災害は多発している。しかも、災害は発展途上国の最も貧しい人々に繰り返し打撃を与えている。これまでどおり、「神の仕業」として、災害の原因を自然だけにおしつけてよいのかと自問した結果、自然事象と人間の相互関係のなかに災害の発生を見ざるをえなくなった。いいかえると、人間による生態系の破壊により自然が脆弱化して、災害の姿を借りて自然から報復されているとすらいえる。
こういったことから、災害救援と開発の連関性を直視して、抜本的な対策を講じて、災害の軽減を図るべきだと考えるようになった。緊急救助はいかなる場合であれ、将来の災害に備えての対策と一貫性を持って行なわなければならないことになる。特に、1990年代を「国際防災の10年」と位置づけたことにより、途上国における防災体制整備に向けて国際化が強化されるようになった。
各国の防災体制は着実に整備されてきている。また「災害には国境がない」と主張する向きもあるが、災害の調整は被災国の主権にかかわる問題であるので、被災国は自らの権限で、あるいは国連機関、国際的な災害救援機関などとの緊密な連絡の下に災害調整を行なうことになっている。この調整を受けずに救援することは、もはや許されない。
調整のとれない救援活動は混乱を増幅させる。災害の規模が大きければ大きいほど、各機関が相互に連絡を密にし、不要な重複を避けて、被災者のニーズに適切で、実効のあがるものにしなければならない。善意だけの救援は時に有害ですらある。
非常災害発生時防災体制は、右の図のようになっている。簡単に説明すると、非常災害時に際しては緊急災害対策本部が設置され、緊急措置に関する計画に基づいて、その実施を指揮する。そして、救助の実施機関は都道府県知事であるが、市長村長が補助または委任を受けて、救助の実際にあたる。また法律で、日本赤十字社に「医療、助産および死体の処理、さらに義援金募集、災害時のボランティア活動の連絡調整」などが義務化されている。このようなわが国の防災体制は、世界的にも最も整備されたものとされている。
また、国際的な救援調整は、国際赤十字によっても行なわれている。スイス民法上の法人である赤十字国際委員会は、主として戦争、紛争などの場合に、犠牲者の状態改善のために中立機関として、また仲介者として活動する。そして各国赤十字社の連合体である国際赤十字・赤新月社連盟は、各国赤十字社の「苦痛の軽減、疾病の予防、健康の増進」のための平時活動の相互協力を連絡・調整している。
こういった、試行錯誤により国内外の災害調整は、今後さらに改善されていくものだと思われる。
横須賀市医師会・消防本部・支援病院・行政機関が連携をとり、災害救護計画のもとに、神奈川県・横須賀市合同防火訓練の一環として大型バス救出訓練を実施した。
1)地域災害医療連携室
2.横須賀共済病院災害医療対策計画検討案
1)病院の能力評価
2)災害対応
3.アマチュア無線非常通信体制
横須賀市に地震・風水害その他の災害が発生し、有線電話が途絶した場合または利用することが著しく困難である場合の情報の受伝達について、横須賀市と協定書を交わし、システムを構築して災害に備えている。
1) 想定災害
2) 模擬患者設定
3)医療体制
4) 事故現場
5)アマチュア無線体制
2.訓練概要
事故発生直後到着した医師・看護婦は応急救護所に向かい、救急隊員はバス内に進入して最初のトリアージを行い、緊急度順に負傷者を車外に救出し、バスの入り口付近のトリアージポストに収容した。トリアージポストで医師・看護婦が2回目のトリアージを行い、重症・中等症に対し応急処置を行い、重傷者を救急車に収容した。中等症・軽症者は現場応急救護所に搬送された。救急隊からの要請により基幹病院に重症者が搬送された。搬送された負傷者は基幹病院玄関ホールで新たにトリアージされ、緊急度順に病院内の各救護所に搬送された。救護所では再度トリアージを行い、処置を行った。アマチュア無線、市役所無線基地、病院との間で情報が伝達された。
3.結果と考察
想定災害としては災害医療の流れをシュミレーションすることができ、目的を達成した。医師らは負傷者を十分診療せずに受傷カードを見てトリアージを行う場合がほとんどで訓練にならなかった。トリアージポストが事故現場の横であり火災などの2次災害の発生を考えると危険であった。指揮命令系統の確立が不十分で看護婦・救急隊員の役割が不明確であった。基幹病院の受け入れ体制も不十分であった。院内の各救護所でも患者を診ずに受傷カードだけを見てトリアージが行われた。よって救護所には非常に短期間で負傷者が搬送され、多数の検査オーダーが出て混乱を招いた。アマチュア無線の利用により災害現場の状況が病院で把握できたことは非常に有効であったが、医学用語を用いるには不慣れで、法律で規制されている伝文等が必要になり課題が残る。今回の訓練はショー的要素が強かったが、今後の課題が発見でき効果的であった。
高速道路での事故は、車にスピードが加わっているため重症例が多い。日本の車線は片道2車線が多く、事故時に車が道路を塞ぎ、玉突き多重衝突事故が発生する。また同時にガソリンに引火する炎上事故は死亡事故が多くなる。長いトンネル内の事故で火災が発生すると、焼死や煙によるCO中毒が生ずる。スピードを出している場合、カーブを曲がりきれずサイドフェンスに激突したり、炎上したりする。このため通常の交通事故より重症な例が多い。追突や玉突き事故の場合、車両に挟まれている症例には、レスキュー隊による救出活動を要する。
事故の原因としては、スピードの出しすぎ、居眠り運転があり、フェンスを突き破って高車線よりの墜落、家屋の破壊などの二次災害も生ずる。
◇疫学
1988年1月より、1992年3月までの約4年間の、関連車両10台以上の、主な高速道路多重衝突事故は22例である。22例中、停止車や渋滞車に衝突したもの、スリップ事故、ガードレールに激突したものが計16例(72.7%)を占め、16例中13例(81%)が、視野の不良な吹雪の時の事故であった。また高速道路内のトンネルでの事故は3例で、そのうち炎上などにより2例に死亡者を出した。
◇化学災害
爆発・火災の危険のある物質や、毒物・劇物類を積んだトラックなどが、日常的に高速道路上を通過している。高速道路上の化学災害発生時には、事故関係者以外に、救助活動に従事する消防、警察、医師、付近の住民などに影響を及ぼし、物質に関する毒性および医療情報が重要となる。化学物質に対する積極的な情報提供、および伝達が大切である。
◇医療対象
高速事故時の医療活動の対策として、小規模の事故から数十台の車の事故まであるが、近くに適切な医療機関がない場合も多く、救出後、現場での適切なトリアージを行い、“ドクターヘリ"や“ドクターカー"などの搬送を常に考慮していかなければならない。
高速道路へのヘリコプター着陸に対して、日本道路公団や警察は慎重な姿勢である。その理由について道路公団は、「本線内は中央分離帯や路肩フェンスなど障害物が多く、ヘリコプター着陸により、二次災害も考えられる」ことを挙げ、実際に着陸を行った警察は「緊急事態で、地上からの誘導など安全を確保でき、かつ適地を選び着陸した」と説明している。このような救急医療を目的として、医師が搭乗したヘリコプターを高速道路へ着陸させる事前訓練は、これまで一度も施行されていない。今後も高速道路へのヘリコプター着陸はなかなか許可がおりないものと思われるが、先例があるので道は開かれてくると思われる。
災害医療現場で最も重要なのはtriage(選別)、treatment(処置)、transportation(搬送)の3つであり、今後は体制の整備とともに、救急医療の人的・質的充実を図り、各地域での医師側の連絡および協力体制を確立していく必要がある。また行政側での道路情報で、気象や路面、混雑予測を含めた内容が求められる。ここ数年、道路管理者と交通管理者による道路情報システムが整備されはじめた。
◇特徴
小さい釣船、遊漁船、ヨット、クルーザー、さらに客船、貨物船、大型タンカーなどの、海上での事故で、近海の事故でも病院搬送まで数時間を要することもあり、さらに公海上では治療を受けられるまでに数日を要する。事故は、海中転落、船火事などから、転覆、衝突転覆、ケミカルタンカーなどの爆発事故に見られるように、溺死や熱傷がある。またヨットなどの故障から漂流による脱水などもある。
海中に投げ出されると溺死が多く、海が荒れている場合や、夜間では救助は困難となる。また漂流では水不足による脱水、電解質異常、栄養不足による衰弱、さらに循環不全となる。さらに病院までの搬送に数日を要することもあり、初期治療が遅れることが多い。ケミカルタンカー爆発の場合は、化学薬品による熱傷などに対し、専門の集中治療を行える施設に搬送しなければならない。
◇医療対策
溺水などの重症例や、多量の出血を伴う外傷では、適切な医療施設への搬送がポイントとなる。洋上での重症患者に対するヘリコプターによる医師派遣、心電図の電送、医師による薬品を含む医薬指示が今後必要と思われる。巡視船の派遣ではあまりに長時間を要し、命を失う例もある。しかしヘリコプターによる場合、患者を空中で受け取り、搬送しなければならない場合も多く、熟練したレスキュー隊が必要となってくるが、これらを行うためには莫大な費用がかかる。
大きな船舶には、船員衛生員が乗船しており、136時間の訓練で資格がとれる。船員衛生員教科書には、「注射薬のすべて、および内服薬(副腎皮質ホルモンなど)の施用に当たっては、必ず医師(または医療通信)の助言により施用しなければならない。また船員の生命に急追の危険がある場合でも、時間的余裕があれば必ず医師の助言により施用し、たとえ使用後であっても必ず医師に報告し、かつ助言を求めることを忘れてはならない」とされている。船員衛生員が使用できる薬は、抗生剤、中枢神経系用薬(フェノバルビタール、ジアゼパンなど)、解熱鎮痛剤(アスピリン、フェナセチンなど)、総合感冒薬、ボスミン、鎮痙剤(ブスコパン)、眼科用剤、アレルギー用薬(抗ヒスタミン剤)、強心剤、ネオフィリン、冠動脈拡張剤(ニトログリセリンやペルサンチン)、降圧剤(レセルピン)、鎮咳剤(メジコン)、ブドウ糖、リンゲル、止血剤(トランサミン、アドナ、ビタミンC)など、広範囲にわたっており、今後再検討と薬品の充実も必要とされる。
◇洋上での急患搬送
1985年より1992年までの過去8年間の洋上の総急患発生件数は251例で、166件(66%)が日本船、85件(34%)が外国船であった。そのうち162例(65%)が日本人、89例(35%)が外国人であった。また過去8年間の洋上での急患を見ると、消化器系の疾患が64例と一番多いが、死亡は1例(船死)のみであった。一方、循環器は56例と二番目であったが、死亡は16例(病院死4例、船死12例)と28.6%を占め、一番多かった。三番目は骨折で31例(病院死1例、船死3例)であった。
◇洋上救急事業
現在、洋上救急体制整備の目的として、1985年10月1日から洋上救急事業が開始されている。洋上救急体制は、日本水難救済会が事業主体となり、関係法人などの資金面の協力、医療機関の協力のもとに、海上保安庁の輸送力の活用などにより、洋上の傷病船員に対し、医師などの救急往診を実施し、日本周辺海域において24時間体制で運用されている。往診を希望する場合、最寄りの海上保安機関に連絡をする。日本水難救済会の洋上救急センターは東京にあり、8か所の地方支部がある。その他、協力医療機関は全国で96機関となっている。洋上救急事業開始以来、出動機関は延べ138機関、医師170名、看護婦等95名、船艇136隻、航空機208機、特殊救難隊25件である。
長崎県島原市では、平成2年の雲仙普賢岳噴火から5年を経て、ようやく終息を宣言するに至った。この災害において看護チ−ムを形成する過程で「行動目標を明確にした主張と効果的な連携」がテ−マとなった。
a;病院の立地的な状況診断
これらの診断に基づいて、救護所設置、防災避難および医療救護対策の、必要性を提案した。その結果として、「雲仙噴火活動対策」が提示され平成3年5月31日に院内救護所が、設置され、その直後に起きた大火砕流においては、病院職員をはじめ多くの人の支援をうけることができた。
またこの記録により、行動目標が明確になり、準備することもみえ、全体像も捉えることにより、自らの果たすべき役割を再認識することもできるようになった。また以上のことから明確になったのは災害活動は、看護行為が大量に求められるが、行為そのものは日常の活動でしかないという事実であり、災害においても必要となるのは日常の看護診断力と看護技術であるということがわかった。そして災害時に機能するチ−ムを形成するには、以下の要件を備えたリ−ダ−とフォロア−が求められる。
1、リ−ダ−の要件
2、フォロア−の要件
病院は専門職集団で形成されている。患者との援助関係を各自の立場で、保ちながら医療の理念を達成するためにチ−ムが形成される。そして看護本来の業務が達成できるように、固定チ−ムナ−シング:患者受け持ち制
を導入した。
横須賀市における災害救護計画と訓練
山口孝治ほか、日本集団災害医療研究会誌 1997: 2: 48-52(担当:高橋)T.災害救護計画
2)地域医療救護所(臨時収容施設)
3)応急救護所(外科系診療所)
4)後方医療機関U.災害救護訓練
高速道路事故・海難事故
浅井康文、災害医療ハンドブック、医学書院、東京、1996年、p.73-80(担当:渡部)1.高速道路事故
2.海難事故
看護職の主張と連携
―雲仙普賢岳噴火に伴う災害に学んだチーム形成―
高口榮子. 看護展望 20: 1227-31, 1995(担当:藤田)はじめに
前災害期と災害発生期
b;病院の役割診断
c;看護チ−ムの能力診断
d;医療環境の診断復興期のチ−ム形成的側面
b;課題に対して目標が提示できる。
c;チ−ムの力量を適正に評価できる。
d;行動の全容を把握し、フォロア−に個々の役割の動機づけや、指示ができる。
b;自己の能力を適正に評価し、組織のなかでの役割を認識できる。
c;自己の特性を知り、自らの不足部分を補う努力ができるとともに、同僚の不足部分に対しても支援ができる。感動が連携を生む
主張と連携の意味
まとめ
gochi@hypnos.m.ehime-u.ac.jp
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