃に突然手足が硬直し、意識消失が5〜10秒持続。来院時12誘導心電図はV1でcoved型、V2 でsaddle back型にST上昇、1度房室ブロック(PR間隔240ms)を認めた。心臓電気生理学的検査(以下EPS)では、コントロール心内心電図でHV間隔58msと若干延長。プログラム刺激では、心房頻回刺激法の160ppmで最大洞結節回復時間が1636ms(修正洞結節回復時間564ms)とほぼ正常であった。また、100ppmにてWenckebach調律となり、心房期外刺激法では基本刺激800msに対し600msの期外刺激で早期に房室結節が不応期を向え、若干の房室結節伝導障害を認めた。最後にVfを誘発するために行った右室2発期外刺激法では、心尖部刺激でVfは誘発されなかったものの刺激後PVCが散発し、流出路刺激では基本刺激600msに対し240msと190msの2発期外刺激にてVfが誘発された。直ちに200Jで除細動を行ったが洞調律に戻らず、さらに300Jで除細動を2回施行した。除細動には難渋したが、洞調律に復しPCPSなど生命維持装置の使用には至らず事無きを得た。以上の所見よりBrugada症候群と診断し、6日後にICD植え込み術が施行された。

【まとめ】
Brugada症候群の診断にはEPSおよびVfの誘発は必須であり、本症例のように患者は多くのリスクを伴う。検査が安全で確実に行われるためには的確なモニタリングが必要であり、Vfが誘発されれば早急に除細動を行わなければならない。さらに除細動困難例においてはPCPSなどの生命維持装置の対応も要求される。したがってそれらを視野に入れた体制で検査が実施される必要があると考える。

099

北海道大学病院における高気圧酸素療法の現況と臨床工学技士の役割

100

第1種HBO装置の圧力変動に対する肺内圧特性の解析

北海道大学病院 診療支援部門1、北海道大学病院 麻酔科2

石川 勝清1、小倉 直浩1、小嶋 睦明1、泉山 千恵子1、岩崎 毅1、大田 稔1、加藤 伸彦1、小澤 剛久2、橋本 聡一2、森本 裕二2

恵愛会 大分中村病院 臨床工学科1、同 整形外科2、エアー・ウォータ(株) 医療事業部3

右田 平八1、宮崎 秀男1、中村 太郎2、森 幸夫3

【はじめに】北海道大学病院(以下北大病院)における、高気圧酸素療法(HBO)は現在まで麻酔科診療業務のひとつとして管理運営されている。装置の操作は3名の臨床工学技士を中心に麻酔科医師と協力し、週7日体制で治療を行っている。平成10年8月より、それまで使用した第1種装置に変わり、川崎エンジニアリング社製、KHO301-Bの第2種装置が稼動している。装置は主室6名、副室2名収容可能の8人用である。治療に際しては、合成空気方式および北大病院独自に考案した窒素による換気方式を採用していることが大きな特徴である。
【稼動状況】第2種装置の導入からH15年12月までの、HBO症例数は402例、延治療回数は5270回(内救急適応疾患811回)である。平成15年度の延治療回数808回(内救急適応疾患201回)であった。疾患別では、イレウス22%、突発性難聴13%、放射線性骨髄炎12%、急性脊髄障害8%、急性末梢血管障害8%、一酸化炭素中毒7%などが主要な疾患である。一酸化炭素中毒の治療は、3次救急医療が開始された平成13年度より始まり、発症から36時間以内に3回(初回2.8−2ATA150分2.3回目を2ATA85分)で行う独自のプロトコールで治療を行っている。2種装置導入以後はそれまで治療経験が無かった減圧症患者の治療も行っている。平成15年度の依頼科別では、第2外科20%、口腔外科13%、耳鼻科12%、整形外科10%、救急部&ICU9%、眼科8%、となっている。 なお、H17年度からのスポーツ医学分野での自費診療開始に向け現在準備を進めている。
【問題点】高気圧酸素治療は、DPC(急性期入院包括払い制)導入以来、慢性期疾患については診療報酬に反映されないこととなり、第2種装置を運営する施設として、装置の定期メンテナンス維持費用等の捻出にも苦労する状況であり、診療報酬の適正な改定がなされない場合、大幅な赤字改善は見込まれず2種装置の存続も危ぶまれる状況にある。

【目的】HBO環境下の肺内圧は抵抗要素と弾性要素が直列につながる特性を持つと考えられ、生体肺では気道閉塞及びコンプライアンスに依存されるため減圧時のbarotraumasが懸念される。そこで、気道抵抗、コンプライアンスの可変によるシミュレーションを行い、圧力測定結果から肺圧損傷発生リスクの解析を行ったので報告する。【方法】第1種装置Secrist2500Bに人工呼吸器500Aを接続し、モデル肺TTL (Micigan Instruments社製)を装置内に設置し、サンプリングラインから横河電気製高精度圧力計MT120/MT110を用いて500Aの作動と停止時に緊急減圧及び急速減圧を行い、各設定下における環境圧力とモデル肺内圧力変化を差圧計測し、ラボラトリレコーダLR4110Eで記録した。
【結果】1.人工呼吸器作動時の圧力上昇ピーク値は16cmH2O であった。2.作動停止状態の緊急減圧ピーク値は13cmH2O であった。3.完全閉塞ではチャンバー圧が1.1ATAで125cmH2O に急激に上昇した。4.マスターバルブON-OFFのDifferential pressureは1〜12cmH2O であった。
【考察】コンプライアンスの特性は内圧と容量変化が直線的な比例関係にあるが、抵抗と内圧は放物線的である。流量変化で容易に抵抗値が変わるが、減圧による圧力変化では流量は一定で急激な圧損失は起きないと考えられる。肺圧損傷発生リスクは気道管理された高コンプライアンス肺では低いと解析された。肺圧損傷を及ぼす肺過伸展、即ちair trapping の増加は圧力格差の大きい閉鎖腔以外では発生しない事が検証された。
【結語】HBO下の気体圧縮及び膨張は肺コンプライアンスや気道抵抗によるが、臨床で問題とされるコンプライアンス低下は内因のエラスタンスとレジスタンスの上昇が肺圧損傷発生に関与すると推察された。

101

第1種HBO装置に於ける気道管理

102

呼吸療法サポートチームの発足と臨床工学技士の役割

恵愛会 大分中村病院 臨床工学科1、同 整形外科2

右田 平八1、宮崎 秀男1、中村 太郎2

三菱京都病院 臨床検査工学科

篠原 智誉1、木下 真1、岩崎 純子1、高田 裕1、西澤 美穂1、兼田 尚枝1、大内 徳子1、青島 悟1、塚本 智子1、若宮 友彦1、二谷 たか枝1、仲田 昌司1

【はじめに】第1種HBO装置での気道管理の問題は、装置内部の加湿不足と痰の排出を処置出来ず、医療者の直接の介助がされないことである。この対策として、第2種HBO装置で用いられている吸引カテーテルとジェットネブライザーを用いた方法を工夫し、第1種HBO装置の気道管理に利用可能な方法を紹介し、HBO中に気道管理を用手的に行ったので報告する。
【加湿・吸引方法】第1種HBO中に気道加湿と喀痰吸引を必要とした気管内挿管症例に対して、SECHRIST 2500B装置内部にコールドネブライザーシステム(HUDSON RCI製)とトラックケア(BALLARD MP製)を接続し、加湿と装置内ガスを少量排気して吸引を行った。
【加湿・吸引能力と影響】1.気道加湿はO2流量4l/minでAH46mg/lとなり、生理的飽和加湿時のAH44mg/lを補償した。2.吸引圧力はクレンメによる微調整でゲージ圧0.0132MPa(100mmHg)の吸引が可能であった。3.加湿、吸引を行っても装置内の圧力変化は起こらず、装置は正常に作動した。
【考察】気道内に残留した喀痰は完全に除去できないため効果が疑問視されたが、排出された喀痰を除去することで気道抵抗の低減や閉塞を予防することが可能であった。よって、加湿回路と吸引回路を個別にした単純回路構成は第1種装置の環境に合致した方法であると考えられた。今後、チューブの太さと気道の呼吸抵抗を検討することにより、吸引カテーテルの気管内留置は可能となり、気道管理を必要とする患者の第1種装置でのHBOがより安全に行えることが推察された。
【結語】気管内挿管はチューブが生理的加温加湿機能をバイパスするのでdry gasによる気道抵抗の増加を伴う呼吸困難、無気肺や肺へのダメージをいかに回避するかは気道管理上の大きな課題である。そこで、積極的な気道加湿と排出された粘稠痰除去を行う device の使用を工夫し、第1種装置治療下での加湿・吸引の気道管理を可能とした。

【背景】当院で臨床工学技士が人工呼吸器の動作点検やモード選択の助言を行ってきた。しかし、診療科により人工呼吸管理に違いがあり、診療科を超えたサポートの必要性を感じた。また、当院には、呼吸器科の常勤医がいないため臨床工学技士が中心となって組織化を行った。「呼吸療法サポートチーム」を立ち上げ、呼吸管理の標準化を目指した活動を始めたので、その取り組みとチーム内での臨床工学技士の役割、展望を報告する。
【活動内容】サポートチームのメンバーは医師2名、看護師2名、理学療法士1名、臨床工学技士2名の計7名で構成している。まずは院内での認知度を上げるべく、啓蒙活動として定期的な院内勉強会を開催することから活動を開始した。チーム内での決定事項は臨床工学技士間のカンファレンスで報告し、また臨床工学技士間でまとめた事項をチームに提案している。その他新しいデバイスの紹介、導入、症例データベース作成などを行っている。
【結果、考察】サポートチームの発足から約6ヶ月経過したが、メンバーが呼吸療法についての相談を受ける機会が増え、院内での認知度は確実に上がってきた。啓蒙活動は装置の操作法、ケアの手技に限らず、院内全体で疑問とされることや、各部署による違いが問題となる事柄等の統一を図ることが出来た。また、院内感染予防の面でも効果的であると思われ、精力的に行うべきである。院内のチームの位置付けとして、専門分野を生かした様々な角度から主治医、担当スタッフに助言できることが必要である。
【結語】専門の診療科がなくても各業種間で連携し、効果的に治療に当たることでより高度なレベルでの呼吸器医療が提供できると考える。チーム医療の一端を担う臨床工学技士の役割はとても重要である。

103

呼吸器管理業務から呼吸療法業務へ〜人工呼吸器経過記録・患者情報ファイルの導入〜

104

呼吸器装着患者の感染予防への臨床工学技士の関与

大津市民病院 臨床工学部

福山 佐弥香1、水野 勝博1、吉村 規子1、木村 啓志1、寺内 茂1、津田 正子1、八木 克史1、戸田 省吾1、神吉 豊1

天理よろづ相談所病院 臨床病理部

津田 淳1、二重 実1、小林 靖雄1、吉田 秀人1

【はじめに】当院の人工呼吸器業務はこれまで中央管理を中心として回路交換、訪室点検であったが、さらに患者治療に積極的に関与していく事で更なる安全確立を図れるのではないかと考え、平成16年4月より専門担当制を実施している。安全精度、管理内容は向上したものの数々の課題もみられた。今回、問題点を提示し検討を加え報告する。
【方法】チーム医療を担う一員として従来からの業務(点検・解析)を見直した。担当期間は一年間とし、状態把握のため患者情報ファイルを作成し、医師や看護師との情報共有を目的とした「人工呼吸器経過記録」シートを患者カルテに綴じる、等の変更を行った。
【結果および考察】長期間固定の担当者を明確にした事で情報伝達方法が一律化し、スタッフや家族との信頼関係を築けた。さらに個々の患者に応じた呼吸器管理法や情報等を医師、看護師、臨床工学技士が共有する事が出来た。点検業務は呼吸器個別の特徴・オーバーホール時期などが把握でき管理面での長所と考える。しかし業務の担当長期化に伴い担当患者の増加に伴う点検業務のマンパワー不足、ローテーション制の期間・移行方法、「人工呼吸器経過記録」の利用方法の病棟間のばらつきが見られる、などの問題点も浮き彫りとなっている。今後も業務の検討を強化し対応を図らなければならない。また、ME機器院内誌や勉強会などを通じて新たな取り組みの定着も図る必要がある。我々臨床工学技士は機器を見るだけでなく、やはり患者状態を熟知したうえで点検を実施することが本来の安全管理やオーダーメードの医療推進につながると思われ、治療に積極的に参加していくことが望ましい姿勢と考える。【まとめ】呼吸器管理業務から患者治療に関与する呼吸療法業務への取り組みにより安全確立が図れると考える。また、今後も変更に修正を加えつつチーム医療の一員としてより高質の専門技術を提供する責務があると思われる。

【目的】人工呼吸器使用中患者の感染予防に対してどのような取り組みがされているかを調査し、臨床工学技士が関与すべき点を明らかにする。

【対象および方法】医師40名、看護師100名。無記名アンケート形式

【結果】1.医師が指示または行っている感染予防

口腔ケア、喀痰性状観察、喀痰培養、体位管理、胃管挿入の実施率が高く、抗菌剤予防投与、ネブライザ使用抑制は10%以下であった。

2.看護師が行っている感染予防
呼吸音聴取、気管内吸引、喀痰性状観察、口腔ケア、カフ圧管理、加湿器給水時清潔操作、体位管理の実施率が高く、ウォータトラップ洗浄消毒、プラーク除去・消毒薬含嗽は20%程度であった。

3.気管内吸引時の感染予防
石鹸手洗い、未滅菌手袋着用、吸引管アルコール清拭の実施率が高かった。また、吸引管再使用が71%、1回使用が18%で再使用が多かった。

4.気管チューブの交換間隔とその根拠
交換間隔1週間以上が医師86%、看護師65%で最も多かったが、24時間と解答した看護師が10%もあった。根拠は明確ではなく、教科書や文献は少なかった。

5.呼吸回路の交換間隔とその根拠
交換間隔1週間以上が医師50%、看護師68%で最も多かったが、72時間以下の解答が医師47%、看護師23%あり、バラツキが大きかった。根拠は気管チューブ同様に明確ではなかった。

6.カフ圧管理
医師63%、看護師59%が容量設定、40%、18%がバルーン硬さのみで管理しており、カフ圧計使用は10%であった。管理しないという解答が10%あった。

【結語】臨床工学技士が関与すべき点として以下が挙げられる。

1.病棟ラウンドによる現場の把握、製品紹介、手技指導、病態と呼吸器の関連説明

2.病棟単位小人数の勉強会のなかで実習と感染への注意喚起

3.人工呼吸器と関連物品の中央管理による較差の是正と質の向上

105

人工呼吸器に取り付けたディスポーザブル回路の長期保管についての検討

106

人工呼吸器の回路リークに対する減少の試み

平塚共済病院 臨床工学科

鳥本 倫之介1、小林 剛志1、富永 哲史1、梅田 雄一1、片桐 大輔1、野島 純子1、成瀬 真1

埼玉医科大学総合医療センター MEサービス部

石井 正晃1、清水 麻理子1、本田 博一1、中村 暁1、山口 由美子1、須賀 里香1、笹川 繁1、森田 高志1、御手洗 哲也1

【目的】当院では、人工呼吸器用回路にディスポーザブル回路(ディスポ回路)を採用しており、組み立て、始業前点検を済ませて、直ちに使用できる状態で臨床工学科室内と一部の病棟倉庫に保管している。

これまで、保管期間の目安を約1ヶ月としていたが、今回、組み立て後数ヶ月間使用せずに保管したディスポ回路の各接続部内側の細菌について調査し、長期保管の可能性について検討した。

【対象】ディスポ回路をニューポートベンチレータE200ウェーブに接続し、当院臨床工学科室内および病棟倉庫内にて、0、1、3ヶ月間保管したディスポ回路それぞれ2セットを対象とした。

【方法】トランシステムを用いて、対象のディスポ回路1セットにつき5ヶ所{A:吸気側装置接続部、B:加温加湿器入口側、C:加温加湿器出口側接続部(温度プローブ挿入部)、D:Yピース(温度プローブ挿入部)、E:呼気側装置接続部}から検体を採取した。

 細菌検査室にて、それぞれウマ血液寒天培地に塗布し35℃48時間好気培養を行い比較した。

【結果】1セット目の1ヶ月のCからグラム陽性球菌が検出された。2セット目の1ヶ月のBからも細菌が検出されたが同定はできなかった。他の0、3ヶ月についてはいずれも陰性であった。

【考察】これまで、ディスポ回路の保存期間について時間を目安に考えてきたが、結果より温度プローブの消毒不十分や、消毒後の温度プローブまたは回路接続部が人工呼吸器本体外装や操作者の体等に接触した事により細菌が検出されたと考えられ、時間だけでなく組み立て方法や消毒方法にも左右される事がわかった。

今後、組み立て手順や消毒方法による違いを検討する必要が出てきた。

【結論】回路内に細菌を付着させる事のない組み立て手順や消毒方法を確立する事により、組み立て後のディスポ回路を更に長期間保存する事が可能である事が示唆された。

【はじめに】人工呼吸器に関係するトラブルの中で、回路リークは頻度が高く、重大な事故につながる可能性もある。今回、回路リークトラブルを減少させるため、呼吸器回路の管理方法を検討したので報告する。
【対象および方法】2004年1月から2004年12月の期間で、使用された中央管理の呼吸器回路80セット(スムースボアタイプおよびシリコンタイプの2種類)。リークの確認は滅菌前、始業前、使用中で行い、発生状況や発生時期などから検討した。
【結果】滅菌前に自作のリークテスタにて確認を行い、のべ約1050セット中、約90ヶ所でリークが発見された。また、始業前の確認ではリークは14件であり、使用中のリークは39件であった。リークの大半は蛇管でその他の部品からのリークは数件程度であった。
【考察】滅菌前のリークの大半は微少リークであった。また始業前、使用中の大半は、微少リークではなく、回路が裂けて起こる多量リークであった。この多量リークはすべてスムースボアタイプで発生し、体交などで引っ張られると、突然裂けてしまうものであった。この対策として、回路を屈曲させる強度テストを行なった。また微少リークは回路の劣化に大きく起因すると思われたが、回路が裂ける多量リークは回路が新しくても起こることが見られ、予防が困難であった。一方、シリコンタイプはほとんどリークが無かった。このため、当センターではリークの発生が少ないシリコンタイプを積極的に使用する方針とした。
【結語】リークテスタによるリークチェックや強度テストは使用中のリーク減少につながった。しかし、多量リークを減らすため、シリコンタイプ回路を積極的に導入する方針となった。今後も人工呼吸器の安全管理に努めていきたい。

107

呼吸器回路部品である回転コネクタのリークテストを試みて

108

スピーキングバルブ使用時に発生したアクシデント事例

聖マリア病院 臨床工学室

佐藤 茂1、竹内 正志1、手塚 麻里子1、中島 正一1、井福 武志1

聖マリアンナ医科大学病院 クリニカルエンジニア部1、聖マリアンナ医大病院 腎臓高血圧内科2

白井 美江子1、蒔田 美波1、水田 祥江1、木村 健二郎2

【目的】近年、人工呼吸器に関する医療事故報告が後をたたない現状である。当院での人工呼吸器管理は、臨床工学技士が主体となり機器・器具の安全管理を遂行している。今回更なる安全管理目的に呼吸器回路部品である回転コネクタのリークテストを試みたので報告する。
【対象および方法】対象は当院で使用しているPORTEX社製リユーザブル(以下PR)ならびにディスポーザブル(以下PD)、VBM社製リユーザブル(以下VR)の計3タイプを各々10個とした。リークテストにはVentilator840(BENNETT社製)ショートセルフテスト項目の回路リークを用い、Yピース先端に回転コネクタを接続後、正常、警告、異常の判定ならびにリーク箇所の調査を行った。また判定結果をもとに正常・警告(A群)、異常(B群)に分類し、ベンチレータテスタVT-2(BIO-TEK社製)を用い正常・喘息モデル肺を作成し各群における一回換気量について比較検討した。呼吸器設定条件は、一回換気量500mL、吸気流量30L/min、呼吸回数20回/min、PEEP 5cmH2Oとした。
【結果】リークテストでは、PR:警告(n=2)、異常(n=8)、リークはすべて回転部に認めた。PD:すべて正常、VR:正常(n=8)、警告(n=2)、リークは回転部、吸引口に認めた。一回換気量については、正常モデル肺でA群 504.2±3.4mL:B群 472.0±2.6mL、喘息モデル肺ではA群 503.1±3.0mL:B群 453.0±5.3mLとB群が有意に低値を示した。
【考察】呼吸器回路のリークテストはYピースを塞ぎ実施するのが一般的であるが、今回の結果より回転コネクタを含めたテストが必要であると考えられた。リユーザブルはコスト削減には有用であるが、安全管理を徹底し医療事故防止に努めなければならない。

【はじめに】 当院は平成9年に、気管切開を行い人工呼吸器に依存しているALS患者様にコミュニケーションの手段として、初めてスピーキングバルブ(パッシ・ミュアー社)を使用した。その後スピーキングバルブは人工呼吸器での使用、また気管切開のみでの使用を含めて38症例の使用経験を有している。 今回スピーキングバルブ(シャイリー社)の使用時、気管カニューレのカフ圧が残っていたことによって呼吸困難、意識レベルの低下がみられたアクシデントを経験したので報告する。
【事例概要】 76歳男性、人工呼吸器離脱後気管切開でスピーキングバルブを導入。導入2ヶ月後、看護師がいつもの通り気管カニューレのカフ圧を抜き、スピーキングバルブを装着した。その10分後、呼吸困難、顔面紅潮、意識レベル低下がみられた。この時脱気されたはずのパイロットバルンが僅か膨らんでいることを発見。直ちにカフを再度完全に抜いたところ、呼吸は改善し、5分後に意識も回復した。 この事故の原因はカフ圧を完全に脱気しないでスピーキングバルブを装着した為、呼気が充分吐けない状態になったと考えられた。
【考察及び結語】 カフ圧の抜け具合を検証すると、外に出ているパイロットバルンは空気が抜けている状態に見えても気管内のカフは膨らんでいることがわかった。カフ圧を完全に抜くには、シリンジで陰圧がかかるまで引かなければならない。適応があると判断され、スピーキングバルブを使用する際、事故防止対策として次のようなことを厳守することが重要であると考えられた。1) 装着時はカフ圧を完全に脱気すること。(陰圧がかかるまでシリンジで引く)2) 装着直後、発声の確認をすること。3) 装着中はそばに医療従事者または家族がいること。4) 装着前後に充分な気管及び口腔の吸引をする。5) パルスオキシメータの装備6) メーカーによっては使用気管カニューレの指示があることを認識する。

109

成人用高頻度振動換気人工呼吸器の使用経験について

110

高頻度胸部壁振動を用いた気道クリアランス法 〜The VestTM Airway Clearance System Model 104の試み〜

公立陶生病院

村井 俊文1、春田 良雄1、加藤 博久1、工藤 信隆1、児玉 泰1、長江 宏則1、伊藤 一孝1

恵愛会 大分中村病院 臨床工学科1、同 循環器内科2、同 整形外科3

右田 平八1、宮崎 秀男1、安部 雄征2、中村 太郎3

【はじめに】当院では、2004年9月に成人用高頻度振動換気(以下HFO)人工呼吸器(R100)を導入した。これまで我々はARDS患者に対して主にPCV管理を行ってきたが、肺保護効果があるとされる成人用HFO人工呼吸器を用いる事で救命率の上昇が期待されている。現状ではまだ施行症例が少なく、明確なプロトコールを模索している段階ではあるが、これまで経験した症例について検討したので報告する。
【対象】2004年9月から2004年12月までに従圧式人工呼吸(以下PCV)等の呼吸管理にて酸素化能の改善が見られずHFOに移行した症例を対象とした。
【方法】 ICUに入室し、人工呼吸器による呼吸管理が開始されてからHFO離脱までの動脈血液ガスデータ、血圧及び換気条件についてHFO開始前とHFO開始後について比較検討した。
【結果】 HFO開始後ではHFO開始前と比較して処々の動脈血液ガスデータが改善した。特に、OI(Oxygenation Index)及びA-aDO2は改善傾向が見られ、HFOによる酸素化能の改善効果が示された。また、中心静脈圧等の静脈還流状態を示すデータが得られず、静脈還流に与える影響は評価できなかったが、動脈血圧には差は生じなかった事から循環動態に大きな影響は与えなかったと考えられる。以上の結果から、HFOは酸素化能の改善に効果が見られることから、PCV等による呼吸管理が難しい低酸素血症の患者にはHFOが有用である可能性がある。しかし、人工呼吸器関連肺損傷(VALI)や長期的予後の改善に効果が見られるかは現時点では評価し得ない為、今後さらに症例を重ねて検討を続けていく必要がある。

【はじめに】エアパルスによる高頻度胸部壁振動(HFCWO:hight frequency chest wall oscillation)が気道クリアランスに対して安全で効果的な方法としてAARC(American Association for Respiratory care)が報告しているが本邦での使用報告は殆んどない。今回、Vest TMAirway Clearance System Model 104を試用する機会を得たので臨床成果を報告する。
【対象及び方法】肺炎から敗血症性ショックを併発し、人工呼吸器管理下の症例と急性肺炎で酸素吸入下の挿管患者2例に対して、VestTM Airway Clearance System Model 104(Hill-Rom社製)を用いてHFCWOを日中5回のトライアルで10日間行った。設定はFrequency:10〜12Hz/sec、Pressure:1〜2、施行時間5〜10分で行った。簡易効果判定として、肺音聴取とSpO2変化、喀痰吸引状態、最高気道内圧(PAP)変化を記録し、HFCWO前後で評価した。
【結果】1.2症例共に肺音聴取でラ音の消失を認め、postSpO2は98%に上昇した。2.喀痰少量から中等量を吸引した。3.PAPは低下し、Vは増加した。
【考察】気管切開を受けている場合、喉頭の運動が制限されるので自力で咳が出来ず分泌物排泄機構がうまく働かないため、肺炎や無気肺を助長すると考えられる。呼吸管理下のクリティカルな症例に対しては気道の安定を保ちながら積極的に行うHFCWOは気道クリアランス法として有用と考えられた。
【結語】肺理学療法のアプローチが困難な症例に対して、ベッドサイドで非用手的に行うHFCWOの臨床効果を報告した。

111

在宅人工呼吸療法における電源電圧変化にともなう人工呼吸器パラメータ変化の検討

112

突発的な人工呼吸器駆動停止を経験して

北里大学東病院 MEセンター部

瓜生 伸一1、花田 卓哉1、岩崎 共香1、内田  有美1、小林 馨1、白井 敦史1

埼玉医科大学総合医療センター MEサービス部1、埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター2

北脇 丈博1、上岡 栄司1、森田 高志1、間藤 卓2、堤 晴彦2

神経筋疾患などで長期間にわたり人工呼吸器を装着している患者では、人工呼吸器は身体の一部であり、人工呼吸器の僅かな変化でも敏感に感じ取り不快感として表現することがある。最近、在宅人工呼吸療法の普及により人工呼吸器を使用した患者でも家族と一緒に一般家庭内で生活することが可能になってきた。しかし、一般家庭内で人工呼吸器を使用する在宅人工呼吸療法では、日常生活における様々な家庭電気製品の使用による電源電圧の変化などによる環境の変化が人工呼吸器に変化をもたらすことも考えられ、その結果、人工呼吸器を装着している患者に対しても影響を及ぼすことが考えられる。そのため、人工呼吸器を使用している一般家庭の電源電圧の変化を測定し、それにともなう人工呼吸器パラメータの変化の有無について検討した。対象とした一般家庭は、当病院で在宅人工呼吸療法を受けている患者宅5軒を対象にムサシインテック社製電圧アナライザ(VA−300)を使用して電源電圧を24時間監視した。対象人工呼吸器は、一般的に在宅人工呼吸器で使用されているTPPV用6機種、NPPV用2機種とし、また、人工呼吸器パラメータの測定には、YAMABISHI社製VOLT SLIDER(MVS520)を用いて電源電圧を変化させながら、TTLを使用して一定条件のもとにNOVAMETRIX社製呼吸管理モニタ(コズモプラス8100)にて各種パラメータを測定した。在宅人工呼吸療法では、一家族ごとに生活環境が異なるため、電源電圧の変化など様々な環境に適合した人工呼吸器が求められるが、今回、一般家庭での電源電圧の変化の測定結果およびそれにともなう人工呼吸器パラメータの変化の有無について若干の検討を加え報告する。

【はじめに】今回、当院高度救命救急センターでドレーゲルメディカル社製人工呼吸器EVT-4000(エビタ4)が使用中にスパーク音を発し、白煙を上げ駆動停止するということがおきた。そばにいた看護師および救命救急センター専属臨床工学技士の適切な対応により、患者には問題なく事態を処理することができた。人工呼吸器使用中の駆動停止という貴重な経験をしたので報告する。
【発生経緯】前日午前中より人工呼吸器使用開始した。発生当日朝MEの巡回時には大きな変化なく経過。1時間後の10時ごろ突然大きな異音を発し、白煙を上げアラームが鳴り響いた。直ちに看護師が人工呼吸器回路をはずし用手的換気に切り替え呼吸を確保し、その直後臨床工学技士により電源が切られた。
【発生後の対応】発生後直ちに医師および取り扱いメーカへ連絡をいれ、原因追求を始めた。翌日には事故対策チームが医師、看護師、臨床工学技士、事務部により結成され、メーカとの協議を始めた。
【結果】今回、突発的な事態にたいし現場で適切な処置を施行でき患者に対して大きな被害を出さず対応できたのは、現場スタッフに対する教育が行き届いていたためだと痛感し、以前より開催されている臨床工学技士による人工呼吸器勉強会の重要性を再認識した。また、病院として事故対策チームを結成し、メーカ側と協議をおこなうことにより、メーカ側本意な事故調査ではなく、より実際的な事故調査がおこなわれたと思われる。
【まとめ】機械を使用している以上トラブルは避けては通れない。その故障やトラブルをいかにして未然に防ぐか、おきてしまったトラブルはいかにして最小限の被害で回避するか、最後にいかにして同じトラブルをおこさないようにするかが重要になってくる。今回、当院では迅速な対応がとれた。今後もこのような対応をとれるように体制を整えていきたい。

113

冠動脈造影時に発生する心電図ノイズに対する検討:その原因と対策

114

臨床工学技士による心カテ室業務参入経験と今後の課題

亀田総合病院 ME室

大石 杏衣1、山崎 隆文1、齊藤 建1、熊井 良一1

奈良県立奈良病院 MEセンター

筒井 大輔1、久米 景子1

【目的】冠動脈造影、冠動脈形成術施行中にX線管球(管球)の角度によって心電図にノイズが混入することが問題となった。今回、心電図波形へのノイズ混入の原因及び対策を検討したので報告する。【使用機器】装置はSIEMENS社製COROSKOP、RECORを使用した。
【方法】管球の電源を入れない状態、電源投入中、透視中、撮影中で心電図波形に変化があるか調べた。心電図ケーブル(ケーブル)を一束にまとめない状態(A群)とまとめた状態(B群)で、管球からケーブルを5cmごとに離していき、心電図波形に混入するノイズの振幅を測定し、振幅が0.5mm以下になる距離を干渉距離とした。
【結果】管球に電源を入れない状態ではノイズは見られず、電源投入中と透視中、撮影中でノイズに差はなかった。干渉距離はA群20cm、B群10cmで、この振幅は0.42±0.12、0.44±0.30 (p=0.42)で有意差を認めなかった。またノイズ振幅は、両群の各距離5cmから30cmで有意差(p<0.0001)を認めた。以上のごとく、B群でノイズの影響が少なかった。
【考察】当院では液体ベリンアグ方式X線管を使用しており、電源投入時から管球陽極が高速回転している。それにより発生した磁場がノイズの原因と考える。対策として、ケーブルを一束にまとめること、さらに干渉距離内に入らないように患者テーブル上で固定することが有効であると考える。
【結論】ノイズ混入の原因は管球内で高速回転する陽極であった。ケーブルをまとめ、陽極とケーブルの距離を離して配線することでノイズの削減に繋がった。

【はじめに】2002年4月1日から特掲診療科の新施設基準が適応され、経皮的冠動脈形成術・血栓切除術・ステント留置術に関し、臨床工学技士(以下CE)が1名以上常勤している要件が明記された。これを足がかりに当院では2004年7月からCE1名が心カテ業務に参入しており、その業務内容の現状を報告する。
【現状】心カテ室のスタッフ構成は、1件あたりCE1名、医師2〜3名、放射線技師1名、看護師1名を配置している。2004年度総カテ件数484症例、内PCI件数252症例、緊急カテ件数97症例であった。CE業務として、1).セカンドオペレーター(アンギオ装置のフレーミング操作、造影のアシスト、インデフレーターの操作、血行動態の確認。)2).ポリグラフ操作(心電図・心内圧の記録及び計測。)3).IVUS操作(画像記録、QCU解析。)4).体外式ペースメーカー操作(閾値測定を含むテストペーシング。)5).補助循環(IABP・PCPS)の施行・管理。6).心カテ室内の全ME機器管理が上げられる。
【問題点】・現臨床工学技士法(以下現行法)では心カテ業務の業務指針はなく、日々進化していくPCIデバイスに対応するには、業務内容の解釈が不明瞭な点が多く限界を感じた。・緊急対応などの特殊状況下では、時にCEの業務範囲を超えた手技に直面する。・各職種間での業務内容は確立されているが、CAG・PCIに対する専門的知識不足は否めない。
【今後の課題】CEとして現行法で行える範囲で業務拡大を図ると共に、各施設で心カテ業務に従事しているスタッフ間で意見交換や勉強会を行い、心カテ業務の質と安全性の向上に努めていきたい。
【結語】日々進化し続けるPCIデバイスに対応するため、常に高いモチベーションを維持しながら専門的知識・技術の習得の積み重ねが必至である。CEの業務拡大と法的保護のため、早期に心カテ室業務指針の確立を切望する。

115

縦隔気管切開術におけるPCPSの有用性

116

脳分離体外循環回路の改良

独立行政法人国立病院機構 京都医療センター 医療技術部臨床工学

井上 裕之1、柳澤 雅美1、三浦 洋樹1

昭和大学病院 ME室

山田 紀昭1、岩城 隆宏1、阿部 聡実1、中野 充1

【はじめに】甲状腺癌高度気道浸潤による挿管困難症におけるPCPS補助下での縦隔気管切開術を経験したので報告する。

【対象】平成15年4月から平成16年6月までの14ヶ月間にPCPS補助下で、縦隔気管切開術を行った患者5症例である。全症例とも心機能は問題なく、肺機能は1例のみ転移性肺癌と診断されているが、肺機能検査上は正常範囲内であった。

【方法】PCPSは、テルモ社製キャピオクスEBS心肺キットを用い、送血カニューレは、大腿動脈に15Fr‐19Fr、脱血カニューレは、経大腿静脈(右心房)に19Fr‐23Frで行った。高度の狭窄が見られた2例は、脳保護の目的で即座に低体温管理が出来るよう熱交換器付きのPCPSキットを使用した。灌流量:1.8〜2.3L/min、吸入酸素濃度:40〜60%、酸素流量:3.0〜5.0 L/minにて開始した。抗凝固剤は、ヘパリンを用いてACTを200秒前後、右手と頭部の酸素飽和度は、95%以上を目標に維持した。酸素飽和度および動脈血ガス分析値を指標にPCPSを適宜調整した。

【結果】全症例、マスク換気を併用し、縦隔切開し挿管後麻酔器にて換気を行いPCPSから離脱できた。術中、酸素飽和度の低下や動脈血炭酸ガスの上昇が見られる症例もあったが、灌流量の増加と吸入酸素濃度の上昇にて調節できた。体外循環時間は、25〜60分で平均39分であった。

【考察及び結語】甲状腺癌高度気道浸潤により通常の挿管が困難な症例に対し、縦隔気管切開術を行う場合、気管の高度狭窄部位が完全閉塞状態に陥る危険性があり、マスク単独での換気を行うより、PCPSを併用し呼吸補助を行う方がより安全である。また、手術の進行状況および患者状態を把握し適宜PCPS操作管理を行う必要があると考える。

【目的】分離体外循環回路において術野側回路をポンプ側で安全にかつ迅速にプライミングすることができ、リサーキュレーションしながら待機のできる一部プレコネクト回路を作成し、臨床使用したので報告する。
【方法】分離体外循環回路をリサーキュレーションするために、左総頸・左鎖骨下送血用回路と右鎖骨下用回路を術野側で結合させ、右鎖骨下送血用の動脈フィルター後からリザーバーへバイパスさせるラインを作成した。そして左送血用のポンプを使用して術野側回路のリサーキュレーションを行った。回路接続部分の色の統一、ポンプへの回路装着部分にマーカーを付けセットアップの簡略化と誤接続の防止を図った。
【結果】従来の方法では、術野から回路がおりてきてポンプ側と接続し、それからプライミングしていくという方法で行っていた。また、術野では分離用の送血回路を切断しYコネクターにて分岐していた。改良型回路は術野側でループにしてリサーキュレーションさせることで、待機中に十分air抜きができるようになった。またあらかじめラインをYに分岐させることにより術野で回路を作る手間をはぶくことができた。
【考察】リサーキュレーションしながら待機することでボリュームがとられるため回路充填量の削減はできなかった。一部をプレコネクトとし回路接続部の色分け、回路装着位置のマーカーなどにより、回路の誤接続の防止とセットアップの簡略化を行うことができた。またリサーキュレーションすることでポンプ側にて十分なair抜きが可能となった。
【結論】今回改良した一部プレコネクト分離体外循環回路は誤接続防止などの安全性を向上させ緊急手術時のセットアップ時間を短縮することができ臨床で十分使用可能であると考えられた。

117

当院におけるヒューマンリソースマネジメントの取り組みについて

118

医療機器管理室とヒヤリ・ハット事例や医療事故との関連について

第二岡本総合病院 臨床工学科

並河 孝次1、寺村 聡1、吉本 和輝1、金城 稔1、足立 悟1

横浜市立市民病院 管理部業務課1、横浜労災病院 臨床工学技士部2、日本赤十字事業局3、社会保険中央病院4

綿引 哲夫1、那須野 修一2、力石 陽子3、蒲池 慶子4、斉藤 寿一4

全世界的において、経済・社会・文化または医療のグローバル化が急速に進み、大きく情勢が変化してきている。また、情報化により、莫大な情報資源が生み出され、現在の企業経営においては、情報資源管理が重要視されている。医療においても、多くの情報化が進み、医療機器にも情報技術が積極的に導入され、高度化−複雑化となっている。このような変遷の中、臨床工学分野が注目・期待され、新たな知識や能力、技術を持つ人材が求められている。しかし、医療に関する知識や技術だけでは、さらなる医療、臨床工学の飛躍は考えられない。そこで、臨床工学技士の人的資源管理(ヒューマンリソースマネジメント:以下HRM〉を取り上げ、HRMが組織の飛躍に必要となるか検討してみたい。<HRM取組みの課題について>・日本の特徴でもある年功序列的な組織風土・文化・不確実な情報管理・共有(ビジョン共有)・ナレッジマネジメント?・コスト〈意識〉コントロール・パワーハラスメント・個人能力主義(ワンワーキング)・曖昧なリーダーシップ・リーダーの意思、戦略の不透明性、不確実・コミュニケーションスキル?・その他前述した課題は、一部であって他に潜在的に存在するかもしれない。HRMにより、ビジネスに対する【動機づけ】が形成され、組織力・生産性の向上が図れる。

【目的】近年、医療機器の進歩は目覚しく、機器の精密化、高度化に伴い機器のヒヤリ・ハット事例や医療事故も増加している、今回我々は医療機器を使用している医療機関を対象にアンケートを実施して、医療施設におけるヒヤリ・ハットや医療事故が機器の管理方法、保守点検、使用者への教育等が原因、あるいは遠因なりうるか調査したので報告する。
【研究方法】1.日本病院協会所属の病院から無作為に1000施設を抽出し、アンケートを送付し、323施設から回答があり集計した。2.医療機器管理室設置状況等について比較検討を行った。
【結果・考察】アンケート回収結果から医療機器の保守点検を行う「医療機器管理室」などの組織が組織化されていない施設が60%あることがわかった。医療機器管理室等が組織されている場合といない場合での比較では、医療機器の点検不備により事故又は不具合があった場合とない場合で41%:37%、次に点検不備があった場合とない場合では59%:63%で有意差はなかった。医療機器の点検不備によるヒヤリ・ハット事例を割合比較すると、組織されてない場合、「ない」と答えた施設が1%、不明36%、事例数で見ると10〜50例/年の施設が44%であり、組織されている場合「ない」と答えた施設が32%、不明13%と事例数で見ると1〜10例/年が43%であり有意差を示した。故障、不具合については、組織されている場合「故障、不具合がない(判らない)」、不明9%、あった場合1〜50件未満/年の施設が62%に対して、組織されてない場合、「ない(判らない)」、不明が33%、あった場合1〜50件未満/年68%で有意差を認めた。
【結語】専門家による保守点検がなされている場合においてヒヤリ・ハットの調査時に原因究明が容易となり、点検不備がおきにくい状況で使用していることを示し、不具合があっても原因究明ができる状況であることが示された。

119

当院におけるリスクマネージメント−臨床工学技士からのアプローチ−

120

臨床工学技士臨床実習施設としての現状と課題

国家公務員共済組合連合会 新別府病院 臨床工学室1、国家公務員共済組合連合会 新別府病院 リスクマネジャー部会2、国家公務員共済組合連合会 新別府病院 安全管理MRM委員会3

宇都宮 精治郎1、岩田 浩一1、阿部 敬二朗1、唐原 和秀2、中村 夏樹3

菊池郡市医師会立病院 臨床工学科 

岡崎 孝1、西口 智美1、西村 麻衣沙1、栗屋 佳祐1、三牧 司佳1、国本 賢秀1、萩尾 美恵1

【はじめに】人工呼吸器の操作ミスなどによる医療事故が社会問題化しているが、医療安全が医療側の大きな課題である。高度化・複雑化している生命維持管理装置を中心とした医療機器についてのリスクマネージメント(RM)は臨床工学技士(CE)が担うべきである。当院のRMシステムにおけるCEの業務と活動状況を報告し、今後の課題と展望を考察する。
【CE業務とRM】当院のCE業務は、人工心肺、高気圧酸素治療、急性血液浄化(維持透析施設はない)、機器管理、安全管理と多岐に渡っている。RMについては、実働部隊であるリスクマネージャー部会が組織され、全部署よりリスクマネージャーを選出し、インシデント・アクシデントレポートの報告・分析、情報の共有化などを行っている。この上位には安全管理MRM委員会があり、リスクマネージャー部会、安全管理MRM委員会にCEを1名ずつ出している。CEは、人工呼吸器や輸液ポンプなど多くの機器を保守・管理しているが、教育業務担当師長と連携し、看護部への教育・啓蒙活動も行っている。特に、新人教育・定期的な病棟毎の勉強会に力を入れ、RM部会でのレポートをフィードバックさせ、多発する傾向のあるミスを軽減させている。さらに、他施設での医療事故等の情報をRM部会に報告し、マニュアルの見直し、トラブルシューティング、チェックシート等を作成している。人工呼吸器については、毎日全病棟を巡回し、チェック・指導をしている。
【今後の課題と展望】長期に渡る課題と考えられるが、初歩的ミスを「0」にすることが目標である。看護部の新人教育では、現在実施しているME講習(実技を含む)に加え、終了時に試験(筆記及び実技)を行うことを検討している。これは、主に人工呼吸器、輸液・シリンジポンプを対象とし、必要最低限の知識と技術を取得させるためである。また、病院機能評価ver. 5.0では、安全管理が重視され、この面でもCEとしての課題が多いと考えている。

【はじめに】1999年から2004年末まで、熊本総合医療福祉学院より臨床実習生24名を受け入れた。当科としては1.学生の為になる実習2.臨床の現場を理解する3.オリジナリティを目標に行ったが、問題も多く、悩むことも多かった。当院での臨床工学技士臨床実習の現状と課題を紹介する。
【方法】血液浄化療法の実習は、基本的に熊本総合医療福祉学院より配布された実習書に従い、各項目をチェックしながら教えた。また電解質や浸透圧の計算等も教えた。微生物学実習寒天培地、孵卵機、有芽胞菌、阻止円、グラム陰性菌・陽性菌等の基本を講義し、実際に細菌培養を行い顕微鏡での確認を行った。血液学実習血液塗沫標本による顕微鏡像を観察した。また、自己血漿とPT試薬を用い、フィブリン析出を観察した。
【当院での問題点】1. 実習担当職員の体力と知力(職員全員が同等のレベルを教える事が出来ない)。3. 感染事故等の危険性(誤刺事故の可能性)や個人情報の守秘義務徹底。4. 担当者は、他の病院がどのような実習をしているか気になる・・・・。5. 総合病院ではないため、一般的な症例しか見学できない。
【利点】毎回同じ顔ぶれの透析スタッフである為、患者側への刺激になる。実習期間後半から、雑務を職員以上に行うようになる(マンパワー)。
【考察】 毎年、個性的な臨床実習生が当院で実習を行った。臨床検査技師の観点から、工学技士にも是非、知っていて欲しい細菌学や、血液学の基礎的知識を顕微鏡やシャーレを実際に使用し、印象に残る様に努めた。その結果、各実習生から興味深い実習であったと好評を得ているが、実際には透析に関する講義と、その他の実習講義まで行う事は、教育担当者の負担となり、仕事量が多くなる現実もあった。しかしながら、未来の臨床工学技士育成の為に、当科で出来る限りの事は今後も継続していきたいと考えている。

121

臨床実習指定病院としての取り組み

122

ストレス性・非ストレス性刺激による血液循環動態解析の試み

豊橋市民病院 臨床工学室

三浦 伸一1、加藤 真1、浅尾 由香1、中村 省三1、安藤 俊昭1、後藤 成利1、小山 悟1、伊藤 嘉延1

北海道工業大学 福祉生体工学科

立崎 斉1、山下 政司1

 【はじめに】当院は臨床実習指定病院であるが、実習生の受け入れ人数が増える一方で年々業務が多忙化しており、我々スタッフのマニュアル・計画不足、学校間での基礎知識習得格差等により満足した実習指導ができないストレスを感じるようになってきた。そこで、昨年より臨床実習最終日に実習生自身による実習内容や自己評価のプレゼンテーションを新たに導入した。
【背景】当院は10年前から愛知県内の臨床工学技士養成校1校より2名の臨床実習を受け入れはじめ、ここ数年で県内において養成校が2校新設されたのを背景に、現在では3校から臨床実習を受け入れるようになった。各校2名ずつ6名が1人ずつ1期3週間の実習を行っている。東三河の拠点病院である当院では、人工心肺、血液浄化、機器保守管理、臓器移植等の業務をかけ持ちで行っている。手術室実習の主たるものに人工心肺業務があるが、年間手術件数は新生児・成人含め約50例で3校6名が均等に実習するのは困難な状況であるが、当院で行える全ての業務を実習できるよう努力している。また臨床検査室とも連携し病理解剖がある場合には見学もできる体制をとっている。これまでの実習評価は、学校から課せられている毎日の報告書と技術・知識・態度等を総合評価するものであった。
【おわりに】現在、予定可能な範囲で実習内容と担当を決め、実習計画を作成し臨んでいる。我々は、実習内容を報告書として表現するのに比べ、プレゼンテーション形式の方がより理解力を必要すると考えている。また、将来臨床工学技士としてプレゼンテーションする機会もあることを考慮すると、経験を積む良い機会である。そして何よりもプレゼンテーションの評価は我々スタッフの指導力評価に値するといってもよいのではないでしょうか。

ストレス性あるいは非ストレス性刺激を被験者に与えた場合の血液循環動態の連続計測および詳細な解析を行った。心拍出量の連続計測には新たに提案された非侵襲的計測法を用い、連続血圧計、心電計、呼吸計および脈波計を用いて計測した。ストレス性あるいは非ストレス性刺激の主観評価と対応させるため、アンケート調査も同時に行い、解析結果の評価に用いた。解析結果から、刺激に対する各循環パラメータの経時的な応答様式を明らかにすることができた。このことから、ストレス性刺激に対応して見られる特徴的な応答と非ストレス性刺激に対応する応答の比較検討が可能となった。解析により、アンケート調査では同様の評価を得た刺激でも、血液循環動態は違ったものになることがわかった。また、各評価パラメータ間の相関関係も明らかとなった。これらの結果から交感神経活動あるいは副交感神経活動の活動状況をある程度推定することができ、他の研究への応用可能性が見出された。今後は個人、個人の個別データについて詳細な検討を行い、個人差のある応答様式の理解を深めてゆく予定である。

123

ISO9001取得に向けた取組み

124

当院のMEセンターについて

大津市民病院 臨床工学部

木村 啓志1、水野 勝博1、福山 佐弥香1、吉村 規子1、寺内 茂1、津田 正子1、八木 克史1、戸田 省吾1、神吉 豊1

医仁会武田総合病院 臨床工学科 MEセンター

高垣 勝1、井上 武1、小谷 剛1、石橋 一馬1、清野 麻衣1、大野 進1、櫻井 登代子1、若松 浩1、山地 真寿1

【はじめに】近年ISO9001は製造業界を中心に取得件数が増加し、医療業界においても認証取得を目指す病院が増加しているのが現状である。当院でも平成15年1月に病院機能評価を取得したが、今回ISO9001認証取得を通して異なった視点から見直し、再整備を行ったのでCEとしての取組みについて報告する。
【CEの取組み】1)インフラ管理:病院全ME機器をPC登録管理し、診療行為に影響を及ぼす生体計測機器とその他ME機器に分類した。生体計測機器は、厳密な精度管理が必要であり、院内保有の校正機器で校正できる機器は院内校正し、それ以外の機器は業者委託とした。その際校正機器を再校正し校正期間等管理登録を行った。その他ME機器は日常・定期点検の項目、期間を再確認し管理登録を行った。またME機器外である酸素流量計や濃度計、血圧計等においてもCEを中心とし、インフラ整備・管理を実施した。2)文書管理:臨床、ME機器管理、ME機器教育各業務の、業務マニュアルを作成し、1業務、1ファイルのシステム文書を作成した。文書改訂履歴管理はシステム文書内に改訂日、承認者、改訂内容記載する一覧表を作成し対応した。3)力量管理:全業務に対し部員の力量管理下において業務の実施、記録・保管を確実にし、改訂履歴はシステム文書に準じた。力量が充分でない部員については、力量充足計画を作成し研修や、勉強会などの参加を進め、力量UPを実施した。4)内部監査:中央部門として内部監査資格を取得し、CEの視点から病院全体のシステムについて改善を実施した。
【まとめ】ISO9001認証取得は、日常ごく当たり前に行っている業務を文書化し、また厳密に力量・文書・インフラ管理を実施することで、医療の質を確保し、安全な医療提供を提供できる事を実感した。その際CEはインフラ管理において病院で最重要な役割を担う事となり、今後、病院機能評価とは違った視点で大きな役割を果たすものと思われた。

【はじめに】
近年、医療機器の安全管理に関する重要性が認知されるようになり、厚生労働省もME室設置助成金制度を平成16年度から予算化した。今後はこの流れを受けME室を新規に整備しようとする施設が増えるのではないかと考えられる。今回は当院のME室(MEセンター)設置までの経緯とその機能などについて紹介する。
【経緯】
2003年、それまで臨床工学科として使用していた場所が部屋として不適切であったことと、一元的な機器管理(保管、点検、修理、事務)を行う部屋の必要性が理解されたこと、ISO取得に向けた取り組みの中で各病棟の不急品の保管場所とその管理が必要とされていたことなどから、病院側に理解を求め2004年2月にMEセンターの設置となった。
【センターの機能および特徴】
MEセンターは、ME機器の中央保管・点検修理、当科の事務業務、ミーティング・勉強会、研究会等の事務局、科員の休憩・更衣などを行なう場所として機能している。
構造的な特徴として、輸注ポンプの貸出し棚を2WAYとし、呼吸器回路の貸出し棚も廊下からのアプローチが可能なように設計した。また、保守点検時に用いる電源コンセントおよび医療ガス配管は天井からの懸垂式とし、作業のしやすい清潔な環境となるようにした。
運用面の特徴として、狭い部屋ではあるがゾーン分けすることで各エリアの機能を明確にし、整理整頓が行い易い環境にした。また、複数の病棟で共通して使用されるがその頻度が少ない機器等に関して病棟間共通備品と定め、保管場所をMEセンターとしイントラネット上でその情報を共有することにより省スペース化と「戻り保障」を実現した。
【結語】
MEセンター設置の経緯とその機能について紹介した。まず実績をあげ理解を求めること、および相互に益のある取り組みがその実現の「カギ」であったと考えられた。

125

当院における臨床工学技士(腎臓内科所属)の現状と対応       〜血液浄化部門に関して〜

126

一般における『臨床工学技士』の認知度調査

大阪府立急性期・総合医療センター 腎臓内科(人工透析室)1、大阪府立急性期・総合医療センター 腎臓内科2

中村 年宏1、下田 俊文1、椿原 美治2

横浜労災病院 臨床工学部1、昭和大学横浜市北部病院2、平塚共済病院3、昭和大学藤が丘病院4、横浜栄共済病院5

田代 嗣晴1、大石 竜2、小林 剛志3、小林 力4、小川 浩之5

【目的及び方法】当院には臨床工学技士(技士)が5名勤務しているが、麻酔科、心臓血管外科、腎臓内科の各科に個別配属されており、透析室をはじめとする血液浄化部門には腎臓内科所属の2名が担当している。今回、透析室および病棟血液浄化件数などに関して検討し、当院での現状と対応について、病棟看護師に対する教育成果のアンケート結果を踏まえ報告する。
【結果】透析室の透析台数14台(月〜土、1クール)に7名の看護師が配置されているが院内移動が頻繁である反面、年間約150名の導入患者、さらに年間約250名の合併症維持透析転入患者に対応している。病棟血液浄化療法件数は2002年516件(HD348回、持続血液浄化療法145回、その他23回)、2003年503件(HD339回、持続血液浄化療法151回、その他11回)であった。診療科別では心臓内科、救急診療科、心臓血管外科の順であった。時間外病棟血液浄化療法には技士の対応が困難な事も多く、看護師の援助を必要とするため、定期的に技士業務に関する勉強会を主催している。これに関するアンケート調査結果では、平均10年以上の勤務歴であり、「非常に役立つ、定期的な開催希望」などの意見が多い反面、機器操作などの基本的事項の希望が多く、それ以上のニーズは少ない事が判明した。
【考察】当院での血液浄化関連業務は技士のみでは困難であり、医師や看護師との連携が必要である。医師は必然機器操作に精通しているが、持続血液浄化療法などには看護師の関与が必須である。ICUや救急病棟看護師を対象に定期的に勉強会を開催しており、今回アンケートによる調査を行った。その結果、機器操作などの基本的な事項に関するニーズが大半であった。当院の現状では今後リスクマネージメントの観点からも、医師や透析室看護師とも連携し、血液浄化療法の意義や看護のあり方などの啓蒙が必要である。また2名の技士では限界が有り、他科の技士との連携も必要であると考えられる。

 神奈川県臨床工学技士会では、平成13年より「かながわ健康プラン21 すこやかかながわ一万人健康ウォーク 健康生活展」への出展を毎年行っている。この催しは、歩くことによる健康づくりの実践普及を目的とする『すこやかかながわ一万人健康ウォーク』および、県民健康づくり運動「かながわ健康プラン21」を推進するための、保健衛生関係団体等の出展参加による健康生活展であり、当会も医療職である臨床工学技士をアピールし、医療を支える一員としての認知と理解を推進するために参加している。

 臨床工学技士として一般を対象とするイベント等への参加や経験も少なかったが、健康生活展では、一般の方に様々な医療機器を体験して頂くとともに、臨床工学技士の業務を紹介するリーフレットを配布し、医療施設における臨床工学技士の役割等の説明を行ってきた。しかし、これまでの参加に於いて、イベント来場者との会話や交流の中で、医療施設内で業務を行う臨床工学技士の認知が低い印象があった。

 そこで平成16年11月13日の出展と共に、横浜赤レンガパークで行われた『すこやかかながわ健康一万人ウォーク』及び『健康生活展』への参加者、赤レンガパークへの来場者に、調査票を用いて記入または聞き取りで『[臨床工学技士]をご存じですか?』の設問で調査を行った。また、臨床工学技士を知っている場合には、どこで聞いたことがあるか、どのような仕事をしているのかを、複数回答の選択で答えて頂いた。 発表では、今回調査を行った一般における臨床工学技士の認知度を発表するとともに、合わせて行った調査への考察も含めて発表する。

127

臨床工学技士初任給に関する調査

128

高度低体温症の復温に持続血液濾過透析装置を用いた加温が有効であった症例

東海大学 開発工学部 医用生体工学科

大島 浩1、金井 直明1、山崎 清之1

国立病院機構 関門医療センター 臨床工学技士1、国立病院機構 関門医療センター 救急センター2

三代 英紀1、小田 泰祟2

【はじめに】1987年6月2日臨床工学技士法が制定、1988年4月1日施行され、現在約2万人の臨床工学技士が活躍している。臨床工学技士も社会的に認知されてきてはいるが、病院による初任給の差、業務による差が問題となってきている。また、中小の病院、クリニックにおいては、給与の適正水準がわからないといった声も多く聞かれる。そこで我々は2003年〜2004年にかけて新卒者の求人のあった病院277施設の経営母体、地域、職種による初任給の違いを調査し報告する。

【結果】求人のあった施設は、公立病院44施設、組合立病院38施設、私立病院117施設、大学病院13施設、透析クリニック65であった。職能給を含んだ平均初任給は、公立病院179735円、組合立病院185625円、私立病院191265円、大学病院180037円、透析クリニック192530円であり、私立病院、透析クリニックが高水準であった。全国を地域別に分けて、初任給の地域差を比較した。関東地方190680円、近畿地方189657円、東海地方188789円であり、大都市圏を控えた地域の初任給が高い傾向にあった。サンプル数にばらつきがあるので、県別の比較は困難であるが、埼玉県、大阪府、京都府、東京都と、大都市圏が高水準にあった。業務別では、透析専任が194016円、CE業務全般が185312円であり、透析専任が高水準にあった。

【考察】今回の調査では私立病院、透析クリニックの初任給水準が高い傾向にあったが、個々を見てみると、最高額と最低額の格差は公立病院に比較すると大きく、高水準の病院が平均値を押し上げていた。公立病院は地域差、病院間差が少なかった。すべての施設の平均値では人事院が発表した医療職2、2級2号俸の水準および、人事院発表による平成15年度職種別、年齢別平均給与水準にも概ね達しており、現在の水準は適当であると考えられたが、施設による格差を少なくすることが課題であると考えられた。

心肺停止を伴わない高度低体温症例に持続血液濾過透析(以下CHDF)を行いながら血液加温を行い改善した症例を経験したので報告する。
【症例】70歳、女性。平成16年6月18日、自宅庭で雨に打たれ、意識なく倒れているところを家人に発見され救急車で来院された。来院時、血圧 142/72mmHg、心拍数 124bpm(心電図上はAf)、SpO2 97%(酸素5 L/分、マスク)であったが、低体温を伴う意識障害に対し人工呼吸を開始した。ICU入室時、直腸温は27.8℃であった。ICU入室後、電気毛布による体表面加温、輸液からの加温を開始した。直腸温28.8℃から加温を促進する目的でCHDF装置(東レメディカルTR-525)を用いた血液の加温を開始した。血液流量100ml/min、補液流量1000ml/hr、透析流量4000ml/hr、濾液流量5000ml/hr、補液・透析液加温器の設定温度を38℃で施行した。CHDF開始1時間後31.9℃、2時間後34.1℃、2時間30分後35.1℃まで復温したところで中止した。この間で直腸温6.3℃(平均2.5℃/hr)上昇した。復温後意識レベルは改善し、翌19日に抜管、20日にICUを退室した。【考察】本症例ではCHDF装置を体外血液加温に用い、2時間30分で直腸温を6.3℃上昇させた。高度低体温症では、体表面からの加温だけでは体温上昇は難しく、CHDFを行いながら加温を行ったため、すみやかな復温が可能であった。一方、問題点として開始直後にCHDFの廃液に溶血を認めた。これは設定変更を行い解消したが、高度低体温時に施行する場合の適切な設定条件を検討する必要があると考えられた。【結語】高度低体温症の1例を経験した。CHDF装置の加温器を用い平均2.5℃/hrで復温され有効であった。症例によってはCHDF装置を用いた血液加温も復温方法として有効と考えるが設定条件に関しては検討を要する。

129

癌性胸膜炎に対する胸腔鏡下温熱化学療法

130

ハイパーサーミア(温熱療法)を通じ、癌患者のケアに接して

帝京大学医学部附属病院 ME部1、帝京大学医学部附属病院 外科2

小川 竜徳1、玉城  聡1、儀賀 理暁2、井上 芳正2、高浪 巌2

静岡赤十字病院 臨床工学課

田形 勝至1、菊地 秀明1、小澤 章宏1、岡本 奉之1、堀口 直丈1、縄巻 卓也1

【はじめに】肺癌やその他の腫瘍の胸膜播腫による癌性胸膜炎が原因となる悪性胸水はコントロールが困難であり、予後不良な患者のQuality of Life (QOL)を著しく障害する。また、心臓・肺が圧迫され呼吸循環動態に影響が及ぶ場合は致命的な因子ともなり得るため、迅速かつ有効な治療を必要とする。今回我々は胸腔鏡下温熱化学療法を施行した。

【目的】胸腔鏡下温熱化学療法に用いた回路システムの安全性と有用性について検討した。

【対象と方法】2000年12月〜2005年1月に当院で施行した胸腔鏡下温熱化学療法は5例。現疾患は悪性中皮腫3例、肺癌1例、転移性肺腫瘍1例。男性4例、女性1例。全5例の内、4例を対象とした。まず全身麻酔、分離肺換気により手術導入し、側臥位とした。胸腔鏡下で胸腔内に送水および脱水用カニューレを一本ずつ挿入した。次にローラポンプ(Sarns7000)を用いて、熱交換器(MHE-3-LP)を介し胸腔内を42.0℃以上になるように3〜4Lの生理食塩水で還流を行った。回路内が42.0℃以上になったところでCDDP100mgを投入し、42.0〜43.0℃を維持して40分の還流を行った。

【結果および考察】4症例とも脈拍、血圧は安定していた。膀胱温は時間経過と共に若干上昇し、最高温は37.8℃〜38.1℃であった。各症例での回路温は目標の42.0℃以上を維持することができた。1例目では閉鎖式回路を用いたが脱水不良時の対応が遅れる傾向にあった。従って、2例目以降では脱水カニューレの後に心腔内貯血槽(CR40)を用いて落差脱水し、安定した流量を確保できた。カニューレに関しては体外循環用を選択することで還流に問題はなかった。

【結語】当院回路システムを用いて胸腔鏡下温熱化学療法が安定して施行できた。今後、更なる回路構成の見直しや温度測定、経過記録方法の統一化の検討が必要と考えられた。

【緒言】

現在、臨床工学技士はいろいろな分野で活躍している。当院でも人工心肺、心カテ心筋シンチ検査、人工透析等の各種血液浄化、医療機器集中管理などを行っている。

今回は、その他にもハイパーサーミアの治療に携わり機器操作だけではなく直接、癌患者のケアに接する事ができたので報告する。

【要約】

平成10年12月、山本ビニター社製サーモトロンRF-8を導入し平成16年12月現在、総患者数330名、総治療回数3400回の温熱療法を行った。

1回の治療時間を60分、1連の治療回数を8回、治療期間は1ヶ月をめどに、スタッフは臨床工学技士1名、放射線科兼任看護師1名で、治療初回のみ主治医立会いのもと治療にあたった。

装置の構造上、患者は同一体位で電極を身体に密接させているため、60分間動く事ができず、その苦痛は甚大であり、治療部位によっては、10分程度で全身から発汗するなど、これらを緩和するにあたり看護師同様に治療中でも清拭、飲水の介助、話し相手になるなどケアに接した。

この治療法は、電磁波を使用した加温のため、ホットスポットができやすく熱傷を生じやすい。そこで患者自身に、少しでも変化があれば知らせるよう注意を促しているが、各個人感受性がさまざまであるため、観察は十分に行う必要がある。

【総括】

治療患者の95%の人が告知済みで自分の病気の事を良く知っているため、患者から最新の治療法、専門用語、死についての話題も出てくる。それに対し、最新の情報、癌治療の知識について勉強し、また患者からの問いかけに対するスタッフ間での意見の統一も必要である。

機器の操作や点検修理だけでなく、実際に癌患者の治療とケアに携わる事で、患者と共に癌と闘っているという意識を持ち、治療にあたる必要がある。

また、患者個々にあった治療法の工夫、薬剤を使用せず疼痛を緩和する方法も今後の検討課題であり、臨床工学技士として透析ケア同様に癌治療の部門でも貢献していきたい。

131

限局性前立腺癌に対する高密度焦点式超音波(HIFU)療法の経験。

132

脳血管内手術中における脳内酸素飽和度モニタの有用性

明理会 大和病院 臨床工学科

大嶋 俊明1、星野 武俊1、谷口 淳1

国立病院機構 名古屋医療センター 臨床工学室

洞 博之1

【目的】現在、前立腺癌に対する標準的な治療法は、根治的前立腺摘出術が最も広く施行されている。しかし生体への高侵襲、副作用、長期入院期間、高額な医療コストなどの問題から、より簡便で低侵襲的な治療が望まれている。当院では2004年6月より、ForcusSurgery社製Sonablate500を導入し、限局性前立腺癌に対して、根治的前立腺摘出術に匹敵する治療法と言われている高密度焦点式超音波(HIFU)療法を開始した。そこでHIFUの原理と治療方法、成績について述べる。
【原理】HIFUは超音波振動エネルギーが組織の吸収係数に応じて熱に変換される性質を利用している。100W/cm2を超える強力超音波を凹面振動子(プロ−ブ)から放射収束させると、焦点領域温度は80〜98℃に急激に上昇する。この熱エネルギ−により組織を蒸散、凝固する。Sonablate500は操作用コンソール、経直腸プローブ、冷却用チラーより構成される。特徴的なのは診断用と治療用トランスデューサ(以下TR)が1本のプローブに内蔵されている事である。
【治療方法】全身麻酔又は腰椎麻酔後プローブを直腸に挿入し、診断用TRによる画像上で治療領域を設定する。その後リアルタイムで画像を観察しながら治療用TRで癌組織を蒸散、凝固させる。治療時間は3〜4時間で、入院日数は7〜10日である。【結果】限局性前立腺癌9例に対して本治療法を施行した。平均年齢66.2歳で、血清PSA値は治療前13.1ng/ml、治療2月後0.8ng/mlと低下した。前立腺体積も治療前14.7g、治療2月後14.1gと縮小していた。
【結語】HIFU療法は高度の合併症もなく、短期入院で、患者に対する侵襲が少ない治療法と言える。しかし有用性の確立にはさらに多くの症例と長期成績が必要である。

【目的】近年、頸動脈およびその他の脳主幹動脈狭窄に対し、血管内治療としてPTA、STENT留置術が行われるようになってきた。今回、治療中に脳内酸素飽和度(rSO2)を連続測定し、その有用性について検討した。
【対象および方法】2004年7月から現在までに血管内治療を施行した8例(内頸動脈狭窄症5例、鎖骨下動脈狭窄症2例、椎骨動脈狭窄症1例)を対象とした。rSO2はEdward社製INVOS5100)を用い血管内治療前にBASE rSO2を測定し、その後10秒ごとにモニタを行った。
【結果】血管内治療中にrSO2の急激な変化がみられたのは内頸動脈狭窄症のみであった。また心拍数、血圧の低下をほぼ同時に低下することを確認した。治療終了後のrSO2については、内頸動脈狭窄症5例中4例はほぼBASE rSO2に近い値であったが、1例のみ低下したままで終了し7日後に再狭窄が確認された。
【考察】内頸動脈狭窄症に対し血管内治療を施行する場合、注意が必要であると考えられた。また、rSO2モニタは、脳内酸素状態を知るうえで有用なモニタであると考えられた。
【結論】1)頸動脈洞反射が起こりうる、内頸動脈狭窄症では有意に低値を示した。2)内頸動脈狭窄症では血管内内視鏡(IVUS)使用においてもrSO2で低値を示した。3)rSO2モニタは脳内酸素状態を知るうえで有用であった。

133

体動モニタリングシステムの開発

134

当院における人工呼吸器に対しての意識調査

札幌医療科学専門学校 臨床工学技士科

横山 徹1、福嶋 満男1、阿部 雅幸1、石井 孝1

医療法人サンプラザ 新札幌循環器病院 臨床工学科

砂山 篤志1、竹内 千尋1、佐藤 広樹1、海老子 貴弘1、三輪 貴史1、菊地 一智1、荒道 昭男1

【目的】生体情報をリアルタイムでモニタリングし体動,姿勢,行動の把握,さらに対象者の病態を把握することで,危険な状況を瞬時に察知し速やかな処置や治療が可能となる。特に,対象者を長時間拘束することなく容易に日常生活をモニタリング可能とするシステムは有効である。そこで本研究では,半導体素子を用い小型で軽量な運動加速度モニタリングシステムを試作し,その性能評価を行った。

【方法】本システム(42×57×19mm,30g)の構成は,小型半導体素子である2軸加速度センサを用い,マイコンを介しRS-232C経由でPCにデータを送信し,対象者の体動を解析する。本システムの装着部位は腸骨上側(ベルト位置)の腹部左側とし,加速度センサの2軸のうちy軸を脊柱方向とした。また,本システムを種々の位置に装着した際の体動の検出も試みた。

【結果】対象者がベッドにて仰臥位から左右へ横臥位に変換したところx軸のデータがプラス,マイナス方向の値を示し体位変換の判別ができた。また,仰臥位から上半身を起こした場合や,直立した場合,y軸の値より各姿勢状況を判別することができた。なお,体動の運動速度は2軸の値の大きさに比例するためゆっくりとした動作,もしくは激しい動作であるかの判別も可能であり,歩行もしくは走行状態の動作判別もできた。さらに,臍部から腸骨左側の間で本システムの装着位置を調整することと,検出感度を調整することで,呼気と吸気時の腹部の体動を検出することもできた。

【結論】本システムにより体動を2軸成分で解析した結果,体位等の姿勢と運動速度による動作の判別が可能となった。呼気,吸気の体動が検出可能なことから睡眠時の呼吸モニタとしても応用できる。今後,電源及び信号ケーブルを使用せずワイヤレス化を試みる。さらに体温,心電信号などの生体情報もセンシングし伝送多重化を図る予定である。

【はじめに】当院において、2004年1月よりSIMENS社製サーボi導入するにあたり、事前に勉強会を開催し人工呼吸器に対しての意識調査を行った。
【対象及び方法】循環器病棟に勤務する看護師23名を対象に、1)勉強会は解かり易かったですか?、2)勉強会の時に質問出来なった事はありますか?、3)実際使用してどうでしたか?、4)使用してみて解からない事はありましたか?、5)定期的に人工呼吸器の勉強会を希望しますか?の5項目について調査した。
【結果】アンケート回収率83.3%、20名。アンケート1)に対し、『yes』50%、『no』15%、『無回答』35%。また2)に対し、『yes』8%、『no』92%であった。3)については、機器操作性に優れ、換気状態等がわかりやすいといった意見が大部分であった。4)に対しては、『yes』38%、『no』62%であり、5)に対し、『希望する』90%、『希望しない』10%となった。尚、勉強会出席率はアンケート実施者の65.0%、であった。
【まとめ】勉強会の理解度に対し、『基本的な知識がなく、自己学習してから望みたかった』という少数意見が見られたが、大部分は特に問題がないと回答した。実際サーボiを臨床使用して半年経過後の設問に対し、優れた操作性や視認性より、換気状態を把握し易いという意見が多く、使用に関する問題点は特になかった。今後の勉強会に対しての設問だが、定期的な開催を望む回答が多く、これは個人の知識向上及びリスクマネージメントに対しての意識向上であると思われる。
【結語】1)勉強会自体、問題点はなかった。2)サーボiは操作性に優れ、使用上特に問題点はない。3)知識向上及びリスクマネージメントの観点から、定期的な勉強会を望んでいた。

135

臨床工学技士国家試験対策用Webアプリケーションの開発に関する研究

136

多変量解析を用いた学会認定試験合否予測の検討

北海道工業大学大学院 工学研究科 応用電子工学専攻1、北海道工業大学福祉生体工学科2

竹村 務1、菅原 俊継2、黒田 聡2、木村 主幸2、有澤 準二2

池見東京医療専門学校

江上 祐市1、根津 竹哉1、丹羽 庸夫1

【目的】
一昔前まではパーソナルコンピュータ(以下パソコン)は企業や大学といった研究機関でしか使用されていなかったが、近年の情報技術の急速な進歩に伴って、誰でも1台所有することが当たり前の時代になってきた。インターネット上で複数のパソコンが同時にアクセスできる学習システムとしてE-Learningシステムがある。臨床工学技士の国家試験問題は工学・医学という幅広い範囲から出題され、その試験問題の約6割が過去問題と類似した内容である。そこで、効率的に試験対策を行うために過去問題の学習が必須であると考え、これをE-Learningシステムを用いて実現しようと考えた。現在他大学に同じ様なシステムが運用されているが、本学でも臨床工学技士の受験者のために管理、更新が容易にできるシステムの構築を目指した。

【システム構成】
E-Learningシステムの構成としては過去問題をデータベース化するためにまずMySQLを用いた。次にWebサーバにはApacheを使用し、このサーバにHTML(HyperText Markup Language)や簡易プログラム言語のPHPやJavaScriptで記述したプログラムを載せることでデータベースから問題を呼び出し、表示や解答ができる仕組みとなっている。

【結論】
本研究では臨床工学技士国家試験対策用Webアプリケーションを用いて、年代別及び分野別に問題を解くことができた。分野別の問題を活用することで、使用者の苦手な分野を確認し、さらに反復的に学習することでその分野を克服できると考えている。このシステムを使用することで臨床工学技士の国家試験の学習効率を向上させられることができる。なお今後は実際に臨床工学技士の多くの受験者に使用してもらい、使い易いシステムとして積極的に行っていく予定である。

【目的】 臨床工学技士を目指す学生にとって、毎年行われる日本ME学会の第2種ME技術実力検定試験(以下、ME2種)を受験することは、国試受験に次ぐ重要事項の一つである。 今回、ME2種受験前に教員による予測と受験後の合否判定結果を比較検討するため、多変量解析の一手法である判別分析を行い、有用な知見を得たので報告する。
【方法】 コンピュータによるデータの入力や操作等の作業は学生が行い、多変量解析の説明、分析方法、結果の解釈等は非常勤講師や専任教員が担当した。対象は2学年生でME2種受験者15名である。解析に使う科目は1年前・後期と2年前期に履修した20科目の中から以下の方法で選び出した。 まず専任教員(今回は1名)が受験前に全員の合否を予測した。次に合格、不合格の2群間で、対応の無い平均値の有意差検定を20科目に行い、有意差を認めた、基礎数学、電子工学、基礎医学実習、安全管理、の4科目を用いた。 判別分析は3種類行った(1)予測―1:受験2ヶ月前に合否予測を行った。(2)予測―2:受験直前に合否予測を行った。(3)結果後 :合否発表後に行った。
【結果】  判別的中率及び誤判別率はそれぞれ、(1)予測―1では93.3%、4.70%、(2)予測―2では100%、2.93%、(3)結果後では100%、2.28%だった。 受験直前、教員の合否予測と、試験結果後との判別的中率はそれぞれ100%であり、両者間の誤判別率の差は0.65%と僅差であった。
【結論】 多変量解析を学会認定試験の合否予測に適応した結果その有用性が示唆された。受験直前に教員が行った合否予測と合否決定後との対比で両者はほぼ一致した。今後、継続的なデータの積み重ねを行い、国家試験の予測にも適応する予定である。

137

インターネットを利用した教育事業展開の評価

138

高度医療専門職養成プロジェクトにおける臨床工学技士の役割

愛知県臨床工学技士会 教育委員会 藤田保健衛生大学短期大学 専攻科1、泰玄会病院2、小牧市民病院3、名古屋掖済会病院4、国立大学法人名古屋大学医学部附属病院5、岡崎市民病院6、厚生連渥美病院7、木曽川町立木曽川病院8、名古屋第二赤十字病院9、名古屋東市民病院10

日比谷 信1、柴田 昌典2、神戸 幸司3、高橋 幸子4、海江田 章1、木下 昌樹6、山田 直樹7、荒川 長也8、杉浦 裕之9、沖島 正幸4、清水 芳行10、志賀 美子5、西山 博司5、渡邊 晴美4

社会保険久留米第一病院 腎センター透析室1、社会保険久留米第一病院 臨床工学技士/医療経営・管理学修士2

江成 美絵1、北野 達也2

【目的】

当会教育委員会では、会員および医療関係者の資質向上を目的に教育事業を展開している。平成15年度より2年間、インターネットを利用した事業開催案内と募集を積極的に行い、e−メールによる事業参加受付方式を取り入れた。参加者へのアンケートの結果を基に評価をしたので報告する。

【対象および方法】

平成15年度および16年度に開催した14教育事業を対象に参加申込みの分類を行った。平成16年度教育事業参加延べ人数1178名(平成16年末現在)に対し、事業評価と事業参加方法のアンケートを実施し(回収率72.2%)、その結果を解析した。

【結果】

総参加申込者数に対するe−メールによる参加申込者比率は、平成15年度は71.5±5.5%、平成16年度は93.6±3.7%と有意(p<0.05)に増加した。平成16年度のそれぞれの事業の定員に対する参加者率は97.7±5.9%、参加申し込み数に対する参加率は、95.2±2.7%であった。

アンケートの結果:メールによる申込み方法に対し89.9%が便利だと評価した。将来希望する申込み方法として、インターネットを利用した方法を88.3%が支持をした。希望する参加費の取り扱いでは、郵便振込みが42.7%と最も高く、ついで、現金払い、銀行振り込みと続いた。事業評価では、講義内容、習得度、講義評価、次回(上級)受講希望の4項目について5段階評価を行った。それぞれの評価は、平均で4.4、3.5、4.3、3.8であった。

【考察】

事業評価はすべての項目で高い得点を得られたが、受講者の習得度がやや低く、これを補うための取り組みが望まれる。事業参加方法では、インターネットの普及に伴い、利用者の利便性の高いものへの移行が急速に進んだことを反映していると考えられる。これは、会員の事業参加応募の即時性や事業事務の効率化・分散化にも効果が期待できると考える。

【はじめに】NPO法人チェルノブイリ救援・中部の専門家派遣事業として2000年から高度医療専門職養成プロジェクトを行っている。
【渡航目的】1.現地で臨床工学技士などの専門職継続養成。2.寄贈医療機器、昨年船送リサイクル医療機器の稼働状況、所在確認、点検・消耗部品交換。3.院内講義「内視鏡技術移転」、呼吸療法全般(実技含む)」その他、医療技術移転。4.要修理医療機器調査、メンテナンス(点検・修理及び消耗部品交換)。5.診療材料、消耗部品継続供給。6.現地医療施設の問題、今後の課題検討⇒次回への課題。
【現地での活動】1.今回も准医師(心電計、脳波計専門)アンドレイ・ポスタヴェンスキー氏をクリニカルエンジニアとして養成すべくマンツーマンで継続的な技術指導(高度医療専門職養成)2.ジトーミル市立小児病院、ジトーミル州立小児病院にて院内講義(内視鏡技術、医療機器操作方法等)の実施及びマニュアル配布。3.国立ジトーミル技術工科大学での講義及び継続講座開設、実習用リサイクル医療機器寄贈確認。ジトーミル医療短大での講義。

【今後の展望】ウクライナ共和国ジト−ミル州の各医療施設において医療技術移転、院内講義等実施し、日本の臨床工学技士が評価され継続渡航となった。今後も後輩達の就職先確保や道標となるようさらなる努力を重ねたい。

139

当院における持続的血液浄化療法の現状と臨床工学技士の役割

140

心不全に劇症型肝炎が併発した患者をCHDF・PA・PE・HDFで救命した1例

埼玉医科大学 血液浄化部1、埼玉医科大学 腎臓内科2

山下 芳久1、大谷木 雄太1、花田 幸子1、西留 幸一郎1、村杉 浩1、三輪 泰之1、塚本 功1、大浜 和也1、菅原 壮一2、鈴木 洋通2

桐蔭ハートセンター

田中 太郎1、上屋敷 繁樹1、官野 高明1、池邊 沙織1

【目的】当院で施行した持続的血液浄化療法(以下CBP)の現状と、それを施行管理する臨床工学技士の役割について検討した。
【方法】2000年1月から2004年12月までの5年間に当院で施行したCBPの導入患者数、施行件数、施行病棟、導入疾患領域、導入時間帯のまとめと、それを施行管理した臨床工学技士の体制・業務・役割を検討した。
【結果】CBP導入患者数及び施行件数は年々増加傾向にあり、季節的にみると12月から3月の冬季に施行件数が比較的多く示され、6月、7月の夏季に比較的少ない傾向が示された。施行病棟は腎臓内科病棟が最も多く、次いで循環器内科病棟、心臓血管外科病棟、その他多くの病棟で施行されていた。導入疾患領域は循環器内科系が最も多かった。導入時間帯は、日勤帯、準夜帯、深夜帯共全ての時間帯で導入されおり、臨床工学技士が最も多い日勤帯よりも技士数の少ない準夜帯・深夜帯の方がCBPの導入数が多かった。臨床工学技士のCBPに対する体制は、原則として日勤帯2名、当直帯1名で施行しているが、当直帯のCBP施行患者数が6名以上になった場合に当直技士を2名としており、冬季においては技士2名の当直となることが多かった。
【結語】CBPを必要とする症例は年々増加し、その施行件数も増加傾向にある。CBPの導入は、日勤帯よりも準夜帯と深夜帯の夜間帯に多く、緊急性を要する場合が多い。また診療科も多岐に亘り、多くの病棟にて施行されている。現在当院では臨床工学技士1名にて当直を行っているが、必要なときには何時でも何処でも安全で最も適正なCBPを施行管理するためには、臨床工学技士の24時間勤務体制が必要不可欠であると確信する。

【目的】心不全に劇症型肝炎を併発した患者に、CHDF・PA・PE・HDFを施行して救命した症例を経験したので報告する。
【対象および経緯】症例は45歳女性。既往歴は甲状腺機能亢進症で、1年治療を続けるが、その後中止。平成16年9月14日発熱、9月17日edema増強、友人から黄疸も指摘されるが無視。更にedema増強したため9月21日近医受診し、腹水・Tbil21.7と高値のため当院内科に紹介入院となる。甲状腺クリーゼによる心不全で、劇症型肝炎を併発したため、循環器内科に転科し9月22日、集中治療目的のためICU入室。9月23日、心不全による呼吸機能悪化のため呼吸器装着。9月24日、最初に心不全を改善する目的でCHDFを45時間施行。その後、肝機能が更に悪化したので9月26日にビリルビン吸着、9月27日よりPEを2回施行するが、再度心機能が悪化したので9月28日にCHDFを16時間施行。心機能が改善した後に、9月29日よりHDFをPEと3回同時に施行した。前回の問題点で、高Na血漿とアルカローシスを呈したので同時にHDFも施行し、一時呼吸器も離脱できたが、10月8日に再び心機能が悪化したので呼吸器装着、CHDFを15時間施行。10月9日より、再度HDFとPEを同時に3回施行したところ、肝機能も改善し意識も回復して血液浄化から離脱し、10月18日に呼吸器離脱、10月28日にICUから病棟へ移り12月18日に経過退院。
【問題点】HDFとPEを同時施行した際は、治療効率の点から直列接続を試みたが、装置間の誤差があり、アラームが頻回に鳴り流量が保てなかった。流量を確保するために、多少の治療効率低下を考慮して並列接続に変更したが、治療面においても問題無く施行できた。
【結語】劇症型肝炎に対してPEを8回、HDFを6回施行し昏睡状態から救命し、90日と長い入院期間を必要としたが、無事に退院することができた。PEとHDFの同時施行は治療効率において優れており、この方法を活用したことは肝不全の治療に最適であった。

141

敗血症性急性肺障害に対するPMX-DHPとシベレスタットナトリウムハイドレートの併用療法

142

酸素代謝動態を指標としたPMX-DHPの導入基準

駿河台日本大学病院 臨床工学技士室1、日本大学 救急医学講座2

岡本 一彦1、三木 隆弘1、二藤部 英治1、古川 エミ1、中原 諄2、櫛 英彦2

駿河台日本大学病院 臨床工学技士室1、日本大学医学部 救急医学2

三木 隆弘1、岡本 一彦1、二藤部 英治1、古川 エミ1、中原 淳2、櫛 英彦2

【はじめに】敗血症性急性肺障害の治療にエンドトキシン吸着療法 ( PMX-DHP )の有効性が報告され、集中治療領域で使用されている。一方、シベレスタットナトリウムハイドレートは急性肺障害に有効な治療薬として使用されている。そこで我々は、PMX-DHP単独療法とPMX-DHPとシベレスタットナトリウムハイドレートの併用療法について比較検討した。
【対象および方法】P/F ratioが300以下の急性肺障害を来したsepsis患者13名を対象とした。PMX-DHPは東レメディカル社製PMX-20Rを用い、施行回数を24時間以内に2回、施行時間を3時間/回とした。PMX-DHP施行時のシベレスタットナトリウムハイドレート使用の有無により、単独使用群7例と併用群6例に分け、各群の平均年齢、APACHE‖score、PMX-DHP開始前、24、48、72、96、120時間後のP/F ratioを検討した。
【結果】平均年齢は単独群:62±10歳、併用群:62±20歳、APACHE‖scoreは単独群:22±4.0 point、併用群:20±6.0 pointとなり両群間に有意差はなかった。P/F ratioは、PMX-DHP単独群が開始前:228±25.7、96時間後:308±31.3 (p<0.05)となり120時間後も有意に改善した。一方、併用群は開始前:204±33.5、72時間後:313±123.3 (p<0.05)となり96、120時間後も有意に改善した。また併用群は、120時間後のAPACHE‖scoreが14±6 (p<0.05)と有意に改善した。
【結語】敗血症性急性肺障害に対するPMX-DHPとシベレスタットナトリウムハイドレートの併用療法は、72時間以降P/F ratioが有意に改善し、さらにAPACHE‖scoreが改善することが明らかとなった。

【はじめに】近年、sepsis患者に対しPMX-DHPを施行することにより昇圧効果や全身状態の改善が認められ、その有用性が報告されている。しかし導入基準は施設により様々で、一定の基準が確立されていない。そこで我々は酸素代謝動態を指標としPMX-DHPを導入し、その有用性を検討した。
【対象と方法】平成15年1月〜16年10月までにPMX-DHPを施行したsepsis患者24例(男性19例、女性5例、平均年齢60±15.4)を対象とした。TORAY Medical社製PMX-20Rを用い24時間以内に2回施行し、1回の施行時間を3時間とした。また全例にthermodilution catheterを挿入し、全身酸素代謝の指標に混合静脈血酸素飽和度(SvO2)、酸素運搬量係数(DO2I)、酸素消費量係数(VO2I)、酸素摂取率(O2ER)を用いた。これらの項目を開始前、24、48、72、120時間後に測定した。
【結果】生命予後は、18例が生存し、6例が死亡した。生存例は開始時よりSvO2、VO2Iは基準値範囲内を推移し、DO2I 、O2ERもほぼ基準値範囲を推移した。一方、死亡例もDO2I は開始時より基準値範囲内を推移したが、VO2Iは開始時より平均90.8±19.57 ml/min/m2と生存例に比べ有意に低下しており(p<0.05)、その後も基準値(120〜160ml/min/m2)以下を推移した。また開始時のVO2I をROC曲線より感度、特異度の最も良好な点を算出したところ、clitical pointは103.5 ml/min/m2であった。
【結論】生存例では全身酸素代謝は安定していた。しかし死亡例ではVO2Iが基準値以下に低下しており、全身の酸素摂取障害が発生していた。これらより、PMX-DHPの導入は、VO2Iが 103.5ml/min/m2以上であることが望ましいと考えられる。

143

Acetate free biofiltration(AFB)の臨床、特に長期例の安全性について

144

低分子ヘパリン使用時におけるソノクロットの有用性についての検討

腎友会滝川クリニック 技術部 1、腎友会岩見沢クリニック2

恒遠 和信1、田村 洋1、村上 規佳1、鈴木 保道1、菅原 剛太郎1、千葉 栄市2

医療法人 名古屋記念財団 東海クリニック

市川 博章1、伊藤 靖1、川上 大1、小熊 博康1、森實 篤司1、佐藤 晴男1

【目的】近年、高齢透析例、糖尿病透析例の増加と共に透析困難症ともいえる症例が存在し、血液浄化法上で種々の工夫を要することが多い。今回、我々は2001年1月より薬価収載されたAFB用透析液と炭酸水素Na補充液を用いて4年以上にわたり、本法を実施し、効果と安全性を検討した。

【対象及び方法】4年間継続実施している6例(DM3例、CGN2例、NS1例)を対象に臨床症状の推移、装置の安全性、操作上の問題点について通常のHD(HDF)と比較した。いずれの症例も通常の高Na重曹透析をドロップアウトしてAFBに移行したものである。透析液はバイフィル-Sを使用し、専用炭酸水素Na補充液を後希釈にて持続注入した。

【結果】血圧低下、気分不快、腹痛、悪心、嘔吐、筋痙攣などは速やかに改善もしくは消失し、終了後、帰宅後、翌日の疲労感は消失し、動作意欲、食欲も増加しQOL、ADLの大巾な改善を認めたが、専用装置、透析液及び補充液を必要とし、治療設定が適切でないと過度のアルカリ化やアシドーシスの悪化をきたすことがある。又補充液量の設定には計算式がいくつか考案されているが、必ずしも予測値と実測値とは一致せず、あくまでも参考にしながら、血液ガスより決定している。治療中に何らかの理由で補充液の注入が停止した場合には速やかに治療を中断しなければならない。なお、生体適合性を高める点から透析液清浄化が必要である。

【結論】本法の最大の利点は酢酸が全く生体負荷されないことであり、酢酸不耐症は勿論のこと循環動態の不安定な高齢透析例、糖尿病透析例の良い適応と考えている。実施にあたっては、条件設定、操作にある程度の習熟を要すると共に、専用装置の改善、普及も望まれるところである。

【目的】血液凝固・血小板機能分析装置(以下ソノクロット)を用いて低分子ヘパリンを使用している維持透析患者の血液凝固のモニタリングとしての有用性を検討したので報告する。

【対象及び方法】低分子ヘパリン使用者を対象に透析開始時(初回量投与前)、開始30分後、透析1時間目、抗凝固剤投与終了時、透析終了時に採血し、ソノクロットを用いて活性化凝固時間(以下ACT)、Clot Rate(以下CR)を測定した。

【結果】ACT値は有意な変化は見られなかった。CR値は透析中に有意な低下が見られ、終了時にはほぼ開始時の値に戻った。CRの平均値は透析開始時 22.1±4.0、開始30分後 15.7±6.0、1時間目 14.7±5.5、抗凝固剤投与終了時 15.3±7.0、透析終了時 20.8±4.0であった。

【結論】低分子ヘパリン使用時の血液凝固のモニタリングにはCR値が適切な指標になりうると思われる。

145

血液透析モニター(HD02)によるアクセス管理の評価

146

血液透析モニター(HD02)による心拍出量の評価

玄々堂君津病院 臨床工学科1、玄々堂君津病院 外科2

藤平 雅紀1、三浦 國男1、大崎 慎一2

玄々堂君津病院 臨床工学科1、玄々堂君津病院 外科2

高橋 初1、三浦 國男1、大崎 慎一2

【目的】

近年、糖尿病性腎症患者や高齢患者の増加に伴い、ブラッドアクセス管理は困難になってきている。そこで今回我々は、血液透析中に患者のシャント部再循環率(再循環率)、シャント流量、心拍出量を簡易的に測定可能な、ニプロ社製、血液透析モニター(HD02)を用いて、再循環率およびシャント流量の2点に対して測定し、ブラッドアクセス管理における有用性について検討した。

【方法】

血液透析中にAV刺入部から10cmの血液回路に超音波センサーを接続し、Vチャンバーから生理食塩水10mlを数秒で注入し、超音波トランジットタイム法にてシャント流量、再循環率測定を行った。比較対照として再循環率はクリットラインモニター(CLM)、シャント流量は超音波ドップラーを使用し検討した。

【結果】

HD02から得られた再循環率はCLMの測定値と相関係数0.976と有意な相関関係を認めた。HD02では、複数回の測定において誤差は5%以内であり、非常に簡易的に測定可能であった。シャント流量は、HD02、超音波ドプラーそれぞれ3回測定し平均値で比較した。HD02は523.3±15.3ml/min、超音波ドプラーは514.9±39.8ml/minで両測定機器は近似した値を示した。HD02の測定精度は測定値の±15%以内であり、その精度を十分満たす結果であった。

【結語】

HD02は血液回路にクリップタイプの超音波センサーを接続する為、特に必要とする部品はなく、低浸襲的かつ簡易的に再循環率・シャント流量を測定可能であった。複数回測定時の誤差も少なく常に安定した測定値であった。また、シャント流量の定期的な測定にて、シャント閉塞の進行や、シャント流量の増加に伴う心機能への負荷の早期発見に有用である。よって今後のアクセス管理においてHD02は臨床的に有用であると考えられた。

【目的】

近年、種々の簡便かつ低侵襲な血流測定法が考案され臨床応用されている。今回、超音波トランジットタイム法を用いた血液流量モニタ装置(HD02)を用いて、血液浄化施行中の心拍出量を測定し、超音波診断装置による心エコ−図法やスワンガンツカテーテルによる熱希釈法との比較から、本装置の有用性について検討した。

【測定原理】

生理食塩水をボーラス注入することにより、血液を希釈し超音波の速度が低下する。これらを静脈側と動脈側のセンサーが希釈曲線(超音波伝搬速度変化曲線)として記録する。静脈側と動脈側での希釈曲線面積比(スチュワートハミルトンの原理)で心拍出量を算出する。

【方法】

血液回路A・Vにセンサーを装着し、37℃近辺に加温した生理食塩水20mlをV側チャンバー下部へ一定速度で注入後、心拍出量及び数種類のパラメータを計測した。

【結果】

超音波診断装置による心エコ−図法、スワンガンツカテーテルによる熱希釈法との比較から心拍出量は信頼の得る算出値であった。心拍出量は除水の増加に伴い低下した。生理食塩水の温度・注入速度が変動すると測定値は変動した。手技はパソコンへのデータ打ち込み及びセンサー装着と生理食塩水注入だけなので簡便であった。

【結論】

循環動態の把握に有用であると結論するが、生理食塩水の温度や注入速度は一定でなければ値に誤差が生じるので注意を要する。

147

血液回路内圧の振幅からの実血流量測定法

148

透析モニタ−『HD 02』によるAccess Blood Flow測定の有用性の検討

釧路泌尿器科クリニック

大澤 貞利1、山本 英博1、斉藤 辰巳1、小半 恭央1、柏木 政信1、伊藤 正峰1

医療法人社団 煌生会 北見循環器クリニック 臨床工学科

五十嵐 俊仁1、生駒 拓朗1、村田 祐介1

【目的】QBは透析効率に影響を与える重要な因子であるため,透析施行中の実血流量を簡便に測定するシステムを考案した。
【方法】血液ポンプにはローラーポンプが用いられ,ポンプのしごきにより動脈圧あるいは静脈圧の回路内圧は脈動する。脈動による最高圧と最低圧によって振幅が得られる。ローラーポンプの特性として脱血圧が陰圧状態のときには実血流量が減少し,脱血圧と実血流量には強い相関がみられる。また,脱血圧と回路内圧の振幅にも強い相関がみられる。このことから,回路内圧の振幅をモニタリングし脱血圧を演算して実血流量を測定した(振幅法)。
【結果】in vitroにおいて振幅法による測定は実測値に近似した値が得られた。また,圧力測定ラインの異常を監視することができた。
【結語】血液透析施行中の実血流量を特殊回路や薬液注入が必要なく簡便に測定するには振幅法が有用であった。

【目的】Access Blood Flow(以下AF)、Cardiac Output(以下CO)が測定可能な透析モニタ−『HD 02』(NIPRO社製)により測定したAF測定の有用性と問題点について検討し今後の透析治療やBlood Access管理へ活用することを目的とした。

【対象及び方法】当院慢性維持透析患者124名(男性78名、女性46名、平均年齢64.4歳)に『HD 02』でAFを測定し、測定結果が500ml/min未満をL群、500〜1700ml/min未満をN群、1700ml/min以上をH群とし年齢、原疾患、DWt、透析歴、PWV、Kt/V、日常活動度、UCG所見、hANP、BNP等の諸値を比較検討した。

【結果】AFは透析歴、DWt、日常活動度、Kt/V、COと有意な正相関、年齢、PWVとは有意な負の相関を示し、UCG諸値との関連は認めなかった。又、L群とH群ではH群で透析歴、DWtが有意に高く、年齢は有意に低かった。更に糖尿病性腎症の割合とPWVではL群>N群>H群の順でいずれの群間においても有意差を認めたが、UCG諸値及び、その他のパラメ−タ−は全ての群間において有意差は認めなかった。

【結論】AFは年齢、PWV、原疾患、日常活動度、DWtとの関連性が強くUCG諸値とAFに関連性は認めなかった。これらの結果より、Blood Accessの適正流量を判断する場合は多角的な因子より決定することが必要であると思われた。しかし、今回の結果は短期評価であるためAFと心機能の関連性は断片的な評価に留まっており、AFと心機能、透析効率、予後等の関連性を連続的に検討することが今後の課題と思われた。以上『HD 02』は極めて非侵襲的で簡便にAFが測定可能であり今後の透析治療、Blood Access管理への有用性が示唆された。しかし、穿針部位や測定手技により測定結果の信頼度が低くなる場合も認め、今後の課題と思われた。

149

脱血圧を指標とした各種留置針における臨床評価と実流量の検討

150

CRIT-LINE TQAの使用経験

東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 血液浄化療法科1、東京女子医科大学 臨床工学科2

坂上 貴光1、小田 順一1、伊部 紀子1、山田 祐史1、石森 勇1、芝田 正道1、金子 岩和1、峰島 三千男2、秋葉 隆1

明生会 東葉クリニック八街 臨床工学部

井竹 康郎1、宮崎 正一1、中野 喜久男1、池澤 正雄1、佐藤 忠俊1、須賀 喜一1、山下 淳一1、大森 耕一郎1、田畑 陽一郎1

【目的】高血流量(設定流量350ml/min)を必要とする透析患者1例に対し径と形状の異なる留置針を用いた際の脱血圧の測定と水系実験において実流量の検討を行う。
【方法】(1)臨床評価:1症例(52歳男性、透析歴24年)に対して留置針16G、高流量対応16G(16HF)、15G(全て外筒表示)を用いた。測定は患者接続部から1.5mの箇所に圧力計を装着し、測定した。測定回数は各留置針で5回ずつ、合計15回の測定の測定を行った。(2)水系実験:試験液として水を用い、設定流量を50〜400ml/minとした。患者接続部直後にクレンメを用いて脱血圧を広範囲に変化させたとき(0〜−400mmHg)の実流量の変化を検討した。
【結果】(1)臨床評価:16G、16GHF(−300mmHg程度)と比較し、15Gでは−200mmHg程度と高い脱血圧で推移していた。また、治療後半の血液濃縮によると思われる脱血圧の低下も15Gで最も低かった。(2)水系実験:実流量の低下は脱血圧の低下に伴い、いずれの設定流量においても同様の変化率で低下していた。また、−300mmHgを超えた陰圧が発生した場合、15%以上の実流量の低下が確認された。実流量の低下は高流量になるほど著しかった。
【考察】今回の検討で、水系実験では−300mmHgを越える脱血圧が発生した場合、15%程度の実流量の低下が確認された。臨床では脱血圧が−250mmHgを超えた場合においても、血液ポンプ前に設けられたピローによる脱血不良の判別が困難な状態もあるとの報告からも、脱血圧の経時的なモニタリングは返血圧同様にモニタリングすることが望ましいと考えられる。
【結語】透析中の脱血圧の測定は実流量を概ね反映しており、その有用性が示唆された。

【目的】ブラッドアクセス管理は透析治療上重要であり、ブラッドアクセスのトラブルに対して早期の対応が必要である。シャント血流量(以下、QA)の測定を可能にしたJMS CRIT-LINE TQA(以下、TQA)を臨床使用し、実用性を検討したので報告する。

【対象及び方法】血液透析患者16名を対象に各3回QA測定を行なった。更に1症例はPTA前後でQA測定を試みた。測定法は専用センサーパッドを穿刺部位から約25mm上部に固定し、生理食塩水20mlを血管内に注入し、ヘマトクリット変化率よりQAを測定した。更に各症例3回の測定結果を変動係数(C.V.)にてバラツキの度合いを検討した。

【結果:考察】16名の平均C.V.は8.9±5.1%であり、手技を重ねるに連れバラツキは減少傾向であった。PTA後のQAは上昇し脱血不良は改善されていた。TQAはベッドサイドにて簡易的にQA測定が可能であるが、測定操作は習熟度が必要であった。

【結語】定期的にQA測定することで、TQAはブラッドアクセス管理に有用な方法と考えた。

151

HD02血液透析モニタを用いたブラッドアクセス管理の評価

152

透析患者の睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対するODIを用いたスクリーニングについて

天理よろづ相談所病院 臨床病理部

齊部 千恵子1、津田 淳1、吉田 秀人1

西神戸医療センター1、腎臓内科2

加藤 博史1、児玉 哲也1、野田 真一1、市原 文1、上崎 勝生1、中村 充輝1、大山 敦嗣2、草野 仁2

【はじめに】HD02血液透析モニタ(HD02)はブラッドアクセス評価の新しいモニタである。我々は、平成16年7月よりHD02を用いてシャント血流量の測定を行い、ブラッドアクセス管理を試みている。今回、ブラッドアクセス管理にHD02での測定が有用であった3症例を経験したので報告する。

【症例1】71歳男性。8月6日、穿刺時にシャント音の微弱、脱血不良が認められ、HD02でのシャント血流量測定では210ml/minと血流不足であった。透析終了後、シャント拡張術(PTA)を施行し、9日の透析時の測定では523ml/minと改善がみられ、その後問題なく透析が行われている。

【症例2】62歳男性。7月28日シャント肢スティール症候群の治療目的にて他院より紹介入院となった。入院時の測定では1866ml/minと血流過多、激しい疼痛をきたしていた。29日シャント縫縮術を施行し、疼痛も自制内となり8月2日の測定では1090ml/minと改善し、退院となった。

【症例3】75歳男性。7月16日のHD02による定期測定で420ml/minであったが、その後脱血不良をきたし、8月27日にPTAを施行した。9月1日の測定では380ml/minであり、その後も脱血良好であったが、11月15日に再び脱血不良となり測定を行ったところ165ml/minと低値を示し、翌日PTAを施行した。11月24日の測定では313ml/minと改善がみられた。12月23日の経過観察目的での測定で247ml/minとシャント血流量の軽度低下がみられたが、現在脱血不良なく透析は施行されており、経過観察中である。

【まとめ】HD02は短時間で簡便かつ非侵襲的に繰り返し測定できる。HD02での測定結果は客観的な数値として、ブラッドアクセスインターベンションの施行時期の決定や、施行後の評価、さらにその後の経過観察などブラッドアクセスの長期的な管理に有用なモニタである。

【目的】外来透析患者のSASについて、酸素飽和度低下係数 (以下ODI)を用いたスクリーニングを行いその有用性を検討したので報告する。
【対象】当院外来透析患者22名
【方法】1.透析患者に対しESSおよびピッツバーグ睡眠質問表等を用いた自覚症状のアンケートを行なった。2.患者がパルスオキシメーター(TYCO社製N-550)を自宅に持ち帰り、酸素飽和度を終夜測定した。測定は週末の2日間行い、除水不足による影響を避けることとした。(適切なDWが設定できていない患者は、検討から除外した。)3.測定した情報を解析し、ODI 3 %が10秒以上持続する場合について集計した。4.ODIが高値の患者についてPSG検査(フジレスピロニクス アリス4)を行いCPAP療法の導入を行った。
【結果】ODI 20以上が3名(13.6%)、10以上が7名(31.8%)、5以上が12名(54.5%)であった。また、平均ではODI 9.9となり、最低は0.7、最高は50.7であった。スクリーニングの結果、1名がCPAP療法の導入となりODI 20以上の患者2名がCPAP療法導入予定である。患者の自覚症状とODIに相関はなかった。
【考察】透析患者のSAS合併率は健常者のそれと比べはるかに高く、PSGの結果より、混合型のSASが多く、透析患者が合併するSASの特殊性が現れていた。また、簡易PSG検査のAHIはODIとの差が少ないが、PSG検査との比較では、その検出基準の違いからAHIと解離する場合があった。一方で、ODI 10以上の患者7名を経過観察と判断したため今後の対策が課題である。
【結語】透析患者の合併するSASにパルスオキシメーターを用いたスクリーニングは有用である。しかし、今後はODIが40を超える場合などに、一度の検査でCPAP療法が導入できるよう、簡易PSG検査に切り替えるべきであろう。

153

CRIT-LINE TQAを用いたアクセス血流量測定の評価

154

ダブルルーメンカテーテル(FDL)における再循環の検討

医療法人仁真会 小路白鷺クリニック1、医療法人仁真会 白鷺病院2、医療法人仁真会 白鷺血管アクセスセンター3

小北 克也1、山川 健次郎1、内田 麻希2、南 伸治2、岡林 和美2、平田 純生2、平中 俊行3、山川 智之2

札幌医科大学附属病院 臨床工学室1、札幌医科大学 第二内科2

大江 祥1、武蔵 健裕1、前中 則武1、加藤 優1、河江 忠明1、買手 順一2

【目的】これまで我々は、定期的なアクセス血流量測定は血管アクセス狭窄症の予測に有用であることを報告してきた。当院では1999年1月よりCRIT-LINEを用い、動静脈逆接続時の再循環率よりアクセス血流量測定(以下、RR法)を行っている。今回、後続型で測定方法の異なるCRIT-LINE TQAを用いた血流量測定(以下、TQA法)を行い、従来型との有用性を比較検討する。TQA法はシリコン製のセンサーパッドをアクセス血管上に固定し、血管内に20mLの生理食塩水をボーラスする。その際のヘマトクリット値の変化よりアクセス血流速度を測定しアクセス血流量を算出している。

【対象】当院および白鷺病院で人工血管を有している維持透析患者42名

【方法】透析開始前にTQA法、透析開始1時間以内にRR法で血流量を測定し比較する。また、測定に要した時間を比較した。

【結果】TQA法で測定したアクセス血流量はRR法で求めた血流量より低い傾向がみられた。また、測定値のばらつきを示す変動係数(CV値)より再現性が認められた。TQA法の測定時間はRR法に比べ大幅に短縮することが可能であった。

【まとめ】TQA法は、経皮的にアクセス血流量を測定することが可能で、体外循環を必要としないため、透析室以外にも外来や手術室でも使用が可能と思われる。TQA法は測定値のばらつきが少なかったが、RR法で求めた血流量より低い傾向であった。また、センサーパッドの大きさや固定方法にテクニックを要し、一部の人工血管では測定できないなどの問題点も見られ、今後の検討が必要と思われる。

【目的】急性血液浄化の一時的Blood AccessとしてFDLが多く用いられているが、先端の血栓閉塞や脱血不良によって、やむを得ず逆接続で治療を継続する場合もある。そこでFDLによる再循環率をクリットラインモニター3-TQA(以下 CLM)により測定し、FDL挿入部位、接続方法(順、逆接続)と再循環率の関係について検討を行った。また、実験的に模擬回路を作成し流量と再循環率との関係についても検討したので併せて報告する。
【対象及び方法】2004年9月〜12月までの間、FDLを用いて血液浄化を施行した15症例を対象とした。FDL挿入部位によって内頚静脈、鎖骨下静脈を上肢群(n=19)、大腿静脈を下肢群(n=15)と群分けした。再循環率はCLMで測定し、4%以上を陽性とした。【結果】順接続では有意に下肢群での陽性率が高かった (P=0.043)が、逆接続では上肢群、下肢群での陽性率に有意差は無かった (P=0.134)。また、同一症例における接続方法の比較(n=10)では、順接続に比べ逆接続で有意に陽性率が高かった(P=0.0034)。
【実験的研究】FDL送血側へ生理食塩水、模擬血管へRO水をシングルパス還流とする模擬回路を作成した。 FDL送脱血側の浸透圧を測定し、再循環率=脱血側浸透圧/送血側浸透圧より算出した。 FDLにはArgyle社製Tornado Flow 12Frを用いた。設定条件を模擬血管内径10mm、模擬血管内流量1,3,5L/min、送脱血流量50,100,150,200ml/minとした。順接続の場合は各条件下で再循環は無かったが、逆接続の場合、模擬血管内流量が少なく、送脱血流量が多くなるほど再循環率が高くなる傾向があった。
【結語】臨床データより、順接続時は大腿静脈で、逆接続時は挿入部位に関係なく再循環を起こす危険性が高いと言える。また、模擬実験では血管内流速や送脱血流量が再循環へ影響を及ぼす因子だと言える。以上のことよりFDLを用いる血液浄化では、FDL挿入部位の選択および先端の位置確認が再循環防止へつながると考えられる。

155

アンケート集計から見られるカテーテル管理の現状と課題

156

透析中のアクシデントに対するリスクマネージメント

埼玉医科大学病院 血液浄化部1、株式会社メディコン2

大浜 和也1、山下 芳久1、塚本 功1、三輪 康之1、花田 幸子1、大谷木 雄太1、渡来 雄一2、大野 浩明2、横山 恵介2

医療法人あかね会 中島土谷クリニック1、医療法人あかね会 土谷総合病院2

平 ひとみ1、宮本 照彦1、谷川 智彦1、山地 雅樹1、田口 小百合1、森石 みさき1、川西 秀樹2、土谷 晋一郎1

【背景及び目的】各社から血液透析用ダブルルーメンカテーテルが市販され抗血栓性などにも優れた素材を用い、形状にも工夫を凝らすなどして長期間の安定した流量が得られるダブルルーメンカテーテルも市販されるようになってきた。使用に際しては医師が清潔操作で取扱い、セルジンガー法にて患者へ挿入し長期間留置をする。治療時にはカテーテルを血液透析アクセスとして用いる。また、治療時以外は点滴ラインとして使用しているなど治療時以外での使用・管理状況等は統一されていないのが現状である。今回我々は、埼玉県内の主な医療機関29施設に対して〔1.使用状況2.管理3.管理マニュアル4.長期留置用カテーテル〕の4項目に関してアンケートを行ったので報告する。
【結果】1.使用状況では、挿入部位として第一選択する部位は大腿静脈を用いるが63.3%あり、その理由としては手技的に良いという意見であった。2.管理に於いては挿入部消毒薬としてイソジンであるポピドンヨードを用いている施設が100%であり、コネクター部の消毒にはヒビテンアルコールを用いていると回答した施設が10%であった。3.管理マニュアルに関しては各病院でマニュアルを作成していると回答した施設が65.5%であった。4.長期留置用カテーテルに関しては65.5%の施設で使用経験があるとの回答であった。
【考察】アンケート結果から挿入部の消毒はポピドンヨードを用い、接続部の消毒にはヒビテンアルコールを用いている等の結果が見られた。管理用マニュアルはアンケートを行った66%の施設で独自に作成している事がわかった。
【まとめ】透析における緊急用カテーテルは管理方法なども様々であり、今後は統一したカテーテル管理マニュアルが必要である。

【緒言】透析中に起こる事故のうち、回路の離断・エアー混入・抜針等は患者に多大な影響を及ぼす。日本臨床工学技士会が提案している血液回路の標準化に伴い、当院でもより安全な治療が行えるよう、2003年11月より血液回路を変更(各接続部のルアーロック化・抗凝固薬注入ラインを血液ポンプ前から血液ポンプ後に変更)した。今回、血液回路を変更したことでアクシデントが減少するかを検討した。

【方法】血液回路を変更した前・後1年間に提出された報告書を対象とした。そのうち、エアー混入(回路内・体内)・脱血・抗凝固剤に関するものに焦点をあて、発生件数・事故内容・アクシデントレベルの変化について集計・分析した。

【結果】回路変更前において、エアー混入は4件発生し、その内1件が体内への誤入であった。抗凝固剤では、吸い込みが38件発生していた。脱血は10件発生し、ダイアライザーと回路の接続部、静脈圧ライン接続部等によるものであった。回路変更後はエアー混入が0件となり、抗凝固剤の吸い込みにおいても0件となった。脱血事例においては8件発生しており、変更後の8件のうち7件は、抗凝固薬注入ラインと注射器の接続不良によるものであった。吸い込みは全く無くなった反面、脱血は増加しており、抗凝固薬注入ラインの位置変更による回路内の圧変化と、ルアーロックとの接続不良原因であることが解った。レベルに関しては回路変更後、全てのアクシデントにおいて危険度の低いものへ変化した。

【結語】血液回路の改良でエアー混入、抗凝固剤の吸い込みは減少した。しかし、抗凝固薬注入ラインに起因する新たなアクシデントを防止するための対策が必要である。

157

透析用ベッドを中心とした患者環境整備についての考案

158

透析装置のシリンジポンプに於けるシリンジ外れ防止対策

腎愛会 だてクリニック 臨床工学科

南 嘉継1、林 恭子1、東小野 智1、名古屋 龍司1、奥井 真吾1、小林 肇1

小山宮中病院

井筒 宏之1、大? 達也1、阿部 吉正1、木ノ内 真紀子1、瀬戸 広美1、菅谷 由紀子1、菅谷 行雄1

コンピュータ化された透析装置の開発、透析療法や血液浄化法の発達は、透析患者のQOLや生存率の向上などに一定の成果をあげているところである。しかし透析患者は依然として週3回1回4時間、透析装置と透析ベットに身体を拘束される事に今も昔も変わりは無い。今回、透析ベットについて、快適さや使い勝手など患者さんの側からの視点とスタッフ側からも考えられる安全性や新たな機能を検討し具体化したので報告する。透析ベッドの検討にあたっては、現在および将来の透析患者の高齢化や要介護症例の増加を考慮し、ベットへの移動や、乗り降りが簡単で安全である事、透析中に身体に負担がかからないようにする事、頭部や下肢挙上など患者さんが好みの姿勢をとれる事などを主眼にした。またスタッフ側としては、穿刺や抜針、止血などの行為が術者にとって楽で自然な姿勢でできる事、治療中、患者と同じ目線で会話や指導が可能な事、血圧低下の予防や処置には下肢挙上が可能である事など看護面や作業性の観点からの課題があげられた。これらに対して床からの高さが最低37cmから最高65cmまで調整でき、また頭部、足部の高さも可変できる電動ベッドと、血液の体外循環中は寝返りも出来ない患者さんの為に低反発マットレスの採用を決定した。低反発マットレスは多くの患者さんに好評であり、また電動ベッドは患者さん自らがリモコンを操作し、下肢挙上の時間的タイミングや角度を自由に調整しており血圧低下の予防に利用している。更に独自の発想アイデアとして、各ベッドには、輸液ポンプやシリンジポンプ、自動血圧計など医療機器の電源コンセントを集約化しベッド周りの簡素化と空間確保を図り、使い易い位置に手指消毒剤容器を据え付け感染対策の実践、血液回路ホルダーの設置による回路の固定と脱落防止効果などを検討した。

【目的】平成15年、腎透析センターにおいて透析用血液回路のAチャンバー上部のねじれによる折れ曲がりが発生した。その為にAチャンバーより前の回路に圧力がかかり、装置のシリンジポンプからシリンジが外れ、更には内筒も外れ失血するという重篤な事故が発生した。今回この件について機械的観点からの安全対策を検討したので報告する。
【対象および方法] 血液透析回路の流入方式として縦入れタイプと横入れタイプを用意し、折れ曲がりの度合いを検討した。次に、ヘパリンポンプの外れ具合をAチャンバー流入部に折れをつくり、シリンジの固定方法を水平、奥側に傾ける、手前側に傾けるといった状態を作り検討した。更にシリンジ内筒の抜け圧力を測定した。
【結果】 チャンバーへの流入方法は、縦いれタイプでは折れ曲がりができ、閉塞状態が確認できた。一方、横入れタイプでは完全な閉塞状態にはならなかった。ヘパリンポンプのシリンジの外れ具合では奥側に傾けておいた場合シリンジが外れることを経験した。各社シリンジ内筒の抜ける圧力を測定した結果は、A社のシリンジの場合、横向き姿勢で390mmHg、縦向き姿勢で280〜510だった。 B社のシリンジの場合、横向き姿勢は1,500の圧で内筒は抜けず縦向き姿勢では1,800の圧で内筒は抜けなかった。
【考察およびまとめ】 血液回路のチャンバー上部を縱入れタイプから横入れタイプに変更することにより折れ曲がりやねじれを生じることがなくなった。シリンジ押さえは、溝を深くしシリンジ押さえのばねをより硬いものに変更したことにより外れにくくなった。シリンジをA社のシリンジから抜け圧力の高いB社の物へと変更したことにより万が一外れたときでも失血する危険が減少した。
【結語】人為的な事故であっても機械が関与する場合には、機械的観点からも考えることで更に安全な対策が行える。

159

TMP実測測定の意義(TMPから内部濾過量を推測できるか?)

160

透析効率マ−カに排液中UN除去量が可能か

大分内科クリニック 透析室

大塚 孝幸1、福田 利恵1、足立 慎也1、坂下 亨1、小野 和子1、吉上 早苗1、河野 桂子1、小川 一1、松山 家久1

重井医学研究所附属病院 臨床工学部1、岡山理科大学 理学部 応用物理学科2

尾崎 真啓1、林  国人1、田中 明彦1、松橋 妙子1、津村 瑞江1、久保 裕子1、岡林 徹2、中川 益生2

【目的】 私たちは2002年大分人工透析研究会で真のTMP測定をすることの重要性について発表した。今回はTMPを連続的に測定することによりさらに正確に逆濾過量を推測できるのではないかと考え測定を行い、第49回日本透析医学会コンセンサスカンファレンス02で東京女子医科大学腎臓病総合医療センターの峰島三千男先生が発表された最大内部濾過量推定法との比較を行った。

【方法】 クラレ社製圧力測定器を用い透析中の圧力をパソコンに取り込み連続測定を行った。

【結果】 血液側入口圧から透析液側出口圧を引いた値と血液側出口圧から透析液側入口圧を引いた値の差が少ないほど内部濾過量が多い。 TS-1.6SLでは実測TMPに比較して装置TMPが高い値を示した。また、装置限外濾過率に比較して実測限外濾過率が低い値を示した。 血液側、透析液側の測定値による圧力プロファイルの左右の三角形の面積を求め、その面積差が濾過量に相当することがわかる。 峰島先生が推奨した推定法と我々の施設の評価法は同じような結果となったが、我々の施設の評価法は若干ではあるがすべて低い値を示した。

【考察】 我々のTMP測定法を用いて峰島先生の式を使用した測定法は簡便であり、どこの施設でもできる測定法であるがダイアライザーによっては透析前と後で最大内部濾過流量はかなりの違いがでてくるためTMPを測定する時間が重要である。

【まとめ】1. 血液側・透析液側圧力損失が増大すると内部濾過流量は多くなる。膜性能、充填率、容器形状などの影響が大きい。2. UFRPを正確に測定するためには実測TMP測定が必要である。実測TMPを測定する場合QFに注意する。3. 実測TMPを測定することにより最大内部濾過流量を計算しダイアライザーの置換量を予測できるが、測定時間など考慮する必要がある。4. 最大内部濾過流量を正確に換算するためには連続的なTMP測定が必要である。

【目的】透析液排液中UN除去量が、透析効率を反映するのかについて検討した。
【方法】透析排液を除水ポンプから採取し、24名の透析患者デ−タと検討した。またそのうち8名の患者は、1時間ごとに排液を採取し時間経過について検討した。
【結果】1.4時間透析排液除去量は、UN 13.8g、Cre 1.85g、UA 1.0g、P 0.79g、Alb 1.96g、β-MG 154.1mgであった。2.UN排液量と各種パラメ−タとの相関関係は、Cre排液量 0.7089、血清UN後値 0.6723が、0.1%の有意差で相関を認めた。また、UN排液量、P排液量、血清UN前値、血清(前−後)体重値が1%以上の有意差により相関を認めた。3.除去曲線は、UN、Cre、UAは時間と共にほぼ直線性を示した。またP、β-MGは2コンパ−トメント曲線を示した。Albは、開始1時間で急激に除去される結果を得た。
【結語】透析排液中UN除去量を測定することにより、Cre,UA排液量を予測することができる可能性を示唆した。

161

血漿浄化装置MA-01とMA-03の比較検討

162

シャントPTA用シースの考案及び臨床評価

仁友会 北彩都病院 臨床工学科1、仁友会 北彩都病院 内科2、仁友会 北彩都病院 泌尿器科3、仁友会 泌尿器科内科クリニック 臨床工学科4

中谷 隆浩1、松崎 美香1、阿部 博明1、鈴木 精司1、小西 康智4、石川 幸広1、井関 竹男1、小林 武2、石田 裕則3

石狩病院 臨床工学技士科1、石狩病院 泌尿器科2

加藤 敏史1、佐伯 龍哉1、酒井 由起1、遠藤 秀介1、小川 英恵1、佐藤 利勝1、須江 洋一2、森川 満2

【目的】当院では血漿浄化装置MA−01(以下01)を長期に渡り使用してきたが、今回その後継機MA−03(以下03)を臨床使用する機会を得たので、安全性、操作性について比較検討した。
【方法】作業効率、操作及び警報ガイダンスの有効性、安全性について比較した。
【結果】MA−01では治療前、治療後の定期的な動作チェックで時間がかかったが、MA−03は装置起動時に自動で自己診断を行う機能が装備してあり、点検業務の時間短縮や簡素化につながった。基本操作が液晶タッチパネルになり操作手順も表示される為、理解が容易となりセットの誤りや準備から終了までの操作に安心感が出た。使用開始初期の回路で折れが頻繁に生じる部位があったが、現在は修正されている。また、開封時より血液回路に圧センサープロテクタが接続されているが、双方の接続があまく、増し締めを必要とした。01は回路洗浄の工程1と血漿分離器、吸着器洗浄の工程2にわかれている為ダミー回路を用いていたが、03では血漿分離器、吸着器を接続してから洗浄工程に入る為、洗浄そのものに掛かる時間はほとんど変わらないが作業効率は上がった。洗浄工程中にリークテストを自動で行うため、接続ミスや回路のリークを事前に発見できるようになった。警報時は液晶タッチパネルに警報内容、対処ガイダンスの表示がある為、迅速かつ適切な対応ができる。それにより看護師が対処できる幅が増えた。自動血圧計をオプションにて追加できるため、省スペースかつ省力化ができた。廃液濃度計がディスポになった為、洗浄、薬液封入の手間が省けた。【結語】安全性および操作性について01と比べ完成度は高く、安全な医療の提供およびスタッフの省力化に効果があると思われた。

【目的】シャントPTA後に使用したシースを抜去せずに脱血側、返血側ルートにしてそのまま使用できるウルトラハイフローシースを考案し使用していたが、シース挿入部位において血管壁のへばりつきによる脱血不良を経験した。そこで問題点を検討し、新しいシース(ウルトラハイフローシース側孔付)を考案した。また、その性能・操作性について従来のものと比較検討を行ったので報告する。

【方法】ウルトラハイフローシース側孔付の4Fr・5Fr、側孔なし5Frの3種を用い、温水ではあるが流量試験として100・150・200・250ml/minの実流量を測定し、同様に流量を変化させて回路内圧の測定を行った。さらに、シース先端部を側孔付にしたことによる強度低下を考慮し、バルーンの引き抜き試験も同時に行った。

【結果】温水試験では、250ml/minで若干の実流量低下がみられたものの、十分な流量が得られ圧上昇もみられなかった。また、20例ほどの臨床試験では、通常の条件下での透析が行え、血流不足の改善もみられた。操作性にも優れ、安全性にも問題はなかった。

【考察】ウルトラハイフローシース側孔付は、透析に使用する際、脱血・返血側ルートとして十分に有用である。

163

「Dry weight(以下DW)設定の指標としてのTP濃縮率」の有用性と注意点について

164

ドライタイプ ポリスルホン膜透析器FS-202の臨床評価

医療法人 北晨会 恵み野病院 医療技術部 臨床工学科1、医療法人 北晨会 恵み野病院附属恵庭クリニック2、医療法人 北晨会 恵み野病院 血液透析センター3、医療法人 北晨会 恵み野病院 医療技術部 臨床検査室4、医療法人 北晨会 恵み野病院 泌尿器科5、医療法人 北晨会 恵み野病院 心臓血管外科6、医療法人 北晨会 恵み野病院 外科7

日沖 一木1、岡田 泰徳1、岡村 廉晴2、渡部 嘉彦3、池田 正人4、宮本 和之1、笹 宏之2、井内 裕光5、大川 洋平6、近藤 博7

川島病院

鈴江 信行1、細谷 陽子1、西田 隼人1、川原 和彦1、水口 潤1、川島 周1

【目的】透析患者のDW設定は、血圧、心胸比、浮腫の有無などから総合的に判断して決定する必要がある。しかし、高血圧や心不全のある患者のDW設定は難しく確信が持てない事もしばしばある。

当院では透析前後のTP濃縮率から血液濃縮率を推定し、DW設定の参考にしている。今回、DW設定の指標としているTP濃縮率の有用性と注意点について検討した。

【方法】当院維持透析患者45名を対象に、TP濃縮率・クリットラインモニター(以下CLM)による血液循環量減少率(以下ΔBV%)・除水率・透析前後の血圧変動・CTRを比較検討した。

【結果】TP濃縮率と除水率は弱い正相関を示した。ΔBV%と除水率は弱い逆相関を示した。TP濃縮率とΔBV%は強い逆相関を示した。CTRとTP濃縮率は有意な相関を認めなかった。血圧の下降が著しい症例ほどTP濃縮率が高くなる傾向にあった。

【結論】TP濃縮率はCLMで測定したΔBV%と強い相関を示し、血液循環量を反映していた。しかし、TP濃縮率は除水率に大きく依存しており、適切なDWを設定するためには総合的に考慮していく必要がある。

【目的】新たに開発された東レ社製ドライタイプ ポリスルホン膜透析器FS-202の臨床評価をする機会を得たので報告する。【対象】安定した維持透析患者8名を対象とした。【方法】小分子量物質(urea,Cr,UA,IP)低分子量蛋白物質(β2-MG, α1-MG)のクリアランス(CL),除去率(RR),除去量,クリアースペースおよびアルブミン損失量を測定した。またβ2-MG, α1-MG,アルブミンのSCの測定および白血球数,血小板数,C3a,顆粒球エラスターゼを経時的に測定し変化率を求め生体適合性を評価した。【結果】クリアランスはurea-CL:187.7±3.2ml/min,β2-MG-CL:57.3±5.0ml/min,α1-MG-CL:11.1±3.8ml/minであった。除去率はβ2-MG-RR:73.5±3.6%,α1-MG-RR:16.6±8.8%,アルブミン損失量は2738.1±579.9mgであった。またSCはβ2-MG-SC:0.90±0.06,α1-MG -SC:0.065±0.020,アルブミン-SC:0.0059±0.0030であった。【結論】FS-202は溶質除去性能に優れた透析器である。

165

日機装社製DCS−27の使用経験

166

二プロ社製PES-150DSを使用して

伊勢原協同病院 臨床工学室1、日機装株式会社2

漂川 大輔1、西ヶ谷 淳平1、水谷 千咲香1、末永 貴久1、山根 雄介1、上村 克美1、上田 健史1、茅野 敬典1、谷口 洋二1、安藤 純一1、佐山 浩之2、小出 崇2

JA北海道厚生連 倶知安厚生病院 臨床工学技術部門

笠島 良1、竹内 勝訓1、長澤 英幸1
岡田 功1、今泉 忠雄1

【目的】当院の腎透析センターは中央監視装置Future Net2(以下FN2)のもと透析患者の導入及び維持を行っている透析施設である。今回、患者の増加に伴い増設した日機装社製DCS−27(以下27)の使用経験についてここに報告する。
【方法】現行で使用している日機装社製DCS−26(以下26)との相違点及び、FN2との互換性について、また27と日機装社製 PRS−12(以下PRS)を連動させ行ったOn-line HDFについて評価する。
【結果】27は26に比べ、ブラッドボリューム計(以下BV計)や電磁弁の変更により、より安全に透析を行うことが出来た。また、拡大されカラーになったカスタマイズ可能なLCD画面によって操作性は向上した。FN2と27の連動は、現状では通信出来ないものがあった。PRSと連動させ、各種カスタマイズすることにより簡便にOn-line HDF を施行することが出来た。
【考察】27は26に比べ操作性、安全性において改良されている点が多々あり透析施行上有用であるが、FN2との互換性については何度かバージョンアップを繰り返しているものの、現状ではBV計をFN2下で監視する事やデータを蓄積することは出来ず、装置ログも全てが通信出来る訳ではない為、今後もバージョンアップを行っていく必要があると思われる。On-line HDFは今後もカスタマイズ等の工夫を重ねる事で、より安全に施行する事が出来ると思われる。
【結語】27は操作性、安全性に優れており透析、On-line HDF共に安全に施行する事が出来る。

【目的】新しく開発されたニプロ社製PES-150DSを使用する機会を得たので、その溶質除去性能、生体適合性、最大内部濾過流量について報告する。

【方法】対象患者は、当院で週3回、4時間透析を施行し、治療中状態の安定している維持透析患者6名(男性5名、女性1名)とした。対象患者にPES-150DSを1週間使用し(血流量200ml/min、透析液流量500 ml/min、4時間×3回/w)それぞれ3回目の透析日に採血を行い溶質除去率、生体適合性を評価した。また、Alb漏出量、β2-MG除去量は、透析液排液を全量貯留して求めた。最大内部濾過流量は、第49回日本透析医学会学術集会において東京女子医科大学峰島ら提案の『簡便な内部濾過流量の算出法』に従い算出した。

【結果】溶質除去率は、BUN65.1±4.1、Cr59.7±4.7、UA68.7±
6.0、IP52.6±4.6、β2-MG52.6±4.8、Myo20.1±6.5、PRL15.5±4.1、α1-MG5.5±2.8(%)であった。Alb漏出量は1.0}0.3g、β2-MG除去量は、131.6±11.2mgであった。生体適合性においてWBCは、透析前値と比較して15分後に有意な低値を示した。しかし、透析後にはほぼ前値まで回復していた。PLTは透析前後で有意な差は見られなかったが、15分後、30分後に比較的低値を示した。最大内部濾過流量は22.4±1.6ml/minであり、4時間透析での内部濾過量は1776±384mlと推測される。

【結論】ニプロ社製PES-150DSは生体適合性に優れ、1透析あたりのAlb漏出量を1.0±0.3gと抑えながら、十分な低分子量蛋白質の除去性能を有するダイアライザーであった。

167

急性期血液浄化法の現状と臨床工学技士の関わり

168

輸液ポンプ用PVCフリーセット導入の検討

兵庫医科大学病院 臨床工学室

大平 順之1、尹 成哲1、黒坂 美喜1、武西 友幸1、中田 文1、木村 政義1

日立製作所 日立総合病院 MEセンター

寺田 尚人1、山田 一之1、鈴木 裕明1

【はじめに】近年,急性期血液浄化法は,救命救急や集中治療領域など様々な場面において,その適応は拡大し,施行件数は増加している.当院では,これに対応するため.2002年5月より臨床工学技士の宿宅直制度を導入した.そこで施行した血液浄化法の件数とその内訳,臨床工学技士の関わりと問題点を検討したので報告する.

【勤務体制】月〜金曜日の平日は宿直制度をとっている.また土曜日の日勤勤務以降と日曜・祝日は宅直制度にてOn Callでの対応としている.

【対象】2002年4月から2005年1月までに,ICU,CCU,救命救急センターで施行した血液浄化法,1833件を対象とした.

【結果】年度別の件数は2002年度 570件,2003年度 604件,2004年度(〜2005/01) 659件であった.内訳はCH(D)F 801件,HD(ECUM) 674件,PMX 176件,(C)PE 162件,その他 20件であった.期間中に施行された1833件の内,日勤勤務時間外に開始または終了したものは,1373件(37.5%)であり,そのうち深夜帯に開始または終了したものは366件(10.0%)であった.

【考察およびまとめ】施行件数は年々増加しており,2004年度はすでに659件の血液浄化法が行われた.また,日勤勤務時間外の開始または終了操作件数より,24時間体制による安全かつ迅速な対応が必要であることがわかる.2002年度より,臨床工学技士の宿宅直制度を導入し,時間帯を問わず安全に血液浄化法が施行できるようになった.今後,更なる施行件数の増加が予想され,それらに対応するため,院内に臨床工学技士が不在となる土日祝日の宅直制度を再検討する必要があるが,現在では他の業務との兼ね合いや人員面での問題がある.

【目的】ポリ塩化ビニル(PVC)輸液セットは、柔軟性と化学的安定性から広く臨床使用されている。しかし、PVCに使用される可塑剤は、可溶化剤との接触で毒性物質を溶出するといわれており、新たなPVCフリー輸液セットが注目されている。現在、当院では輸液ポンプ2機種に対しPVC輸液セットのみを使用している。今回、既存のPVC輸液セットの評価およびPVCフリー輸液セットの導入について検討した。
【方法】輸液セットは、既存のPVCおよびPVCフリーを用い、輸液ポンプはA社製とB社製の2機種とした。薬剤は注射用蒸留水とし解析装置にて流量精度、閉塞圧、気泡検知を測定した。また、運転後のフィンガー部のチューブ状態についても観察した。
【結果】PVCフリーではA社製ポンプ、およびPVCはA社製ポンプ、B社製ポンプの3者において、流量精度、閉塞圧、気泡検知とも許容範囲内であった。運転後のチューブ状態はフィンガー部のしごき跡が認められた。PVCフリーのB社製ポンプでは、流量精度、閉塞圧、気泡検知とも許容範囲内であったものの、運転後のチューブ状態はフィンガー部に亀裂による水漏れが認められた。
【結論】PVCフリーは、B社製ポンプでは運転後のチューブ状態はフィンガー部に亀裂による水漏れが認められた。PVCフリーセットは、機種による輸液ポンプの使い分けにより導入が可能となった。輸液セットなどの消耗品の導入は、輸液ポンプ機種選定時に十分な検討が必要である。

169

当院におけるME機器中央管理について

170

輸液ポンプ、シリンジポンプの中央管理方法の検討

医療法人 誠光会 草津総合病院 人工透析センター

市川 正人1、山本 哲也1、山本 奈津子1、広畑 直実1

慶應義塾大学病院 医用工学センター

冨永 浩史1、忍足 幸保1、佐多 和子1、小森 正樹1、稲垣 利紗1、植田 健1、大石 愛光1、又吉 徹1

【はじめに】 当院では臨床工学技士は看護部に所属し4名が人工透析センターで業務を行っている。平成16年5月10日から輸液ポンプ・シリンジポンプの中央管理を行うようになった。今回、中央管理までの経緯及び現状を報告する。
【経緯および現状】 当院でも医療安全委員会が立ち上がるなど、医療機器管理の重要性が認識されるようになった。中央管理が開始されるまでは、機器は各病棟で管理されており、各病棟の保有台数や貸出し、修理点検履歴等の管理が十分に行われていなかった。機器の中央管理を開始するまでは、中央管理が迅速に各スタッフへ浸透するよう課長会に参加し、中央管理業務の企画・要望等の調整を行った。中央管理を行うにあたって、中央機器管理データベースシステムをマイクロソフト社製Accessにて作製し、各病棟を巡回して各機器を登録し、機種名、ID番号、管理番号、製造番号、修理点検履歴などを作製した。中央管理台数は、輸液ポンプ31台(7機種)、シリンジポンプ15台(6機種)と機種が混在しており、統一した点検マニュアルを作成することが難しかったため、機種毎にマニュアルを作製した。
【結果】 中央管理後は、使用後の返却が十分浸透せず各病棟を巡回して回収していたが、勉強会や状況説明等を行うことで病棟所有意識が薄れてき、病棟間の機器の貸し借りが減少した。平成16年6月1日〜12月31日までの修理依頼件数は50件であった。修理点検内容は、メーカー修理依頼12件(24%)、院内修理10件(20%)、ヒューマンエラー19件(38%)、破棄4件(8%)、その他5件(10%)であった。
【結語】 ME機器中央管理は、ME部門が独立していなくても可能であるが、業務内容の効率化、ME機器の信頼性の確保、安全性の向上のためには機種の統一や統一マニュアルの作成が必要であり、ME部の設立が今後の課題であると考える。

【はじめに】当院では医療機器管理室を開設し、メンテナンス付リースによる輸液・シリンジポンプの機種統一化を行った。今回、輸液・シリンジポンプ中央管理方法について検討した。
【管理方法】管理室には臨床工学技士(以下、ME)1名、事務員1名を配置し、1.貸出・返却は伝票を用いず、電話連絡と自作プログラムによるコンピューター管理を行った。2.病棟への固定配置を行なわず、全ての機器を管理室からの貸出とした。3.病棟間のポンプ移動を可能とした。4.事務員は定時の貸出・返却業務と事務業務を行った。5.夜間・休日は管理室が無人となるため、オーダリーによる貸出および機器搬送を行った。6.保守点検、修理機器の判定、修理依頼はMEが行った。7.修理が必要な機器はメーカーに依頼した。8.メーカー推奨の使用前、1・2ヶ月点検を行った。
【結果】1.電話連絡のみにしたため、看護師の業務効率化がはかれた。2.固定配置をなくすことにより病棟ではスペースの有効活用が可能となった。3.ポンプ移動が可能になり、ポンプ交換によるミスをなくした。また、回路、薬剤の廃棄がなくなりコストダウンができた。4.事務員配置により、ME業務に専念できた。5.夜間・休日に待機する必要がなく業務省力化がはかれた。6.保守点検業務をMEが行うことによって、看護師の業務効率化、機器のダウンタイム削減をすることができた。7.修理代金はリース料金に含まれているため、修理費予算が必要なくなった。8.使用前点検は全台可能であったが、1・2ヶ月点検はマンパワー不足により全台数行うことが困難であった。
【おわりに】輸液・シリンジポンプを中央管理することにより、効率的な運用と適正使用が可能となり、機器の安全性は向上した。しかし、1名のMEで520台のポンプの保守点検は困難であった。今後、人員配置や業務内容の検討を行い、安全性向上、業務効率化、経済的効果に貢献していきたい。

171

臨床工学室MEセンター業務の現状(第5報)- 輸液ポンプ・シリンジポンプの管理 -

172

取り消し

名張市立病院 臨床工学室1、同 麻酔科部長 臨床工学室長2

岩口 行廣1、黒渕 源之2

取り消し

【はじめに】医療機器の製造とメーカが修理部品を保有する期間が終了した機器の修理について検討した。

【目的】1996年2月に製造が終了し、2004年11月に補修用性能部品の保有期間が終了した輸液ポンプTE−111と2001年3月に製造が終了し、2009年3月に補修用性能部品の保有期間が終了するシリンジポンプTE−311の点検と修理依頼状況について報告する事を目的とした。

【方法】2003年1月から2004年11月までに院内で行った点検と修理についてMEセンター輸液ポンプ点検表とシリンジポンプ点検表をまとめた。院外修理については、部署から提出された機器修理等依頼票からメーカに依頼した修理状況をまとめた。

【結果】(1)使用していた部署から輸液ポンプの点検修理依頼があったのは32件で、その内7台はメーカへ修理を依頼した。また、破損等による院外修理は4台であった。(2)シリンジポンプは、院内修理依頼が9件で、その内2台はメーカへ修理を依頼した。また、破損等による院外修理は2台であった。(3)修理をメーカに依頼し、保留している輸液ポンプは4台、シリンジポンプは1台であった。

【考察】当院で使用している輸液ポンプ36台とシリンジポンプ32台は、すでに製造が終了している。同時期に購入したポンプは修理が必要となる件数が増えることや補修用性能部品の保有期間が終了し無くなることも考えられる。また、それに対する修理費用が高額になる事も考え、2004年12月よりメーカ修理を保留している輸液ポンプに対して2003年厚生労働省通知対応型TE−131を3台メンテナンス付リース契約し輸液ポンプを購入するより初期費用が少なく定期的に保守点検ができるポンプが使用できると考えた。

【結語】同時期に複数台購入した機器は、同時期に修理が発生する事が予想される。修理費や新機能を搭載した機器を購入するには計画を持って時期や購入方法を検討する必要がある。

取り消し


173

当院における在宅人工呼吸療法の現状

174

医療機器管理におけるFMEAシステムの活用法

日立製作所 日立総合病院 MEセンター

山田 一之1、寺田 尚人1、鈴木 裕明1

広島大学病院 診療支援部 臨床工学技士部門 1、広島大学病院 診療支援部2

高橋 秀暢1、岡原 茂幸1、元山 明子1、斉藤 秀敏1、尾嶋 晃1、玖島 利男2

【はじめに】 医療機器の進歩と在宅支援の充実という社会的背景の中で,在宅人工呼吸療法(HMV)の導入患者は年々増加している.今回,当院のHMV患者の現状と臨床工学技士(CE)の関わりについて報告する.
【方法】 対象患者:気管切開によるHMV導入患者および外泊患者10名、期間:1996年から2005年1月
【結果及びまとめ】 生命維持装置の自宅使用という新たな在宅のスタイルは,同時に環境整備の必要性や患者・家族への院内教育の重要性を高くし,各方面へのアプローチやスタッフの資質向上,患者個々にあわせた指導や教育が要求されてくる. 当院では,最初の症例からCEがチーム医療の一員として積極的に関わりを持ち,在宅医療におけるそれぞれの役割を明確にすることで,フローシートによるマニュアル化やパスの作成など,在宅導入決定から退院までの機能的な運用を実現することができた. しかし,ケースによっては年齢・家族構成・社会的背景・経済面などさまざまな問題を抱えており,今後も各分野のスタッフとの協力体制を確立すると共に,地域社会へのアプローチに対しても積極的に取組み,HMVの円滑な導入を目指していきたい.

当院では、約1000台の医療機器を管理し、これまで300件ほどの医療機器トラブルや故障修理を経験してきた。これらの経験を元に、自動車・航空産業で重要故障モードの摘出や、潜在故障や劣化故障を未然に防ぐために幅広く活用されている、FMEA(Failure Mode Effects Analysis:故障モード影響解析)を当院の医療機器管理活動に用いる事で、保守の有効性を試みたので報告する。FMEAでの影響の評価はFMEAワークシート、重要度マトリックスを独自の評価基準を用いて活用し、発生段階、影響、原因、検出法、危険優先を検討して作成した。FMEA重要度はFMEAワークシート、重要度マトリックスをもとに発生頻度×影響度×検知難易度によって算出し、FMEA重要度の高い値のモードほど対策の必要性が高いものとした。このように医療機器に関するトラブルや故障を分析したものを当院の機器管理システムに取り入れることで、そのトラブルの優先影響度や重要度、危険度を容易に評価点表として示し、保守安全対策順位も把握することができ、機器の安全性を高めた。FMEA重要度の高い機器に関しては、磨耗故障期間、問題機器とも考えられ、過去の故障履歴を参考に、入念なメンテナンスや機器休止の検討が必要だと考えている。今後、これらの指標を目安に、計画的にメンテナンスを行い、物品の確保や機器故障においても迅速な対応が可能であると考える。また,FTAを取り入れることにより、効果をあげることを検討したい。

175

機器購入時ベンチテスト及びFMEAの試み

176

ME機器故障届の運用

JA北海道厚生連 旭川厚生病院 臨床工学技術部門

丸山 雅和1、成田 孝行1、木村 吉治1、伊藤 貴之1、白瀬 昌宏1、古屋 香1

北里大学東病院 MEセンター部

花田 卓哉1、岩崎 共香1、内田 有美1、小林 馨1、白井 敦史1、瓜生 伸一1

【目的】ME機器によるトラブルの原因を考えた場合、機器の性能に起因する誤操作などのヒューマンファクタ、保守管理方法などがあげられるが、ME機器保守管理業務においては、ME機器購入時、臨床使用前により多くの機器情報の把握と問題点に対する対策作りを行い、ME機器トラブルを未然に防ぐことが重要であると考える。そこで今回、ME機器購入前に工学的評価(以下ベンチテスト)を行い、その結果に基づき、機器の故障モード効果分析(以下FMEA)を試みたので検討を加え報告する。
【対象】 T社 透析用監視装置。
【方法】 機器購入前試用時に177項目を0〜5点の6段階評価を行う当院独自のベンチテストマニュアル及びFMEAワークシートを作成し、ベンチテスト177項目中、今回対象機器に当てはまる122項目のベンチテストを行い、評価2点(準否)と評価された3項目の中から1項目(インターフェースの評価)を抽出しFMEAを試みた。
【結果及び考察】ベンチテストの評価項目を洗い出し、それを標準化することによって、工学的な機器情報(ベンチテスト結果)が具体的に示され、購入後の機器定期点検等の保守計画、またはトラブルの対策作りにおける基礎となりうるものであった。更に文書化によって、臨床工学技士によるME機器管理業務中の機器購入時業務が体系化されることや、機器選定における機器の比較対照手段として利用でき、機器の適正購入の実現と機器使用環境向上、保守管理環境向上に繋がるものと思わる。FMEAを行う場合ではベンチテスト結果が問題に対する対策作りの突破口になりうること、また致命度などの評価を付け加えることによって、問題点の量子化が可能となり更に有用であると思われた。ベンチテスト結果に基づいたFMEAを作成することによって、機器の構造や性能に起因する事故、トラブル対策を機器の臨床使用前に確認、作成できるものと思われた。

当院は許可病床数557床、1日平均外来患者数約1200人の規模の施設である。現在、6名の臨床工学技士が「ME機器保守管理」、「人工呼吸器管理」、「在宅医療」、「血液浄化」などの業務を行っている。開院時より、ME機器は中央管理体制で運用されており、現在では約60機種、約760台がMEセンター部の管理機器となっている。故障が疑われるME機器が返却された場合、症状の確認等を行い最終的に修理の必要性を判断する。そのため、「当該機器がどのような症状であったのか」という情報の量が、修理の必要性を判断するまでの時間を大きく左右する。しかし、ME機器のメインユーザーである看護師から直接故障時の状況を聞くことは、互いに業務に追われている日常や、勤務体制の違いなどから難しいことが多い。こうした連携の悪さから、故障の疑いがあるME機器は「アラームが鳴る」、「エラー?が出た」などのメモが貼り付けられて返却され、ときには一言「故障?」とだけ書かれ返却されるのが現状であった。そして、このような情報の乏しい故障を疑われた機器は、作動状態の点検・評価を行った結果異常を認めないケースも多々有り、使用者のヒューマンエラーなのか修理が必要なのかを判断するのに難渋することもあった。そこで、「故障時の症状を把握する」ことを意図したME機器故障届を作成し、故障疑いの機器を返却する際には添付するよう協力してもらっている。 ME機器故障届の内容から点検を行った結果、ヒューマンエラーが予想されるケースも多く見られた。現在では点検・評価結果を病棟への返信や、院内広報誌、院内LANからの情報発信を行い事故防止・教育への利用にも有用となっている。また、日常の点検では発見されないような特殊な事例も確認された。

177

携帯電話院内使用ガイドライン作成に向けての検討

178

パルスオキシメータプローブの純正品とコンパチブルセンサーの性能比較

三井記念病院 MEサービス部

加納 隆1

国保直営 君津中央病院

多田 和弘1、佐々木 優二1、森口 英明1、配野 治1

最近、携帯電話の院内使用を許可する病院のことが報道され注目を集めている。以前、携帯電話が医療機器に誤作動等の影響を及ぼすことが明らかになって、大きな社会問題にまで発展し、どこの病院でも「携帯電話全面使用禁止」が当然だったときのことを考えると大きな変わりようであるが、誰もが携帯電話を使用するようになり、携帯電話なしでは個人生活も仕事も成り立たなくなってしまった人が多くなったことがその背景にあると思われる。携帯電話を使用することによるリスクは確かにゼロではないが、携帯電話を使用しないことによる患者や医療スタッフのデメリットの方が大きいのでないかと考え始めたのである。しかし、携帯電話院内使用を実施するにはいくつか条件がある。まず、総務省の調査報告ならびに指針を十分理解した上で、院内の医療機器についての影響評価(イミュニティ・テスト)を実際に行い、もし、問題のある機器が発見されたら個別の対策を行う。その上で、医療スタッフ教育、入院患者用パンフレットの作成、院内掲示などの院内広報を行い、その病院としての携帯電話院内使用を実施することが必要と考える。しかし、携帯電話院内使用ガイドラインを作成する場合には、以下のような検討課題についてのコンセンサスが得られなくてはならないと考える。(1)最大干渉距離はどれ位まで許されるか(密着、10cm以内、30cm以内、50cm以内、150cm以内)。(2)干渉ありの定義は総務省調査報告書におけるカテゴリー3以上でいいか、つまり、カテゴリー2は干渉ありとしないでいいか。(3)一般的な使用安全距離は設定できるか(安全係数をどう設定するか)。(4)使用可能な場所は一般病室とロビーに限定するか。(5)手術室やICUのような使用禁止区域では携帯電話機能抑止装置が必要か。

【目的】現在当院ではコスト削減を追求し、意識改革を徹底している。そこで今回は、パルスオキシメータプローブの純正品とコンパチブルセンサーの性能比較を行ったため報告する。

【方法】今回使用したプローブは、ディスポーザブルタイプと、リユーザブルタイプ併せて6メーカー10種類をSpO2モニターN-3000(ネルコア社)を用いて評価した。1.N-3000に評価用センサーを接続し、パルスオキシメータシミュレータ Index2(フルクバイオメディカル社)を装着し、シュミュレーターのSpO2値、及び脈拍数の設定値を数段階に渡って切り替え、その時々の数値を記録した。また、プリセットされた患者シミュレーション(肥満、老人、徐脈、頻脈)や、アーチファクト(タッピング、震え、迷光)を模擬することで設定値と実測値を比較した。2.被験者50名に対し評価用センサーを用いて測定を行った。基準値は同時期に測定された血液ガスデータを基に行った。3.連続測定した場合にセンサー(装着部)の温度が変化するか測定した。

【結果及び考察】今回の性能試験により、純正プローブが全試験において最も良好な値を示し、純正プローブとほぼ同等と判断できるコンパチブルセンサーを数種類確認できた。また、若干劣ってしまうプローブも確認された。

【結語】価格のみに過剰な意識をもちすぎてしまって、安全性が損なわれてしまう危険性がある。今回行った純正品との精度比較は今後重要視されると予想され、臨床工学技士はコスト意識をもって医療機器や医療材料の選択に臨むことが重要である。

179

電圧変動等に関する電源品質調査

180

医療機器を安全に使用するために必要な電源管理

北海道工業大学 工学部 福祉生体工学科1、斗南病院2、札幌中央病院3

 黒田 聡1、畑林 克彰1、乙崎 剛弥1、松村 祐1、木村 主幸1、有澤 準二1、斉藤 高志2、山本 浩幸3

横浜栄共済病院 ME科

中川 孝太郎1、佐藤 邦昭1、間中 幸一1

【目的】日本における電源電圧は送電系統等を総合的に監視することにより極めて安定に供給されているが、臨床施設内の局所的な電力消費量上昇により部分的な電圧低下を生じる恐れがある。実際に、原因不明の警報鳴動により調査した結果、電圧低下と思われる現象が稀ではあるが発見されている。これは、施設建設当初の電源容量が経年による消費容量が増大したことや、施設増改築による施設内部電源系統の脆弱化など様々な原因が考えられる。ME機器の安全運用のためには、1日以上の電源電圧変動を調査による電圧余裕度を解析する必要があると考えられる。また、電源品質は電圧変動のみではなく、電力系統の高速再閉路装置が動作することによって発生する瞬断や、自家発起動、運転中の電源品質などもME機器に影響を及ぼす現象も無視できない。
【方法】こうした状況中、瞬断などの短い期間の変動状況の把握から1日以上の長期間の変動状況を把握する測定システムが必要になる。我々は、電源電圧を100ms間隔でサンプリングし、1日以上に渡るデータを保存するシステムを開発した。
【結果】本システムは、電圧変換部とデータロガー部からなり、データロガー部に蓄積されたデータは別途コンピュータ上で解析される。本報告では、本システム概要説明と実際に臨床施設で採取されたデータ解析結果を報告する。なお、これら電源品質調査は北海道工業大学福祉生体工学科臨床工学技士臨床実習で毎年行い、複数施設間の比較や、経年変化を調査していく予定である。

これまで我々は医療機器が安全に使用されるために中央管理を中心とする保守管理の徹底や安全教育を実施してきた。その結果、院内全体で考えると着実にその成果が現れ、医療機器の安全使用への意識が向上し、安全性が高くなった。しかしこうした中、病院設備が起因とするトラブルが多く発生し新たな問題となっている。病院設備から発生するトラブルには多くの物があるが、中でも生命維持管理装置に直結される医療ガス配管や電気設備が問題となっている。医療ガス配管については劣化部分の補修、交換や設備の増設により、安全性を確保することができた。ところが電気設備においては病院建物建設当時に想定した電力需要を遙かに超えた電力の消費が起こり重大な問題となっている。具体例として生命維持管理装置は優先的に非常電源配線への接続を徹底しているが、その生命維持管理装置が増え、過電流遮断装置(ブレーカ)が作動し非常電源配線であるのにかかわらず電力の供給が停止するトラブルが多く発生した。そうしたトラブルをこれまで処理してきたのは院内営繕部門であった。ところが営繕部門担当者や機器を使用する医師や看護師がそれまで対策を講じてきたがトラブルが減ることはなく多くの相談が我々に寄せられた。そこで我々はこうした問題の中心に立ち、独立配線の適切な配置、無停電電源装置の導入や医療機器ごとの専用配線の工夫等を行いトラブル回避への効果を得た。今回はこうしたトラブルに対する対策を院内関係部署との連携方法を含め報告する。

181

送電停止事故発生による全館一斉停電の経験

182

停電警報装置自作について

広島赤十字・原爆病院 臨床工学課

中川 麻衣1、重松 大志1、土屋 享子1、山田 秀樹1、齋穏寺 妙美1、瀬尾 敏志1、蔦本 昌志1、奥田 真吾1、松島 安幸1、渡邊 登1

医仁会武田総合病院 臨床工学科

大野 進1、井上 武1、小谷 剛1、清水 貴世1、清野 麻衣1、高垣 勝1

平成16年9月10日、午前9時20分ごろ全館一斉停電となり、停電から約10秒後に自家発電装置が作動した。当院の非常電源は手術室、ICUは瞬時特別非常電源、病棟、外来、人工透析室等は一般非常電源となっており、停電時はすべて非常電源に切り替わった。停電は約40分間続いた。停電の原因は病院付近の変圧器の故障により電力会社からの送電が停止したことによるものであった。院内のコンピュータシステムが停止したことで、外来診療には支障を生じたが、院内の医療機器の使用や入院患者には支障はなく経過し、停電復帰となった。当院の臨床工学技士は人工透析室、手術室・ICU、ME機器管理の大きく分けて3つの担当に分かれて業務している。停電時は、人工呼吸器装着者のいる病室、治療等が開始されていた部署ならびに手術室の確認・対応を最優先した。各担当内での対応後は病院全体を巡視し、異常等の有無の確認・対応を行った。停電発生時ならびに停電時、送電復帰時に臨床工学課スタッフがそれぞれどのように行動し、どのような対応したか、各部所での状況がどのようであったかを調査し、集計したので報告する。またこれらの経験をもとに問題点、改善点等、今後の対策についても検討したので報告する。

【はじめに】最新の医療機器には多くの警報装置がそなわっており患者の安全に貢献している。しかし臨床の現場では十分な警報装置が取り付けられていない機器も存在する。そのような中で、警報装置の重要性を再認識させられる事故を経験したことから停電警報装置を自作したので報告する。
【経緯】血液浄化施行中なんらかの行為により透析装置本体のコンセントが抜ける事故が発生した。しかし抜けたことに看護師も臨床工学技士も気づくことなく回路内血液の凝固をまねき血液を破棄しなければならない状態になった。使用していた透析装置(ニプロ社製 NCU-11)には停電時の警報装置はついてはなかった。そこで純正の警報装置を試用してみたが機能的には十分なものとはいえず、市販されている停電警報装置の購入を考えたが高価であったため、当科での製作に取り組んだ。
【装置の仕様】市販の停電警報装置を参考に製作した。電源は9V乾電池を1個使用し、電源遮断時にリレーによりDC回路に切り替わりLEDの点滅と高音量のブザーが鳴り続けるよう設定した。
【結果および考察】まず試作機を作ることとしLEDを2個使用し交互の点滅にした。回路を収容する箱のサイズにも余裕をもたせ、かつ大きさにこだわらず十分に大きなものを使用し停電時正常動作を確認した。しかし非常に大きくスタイリッシュでなかったため、実機は小型化を図った。結果的に警報機能は十分に機能したが小型化を意識するがあまりに電池交換が困難になるとともに固定器具の取り付けが困難となった。なお制作費は市販の約1/10で製作できた。
【結語】血液浄化中のコンセント抜け事故の経験を契機に停電警報装置の自作に取り組んだ。改良の余地は残るものの、機能的には安全管理に十分貢献しており、かつコストパフォーマンス的にも評価できると考えられた。

183

起震装置を用いた人工呼吸器固定金具(RKT)の実験報告

184

当院における震災時のME機器転倒防止に関する施策

豊橋市民病院 臨床工学室

中村 省三1、伊藤 嘉延1、加藤 真1、三浦 伸一1、安藤 俊昭1、後藤 成利1、小山 悟1

公立学校共済組合 関東中央病院 医療機器管理室

仲尾次 政隆1、塚本 毅1、堂領 孝代1、池ノ内 浩1、前川 和彦1

 【はじめに】当院は愛知県東部に位置するため、東南海地震に対しての対策及び訓練が必要である。今回我々は中部セキスイ工業株式会社の協力を得て、起震装置による震度7下での人工呼吸器及び患者ベッドの動きと、独自に開発・製作した人工呼吸器固定金具(Respirator keeping tool以下RKT)の有用性について実験、検討した。
【目的】RKTを用いて、地震発生時の患者被害を少なくすること。
【対象】人工呼吸器は、総重量34.8kg、全高120cm、キャスタ直径12.5cm(以下CVタイプ)と総重量26.4kg、全高140cm、キャスタ直径10.5cm(以下NPタイプ)を使用し、ともに5脚式の架台を使用した。
【方法】RKTは一本のみ使用。アンブ社製カーディアックケアシステムを用い、挿管固定状態を作製。人工呼吸器・ベッドともキャスタロック無し(以下F群)、人工呼吸器・ベッド共にキャスタロック有り(以下R群)、人工呼吸器・ベッド共にキャスタロック無しにRKT使用(以下FK群)、ベッド・人工呼吸器キャスタロック有りにRKT使用(以下RK群)ベッドのみキャスタ固定した群(以下BR群)と、ベッドのみ固定した状態でRKT使用群(以下BRK群)に分類した。起震装置で震度7の揺れを15秒間発生させ、人工呼吸器とベッドの動き、移動距離、呼吸器回路はずれの有無を各2回検証した。
【結果】F群に呼吸器はずれを認めなかった。CVタイプでR群に呼吸器の90°回転・はずれ、を認めたが、RK群に呼吸器はずれを認めなかった。NPタイプでR群に呼吸器の90°回転、はずれ、呼吸器横転を認めた。NPタイプでベッド、R群にRKTを用いても人工呼吸器本体の横転を認めたが、回路のはずれは認めなかった。
【考察】F群、RKT使用群から考えると、ベッドと人工呼吸器が一緒に移動することにより呼吸器回路はずれは減少する。すべての環境を想定した対策は困難であるが、被害をより少なくする対策としてRKTは有用であると考えられた。

わが国は地震国である。1995年の阪神淡路大震災から昨年10月に発生した中越地震までの10年間で、震度5以上の揺れを感じた地震は、実に122回を観測している(気象庁データベースより)。また、関東地方では、1923年の関東大震災以来、局地的に震度5程度の揺れは何度かあるものの、広域にわたった大地震は発生していない。専門家に言わせると、大地震は70年程度の周期で襲ってくるという見方もあり、いつ何時関東地方に大地震が発生してもおかしくない状況だといわれている。

当院は東京の世田谷区にある、ベッド数470床、うちICU6床を有する急性期医療を中心とした地域中核病院であり、二次救急指定、東京都災害拠点病院でもある。地震に限らず、近隣において大規模な火災や事故等が発生すると、あらかじめ東京消防庁より救急患者受入れ準備依頼もあり、大震災が発生すれば多くの被災者が訪れるのは目に見えている。

当院では、筆者が1997年に着任して以降、3名の臨床工学技士が血液浄化、人工心肺操作等の医療技術提供の傍ら、ME機器の整備、保守点検を行ってきたことは以前にも本学会で紹介したが、昨年9月に医療機器管理室を立ち上げ、ME機器の安全対策にも重点を置くようになった。

今回、その初仕事として、当院の防災委員会と共同で起震車を借り、人工呼吸器や輸液ポンプなどのME機器がどのような動きをし、どのようにすれば転倒するのかを実験し、それらにあわせて災害被害を少なくするマニュアルを策定した。実際の天災は訓練や模擬実験とは違うかもしれないが、被害を最小限度に防ぐ手立てとして活かしていきたいと思うとともに、実際に被害にあわれた地域の方々に参考となるようなご意見をいただければと思う。

185

当施設におけるアネロイド型血圧計の保守管理

186

院内緊急基準の見直しと蘇生用具の整備〜除細動器、蘇生バック、ジャクソンリース回路の整備について〜

健和会 大手町病院 中央医療機器管理室

金子 芳一1、吉野 博人1

群馬県立心臓血管センター 技術部 臨床工学課 

中嶋 勉1、安野 誠1、花田 琢磨1、遠藤 祐介1、宇津木 里佳1、前田 恒1、戸田 久美子1

【はじめに】日本工業規格T4203によりアネロイド型指示血圧計(以下:アネロイド型血圧計)の性能は(1)圧力許容差:1種は±4mmHg、2種は±2mmHg、(2)漏気:所定の漏気試験により試験したとき指示値が2mmHg以上下降してはならないとされており、構造では20〜300mmHgの目盛りをもち、1目盛り2mmHgと規定されている。これらの性能維持のためには、アネロイド型血圧計は構造上零点のずれやギアの遊びなどにより誤差を起こしやすいために年2回以上の点検/校正が望ましい。当施設はアネロイド型血圧計の中央管理を1985年より実施しているので最近2年間の現状を報告する。
【管理方法】使用頻度が高い5部署71台を毎月、全台数(156台)を年2回の間隔で定期点検/校正を実施している。点検内容は、性能:基準水銀圧力計の指示値50、100、200mmHgにて計測/校正、漏気試験:外径約8cmの金属管にマンシェットを巻き300mmHg/3minにて実施するとともにマンシェット/ゴム袋/送気球などの不具合部品は交換している。
【結果】各測定点において平均値は何れの年も:50.0、100.0、200.0mmHg、2003年では標準偏差:0.45、0.56、0.54mmHg、変動係数0.9、0.6、0.3%、2004年では標準偏差:0.50、0.64、0.68mmHg、変動係数1.0、0.6、0.3%であった。各測定点における最大値・最小値は±2mmHgであり性能の範囲内であった。点検時の交換部品は(2003年/2004年)マンシェットカバー:186/166枚、ゴム袋:167/112枚、送気球:117/92個、メーターカバー:81/67枚、コイルチューブ:10/9本であった。
【考察】2003年:332件、2004年:290件の修理依頼があり、ほとんどが落下による破損であったためか、そのうちの261件/237件が指針の脱落/変形/ずれおよび紛失を伴っていた。結果的に2年間に延べ1587台の修理/点検を要した。堅牢なものへの更新も考慮すべきと考える。

【はじめに】患者の急変時、除細動器や救急カートなど蘇生用具は一刻も早く準備する必要がある。平成16年に院内の緊急対応基準が見直され、それに伴い救急カートなど蘇生用具の整備が行われた。臨床工学課では除細動器、蘇生バック・ジャクソンリース回路の整備が担当であり、看護部と相談、検討し業務の見直しを行った。
【方法】除細動器の配置について検討した。蘇生バック、ジャクソンリース回路は、臨床工学課で中央管理とした。1患者使用毎に臨床工学課へ返却され、外部委託業者へ洗浄・消毒・組み立てを依頼した。業者より返却後、点検し貸出しとした。
【結果】除細動器:病棟では1病棟1台以上の除細動器が設置されているが、外来は待合室・診察室、数カ所の検査室で設置されていない部署があり、これらの部署については不安が残るため、運用方法を以下のように決めた。(1)外来での緊急時は全て処置室の看護師にも連絡されるため、待合室・診察室については処置室の除細動器を使用する。(2)検査室は除細動器の一番近い保管場所を明記したカードを救急カートに付属する。(3)外来部門で唯一、2階にある採血室には新しく除細動器を設置する。蘇生バック・ジャクソンリース回路:各部署の定数を決め過不足を無くし、酸素チューブの長さの統一など備品の整備、1患者毎の交換ができるよう総数を増やして中央管理を開始し、トラブル無く運用できた。月平均、蘇生バック22件、ジャクソンリース回路15件の整備を行い、点検で発見された不具合は蘇生バックではバックの破損が1件、ジャクソンリース回路は蛇管破損が3件あった。
【まとめ】除細動器、蘇生バック、ジャクソンリース回路の整備は、緊急時、直ちに不具合なく使用できる環境をつくるために有用であると思われた。またスムーズに運用を行うためには、運用方法を自分の部署だけで決めるのではなく、他部門と十分に連携をはかり行うことが重要であると思われた。

187

HMVの安全対策に「在宅ケア支援システム」を導入して

188

医療機器の購入と臨床工学部門の関わりについて−深部静脈血栓予防装置を例に挙げて−

医療法人 医誠会 京都ルネス病院 ME管理室1、医療法人 医誠会 京都ルネス病院 外科2、コーリンメディカルテクノロジー(株)3

細見 加代子1、松本 牧子1、西 文香1、井上 勝哉1、冨士原 正人2、北川 裕也3、宮崎 誠3

東京大学 医学部附属病院 医療機器・材料管理部

長江 祐吾1、新 秀直1、玉井 久義1、大江 和彦1

【目的】今回当院で筋萎縮性側索硬化症にて在宅人工呼吸療法中(以後HMV)の患者宅に、人工呼吸器管理の安全対策の一環として、TV電話を使用した診療・監視システムである「在宅ケア支援システム(HCSS)」を導入し、その有効性を評価した。
【方法】ME管理室内にセンター装置、患者宅に生体情報モニターと通信システムを設置し、双方の装置をISDN回線にて接続した。基本的には毎日介護者と連絡をとり、モニター及びカメラの操作はセンター側より行った。
【結果】操作性については非常に簡便であり、十分に介護者が理解することができた。センター側よりの遠隔操作についても、特に問題は起きなかった。安全対策面では、カメラにて患者の呼吸状態、気切部分の確認、装置の操作面など確認することができ、介護者に対する指導や質問の応対等もTV電話で対処することができた。
【考察】今回の症例のように寝たきりの患者の場合は、カメラがハンディーになっている方がより気切部・胸部・装置操作面等の確認が容易になると思われる。また、TV電話での会話や指導で介護者の安心が得られ、カメラによる各確認を病院に居ながらにして行えることは、人工呼吸器の在宅使用において安全確保につながり得るものと考える。今後、呼吸器の稼動情報等が本システムに連動されるようになれば、HMVの安全対策に欠かせないシステムとなると考える。
【結論】使用目的をHMVの安全対策として実際導入した。まだ細部において改良点はあるものの、満足できる内容であった。今後、高度医療機器の在宅への導入はさらに進んでいくと思われるが、本システムの枠を越え他医療機器の併用・連動を提案し在宅で使用される、医療機器への安全対策を進めていきたいと考えている。

【はじめに】深部静脈血栓症に対する関心が高まる中,診療報酬改定(2004.4)により「肺血栓塞栓予防管理料」の保険適用が認められた.2004年9月より当院においても周術期管理として深部静脈血栓除去予防装置(以下foot pump)を積極的に導入することになった.この導入に関し,機種選定及び運用方法等について,これまでの経過を報告する.
【経過】foot pumpは病院全体で使用する機器という性格から,ME部門における中央管理化が病院方針として決定した.そこでME部門が主体となり機種選定,院内活動,保守管理準備,購入後経過観察を行った.(1)購入には,機能・操作性・価格およびランニングコストを含む経済性・既存機種の使用状況・保守管理などの様々な点を考慮し,1機種に限定し,25台を購入した.この際,ガーメント部分はディスポーザブル製品を採用し,患者毎のオーダーに対して,会計の自動処理が行われるよう医療情報部に依頼した.(2)貸出業務開始に先駆けて,使用方法・貸出ルールについて,医師・看護師向けに資料の配布,勉強会を行った.(3)機器管理は,バーコードラベルを貼付し,医療機器データベースへの登録を行った.(4)貸出業務開始後,使用状況を調査すると,11日間(/2ヶ月間)にfoot pumpが不足したため,15台の追加購入を要望し採択された.以後計40台での運用に対し,平均貸出依頼は7.5台/日,貸出日数は3.6日間/回であった.
【考察】今回のfoot pump導入で最も苦慮した点は第一に機種選定,第二にガーメント部分をリユース製品にするかディスポーザブル製品にするかの選択であった.当院には元来数機種20台程度のfoot pumpがあり,これらの有効活用という課題もあった.結果的に多くの診療従事者が関与する中央管理機器である点,保険診療点数や感染制御の問題などから既存機器を原則的に使用中止とし,新規採用機種での運用,そしてディスポーザブルガーメントの採用とした.

189

強酸性電解水による内視鏡殺菌処理と内視鏡筒表面変化との関連について

190

 XEMEX社製新型7FrIABPの使用経験

北海道工業大学 工学部 福祉生体工学科1、札幌社会保険総合病院2

渡邊 亜美1、鎌田  真千子1、橋本 修一2、小川 輝之2、柴 京美2、黒田 聡1、有澤 準二1、真下 泰2、木村 主幸1

桐蔭ハートセンター

上屋敷 繁樹1、田中 太郎1、官野 高明1、池邊 沙織1

札幌社会保険総合病院では、数年前から強酸性電解水を内視鏡洗浄後の消毒に利用している。この過程は自動化され、内視鏡利用の効率化に貢献した。しかし、電解水による消毒を導入後、内視鏡表面の黄変白濁劣化を認めるようになった。当院ME部では、内視鏡メーカーならびに電解水装置の製造会社に対して現状を説明し、対応と対策を依頼してきた。しかし、電解水と内視鏡表面変化の間に何らかの相関を証明するまでに至らず、内視鏡表面劣化の原因は不明のままであった。一方道工業大学福祉生体工学科感染制御ゼミでは、昨年から電解水の殺菌効果に着目し、いくつかの細菌に対する効果を検討していた。この様な背景から、社保総合病院ME部と道工業大学福感染制御ゼミとの共同研究として、電解水処理と内視鏡表面変化に関する検討を行う機会を得た。演者らは、昨年6月から11月にかけて、1)内視鏡室での洗浄殺菌工程調査、2)表面変化の画像解析、そして3)内視鏡表面の電子顕微鏡解析を行った。その結果、洗浄消毒過程は他施設と相違ないこと。また、電子顕微鏡による調査で、表面劣化は外装軟性層が硬化と萎縮による亀裂が原因であること、この変化は内視鏡先端部がもっとも激しく、以後操作部に向かって程度が低くなることを見いだした。これらの結果から、体内挿入による表面変化と電解水処理が連携し、この様な変化が生じたと考えた。ただし、表面劣化と電解水処理の明確な因果関係を掴めた訳ではなく、何らかの関係が存在する証左を得たものと考える。強酸性電解水は、取り扱いと生成が簡便で強い殺菌力があり、かつ短時間で毒性が消失する利点があり、今後ますます医療施設や介護施設などで利用されると予測される。この様な中で、消毒対象が劣化する事例を解析できれば、より有効な電解水利用に貢献できるものと考える。

【目的】IABPバルーンカテーテル(以下IABP)挿入による、下肢虚血等の合併症防止を目的としたカテーテルの細径化が進み、2004年11月現在、最細径品は7Frシース対応にまで至っている。カテーテルシャフトの細径化に伴い、駆動応答性と血圧モニタリング性の低下が懸念される。この二つの性能に着目し、実験的に各社7Frシース対応IABPの比較を行ったので報告する。
【方法】駆動応答性:駆動装置にデータスコープ社製System98(以下S98)及びアロー社製A−CAT1(同AC1)を用いて、加圧水モック内にて東海メディカルプロダクツ社(以下TMP)製及びゼオンメディカル社(同ZM)製7FrIABP(バルーン実容量30mL)を80bpmで駆動し、モック水面の経時変位量からバルーンの応答時間を算出した。血圧モニタリング性:補助人工心臓を用いた40%グリセリン水溶液の拍動循環回路内で2社の7FrIABPを駆動し、先端圧を記録した。
【結果】駆動応答性:S98+ZM>S98+TMP>AC1+ZM>AC1+TMPの組み合わせの順で優れていた。この結果はカテーテルのHeルーメン断面積の差によるものと考える。血圧モニタリング性:ZM>TMPの順で優れていた。この結果はセントラルルーメン径の差によるものと考える。
【考察】ZM7Frはカテーテル構造の工夫によってHeルーメン、セントラルルーメンを最大限に確保し、相反する2つの性能を同時に満たしていると考える。【結論】高性能7FrIABPの登場により、IABPの適応拡大が期待される。

191

伏臥位手術後麻酔覚醒時に発症した急性肺血栓塞栓症に対しPCPSにより救命しえた症例

192

補助人工心臓の安全管理

筑波大学 附属病院 手術部1、筑波大学 附属病院 物流センター2、筑波大学 臨床医学系 麻酔科3、筑波大学 臨床医学系 外科4

古垣 達也1、馬乘園 伸一2、高橋 宏1、高橋 伸二3、重田 治4、大河内 信弘1

東京女子医科大学 臨床工学部 心臓病センター 人工心肺室1、東京女子医科大学 心臓病センター 心臓血管外科2

五十嵐 利博1、中尾 一俊1、遠山 載康1、長坂 淳一1、三浦 貴之1、北村 麻未1、斎藤 聡2、木原 信一郎2、川合 明彦2、黒澤 博身2

【はじめに】今回我々は脊髄腫瘍摘出術の麻酔覚醒時に発症した急性肺血栓塞栓症に対してPCPSを施行し,救命した症例を経験したので報告する。

【症例】症例は53歳女性で脊髄腫瘍摘出術が伏臥位で行われた。手術終了後,仰臥位に体位変換し覚醒良好なため21時35分に手術室内で抜管した。その直後PEA(Pulseless Electrical Activity)の状態になったため,心肺蘇生を行った。しかし,循環動態の回復が見られないため経食道心エコー検査を行った結果,急性肺血栓塞栓症と診断され経皮的心肺補助法(PCPS)を導入した。PCPS導入後,循環動態が安定し集中治療室に帰室した。PCPS作動中は35℃の軽度低体温療法を併用した。PCPSの灌流量は3l/minでACTは200秒以上を維持した。2日目にPCPSを離脱した。PCPSの運転時間は33時間であった。

【考察】肺血栓塞栓症が発症した場合,迅速な診断と治療が重要である。今回は夜間であったが,循環器外科手術が他の手術室で行われていたため麻酔科医,循環器外科医,臨床工学技士の連携が良く,早期にPCPSを導入することが出来,患者を救命できた。また,PCPSの依頼に迅速に対応するためには日常の管理も重要である。今回は手術器材や医療ガス配管設備が整備されている手術室での導入であったが,一般病棟など滅菌器材や配管設備のない場所でも対応できるよう滅菌鉗子や煎刃,酸素ボンベを備え管理している。

【結語】今回麻酔覚醒時に急性肺血栓塞栓症を起こしPCPSを導入し,救命できた症例を経験した。PCPSは急性の循環虚脱には劇的に有効であり,必要とする症例に迅速に対応できる日常の機器の管理が必要である。

【諸言】脳死に基づく臓器移植法が施行されてから約8年になるが、現在の心臓移植待機患者数から考えるとまだまだ心臓移植は厳しい状況が続いている。補助人工心臓はBridge to transplantationとして心臓移植までの補助循環装置として需要が増えている。近年、補助人工心臓装着患者が増え、病棟などでの臨床工学技士が積極的に安全管理に携わっていく事が必要とされてきている。
【目的】当施設での臨床工学技士が行っている補助人工心臓装置の安全管理について報告する。
【対象】当施設の補助人工心臓装置を対象とし、実際に駆動している装置以外にもバックアップ装置も対象とした。
【方法】チェックリストに基づき各装置の設定値やコンセントなどの接続状況を一日一度確認することにし、一ヶ月に一度メンテナンス状況を確認し、装置の電磁弁の駆動回数など消耗品のチェックも行うことにした。また、写真入りの簡単でわかりやすいトラブルシューティングを作成し、勉強会を行って医師や看護士の装置の習熟度の向上に努めた。
【結果】日常点検をチェックリストに基づいて行うことで装置の異常がすぐに発見できるようになり、月に一度メンテナンス状況を調べることで消耗品の状態が把握できスケジュールを組んで部品を交換できるようになった。【考察】装置側の点検項目に問題はなかったが、血液ポンプのポンプアクションを確認する時は医師、看護士、臨床工学技士と三者三様の意見がある為、いかに意見をオーバライドさせ最適なポンプアクションの設定にしていくかが今後の課題になっていくと考えられる。勉強会を開くことによって医師、看護士側がどのような情報を提供してほしいか、また臨床工学技士側もどのような事がわからないか把握でき非常に参考になった。
【結論】補助人工心臓の安全管理はまだ始まったばかりで、日常点検や勉強会などで情報を積み重ね、より良い安全管理を模索して行かなければならない。

193

IABPカテーテル挿入患者の体位に関する基礎的検討

194

PCPS・CHDF・HFJV・NO吸入療法にて救命しえた重症熱傷の1症例

北里大学病院 MEセンター部1、北里大学病院 看護部 集中治療室2

早速 慎吾1、東條 圭一1、木下 春奈1、武田 章数1、藤井 正実1、村中 美保2、上山 亜起2、明神 哲也2、小原 邦義1

健和会 大手町病院 中央医療機器管理室

金子 芳一1

【目的】大動脈内バルーンパンピング(以下IABP)は、臨床で汎用されている基本的な補助循環法の一つである。しかし、IABPを施行する上で体動や体位変換によるシャフトキンクや留置位置の変化が起き、合併症を起こす危険性がある。現在、IABP挿入患者に対して体位に関する基準が無く、施設により異なっているのが現状である。今回、経尿道的膀胱腫瘍摘出術の患者に対し、術中砕石位にてIABPを使用する機会を得た。この経験から、IABPを安全に施行するために、体位によりIABPカテーテルが受ける影響について基礎的な検討を行った。
【方法】IABPカテーテルの強度を測定するために、シャフト部を屈曲させカテーテルの状態とバルーン内圧の変化を観察し屈曲試験を行った。さらにIABP挿入状態を、模擬回路を用いて作成し、体位によりIABPカテーテルにどのような影響を与えるか観察した。
【結果】屈曲試験では、バルーン内圧波形が変化する前にシャフトキンクが発生する場合があった。さらに、シャフトの素材により差が大きく、最大で屈曲半径24mm、屈曲角度20度でキンクが発生するものがあることがわかった。また、体位によるカテーテルへの影響を観察した結果、カテーテルの刺入部とYコネクターを固定した状態からの体位変換により、シャフトキンクを発生する可能性が高いことがわかった。
【考察】IABPカテーテル挿入患者では、体位によりカテーテルに影響を与え、バルーンのインフレート・デフレートが十分にできない危険性があると考える。今後は、患者の苦痛や褥創の発生を考慮に入れたIABPカテーテル挿入患者の体位変換に関するガイドラインを作成していきたい。

【経過】重症熱傷(BSAの61%、?度47%、?度14%、Burn Index 37.5:>15で重症、気道熱傷伴う)の21歳・男性をICUにて加療中、第10病日に気管切開術のためICUより手術室へ移動直後にCPA状態となりCPRにて約2分30秒後に心拍再開をみた。一時JCS3-200まで意識レベルの低下をみたが、頭部CTでは脳浮腫は見られず、第15病日にはJCS 1-30まで回復した。第20病日より気道吸引などによりブロンコスパスムを惹起しSPO2(60%台)とHRの著しい低下を来たしはじめ、重篤なARDSに陥り、第21病日にSPO2:56%、shock状態を呈したためPCPSを導入した。直後よりSPO2:99〜100%となり、カテコラミン大量投与、輸液とともにMAP:8単位、FFP:10単位、血小板:10単位などにて血行動態の安定を図った。創からはMRSA等検出されず皮膚は良好な経過であったが、第23病日の血液培養よりMRSAが検出された。また、PCPSによる左心系後負荷および人工肺からの血漿リークの増大のために、PCPS回路交換とともにECLAへの移行も検討したが創などアプローチが問題となり、人工呼吸器をPC→PRVC+PSと変更しPCPSより離脱を図った。同日より、高K血症(K:8.5mEq/l)を呈しCHDFを施行し第25病日にはK:5.0 mEq/l以下となった。同日10:00頃PO2:77.0→59.3mmHg、PCO2: 63.7→77.0mmHgとなり、急遽NO吸入療法を30ppmにて開始しPO2:62.0mmHg、PCO2:39.8mmHgとなりその後PCO2は60mmHg前後を推移した。このとき脳内酸素飽和度(INVOS)はL/R:57/60%→59/64%、SPO2:99%と変化はなかった。第30病日HCUへ転出し、第92病日に脳外科にて高次脳機能改善を目的に脊髄電極刺激を開始した。CPA症例・低酸素脳症などの最大の課題は高次脳機能の維持である。

195

ゼオンメディカル社製7Fr・IABP Balloonの改良における有用性の検討

196

右房に至る腫瘍塞栓を呈した肝細胞癌の摘出に対し体外循環を使用した1例

群馬県済生会前橋病院 ME室1、同循環器内科2

高橋 公徳1、齋藤 三郎1、中西 秀雄1、関口 誠2、広井 知歳2、池田 士郎2、福田 丈了2

北海道大学病院 診療支援部

泉山 千恵子1、太田 稔1、小倉 直浩1、岩崎 毅1、加藤 伸彦1

【はじめに】ゼオンメディカル社製7Fr・IABP Balloon(以下7Fr・IABP)は、開発されてから二度の改良を経て現在の製品となっている。今回その初期、中期、現行と3タイプに至る7Fr・IABPを、すべて臨床使用する機会を得たので報告する。
【対象・方法】当院で2004年2月から2004年10月までに臨床使用した7Fr・IABPにおいて、BPFA型2例(以下初期群)、BPGLPT型5例(以下中期群)、BPGL型5例(以下後期群)3タイプの特性と挿入時、使用中、抜去時の問題点、改善点を比較検討した。なお駆動装置は、ゼオンメディカル社製IABPコンソール907と908を使用した。
【結果】挿入時と抜去時に関しては、3群ともに問題はなかった。使用中に関して、初期群では、バルーンのアンラップとヘリウムガス応答性の悪さによるバルーンの拡張不足が起こり、閉塞アラームが頻繁に鳴った。中期群では、インナーシャフトの材質と内外径の改良、バルーン膜内の抗ブロッキングコートにより、初期群に比べ先端圧波形のモニタリングが良好で、バルーンのアンラップと応答性も向上した。後期群では、さらにアウターカテーテル内外径の多段化を強化し、応答性、耐キンク性を向上させたことで使用中の問題をほぼ回避できた。また、長期使用で問題になる下肢の血行障害については、4日間の連続使用を2例経験したが下肢の虚血はなかった。
【考察】挿入時と抜去時に関しては、全12症例において問題はなく、むしろ8Frや9FrのIABP Balloonより有利であると考えられる。使用中では、初期群においてバルーンの拡張不足や閉塞アラームなどの問題があったが、中期群、後期群でバルーン、インナーシャフト、アウターカテーテルを随時改良した事により多くの問題を回避でき、この製品が完成に近づいたと考えられる。
【結語】7Fr・IABPは、二度の改良を加えた事により挿入時、使用中、抜去時を通じて安全に使用できる有用な製品になったと言える。

症例:68歳男性.肝右葉肝細胞癌の診断で肝右葉切除および巨大な肝細胞癌に伴う右肝静脈から下大静脈と右房に至る腫瘍塞栓摘出時の全身循環の補助として人工肺を使用した体外循環を施行した。心臓拍動下の体外循環に対し胸骨縦切開は行わず,上肢の脱血は右内径静脈から右房上部にバルーンオクリュージョンを行いその上部へカニューレを留置し,下肢の脱血は右大腿静脈から行った.送血は右大腿動脈から逆行性に行った.体外循環中に肝右葉と共に腫瘍栓を摘出した.体外循環時間は4分,手術時間は7時間29分であり術後状態は良好である.本症例に対する体外循環の詳細を報告する.

197

虚血性心疾患患者に対し術前経皮的心肺補助(PCPS)を導入した開心術症例の検討

198

補助循環装置用冷温水槽の熱交換能に関する検討

手稲渓仁会病院 臨床工学部1、手稲渓仁会病院 心臓血管外科2、手稲渓仁会病院 循環器内科3

渡部 悟1、佐藤 友則1、斎藤 大貴1、石田 絢也1、今野 裕嗣1、那須 敏裕1、菅原 誠一1、根本 貴史1、小林 暦光1、千葉 直樹1、千葉 二三夫1、古川 博一1、岡本 史之2、廣上 貢3

札幌医科大学付属病院 臨床工学室1、札幌医科大学附属病院 高度救急救命センター2

前中 則武1、加藤 優1、武蔵 健裕1、大江 祥1、長谷川 武生1、河江 忠明1、奈良 理2、長谷 守2、伊藤 靖2、栗本 義彦2、森 和久2、浅井 康文2

【はじめに】虚血性心疾患(IHD)患者に対し術前PCPSが導入された開心術症例を経験し、良好な成績が得られたので、臨床工学技士(CE)がいかに業務を遂行したのかという観点から検討を加え、報告する。
【対象】IHD患者で術前PCPSを導入した開心術症例14例を対象とした。PCPSは全14例中11例が血管造影室で、心臓カテーテル検査又は治療時に導入された。なお全ての症例でIABPを併用し、さらにPCPSから人工心肺(CPB)に移行後、開心術を施行した。
【結果】CPB移行後、IABP補助のみでCPB離脱に成功した症例は7例であり、6例が生存退院可能であった。また、CPBから再度PCPSに移行した症例は7例であり、そのうちPCPS離脱可能であった症例は3例となり、2例が生存退院可能であった。
【考察】IHDにおいてPCPS導入後開心術を施行する場合、出来るだけ早期にCPBへ移行することが救命するために必要と考えられる。しかし、特に夜間、休日及び緊急時において心臓カテーテル検査又は治療実施中にPCPSを導入しそのまま開心術へ移行する場合、人員の確保が容易ではなく、CPBへの早期の移行が難しいと考えられる。それに対し、当臨床工学部は、CEが複数のCE業務を交代で兼務しており、部員全員が短期ローテーションでそれぞれの部門の業務を相互に対応している。よって、緊急時においても、心臓カテーテル業務を担当していたCEがPCPSを準備及び操作し、そのまま人工心肺業務を施行することが可能であり、患者病状を把握した上でのCPB操作が施行し得た。以上のことから、当部CEは今回の術前PCPSを導入した開心術症例おいて、手術室への移動時間の短縮、CPBへの早期の移行を実現するとともに、適切なCPB操作も可能としたと考えられた。

【目的】当院では年間約50症例の経皮的心肺補助装置(PCPS)を経験しており、その多くが搬入時心肺停止状態である。PCPS導入後の検査・治療は必須であり、移送に適したシステムが求められる。今回我々は冷温水槽の小型化がシステムの軽量化につながると考え、各種冷温水槽の熱交換能について比較検討し、PCPSの軽量化を試みたので報告する。
【対象と方法】対象はMERA社製:HHC-51、Medtronic社製:BioCal-370、KOSHIN社製:TRL108H、MDM社製:HemoTherm、IMI社製:T-Pumpの5種類である。方法はPCPS回路(プライミングボリューム:700ml)に、生体の循環血液の代用として血液貯留バック(プライミングボリューム:4000ml)を接続し、回路内を生理食塩水にて流量4L/minで循環させ、温度の維持能と加温能を評価する事とした。温度維持能は血液貯留バックを高低体温維持装置にて包み、32℃の作動状況下で各種冷温水槽が37℃を維持できるか評価した。温度加温能は加温時(30℃〜40℃)に、回路内送血温が設定温と同温になるまでの温度変化を評価した。また、測定環境は室温25℃、湿度55%の一定環境とし、冷温水槽のチューブ長は全長で2メートルとした。
【結果・考察】各種冷温水槽の温度維持能には有意差を認めなかった。これによりT-PumpにおいてもPCPS用冷温水槽としての使用が可能であると考えられた。T-Pumpを用いたPCPSの装置は総重量57kg、総消費電力400VAで従来型の109kg、1700VAよりも大幅な軽量化・小電力化を可能とした。
【結語】1.冷温水槽5種類の熱交換能について比較検討した。2.各種冷温水槽とも温度維持能は同等であった。3.T-Pumpを冷温水槽として採用したことでPCPSの軽量化を可能とした。

199

人工心肺用自動記録システムの検討

200

パソコンによる透析室業務の効率化、及び医療サ−ビスの向上を目指して

医療法人サンプラザ 新札幌循環器病院 臨床工学科1、医療法人サンプラザ 新札幌循環器病院 胸部外科2

海老子 貴弘1、砂山 篤志1、竹内 千尋1、佐藤 広樹1、三輪 貴史1、菊地 一智1、荒道 昭男1、川村 英喜2、馬場 雅人2、佐々木 孝2

医療法人 名古屋記念財団 東海クリニック

森實 篤司1、伊藤 靖1、市川 博章1、小熊 博康1、川上 大1

【目的】信頼性の高いデータ収集、業務の省力化、および安全性の向上を目的とし、人工心肺用自動記録システムを導入したので報告する。
【方法】自動記録システムは、泉工医科工業社と共同開発したもので、メラ人工心肺装置HAS型、フクダ電子社製患者監視装置5300Wからの情報を、通信インターフェイスを介して通信データを統合し、データ収集プログラムにてPC画面上に表示される。自動記録されるデータは、人工心肺の回路内圧、送・脱血温、体外循環時間、心筋保護液注入量および時間、生体情報としては、動脈圧、肺動脈圧などが自動記録される。体外循環中の投薬、採血などの記録は、あらかじめ登録してあるリストからファンクションキーまたはテンキーを使用し入力する。また、これらの情報は同一画面上に表示され、経時的変化のある情報はグラフ化され表示される。予想Ht値、灌流量などの体外循環前の計算および水分出納などの体外循環後の計算は自動的に計算される。
【結果および考察】本自動記録システムは、体外循環中の人工心肺および生体情報を1分間隔で自動記録するとともに、投薬などの各種イベントの時間も記録できるため、信頼性の高いデータ収集ができた。また、筆記による記録の必要性がなく、諸計算も自動計算されるため業務の省力化が可能である。更に必要な情報が同一画面に表示されるため、データの把握が容易で、安全性の向上にも有用である。しかし、現システムでは自動記録されない情報もあり、今後、情報項目を追加し、警報設定をできるようになれば大変有用なシステムとなる。そのため、更なるシステムの構築が必要と考えられる。
【結論】本自動記録システムは、信頼性の高いデータの収集や業務の省力化、安全性の向上が可能であり有用である。今後、自動記録される情報項目の追加、および警報設定を可能にするなど、更なるシステムの構築が必要と考えられた。

【目的】近年、透析室においても、業務合理化や医療サ−ビスの向上などを目的としたコンピュ−タ−による透析管理システムが、各種メ−カ−から販売され実績を上げつつあるのは周知の通りである。しかしそれらの導入に当たってのイニシャルコストは依然として高く又、目覚しい進歩が続くコンピュ−タ−社会においてはその対応としてのシステムバ−ジョンアップに費やす維持コストも加わるため、現在の保険透析医療情勢では特に普及が難しい。今回我々はより高性能化、低価格化する市販のパソコンにてそれらの代行はどこまで可能かを検討した。

【方法】システム構成:、OSはWindows2000Seveerを採用、データベースにSQLSever7.0 クライアントにはAccsess2000を用いた。

【結果】1、検査デ−タの自動取り込み、一覧(時系列グラフ化)、計算(KT/V)などの患者自己管理支援。2、患者基本情報管理 として患者紹介状の発行による他施設連携や物品発注など。

【結語】今回用いたソフトはコンピュ−タ−に精通しているものでなくてもシステム構築が容易であり、非常に低コストにて運用が可能となるばかりか、現場に促した設計が出来る。

201

透析支援システム゛The Loop゛の構築

202

透析管理システム「DIAGOOD」の開発についての検討

偕行会透析医療事業部1、偕行会セントラルクリニック2、名古屋共立病院 内科3、マイルストーンシステム4

藤 良英1、富澤 寛2、熊澤 ひとみ2、山下 浩1、坂下 惠一郎2、久田 雅樹4、中根 猛始4、粟倉 宏明4、春日 弘毅3、勢納 八郎1、鳥山 高伸3、川原 弘久3

慈愛会 岩男病院1、顕腎会 大分内科クリニック2、日本ヒューマンメディク株式会社3

姫野 栄一1、後藤 茂1、岩男 裕二郎1、小川 一2、中請 晋也3

【目的】当法人では、複数の透析施設を有し、約1500名の透析患者をかかえている。そこで使用する透析装置のメーカー・機種も異なっている。このため患者データ−の共有、及び各クリニックで蓄積されたデータ分析を行える独自の透析支援システムが求められた。その為の、透析業務支援システム「The Loop」を開発・運用を行い、その活用について検討した。

【方法】マイルストーン社と連携し、スタッフが容易に扱える透析業務支援システム「The Loop」の開発を行い、2002年12月より透析室ごとに数台のPCを配置、運用開始した。運用に伴い発生した問題点を分析し、更に改善を行った。

【結果】システム導入後、1.患者の透析条件が変更履歴と共に保存される為、透析条件の推移が把握しやすくなった、2.検査予定、投与薬剤などがチャート上に反映される為、検査・投薬洩れが減少した、3.検査センターとの間でオーダーや結果の取込みが簡素化できた、4.検査データ−が時系列や項目別等抽出出力でき評価が容易となった、5.他院への診療情報提供書が画面上で作製・印刷可能になった、6.透析サマリーが使いやすくなった等、業務改善に役立っている。体重、血圧、透析中のデータ−について手入力が必要、患者処方箋情報が取り込めない等の問題点がある。

【まとめ】「The Loop」を導入する事により、透析業務の改善がみられた。中でも今回改善された検査結果の様々な形での抽出や出力は、患者データの分析に力を発揮し、開発目的のひとつであるデータ−の一元管理とその分析による透析医療の質の管理には効果的となっている。今後は、医事パソコン及び透析機器との連携、患者が持つ透析カードの磁気化を図り、透析毎のカード上のデータ−更新や、現8施設を全14施設への導入とし、各施設間のネットワーク化等ハード面、ソフト面での充実を図って行く必要がある。

【目的】現在、透析患者を取巻く情報は透析条件にはじまり検査データ及び薬など多種多様化し、臨床の現場ではかなり繁雑な状態で管理されているのが現状であった。今回我々は、情報の一元化及び省力化の為、透析管理システム「DIAGOOD」を導入し、当院での活用方法をここに報告する。

【方法】開発環境はWindows2000と市販のデータベースソフト:Microsoft社製Access2000を用い、情報の一元化の項目として患者情報,透析条件,検査データ,薬などを、省力化の項目として透析準備物品及び薬の一覧表,依頼状及び臨時透析報告書などを管理・検索が容易におこなえるシステムの構築を図った。

【結果】透析管理システム「DIAGOOD」は内容変更及び穿刺部位画像の変更が容易に可能であり、検索の機能が優れている。今回我々は、透析管理システムを導入する事により最新の透析条件,検査データ,薬など透析情報が容易に把握できるようになり、治療方針等の検討に役立っている。また透析準備物品及び薬の一覧表を用いる事により投薬忘れ等が軽減した。現在は緊急カード及びスタッフカードも作成可能である。

【考察】今後は、在庫管理及びメンテナンス管理も考えている。その他の機能として勤務表なども導入予定である。今回は透析室での利用を優先的に考えて開発したが、今後は電子カルテへの対応やレセプトとの対応などまだまだ開発の余地があると考えられる。

203

当院の血管新生医療に関する臨床工学技士の業務について

204

小児難治性ネフローゼ症候群に対する血漿交換療法の技術的検討

奈良県立医科大学附属病院 病院管理課 臨床工学係

萱島 道徳1、松島 智佳1、岩下 裕一1、小西 康司1、野口 幸1、岡山 悟志1、斎藤 能彦1、松本 雅則1、藤村 吉博1

東京女子医科大学 臨床工学部1、東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 腎臓小児科2、東京女子医科大学 臨床工学科3、東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 血液浄化療法科4

相馬 泉1、清水 幹夫1、服部 元史2、平山 千佳1、金子 岩和1、峰島 三千男3、秋葉 隆4

【はじめに】1997年にAsaharaらは、成人末梢血中のCD34陽性細胞の分画から血管内皮細胞へと分化する血管内皮前駆細胞を発見し、その後、慢性閉塞性動脈硬化症(ASO)、バージャー病、急性心筋梗塞での治療が期待されるようになった。奈良県立医科大学附属病院でも、昨年4月より血管新生医療に取り組み、この新しい治療に対して、臨床工学技士が単核球採取を実施しているのでその内容ついて報告する。1、 慢性閉塞性動脈硬化症(ASO)、バージャー病に対する業務重症末梢血管疾患により、下肢疼痛、虚血性潰瘍・壊死を有し、薬物療法や血行再建術によって改善せず、将来的下肢の切断が予想される患者に対して骨髄血の血管内皮前駆細胞の分離濃縮。機種―Cobe SpectraのBMPモード骨髄液約―800ml〜1000ml処理速度―50〜70 ml/min 濃縮量―約50ml(単核球数10〜10個、CD34+数10〜10個)処理時間―約3時間2、急性心筋梗塞に対する業務急性心筋梗塞が前壁に限局し発症から数時間以内で、心臓カテーテル検査でインターベンションを施行しても梗塞部の後遺症が予想される患者に対して末梢血の血管内皮前駆細胞の分離濃縮の実施機種―Cobe SpectraのMNCモード処理量―全血量の2倍(150〜200ml/kg)処理速度―1〜1.5/min濃縮量―移植十分量のCD34陽性細胞(2〜5×10/kg)処理時間―約3時間
【おわりに】当院では、Cobe Spectraを使用しての骨髄濃縮は、白血病患者の治療等に既に実施している。しかし、濃縮内にCD34をどれだけ濃縮できたかは、カラーグラムと実際の色を常に確認する作業で熟練度を必要とする。BMPの2例、MNCの5例は結果が良好なので、血管新生の治療が承認されれば、患者さんにとって最良の治療となる。今後の承認に向け、採取技術の向上と急性心筋梗塞発生時に対応できる業務対応を考えて行きたい。

【はじめに】小児難治性ネフローゼ症候群の治療法の選択肢として、LDL吸着療法(LDL-A)や単純血漿交換療法(PE)といったアフェレーシス治療が施行されるようになってきており、当院においてもLDL-AおよびPEの施行例を経験してきた。
【目的】小児例、特に低体重児においてはプライミングボリューム(PV)の観点からLDL-Aを選択できず、PVのより少ないPEを施行する場合がある。また、ネフローゼ症候群では低蛋白・低アルブミン(ALB)血症を伴っており、PE施行時には置換液濃度に起因する副作用が発現するためより一層の注意を払わなければならない。これらをふまえたうえで、小児例に対する安全性について検討したので報告する。
【検討方法】当院におけるPE施行状況をもとに、置換液濃度の設定法とその妥当性、PV、および抗凝固薬の使用法等について検討した。【結果】置換液濃度の設定法は、治療前の児の血清総蛋白から血漿膠質浸透圧(COP)算出し、置換液の膠質浸透圧と同等になるようにALB使用量を決定し希釈調整した。治療中のバイタルサインには大きな変化は見られなかったが、治療後のTP、COPは低下する症例が多く見られた。また、治療後のALB値は上昇する傾向がみられた。
【考察】ネフローゼ症候群では低蛋白・低ALB血症をきたしていることが多く、PE施行時において血漿蛋白の補充を行うことがしばしば見受けられる。今回、治療前のCOPと同等になるような置換液ALB濃度での治療を試みたが、治療後のCOPは低下傾向にあった。このため設定法を改善した条件下での治療を行なったところ一定の知見が得られた。
【結語】当院での小児難治性ネフローゼ症候群におけるPE施行条件について検討し、改善点について見出すことが出来た。

205

血栓性血小板減少性紫斑病に対し血漿交換を施行した1症例

206

兵庫県臨床工学技士会におけるAED−BLS講習会の取り組みについて

JA北海道厚生連 倶知安厚生病院 臨床工学技術部門1、JA北海道厚生連 倶知安厚生病院 消化器科2

長澤 英幸1、竹内 勝訓1、笠島 良1、岡田 功1、今泉 忠雄1、築田 浩幸2、川崎 君王2

兵庫県臨床工学技士会

尹 成哲1、大平 順之1、木村 政義1、森上 辰哉1

【はじめに】血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura以下TTP)は、溶血性貧血、血小板減少、神経障害、発熱および腎障害を主症状とする全身性重篤疾患である。人口100万人当たり4人(0.0004%)と推測され、女性はわずかに男性よりも多く罹患する疾患である。今回我々は、血栓性血小板減少性紫斑病に対し血漿交換療法(以下PE)を施行した症例を経験したので報告する。

【症例】66歳女性。64歳で強皮症、子宮癌、65歳で水腎症、放射線性腸炎の既往歴があった。入院後直ちに、副腎皮質ステロイド・メシル酸ナファモスタットの投与を持続的に開始、著しい貧血に対して赤血球濃厚液の輸血を実施した。しかし、37度代の微熱の継続、意味不明な言動や幻覚などの精神障害が出現、食事摂取の困難、血清尿素窒素113.9mg/dl、血清クレアチニン7.3mg/dlと腎機能の低下、血小板の減少、LDHの高値を認め全身状態の悪化が見られた。以上によりTTPと診断され、血漿交換療法を7回施行し、新鮮凍結血漿を合計24100ml交換した。治療に伴い、精神障害の改善、Hb・PLTの上昇、LDHの減少、体温の36度代への下降が認められた。また、同時期に溶血に伴うT-Bilの上昇が見られた。しかしながらその後、T-Bil の減少が見られるものの、Hb・PLTの減少、LHDの上昇、精神症状の増悪を認め、意識レベルの低下、呼吸停止にて永眠された。

【結語】血栓性血小板減少性紫斑病に対して血漿交換を施行し、精神障害・LDH・PLT・Hb・体温の改善が確認できた。しかしながら、TTPに対しPE治療プロトコールは示されているものの明確な治療基準はなく、今後の治療指針の早期確立が望まれる。

【はじめに】2004年7月1日に厚生労働省医政局長より医師並びに看護師及び救命救急士(以下,有資格者)以外の者による「非医療従事者による自動体外式除細動器(以下,AED)の使用について」の報告書がとりまとめられた.その中で、非医療従事者によるAEDの使用が一定の条件下において認められることとなった.そこで兵庫県臨床工学技士会(以下,兵臨工)ではAEDの工学的基礎をプログラムに取り入れた「AED-BLS講習会」を開催したので報告する.

【対象及び方法】兵臨工会員の全員参加および,非医療従事者(一般市民,学生)を対象とし,兵庫県下で3会場にて講習会を開催した.講習会内容として,1.AED製造メーカによる工学的基礎知識の講演(60分),2.救急医療の領域に携わる専門医師による,基本的心肺蘇生法について(意識・呼吸・循環のサインの確認と心肺蘇生法の実際等)(60分),3.医師の指導のもと,AEDを用いた心肺蘇生法の実技(120分)のプログラムを設け行った.

【結果】3会場の参加者合計は計434名であった.その内訳は兵臨工会員220名(全会員の約70%),一般参加234名(内看護師を含む医療職83名),学生80名であった.

【考察及び今後の課題】今回,自主的な呼びかけにも関わらず,兵臨工会員の70%以上になる220名の参加や一般市民,他の医療職種の方からの参加が多数あったことはAEDの使用に関して非常に高い関心があるといえる.よって技士会としてこの様な講習会を開催する意義は大きい.しかし講習会開催にあたっていくつかの問題があり,実技講習のための人形・AEDの確保や指導者の確保と,その資格等が今後の課題である.

207

院内AED(Automated External Defibrillator)設置に伴う臨床工学技士の対応

208

AEDの運用、管理における臨床工学技士の役割

公立陶生病院

春田 良雄1、村井 俊文1、児玉 泰1、長江 宏則1、伊藤 一孝1

慶應義塾大学病院 医用工学センター

大石 愛光1、忍足 幸保1、橋本 裕明1、平林 則行1、植田 健1、根岸 壮親1、冨永 浩史1、又吉 徹1

【はじめに】日本においては人口10万人あたり年間30人の心肺停止(CPA)が発生すると考えられている。そして、病院内ではおそらくその頻度は高く、適切な一次救命処置が4分以内に開始され、除細動が8分以内に施行されると救命率が上がることが示されている。そこで、当院ではAEDを設置し、いち早く除細動を行い、救命率を上げることを試みた。これに伴い臨床工学技士がAEDの管理および使用時の解析を行なっている。
【目的】院内で発生したCPA患者に対して、AEDを装着、AEDが解析して除細動を行い、救命率を上げることを目的とした。
【方法】院内の外来部門、病棟部門に16台のAEDを設置した。また、全職員がCPA患者に対応できるように、BLS(一次救命処置)とAEDの装着、操作が施行できるように定員制で講習会が開催され、当院の臨床工学技士14名も受講した。AEDに関わる臨床工学技士の業務としては、設置されたAEDの操作・点検、および使用後のセッティング、使用記録の解析を業務とした。
【結果】2004年8月に設置され12月までに使用されたAEDは計8回で、イベント発生場所は外来3回、病棟5回で、使用時間は日勤帯3回、夕勤、夜勤帯5回であった。それぞれのAED指示者は医師、看護師であり、使用者は医師3回、看護師4回、臨床工学技士1回であった。使用されたAEDで除細動を必要とした症例は8症例中5症例で、解析結果では除細動に成功している。除細動成功例での転帰は2例が生存、3例が死亡だった。
【考察】今回の結果より、院内にAEDが設置され致死性不整脈によるCPAに対して有効であると考えられた。特に、医師が手薄の夕勤・夜勤帯にCPAが発生した時には、看護師等のコメディカルのスタッフにて装着・操作を行い、医師到着時までにBLSとAEDを施行し救命率を上げることが期待できると思われた。

【はじめに】病院の使命は、科学的かつ適正な医療を通じて社会に貢献することである。当院では、不時の心肺停止発生に対する安全管理体制として、院内各所にAutomated External Defibrillator(以下、AED)を設置した。今回、AEDの運用、管理方法における臨床工学技士の役割について検討した。
【運用方法】BLSワーキンググループ(医師、看護師、臨床工学技士、事務系職員など)により、AED運用取扱基準を制定した。全教職員、委託職員がAEDの操作可能となる体制を確立するために、シミュレーションラボにて、BLS-AED講習会を開催した。設置は建物内何処にいても、2分以内に使用できる場所とし、設置台数は29台となった。設置方法は、専用収納ボックスにAED本体、予備パッド、安全キット(人工呼吸用具、カミソリ、ハサミ、タオル、滅菌手袋)を収納し、管理はMEセンターで行なった。使用者は使用後、MEセンターに連絡し、報告書を院内安全対策委員会に提出する。報告書はBLSワーキンググループで分析、評価され、病院長に提出される。
【管理方法】日常点検は警備員が、定期・使用後点検はMEセンターが行なった。日常点検:盗難予防とセルフテストの実行確認。1ヶ月点検:基本的動作確認。1ヵ年点検:動作確認、バッテリーチェック、出力試験。使用後点検:データ抽出作業、備品補充、パッド補充など。
【問題点】AEDの使用は基準通り行なわれたが、使用後、誤ってデータを消去された。原因は基準に使用後操作についての記載が漏れていたからであった。BLSワーキンググループで使用後操作について検討を行い、基準に記載した。
【おわりに】AEDの運用には教育、ガイドラインの確立、適正な管理が重要である。臨床工学技士は病院内に複数設置されたAEDをいつでも使用可能な状態にするべく、運用、管理、点検を行なわなければならない。

209

院内におけるAEDの使用環境に関する検討 第2報 全職員の除細動実施宣言と蘇生事情

210

酸素流量計の保守管理

大津市民病院 臨床工学部1、救急診療部2、医療安全推進室3

八木 克史1、寺内 茂1、木村 啓志1、吉村 規子1、福山 佐弥香1、津田 正子1、水野 勝博1、戸田 省吾1、福井 道彦2、立山 満久2、井上 彰啓3、神吉 豊3

JA北海道厚生連 札幌厚生病院 臨床工学技術部門

完戸 陽介1、森久保 忍1、石川 俊行1、橋本 佳苗1、室橋 高男1

【はじめに】体外式半自動除細動器AEDの環境整備については第13回大会で第1報報告した。当院は11台のAEDを分散配備し、厚生労働省包括的指示に基づいた非医師の除細動実施教育を実施している。今回、院内AEDの実態を検討したので報告する。
【教育と蘇生】院内救命蘇生推進委員会がBLSにAEDを組み入れた「I do AED!:除細動治療実施宣言」講習会を病院長承認のもと平成15年11月より全職員に実施した。受講者には院内LANからテキストと模擬映像を配信し、ACLSマネキンを用いた講習会をグループ単位で、数十例のシナリオを準備し計100回実施した。現在、看護師は全員終了し、医師、医療技術職員、事務員、外輪企業職員に対し進行中である。当部門からはICLS指導員5名が参加した。平成16年7月、病院敷地内のどの位置からも3分以内にAEDが搬送できる位置を実測し収納箱に配置を完了した。本年11月末までの5ヶ月間で一般病棟の不測の急変患者13例にAEDが装着され6例にAEDが反応、3例の心蘇生に成功した。臨床工学部では全例の使用後AEDの解析報告とメンテナンスを行った。
【考察】 当院のAED配備の背景には、全一般病棟(526床)でわずか2台の除細動器しか配備できず、蘇生環境として満足できるものではなかったことにある。院内(入院、外来)患者の「意識不明+心肺停止=AED」の考え方に疑問視する声もない訳ではないが、古典的な救命枠にとらわれた患者は不幸かも知れない。前述の13例は院内有資格看護師が発見または家族の通報直後に速やかにAEDが装着、解析され、6例に通電が行われ、後に医師が到着している。蘇生開始時間を考えると有効的な短縮が実現できたと考える。CEは救える命に対しての新しい機器や方法に臨床工学面での教育や技術的な協力を惜しまないこと、またメンテナンスなど性能維持、整備も責務ではないだろうか。

【目的】当院でも酸素流量計、インスピロンネブライザを合わせ114台保有し、MEセンターにて管理している。しかし、定期点検などは行えず返却時点検や修理依頼にのみ対応しているのが現状であった。そこで、酸素流量計の流量点検にデジタル酸素流量計:エア・ウォーター社製MGM−O1(以下MGM−O1)を使用して簡便さと流量精度に着目し、今後の保守管理について検討したので報告する。
【方法】酸素流量計とMGM−O1を使用し、1L〜15Lの測定を行った。酸素流量計は当院で使用しているセントラル・ユニ社製IHF−911のうち、購入後修理履歴のないもの(2年〜8年経過機器)を対象とした。
【成績】設定流量より供給流量が少ない機器が発見された。ほとんどの機器は設定値と実測値の差が最大で15%以内であったが、ある機器では30%の差が認められた。誤差15%以内におさまった機器は購入後2年、4年、5年、8年経過機器と様々であった。最大30%と差が出たのは購入後3年経過しているものであった。
【結論】今回の実験結果ではどれくらいの経年劣化で、設定流量と供給流量の差がどれほど出るかは見出せなかった。これは使用頻度がそれぞれの使用場所ではかなり異なるためであると思われる。しかし、設定流量より供給流量が少ない機器が臨床現場で使用されていたことは事実であり、本来ならば全機器を定期的に点検することが必要である。そこで、機器の返却時や修理依頼のあった場合には、簡便かつ正確に流量点検を行うことが望ましく、デジタル酸素流量計MGM−O1は有用である。なお、中には購入後何年も修理・点検履歴のない機器も存在する場合があり、安全かつ安定した酸素供給を行うため、最低でも購入後3年以内に必要に応じて点検及び修理を行うことが望ましい。

211

人工呼吸器の一元集中管理業務体系化による効果

.

.

大阪府済生会吹田病院 臨床工学科1、大阪府済生会吹田病院 心臓血管呼吸器外科2

桑名 淳也1、伊藤 英史1、中村 晃己1、南海 由寛1、河内 秀幸2

.

【はじめに】臨床工学技士による病院内ME機器中央管理化が一般的になりつつある現在、当院でも平成16年4月より人工呼吸器の一元集中管理を実践してきた。以前は病棟看護師による点検を実施していたが、内容の統一性や定期性といった面で十分な管理が行われていなかった。今回臨床工学技士による人工呼吸器の一元集中管理が実践される事で、人工呼吸器に関する医療事故防止および経済的効果といった改善が見られ、臨床工学技士の人工呼吸療法への参画ができたので報告する。
【目的】臨床工学技士による人工呼吸器の一元集中管理によって、人工呼吸器に関する医療事故防止対策および経済的効果を講じること。
【方法】人工呼吸器一元集中管理に伴い、1) 臨床工学技士による始業点検、治療中点検、終業点検、定期点検の施行 2) 人工呼吸器カルテ作成による点検修理・稼動状況等の情報一元管理 3) 人工呼吸器一元集中管理化担当者の委任による責任所在の明確化 を行った。
【結果】人工呼吸器に関するヒヤリ・ハットレポートより機械的トラブルの減少と、病院全体の人工呼吸器稼働率の上昇による修繕費の節約および人工呼吸器新規購入コストの削減が図られた。
【考察】臨床工学技士による人工呼吸器一元集中管理の実践により、人工呼吸器に関する医療事故防止および人工呼吸器管理費削減による経済的効果が図られた。一方、看護師の機械離れを防止するために看護スタッフへの人工呼吸器取り扱い説明等のスタッフ教育を徹底して行う事による安全管理が今後必要になると思われる。
【まとめ】臨床工学技士による人工呼吸器一元集中管理の実践により、人工呼吸器に関する医療事故防止および経済的効果が図られ、人工呼吸療法参画による業務拡大が実現した。

.