全国のトップを切って東京都で採用決定
(救急医療ジャーナル 4(2): 62-3, 1996)
厚生省は、2月26日、トリアージ・タッグ(大災害の発生により多数の負傷者が同時に発生した際に、傷病の緊急度や程度に応じて搬送・治療の優先順位を判断するための識別表)の標準様式を発表。3月12日には、各都道府県の衛生分野の担当部局に対して、「トリアージ・タッグの標準化」についての通達を出した。
トリアージ・タッグは、同時に多数の負傷者が出た場合に、現場や収容医療機関において、混乱を避け迅速な医療活動を行うために使用される。しかしこれまでは、医師会、消防機関、日本赤十字社、自衛隊等で、それぞれ異なる様式・形式のものが使用されており、複数の機関が集まる大規模災害時には、取扱に混乱が生じることが少なくなかった。 そこで厚生省では、昨年4月より発足していた「阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する研究会」における検討課題の一つとして、「トリアージ・タッグの標準化」を取り上げ、意見の取りまとめを行った結果、今回の発表となった。 標準化の内容は、形状、寸法、紙質、複写用紙の枚数、モギリ式で、色の順番などについて、また「傷病者名」や「担当機関」などの共通的に記入すべき項目を設定している(下図)。
複写枚数は、災害現場用、搬送機関用、収容医療機関用の3枚つづりとなっており、タッグのメモ部分には、住所や氏名など傷病者の同定項目と、トリアージ実施者氏名、搬送機関名など担当機関の同定項目を記入するようになっている。また、治療の緊急度を示す色については、死亡群は黒色、重症群は赤色、中等症群は黄色、軽症は緑色の4色としている。タッグ3枚目の下部に、外側から緑、黄、赤、黒の順に色帯がついているので、その人の症状を示す色が一番下になるように切り取って用いる。
その他の部分は、タッグ制作主体の裁量部分となる。各地域で想定される災害に合わせた内容にする、医療機関で作成する場合には院内カルテとしても利用できるものにするなど、製作主体の実情に応じて作成する部分が必要であるために、このようなスタイルになったという。
裁量により追加する項目例としては、傷病者のバイタルサン、人体図等の傷病状況に関する記載、タッグ製作主体の名称、マークなどが挙げられている。
厚生省では、「この標準化は、トリアージ・タッグ作成の関係機関が参加している研究会において合意が得られたものであり、今後は各関係機関・各関係団体がこの標準化に基づいて、タッグの作成を進めていくことになる」としている。
同研究会の示した標準に基づく都道府県版の第一号として登場したのが、東京都のトリアージ・タッグである。東京都では、「東京都災害医療運営連絡会」においてトリアージ・タッグの統一について検討を続けてきたが、2月26日、関係機関において合意が成立したことを発表した。この統一に合意したのは、東京都、都内各区市町村、東京消防庁、警視庁、陸上自衛隊第一師団司令部、日本赤十字社東京都支部、東京都医師会の7機関である。
スタイルは、厚生省の様式をベースに、裁量部分に傷病名記入欄や人体図を記載したものとなっている。
東京都は3月末までに約10万部を印刷、4月には地区医師会や病院などの医療機関、警視庁、東京消防庁などの関係機関に配付する予定である。
@昨年の7月9日、わが国で初めてのインターネットにおける救急・災害医療情報のホームページが開設された。
@このホームページを開設したのは、愛媛大学医学部救急医学教室で、大災害時の情報伝達を目的としている。ホームページの名前は、Global Health Disaster Network (GHDNet)。アメリカのピッツバーグ大学から発信されている疾病、飢餓、人口問題等に関するホームページ・Global Health Network(GHNet)と提携し、とくに大災害に関する情報を集めている。
@内容は、1)過去の大災害の情報や、災害関連の研究機関やネットワーク、ボランティアに関する情報、学会情報等、2)救急・災害医療関係の文献および書籍のリスト、3)日本集団災害医療研究会の情報、4)全国の救急医療従事者のさまざまな情報(救急救命士会など)である。
@また将来、日本を含む東アジアにおいて大災害が発生した場合は、救難援助や復興に直接役立つ情報の発信および中継を行いたいとしている。
@現在のGHDNetへのアクセス数は、週120〜130件ということであるが、最近の急激なインターネットの普及を考えると、さらにその数は増加するものと思われる。居ながらにして世界の、そして最先端の情報が手に入る時代である。情報を集め、取捨選択していくことが求められる今、百聞は一見にしかず、一度アクセスしてみてはいかがだろうか。
〈連絡先〉
インターネットに救急・災害医療情報ホームページが誕生
(救急医療ジャーナル@4(2): 74, 1996)
〒791-02 愛媛県温泉郡重信町大字志津川
愛媛大学医学部救急医学教室
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〈URL〉http://hypnos.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/
災害医学 論文表題集(1996年)へ
gochi@hypnos.m.ehime-u.ac.jp
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