救護班を前進させ、医師1名、看護婦2名、調整員1名、救急車ドライバー1名を1個班として2個班、計10名が2台の救急車で出勤した。毛布や機材、照明用具なども運んだ。
着岸して乗り込み、「老人、患者はいないか」と呼びかけると、船員や避難民からどこにどんな人がいるといった答えが返ってきた。避難民が上陸している間にtriageを行い、救急車で病院に送るのか、臨時救護所で処置をするのか決定した。
海上自衛隊の艦は既に接岸前にtriageがほぼできており、救護班が乗り込んだ時には病人についての申し送りがされ、担架での搬送準備もできていた。
東京港における受け入れ時の扱い患者は72人(うち搬送34人)いた。
医療救護活動としては、都や赤十字からの派遣による診療室が各避難所に設けられた。帰島までの各施設への日赤救護班は25個班(医師28名、看護婦58名、調整員39名)計125名で、患者取り扱い数は775名、最後の3個班は大島帰島船への添乗看護であった。症状としては、不眠や風邪の流行、ストレスでの胃腸障害も多かった。大島老人ホームの寝たきり老人等68人は多摩医療センターなどに行っていたが、避難生活の間に4人が亡くなっている。またこれはどちらかと言えば行政の問題だが、患者発生の有無、入院患者の転送、老人、付き添いなどの情報伝達において大きな課題が残された。
島外避難の過程(図)
(担当:豊田)
8月1日 鹿児島県中部に1時間100mmを超す集中豪雨、崖崩れが各地に多発し、死者23人、多くの道路が交通不能となった。
8月6日 鹿児島市を中心とした集中豪雨(16~20時までの4時間で170mm以上、1日雨量259mm)により、吉野町崖崩れ、土石流の発生、鹿児島市内3河川氾濫、市街中心部水没、死者40人、行方不明者25人、国道3号線、10号線その他多くの交通路が寸断された。
8月9日 台風7号襲来、崖崩れで死者7人
9月3日 台風13号、薩摩半島南部に上陸、崖崩れで死者29人
2.連絡網、交通網の麻痺
3.崖崩れ、孤立した人々の救出
4.崖崩れなどで孤立した病院からの全患者の避難
5.船による患者の搬送、揺れる船からの上陸搬送、避難による混乱、どこの桟橋につくか不明
6.病院関係者が必ずしも患者とともに避難してきていないため混乱
7.トリアージタッグが切れた。スピーディーな見分けがつかなかった。
8.群衆整理の必要性
などがあげられている。
また病院が引っ越す形の救護が提示された災害でもあった。
この場合
1.持続治療を要する患者や、中断できない薬剤使用者への対応(降圧剤、ステロイド剤など)
2.血液透析や在宅治療患者への対応
3.治療先医療機関への確実な申し送り
など、問題点は非常に多い。
「水見舞いには水を」と言い伝えられているように、水害の人々のもっとも困るものは飲料水である。
現代の医療機関も、ライフライン(特に水)の中断は機能を麻痺させるに十分である。浸水や水没など、特に建物の地下への浸水は自家発電装置の使用不能、トイレの問題、医療資器材の使用不能に直接結びつく。
電気、水道、ガス、特に上・下水道の破壊は都市ばかりでなく、地方型水害としても致命的である。一方水害では交通路も断たれ孤立する。
鹿児島水害では二つの病院が巻き込まれ、入院患者の避難、鹿児島市の混乱、天文館通りの水没、その中で災害医療救護が行われたのである。
水害は、我々の身近でまた頻度の高い災害として考えておく必要があると思われる。
鹿児島市内の医療機関の被害状(8月8日現在)
┌───────┬────┬─────┐ │ │ 病院 │ 診療所 │ ├───────┼────┼─────┤ │ 浸水 │ 18 │ 29 │ ├───────┼────┼─────┤ │ 診療不能 │ 7 │ 10 │ ├───────┼────┼─────┤ │ 器具使用不能 │ 13 │ 12 │ ├───────┼────┼─────┤ │ 電話不通 │ 2 │ 119 │ ├───────┼────┼─────┤ │ 断水 │ 多数 │ 多数 │ └───────┴────┴─────┘
(担当:河原)
分子量は164で空気より重く、常温でガス化する。火災時には熱により分解して、塩素や塩化水素を発生する恐れがある。
クロルピクリンはヘモグロビンのSH基と反応して赤血球の酸素運搬能を低下させたり、また局所への刺激作用がある。
1) 災害発生場所から風下にかけて汚染区域を指定して、被災者をこの区域から速やかに待避させること。
2) 原因物質の特定
3) 中和
4) 汚染区域外へ救出された被災者に対して、救命処置などと平行して除染処置を行うこと。
5) これらの作業に携わる救助者は、自らの安全性の確保をすること。
6)原因となっている毒物に関する情報が速やかに伝達されること
(担当:石岡)
自衛消防隊の編成
災害時の病院敷地でのトリアージを考慮
院外より来院する患者に対する計画
排泄物の処理とその対策
(担当:森野)
1、 施設内災害医療システム
2、地域別または行政区域単位での災害医療システム
3、全国レベルでの災害医療システム
◯1981年までに48大都市に770病院、民間病院の参加ベット数が63,000床となった。
一方、民間においても全国レベルでの医療システムの必要性を認識しており、災害現場へ医療チームを派遣することのできる機関も兼ねあわせた災害医療システムの検討がはじまり、政府の関係機関を代表する医療プランナーの間で話し合いが行われ、最終的に全国災害医療システム(NDMS)の概念が誕生した。
◯1984年、現存するresourceを最大限活用することにより、経済的側面からも効率がいいと考えられたシステムが数年かけて作られ、これがNDMSの誕生をもたらした。
2、 被災地から負傷者を救出し、負傷者がケアを受けられるように目的地に搬送すること
3、 被災地から離れたところで、根本的治療・ケアが受けられるようにすること。
1、 150人の Clearing Stage Unit(CSU)の出動可能
2、 アメリカ全土にわたり10万床のベットの確保可能
表、DMATの構成
2、 DMATは現地の空港で患者受け入れ地域をつくるか、災害現場から少し離れれたところでDMAT駐在場所を設定。
3、 各地区または州の救急隊により救出され、first aidを受けて搬送されてきた負傷者をDMATがtriageし、負傷者受け入れ地区へ搬送する。
4、 負傷者受け入れ地区のDMATがもう1度これらの負傷者のtriageを行い、その上で参加病院へ患者を送る。
〇搬送:NDMSが長距離陸上輸送、または航空輸送をコーデイネイトする。
〇患者の状態についてはNDMSが定期的に報告を行い、退院・帰宅の方法は各病院のsocial serviceまたは指定の患者福祉機関により手配される。