阪神・淡路大震災後の1月17日から31日の約2週間に、六甲アイランド病院ではどのように患者を転院・転送したのかを、振り返り、今後の課題を考えてみる。
震災当日(1月17日)には約220例が入院していた。震災当日には、153例が外来を受診し、24例が入院となった。震災当日夜の電気復旧、人工池の水利用により、ある程度の血液検査、画像検査が翌日より可能となったが、水道、ガスが完全復旧する2月下旬まで、高度医療、大手術ができる状態ではなかった。そのような状況下、震災当日から1月31日までに182例が入院し、152例が退院した。
1)被災地内医療現場の混乱
2)情報網の混乱
3)転院・転送は被災地内に依存
4)ヘリコプター搬送の不慣れ
5)要請主義、認可主義による実行
民間ヘリの使用も地方自治体の許可が必要であり、手続きが煩雑であった。
上記以外にも多くの要因があり、これらが複雑に絡み合って転院・転送が遅れたと思われる。
大災害では、被災者である医療スタッフの肉体的、精神的疲労も避けられない。したがって、被災地外からあらゆる情報伝達手段を用いて、有効な医療情報を提供することは重要と思われる。
被災地外医療スタッフの応援は診療を手伝うより、被災地内医療状況を把握し、転院・転送が必要な患者をどこへ、どのように搬送するかを決定、実行するべきである。
ヘリ搬送は交通渋滞に巻き込まれない、搬送時間がきわめて短いなど、災害時にきわめて有用な搬送法である。ヘリコプター搬送を普及させるとともにヘリコプター搬送に関する不備な点を改善する。
空のまま帰還する救急車などをスムーズに利用できるシステムを作る。
病院船、海路搬送を前向きに考える。
旅客バスの救急バスへの、大型客船の病院船への転用、運用も考える。
(担当:日野)
11:00 警視庁から死者5人、東京消防庁から負傷者は約500人と発表
11:00すぎ 警視庁捜査1課長が毒物はサリンの可能性が高いと発表。それまで現場活動はアセトニトリルという情報のみによっていた。
14:00 警視庁、病院搬送者944人、死者6人と発表。
14:50 陸上自衛隊が毒物除去作業を開始。
15:00 警視庁、病院搬送患者3200人以上、うち死者6人と発表
3月22日現在、死者10人(その後12人に)、重体・重症53人、治療を受けた人は5500人を越えた。
2) 災害現場の特殊性
3) 災害発生の原因が不明
2) 現場における救護とトリアージ
3) 救出救護と二次災害の防止
A.スーパー長崎屋尼崎店火災
鵜飼 卓、事例から学ぶ災害医療、南江堂、東京、1995, pp 103-109 (担当:塚本)
発生年月日:1990年(平成2年)3月18日
現場は尼崎市南部の阪神尼崎駅の西方約600mの商店街の中に位置し、周囲
は商店で囲まれ、北側は6.6m幅の道路に、南側は5.1m幅のアーケードが
ある道路に面している。国道2号線からも近く、尼崎消防局からも約700mと
近い。出火の原因に関しては、放火という見方が強いが、犯人は検挙されておら
ず、迷宮入りのようである。
経 過
12:30頃
数分後
12時37分
12時41分
12時44分
12時48分
12時51分
15時31分:延焼阻止
2. 通報が遅れた
3. 避難行動が遅れた
4. 防火扉が閉まらなかった
5. フラッシュオーバー現象が生じた可能性が高い
6. 数呼吸で死にいたるほどの毒性の高いガスが発生した
いわゆる新建材や合成繊維が燃焼すると、一酸化炭素や炭酸ガスのほかに、
硝酸、青酸、塩酸、亜硝酸、アルデヒド、その他の有毒ガスが発生するとされて
いる。火災に伴う有毒ガス中毒はもっぱら一酸化炭素が注目されてきたが、空気
中の酸素濃度の低下による酸欠と青酸ガスによる中毒は、きわめて急速に意識障
害を起こさせるので、屋内火災に巻き込まれた被災者の重症化の原因あるいは死
因として重要である。十分な酸素化が必要なことは、一酸化炭素中毒も青酸中毒
も同様であるが、青酸中毒の特異的な解毒療法である亜硝酸・チオ硫酸療法は、
一酸化炭素中毒と合併している場合には最良の選択ではない可能性がある。
2. 安全設備が不十分であった−human error
スプリンクラーは大型小売店の場合、総床面積が6,000u以上の場合
に、法律的にその設置が義務づけられていたそうであるが、この設置基準をわず
かに下回る床面積だったので、法律違反ではなかったという。
多くの百貨店やスーパーマーケットなどがそうであるように、窓が少なく、
避難経路が必ずしも明確ではなく、バルコニーのような安全な退避場所がなかっ
たことも問題とされている。
(1)地震災害時の行動
2)震度4(中震:家屋の揺れが激しく、器物が倒れる)
b、夜間休日時
3)震度5(強震:壁に亀裂が入り、立っていられない)
b 、夜間休日時
4)震度6(烈震:家屋の倒壊、道路に亀裂が入る)
b 、夜間休日時
5)震度7(家屋の30%以上が倒壊する)
(2)非常勤務体制
災害医療を展開するにあたっては医師1名、看護婦2名、事務員1名の計4名を1チームとして行動する。それぞれのチームはトリアージ班、重傷班、中等症班、軽症班に別れ、所定の場所で責任をもって行動する。
災害時夜間は約50名のスタッフしかいないので病院周辺に住む職員は応援のため来院する。
(3)負傷者受け入れ体制
a、対策本部の設置と任務
b、人員構成
c、救護所の設置
d、備蓄
訓練のポイントは、災害時のトリアージとは何か、非常時の勤務体制とはどのようなものかを体得することである。当院においては約3ヶ月前から訓練計画を防災委員会で作成している。訓練日には2時間診療をストップし全員参加で行う。
1、災害設定
2、模擬患者
重症:3〜5名
3、トリアージ班
4、搬送班
5、救護班
6、訓練の流れ
(担当:梁)
現地に緊急出動した医療救護班の業務は多彩で、状況によっては被災県日赤支部(日赤災害対策本部)の機能を補完するため,災害医療の調整を担当する場合もある。
日赤の救護活動は,現地主導を原則とし,被災地支部の指示により病院から救護班が出動することとなるが,災害の状況に応じて近隣の支部が応援救護班を派遣したり,災害の規模が広域にわたる場合には,本社が全国的な応援体制の調整を行うこととされている。また緊急時には,病院長独自の判断で災害医療を開始し,事後に報告することが認許されている。
本社事務職員緊急派遣による被災県支部(現地災害対策本部)機能補完で,日赤救護班の系統的配置調整が円滑となる3日目頃まで,日赤救護班は「神戸市災害対策本部」の調整下に行動し,一部の班は独自に医療救護を展開する等災害医療に日赤独自の一貫性を欠いたことは止むを得ぬ状況下であったとはいえ,日頃の訓練が充分活用できぬ結果となった。
日赤は災害時,国の災害救護事業に協力するため,行政側の「災害対策本部」の協力要請すべてに応じて行動しなければならない。被災現地での協力要請に即応するためには,「現地日赤災害対策本部」が発災直後から機能していなければならない。外部支援が得られるPhase-1に現地到着する先陣は「医療救護班」のみでなく,「現地日赤災害対策本部」機能を補佐する「事務職支援班」を,緊急出動させる方策を早急に検討すべきである。
B.被災した神戸赤十字病院は,発災当日に,被災職員も含めて60% をこえる職員が緊急参集したが,病院損壊やライフライン途絶による診療機能低減の状況下で,各職員は集っまってくる膨大な数の患者治療に奔走し,患者収容スペースの確保や使い果たした医薬品の調達に苦慮する等,参集職員は交替者もなく,不眠不休の活動のため発災3 日目には極限状態となった。被災病院支援は,「被災現地災害対策本部」による集結救護班配置調整により初期の人力提供は可能であるものの,患者給食や水の供給,医薬品の補充や調達,参集職員の支援は初期から長期間に及ぶ対応を必要とする。
日赤本社では,兵庫県支部と協議し,4週間に亘り,全国日赤病院から拠点救護所への救護班計画的派遣と平行して,医療職,技師,薬剤師及び事務職員等を被災病院支援のため別途計画的派遣して病院機能の回復と維持に協力した。又,近傍の日赤病院からは2ケ月に及ぶ神戸赤十字病院全患者の給食と日用品提供が行われた。
C.今震災では,2 日目には200%近い入院数となった神戸赤十字病院からの後送患者は発災当日から開始されているが旧知の院長間の個人的話し合いで後送応否が合意されたことが多く,搬送には受入れ病院の救急車が使用された。
本来患者後送に際しては,報告された入院数や患者の症状により,受入れ病院の選定,患者配分や搬送手段確保等の配備を「現地災害対策本部」が担当すべきである。「災害対策本部」特に「災害医療調整担当者」の発災早期から機能発揮が強く望まれる。
他方後方病院では,多数の後送患者緊急収容による院内混乱が日常の計画診療維持の妨げとなることを懸念したためか,後送患者の早期収容タイミングが遅れたり,地域により,病院により,収客患者数に偏りがみられている。
後送患者緊急収容可能の病院にあっては,日頃より,災害時,現地医療の円滑進行に関する後方病院の意義を理解し,日常診療から災害医療への迅速な切り替えに関する計画の確定と,緊急収容訓練が反復実施されていることが望ましい。
表1、災害救護の内容
PSRSの質問項目は、情緒的反応と認知・行動的反応の2つに大きく分類される。159点満点で得点が高いほど心理的ストレスが強いことを示す。
情緒的反応の中では、抑鬱気分や不安、怒りの得点が高く、感情が圧迫され、憂鬱、悲観的な気分が強く、情緒的な不適応感
や不安定感が目立った。
認知・行動的反応の中では、心配、無気力、引きこもり、焦燥の得点が高く、焦りや心配があってやる気が起こらずに引きこもる傾向が強かった。しかし、自信喪失や不信の得点は低く、対人的なストレスや自分の能力についての悩みの関与は低いと思われた。
〇対処行動
自然災害後の心的危機をTyhurstは以下のように3段階に分け、時間(時期)と心理的現象を論じている。
今回の事例では病院搬入時は、1、の衝撃期であったが、心理検査をした受傷一週間後は2、の反動期に相当した。 身体治療後の退院時でも依然ストレス因子が解消されたわけでわなく、したがって高度のストレスから開放されたとは言い難く、今後3、のPTSDを引き起こさないように精神面でのフォローの必要性を痛切に感じる。
災害時の精神障害に対する治療に関しては、まず災害現場での簡単な支持的精神療法が効果的である。病院での治療は種々の身体愁訴に対する対症療法が第一であり、耐え難い疼痛や不眠、不安、悪夢にたいして鎮痛剤、睡眠導入薬などを投与することが必要である。さらに受傷後のできるだけ早い時期に、その苦しい思いを言語化させることが大切で、あわせて精神療法として、行動療法、集団療法の有効性が指摘されている。
災害時のストレスによる精神障害に関する報告は、欧米を中心に進められているが、わが国の精神面における災害研究は始まったばかりである。今後、救急災害医は心理学者や精神科医とともに精神面における検討を行い、災害時のcareとcureに生かしていく必要がある。
東京地下鉄サリン事件
千種弘章、事例から学ぶ災害医療、南江堂、東京、1995, pp 98-102概 要
場 所:地下鉄日比谷線、丸ノ内線、千代田線の車内および各駅構内
被 災 者:東京地下鉄電車の利用者および駅員など、死亡者12人、
重軽症者5500人以上経 過
災害の特徴
疾病構造の特徴
医療対策
大火災(デパート・ホテル)
発生場所 :尼崎市神田中通4丁目116番地、長崎屋尼崎店4階
被災者 :死者15人、負傷者6人
気象条件 :晴れ、気温11.9℃、湿度50%、南南西の風9m/s災害の概要
災害の特徴
疾病構造の特徴
本災害の教訓
病院災害計画と災害訓練
金田正樹、日本集団災害医療研究会誌 1: 15-9, 19961 病院災害計画
本部長:院長
医療支援班:事務長、看護部長、庶務課長
復旧班:工務要員
調達班:用度要員
記録班:医事要員
通信班:庶務要員II、訓練
中等症:20〜25名
軽症:15〜20名日本赤十字の組織と機能
河野正賢、日本集団災害医療研究会誌 1: 78-81, 1996I、日本赤十字社の機構
II、日赤救護の法的根拠
III、災害救護の内容
IV、阪神震災時の反省
V、検討すべき問題点
時間経過 社会的援護 医療援護 留意点
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Phase-0 実施不能 実施不能 総合災害対策本部の
(〜 ?時間) 迅速な対応が必要
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Phase-1 被災者の救助と避難 系統的救出医療 強大な機動力と
(〜 48時間) 人材の投入が必要
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Phase-2 被災者の援助(衣、食、住) 被災者の移送
(〜 14日間) 保険と防疫 初期集中治療 救護物資の輸送
被災地の保全と復旧 ライフラインの確保
復旧作業の推進
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Phase-3 被災者の福祉 後療法及び 適確な復興計画に基く
(〜 数ヶ月) 被災者の生活指導 更生医療 中長期的支援が必要
被災地の復興
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津波災害による負傷者のストレス分析
―心理学的ストレス評価と対処行動―
今泉 均ほか、日本救急医学会誌5: 655-62, 1994)対象と方法
結 果
考 察
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