兵庫県フェニックス計画における医療対応
小林 久、日本集団災害医療研究会誌 1: 73-7, 1996(担当:八竹)
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では5,500名をこす死亡者と34,000名以上の負傷者を出した。また、医療機関の診療機能が低下し、患者搬送に支障をきたした。そこで兵庫県では復興計画の中、震災時の問題点を検討した結果、新しい兵庫県災害救急医療システムが作成された。平成7年2月27日、「兵庫県災害医療システム検討委員会」が設置され、合計6回の審議を経て、「災害医療の実態調査」や「災害救急システムのあり方」が検討された結果、同年6月19日に「兵庫県医療システムのあり方」としてまとめられた。その構成要素として1.医療情報システム、2.医療指令システム、3.救命救急医療システム、4.救急搬送システム、5.医療マンパワー確保・受け入れ・派遣システム、6.その他の支援システム(耐震・防火構造・防災施設・設備、ライフライン、備蓄、研究、訓練)が上げられる。
新しい災害救急医療システム構築するに際して、1.現行の救急医療体制が基本、2.平時も稼動するシステム、3.官民協力(適切な経済的行政支援、民間医療機関の活用)、4.医療情報収集・提供、医療司令、医療マンパワー確保の一元化、5.救急医療と搬送の一体的運用、6.市町災害医療計画の策定、などが考慮された。
兵庫県災害救急医療システムの構築
1)災害医療情報・司令システムの整備
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県下の拠点として国際防災センターとの連携のもとに兵庫県災害医療情報・司令センターを整備する。
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二次医療圏に1ヵ所ずつ地域医療情報センターを設置し、医療情報の一元化を図る。
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広域災害医療情報ネットワークで、県のセンターと地域のセンター、近隣府県、国の機関、搬送機関、自衛隊の間で連絡を取り合う。
2)災害医療センターの整備
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高度救命救急センターでは多発外傷、脳血管障害、循環器疾患、広範囲熱傷、急性中毒等に対応。病床の確保、医師の派遣など被災地の医療ニーズに対応する。
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搬送基地として、陸上搬送、航空搬送、海上搬送を確保3)備蓄基地として、医薬品食料、水、LPガス等を備蓄。災害時には被災地、医療機関等に搬送できるように整備する。
3)地域救急医療体制の整備
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小中学校区域を単位とした初期救急医療機関の整備する。
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二次医療圏ごとに救急センター等地域基幹病院を拠点とした広域救急医療機関を整備する。
4)搬送システムの整備
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救急車、鉄道輸送に加え、巡視船、ヘリコプターによる輸送を確保を図る。市町区域に1ヵ所ヘリポートを整備する。
5)医薬品等備蓄システムの整備
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災害医療センター内に広域備蓄センターを設置する。
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地域備蓄センター
6)市町における災害医療体制の整備
7)その他
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災害医療の研究
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災害医療訓練
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人的災害への対応
阪神・淡路大震災から1年が経過したが、兵庫県フェニックス計画における医療対応は理想的には実現できていない。災害医療センター構想については現在も専門部会等で検討中である。
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