(担当:二宮、山元)
個人救急に関するシステムを基本にしてグレードアップして集団救急時のシステムをつくる。受け入れ疾患の種類、重症度、人数をあらかじめ決めておく。さらに、各病院では緊急時に退院可能な人数も確認しておく。病院マップをあらかじめ作り、主と副の基幹病院を決めておく。ここでの情報はすべて災害対策本部に送るようにしておく。
2)国、地方自治体、医療および関連機関、ライフライン関係者による定期的会合
災害対策基本法に定められた責任者は、不在時のために2〜3人の副責任者を順位をつけて決めておく。これらの責任者がそれぞれ複数で会合に出席して、各機関の機能と役割分担の確認を行う。ここで災害時の情報の伝達の方法について確認しておく。
3)情報伝達ネットワークの整備
既存の通信手段を利用するのを基本とする。情報伝達の経路に従って有線、無線の情報網を整備・拡充する。
1)院内設備の対応策
2)病院職員に対する災害医療教育
医学的災害とは、現有する医療能力(医療資材、人などすべてを含む)に対して、はるかに膨大な医療の需要がきわめて短時間のうちに発生した場合をいう。したがって、平時のように受け付け順に患者をみるのではなく、現有する医療能力を最大限に発揮して、最大多数の被災者に最良の治療をすることが目標であることを理解させる。そのために通常は次の順序で対応する。これは、三つのT(3Ts)といわれている。
【マニュアル作成の前提条件】
(1)局地災害で病院が無傷である (2)大学病院である (3)これまでにいくらかの訓練の経験がある (4)病院火災時の対策を基本にしてある (5)職員に訓練の概要を説明してある (6)各職員は自己の職務について十分認識しており、かつ相当な経験がある (7)病院近郊の地理的および医療に関する状況を知っている (8)マニュアルは非常に簡潔で基本方針だけが書かれている (9)マニュアルに書かれている以外のことに関しては災害医療の基本方針に照らして、常識に基づいた想像力と創造力を生かして対処するように書かれている など
【共通部分のマニュアル】
第1ページ:集団災害時の被災者に対する医療計画
第2ページ:(1)病院内被災者動線と(2)災害発生時の連絡系統図
【中枢部門のマニュアル】
これは、災害発生の第一報が救急隊または災害対策本部から入り、この情報が病院管理部を通じて院内災害対策本部が設置され、ここから全館に向けて非常放送がされるまでのものである。中枢部門とは、救急医療センター、管理課、対策本部、防災センター、看護管理室、電話交換室などである。
【各部門におけるマニュアル】
ここからは、外来事務、検査、放射線、手術部、薬剤部、栄養部、各診療科など病院機構のすべての部門が入る。
非番の勤務者の呼集、平常業務の縮小と停止、責任者の確認など、原則はすべて共通である。非常放送の内容により必要なもの、必要と思われるものを職業的常識、想像力、創造力で準備する。また各部署の受入れ能力を本部に報告する。
【1】災害発生の想定(なるべく簡単な想定)を行う。
【2】救急隊の出動から現地救護所の設置までの所要時間を関係規則と実績に基づいて算定する。
【3】被災者の救出開始から医療機関到着までの所要時間を、被災者の重症度、患者数とあらかじめ作成してある病院マップを参考にして算定する。
【4】災害発生通報の病院への到着から院内災害対策準備完了までの必要時間を算定する。
【5】全体的な必要時間、医療資材、人員などを推定して、不足する可能性のあるものをチェックし、補充方法を決定しておく。
【6】プレホスピタルおよびホスピタル部門が別々に想定に従って、人形やミニチュア自動車などを用いて机上訓練を時間的経過を含めてこれまでの実績に即して行う。次いで全参加者が集まって、全経過にわたって行う。
【7】机上訓練と同様に事故の概要と負傷者の想定を行い、実訓練を実施する。より真の災害に近い訓練を行うため、模擬患者(医学部学生)に対しては重症度と傷病名のみを指定し、あとは各自に勉強させて適切な扮装をさせ、災害現場の救急隊には各重症度患者の概数のみを知らせてあるだけで、それ以上の情報は与えていない。
派遣期間:
協力方法・内容:現在活動中の神戸医師団を引き継ぐ形で行い、終了後次の医師団に引き継ぐ。避難所における一般外来診療を中心に行う。
疾病構造を見てみると図2のごとく全診療患者835名の50%が感冒、インフレンザであり、その割合は経時的変化を示さなかった。次に多いのは創処置および包交で12%であるが、経時的変化をみるとA班が12%、B班が14%なのに対してC班は 4%と減少している。全体的にみると内科的疾患が圧倒的に多かった。
災害医療から考えるとその時期は救出救助期より後の感染期、復興期にあたる。疾病構造からもこのことがわかる。診療患者数から考えると経時的に減少傾向がみられ、どの時期で撤退し現地医療機関に委譲していくかという大きな問題がある。実際に医療チームが活動しているとき、現地の医療機関の80%が既に診療可能となっていた。診療機関によっては患者数が震災前の30%にまで落ち込んだ施設もあり、これら医療機関の死活問題にもなりかねなかった。
JMTDR登録者は10年以上前より訓練および20回以上に及ぶ国際災害派遣により、災害医療のノウハウを最も多くもっている組織として国際的に認知されている。JMTDRがもっと早く派遣されていればとの批判も聞かれるが、法律により国内は派遣対象になっていなかった事情もあり、登録者自身も悔しい思いをしていたのが実状だった。しかし500名の登録者のうち70名以上が現地の救助救急活動に携わり、残りの登録者の多くも何らかの救援活動を行ったとのことだ。今後とも訓練、準備、研究を積み重ねて常時即応できる国際医療チームとならんことを決意している。
被災発生後1週間以内は、医療ボランティアによる被災現場での応急処置がもっとも有効な期間である。だから、行政は、ボランティア活動支援対策として活動拠点、通信、輸送の確保のために、必要な規制緩和を時限立法で実施すべきである。加えて外傷、呼吸器感染症、ストレス性疾患に必要な器具と医薬品を補給すべきである。また、応急処置を越える重症者を受け入れる後方支援医療機関の確保が必要である。
被災後1週間以後は、慢性疾患が多くなるが、慢性疾患用の医薬品は高価なためボランティアで提供する場合には資金的に限界がある。だから、行政が保険制度と関連した形で慢性疾患の治療が可能となる体制を構築する必要がある。また、それとともに地元医療機関の診療機能の回復する必要がある。
2 パニック対応政策
経験者の養成が望まれる。例えば、海外の救援活動にも積極的に参加したり、すぐに実行できるように平時に訓練を繰り返しておくことが大切である。
3 医療ボランティア活動支援政策
緊急救援活動の3原則の支援、つまり、活動拠点、通信、輸送である。加えて、医療品の公的供給が望ましい。また、医療ボランティア自身に対する保険と医療事故に対する保険との2つの保障である。最後に資金の問題である。日赤以外にも義援金が配分されるシステムの再構築が必要である。
以上のほかにも広範囲な対策が必要なのが緊急救援医療である。しかし、限られた時間、空間、人的資源、社会資源の中で何を優先させるのかが、難しい課題である。これから緊急救援の方法論の確立を急ぐ必要があるだろう。
1995.1.17の兵庫県南部地震は、死者6千人、建築物の全半壊、焼20余万棟の未曾有の大災害をもたらした。これらの体験を基に、行政側の災害時医療コーディネイトのあり方を以下に検討する。
これらの対策としては、医療ボランティアの受付窓口を保健福祉局に統一し、事前に定めた派遣計画に基づいて救護所や保健所に派遣する。また医療ボランティア団体と、平常時から災害時の計画等について交流をはかる事が必要である。
震災後、断水の為、人工透析用の水が不足したが、給水車による定期的な供給と、市外、県外の透析医療機関へ転院により解決した。
2)患者給食
医療機関からの病院給食の支援要請に対し、岡山からのヘリコプター、陸路運搬で対応した。また、神戸市激甚被災地区71病院のうち、92%が援助物資を受け取っていた。これらの病院のうち備蓄食糧を持っていたのは31%にすぎなかった。
3)医薬品、医療材料
震災当日は購入あるいは大都市協定による支援の医薬品や医療材料が大量に到着したが、当初の薬品、特に感冒薬、抗生剤、精神安定剤、下剤、睡眠剤、解熱鎮痛剤はすぐに不足した。しかし、ほどなくして大量の支援医療品によって不足は解消されたが、集積スペースと在庫管理に苦労した。また、震災2週間目頃からは、胃潰瘍などの胃腸疾患、高血圧、心臓病、糖尿病等慢性疾患用の治療薬の需要が高まった。
保健所や医療機関での不足に対する対策としては事前に締結している医薬品卸業者へ調達を要請する流通備蓄の方法をとり、医療機関は少なくとも3日間分の備蓄が望まれる。また、医薬品の整理、在庫管理のために災害直後より、救護スタッフに薬剤師を加えるべきである。
4)医療スタッフ
医療機関からの医療ボランティアの派遣要請はほとんどなかった。これは医療機関が行政よりも関連大学、医師会、系列医療機関などから支援を仰いだ為であろう。震災から1週間で医師不足、看護婦不足を感じた医療機関は182病院のうち42%であったが実際の受け入れ人数は必要人数の数パーセントであった。これはスタッフの宿泊、食事、謝礼、チームワーク、過誤診療の心配等がネックになったものと考えられる。
市内の医療機関のほぼ半数が全半壊、焼となった。しかし被災地の医療機関は、施設、医療機器に損傷を受け、ライフラインの途絶、出勤職員の不足、食料、医薬品の窮乏等のハンディキャップを背負いながらも、調査回答107病院で震災後1週間でのべ5万人の外来診療、8千人の入院診療が行われ災害医療を実践していたことがわかる。
2)救護活動
神戸市の診療数は、4月30日迄で約28万人を数え、ピークは1月22日の9.800人であった。内訳は、感冒等呼吸器疾患(第一週:43%、第四週:69%、第八週:60%)熱傷、外傷(第一週:31%、第四週:15%、第八週:10%)消化器疾患(第一週:6%、第四週:4%、第八週:4%)、高血圧、心疾患、糖尿病等(第一週:5%、第四週:10%、第八週:14%)と言う変遷が見られた(Fig1)。知的、精神障害者がストレスにより不眠、徘徊などの症状を呈したり、心的外傷後症候群、ボランティアの精神障害また、齲歯、歯髄炎などのケースも見られた。従って、精神科、歯科救護も速やかに開始すべきである。なお、今後、全市共通のカルテも救護活動時の混乱を防ぐために必要である。
JMTDRの救護活動
二宮宣文、救急医学 19: 1713-1717, 1995(担当:陶山)【はじめに】
【経過】
1月31日 政府よりJICAに対しJMTDRの派遣要請(人道的)
2月4日〜2月20日 3班に別れて医療活動を行う【実施要領】
【診療統計】
【考察】
AMDAの活動
菅波 茂、救急医学 19: 1718-1722, 1995(担当:大幸)T. AMDAボランティアの動き
II. 第1次医療と第3次医療との連携
V. 私的医療機関の支援
IV. 緊急救援活動の原則
V. 緊急救援ボランティア3条件
〇寝袋と3日間分ぐらいの水と食料は自分で用意する必要がある。
〇自己の健康管理をしなければならない。Y. ボランティア保険
Z. 防災計画緊急医療体制への提言
災害時の医療コーディネイトについて
(坪井修平ほか、日本集団災害医療研究会誌 1: 36-45, 1996(担当:松山)T、医療ボランティアの受け入れと配置
II、医療用水、患者給食、医薬品等の確保と支援
V、医療・救護活動
IV、医療機関の立ち直りと救護体制の終息
V、情報の収集と伝達
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