【業界団体等関係者において対応計画を検討しておくことが望ましい事項】
【具体的な供給方法】
[別紙] 大規模災害時に需要が見込まれる医薬品等
[参考] 広域災害・救急医療情報システム
(厚生省健康政策局より資料提供)
こうしたことから,本検討会は災害対策の中心を担う都道府県の業務が円滑に実施されるよう,行政担当者,医師,薬剤師,有識者及び関係業界等医薬品等供給関係者により,今回の経験を踏まえ,災害時における医療救護に不可欠な医薬品等を如何に迅速に供給し,適切に患者に提供できるかという観点から医薬品等供給システムについて検討を重ねてきた。
本報告書は,阪神・淡路大震災クラスの大規模災害が発生した場合において対応すべき点を「災害に備えた事前の対策」と「災害発生後の対応」に分けてまとめたものであり,災害時の医療を支える関係各者に対して災害対策の提言を行うとともに,今回の経験を踏まえた具体的マニュアルの側面も有している。現実に大規模災害が発生した場合には必ずしもマニュアル通りに対策を講じ得るとは限らず,現場における弾力的な対応が望まれる所であるが,一方,災害が発生してから対応策を考えるのでは時すでに遅しということにもなりかねない。特に災害発生直後は相当の混乱が予想されるため,平時からネットワークを構築し,連携の取れる体制を確保しておくなどの対応が必要である。各都道府県におかれては地域の実情に即した医薬品等供給システムの構築に当たり,この報告書を参考にして業務計画の作成等に役立てていただきたい。また医療機関,薬剤師会,医薬品卸売業者,医薬品製造業者等関係者におかれてもこうした対策に関して積極的な支援をお願いしたい。
【医薬品等の供給に関する関係者の役割分担】
(具体的役割)
イ、厚生省薬務局
(具体的役割)
ウ、医薬品卸売業者
(具体的役割)
エ、薬剤師会
(具体的役割)
オ、医療機関
カ、医薬品製造業者
2、災害時に対応した関係者間のネットワークの構築について
こうしたネットワークを例として図示すると図1のようになる。
なお,このネットワークはあくまで一例であり,近隣都道府県との協力関係などもネットワーク構築の上で考慮されてよい。
都道府県においては,こうしたネットワークを構築するため関係者による協議の場を設けるなど普段から関係者間の連携・協力が図られるよう努めるものとする。
また,こうしたネットワークが災害時に上手く機能するためには,ネットワークを構成する関係者は対策チームを組織するなど各々の体制を整えるとともに,連絡窓口及び連絡先を明確化し,あわせて連絡すべき事項を定めておくことが望まし い。
【ネットワークの連絡窓口及び関係者の準備】
各都道府県においては,地域の実情に応じた災害時の情報収集体制,連絡体制を確立し,緊急時に迅速な対応がとれるように努める。このために,各都道府県においては,医療機関,医薬品卸売業者等の連絡先リストを作成するとともに,医薬品等の在庫状況,需給状況等の情報収集体制を整え,緊急時における医薬品供給体制の確立に努める。
また,医務担当部局との連携体制についても整えておく必要がある。
イ、医薬品卸売業者
卸売業者においては,各社内の緊急連絡体制を整備するとともに,医薬品卸協同組合が中心となって緊急時に備えた医薬品卸売業者間の協力体制を定め,医療機関と連携をとって被災時の医療機関の稼働状況,医薬品の需給状況を把握し,必要な医薬品等を迅速に供給する体制を整えておく必要がある。
ウ、医薬品製造業者
各製造業者は被災地内の卸売業者からの連絡,要請に迅速に対応するよう最大限の努力を払うものとする。
エ、薬剤師会
オ、厚生省
厚生省においては,広域的見地から被災地の外からの協力体制がとれるよう都道府県,日本医薬品卸業連合会,日本製薬団体連合会,日本薬剤師会,関係省庁及び省内関係部局との連絡体制を定めておく必要がある。
【連絡事項の明確化,簡略化】
なお,矢印は情報の流れを示しており,状況によっては受け手側が積極的に連絡を取る必要がある。
イ、各医薬品卸売業者→医薬品卸協同組合
ウ、医薬品卸協同組合→都道府県薬務担当課
エ、都道府県薬務担当課→医薬品卸協同組合
オ、都道府県薬務担当課→厚生省薬務局
カ、各薬局・薬店→都道府県薬剤師会
キ、都道府県薬務担当課→都道府県薬剤師会
ク、厚生省薬務局→日本薬剤師会
ケ、厚生省薬務局→日本製薬団体連合会
【通信手段の確保】
また,現在厚生省においては,災害時における医療関係の情報を伝達するための「広域災害・救急医療情報システム」を開発中であり,患者動向,医療機関の被害状況等の情報とあわせ,医薬品供給に関しても本システムを活用することにより,情報伝達の効率化を図ることも検討される必要がある。
3、事前の情報提供と防災訓練について
ア、災害時の連絡先等の周知
イ、災害用医薬品等集積所等の周知
【防災訓練の実施】
このため,関係者間のネットワークを通じた訓練並びに業界団体における情報伝達等の平時からの訓練を行うことが望ましい。
4、医薬品等の安定供給のための計画立案について
【計画に盛り込むべき事項】
災害時に必要になると考えられる医薬品等の品目は時系列に沿って概ね別紙のとおりであるが,更に季節的な要因,地域的な要因等も考慮する必要がある。また,被災に直接伴うものではないが,人工透析液や,糖尿病患者に対するインシュリンのような特定の医薬品等の確保についても配慮が必要である。更に,阪神・淡路大震災の経験に照らすと,避難所生活が長期化することに伴う被災者の不眠,不安定な精神状態等への配慮から,これに対応する医薬品の確保も必要である。
ウ、医薬品等の保管・管理体制について
エ、マンパワー及び交通手段の確保方策
このため,薬剤師の教育研修の場等を活用して災害時の対応等について認識を深めてもらうことも有効である。
(2) 医薬品等の搬送手段の確保
(3) 搬送等におけるマンパワーの確保
オ、 近隣自治体との連絡体制
【業界団体等関係者において対応計画を検討しておくことが望ましい事項】
イ、薬剤師会
ウ、日本製薬団体連合会
その他医薬品卸売業者,医薬品製造業者各社においてもそれぞれ内部の連絡体制,連絡窓口の選定等を平時から準備し,迅速な対応が可能なように努めることが望ましい。
大規模災害が発生した場合には,都道府県は被災状況に応じた方針を定め対応をとる必要がある。しかしながら今回の阪神・淡路大震災に見られたように,被災規模が大きいため情報が混乱し,かつ迅速な対応が必要な際は,方針を定めている時間的余裕が無いことも予想される。こうした医療体制に即した医薬品等供給の初動対応がいち早く行われるために,既述の役割分担に沿って関係者が次のような対応をとることとする。
ア、都道府県薬務担当課
イ、厚生省薬務局
ウ、医薬品卸売業者
エ、都道府県薬剤師会
2、被災地内における供給の確保について
さらに,救護所等が設置された場合における医薬品等の需要に対しては災害用の備蓄医薬品等,都道府県又は市町村が購入する医薬品等及び被災地外からの救援医薬品等を中心として,医薬品卸売業者等の協力も得つつ救護所等に対して供給することとする。
なお,今回の阪神・淡路大震災の際には被災地外からの救援医薬品等は都道府県薬務担当課の指示によりいったん医薬品集積所に集め,仕分け及び保管・管理の後,救護所,避難所等へ搬送したところである。こうした仕分け,保管・管理については,専門的知識を有する薬剤師あるいは医薬品卸売業者の協力を得ることが望ましい。
被災地内において想定される医薬品供給ルートを時系列に沿って図示すると図2及び図3のようになる。
【具体的な供給方法】
被災地の状況によって,臨機応変な対応が求められるが,阪神・淡路大震災の時を例に取ると以下のような対応を行うことが想定される。
ア、医療用医薬品
また,備蓄医薬品等や救援医薬品等を医療機関に搬送するための手段の確保について事前に十分検討しておく必要がある。
なお,医療チーム等が交替するに当たっては余剰医薬品等について後任の医療チームに説明の上引き継ぐか,あるいは持ち帰ることとし,医薬品等が放置されることのないよう留意する必要がある。
イ、一般用医薬品
(2) 避難所等への供給
3、被災地外からの供給について
【具体的方法】
ア、特別な医薬品等
イ、その他の医薬品等
(2) 手順
(3) 注意事項 供給する医薬品等は,被災地の状況に合わせ,出来るだけ使いやすいものとすることが望ましい。例えばディスポタイプの活用等利用者の利便を考えた供給が必要である。 また,今回の震災に照らした具体的な注意事項として以下のようなことにも配慮する必要がある。
4、医薬品等の仕分け・管理及び医薬品集積所について
また,集積所においては,医薬晶等の出入につき記録を取り,在庫管理を行う体制を確保する必要がある。
なお,阪神・淡路大震災の際には,集積所の医薬品等の品目が多種多様にわたったため,コンピューターを活用した在庫管理を行ったところである。
【医薬品集積所について】
医薬品集積所には,仕分け,配送のための一定のスペースが必要である。また,そのスペースは屋内であることが望ましいが,どうしても一時的に屋外に保管しなければならないような事態も予想されるので,ビニールシート等雨よけの手段確保も必要である。
医薬品の管埋においては冷暗所保存及び向精神薬等の管埋に注意する必要があり,このため冷蔵庫及び施錠可能なスペースの確保も必要である。集積所等においては,都道府県薬務担当課は,積みおろし作業等のためのマンパワーを確保する必要がある。また,キャスター,パレット等の積み降ろしのための道具を用意すると便利である。
5、 費用負担(災害救助法による支弁)について 阪神・淡路大震災においては,業界団体による無償援助により多大な医薬品等の提供がなされたところである。今後の災害に際しては,こうした善意に期待するばかりでなく,災害救助法の適用がなされた時点で速やかにその活用が図れるよう手続等を明確にしておく必要がある。
【災害救助法の費用の範囲】
また,避難所において必要な者に提供された一般用医薬品等についても災害救助法の費用の支弁対象として取り扱うことができる。 ただし,いずれの場合も費消されたものについてのみが災害救助法の費用の支弁の対象となることに留意する必要がある。
【費用の支弁請求手続について】 また,こうした手続を迅速に進めるために,医薬品等の発注,受け取りの記録を定型化しておくなどの工夫がなされることが望ましい。
(平成7年5月29日)
1 はじめに 本研究会は,阪神・淡路大地震の教訓を生かすため,上述の研究班の構成員に加え,新たに被災地の医療機関,医師会等の関係団体,建築,機器設備,情報通信,医薬品の専門家の参加を得て,班の名称を「阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する研究会」としたものである。
2 阪神・淡路大震災の教訓と今後の研究内容
本研究会では,今後この阪神・淡路大震災の教訓を生かし,被災地となった場合の観点と被災地への支援という観点から,下記の項目について検討していくこととしている。
また,災害には,大規模地震,火山噴火,風水害等の自然災害,航空機事故,列車事故,高速道路での大量玉突事故やトンネル内での追突火災事故,テロリズム活動等の人的災害があり,本研究会においては災害の種類別の対策も研究していく予定であるが,今般,本研究会は,主として震災対策として緊急に体制整備を図るべき事項を選ぴ出し,意見を取
りまとめたので,報告を行うものである。
3、緊急に整備する必要性のある事項 さらに,災害時における公衆回線の上述のネットワークでの優先使用,また,携帯電話,パソコン通信,防災無線,衛星通信等複数のフェイル・セイフ機構を持った情報伝達手段の確保が必要であるcなお,人工透析患者等一部の慢性疾患のような特定な医療が必要な疾患・患者に係る情報の問題についても今後検討していく必要がある。 また,地域の災害医療拠点病院の機能に加え,各都道府県に1か所ずつ,要員の訓練・研修機能を有し,緊急用の医療品等の備蓄を強化した基幹災害医療拠点病院の整備が必要である。 なお,これらの病院では,病院自身が被災した時においても医療を提供できるように,貯水
槽,白家発電装置等の整備,医薬品・医療用材料の備蓄,耐地震性能の強化等を図ることが必要である。 災害医療拠点病院の選定にあたっては,救命救急センターなどの救急医療を担っている医療機関の中から,選定するのが望ましい。 さらに,これらの都道府県レベルの災害医療拠点病院に加え,災害医療に関するより高度な知識と経験を有し,災害医療に関する高度な研修・研究機能,広域災害発生時に初期救急医療と情報収集を担う医療救護チームの派遣,重症患者受入れを行う,国立の災害医療センターが東日本及び西日本に必要である。 また,被災住民の健康管理のために,災害に備えた体制づくり,被災地の住民の生活・健康状態の把握,健康管理の具体的手法等を内容とする対応マニュアルの作成が必要である。 また,昭和56年に改正された建築基準法の新耐震基準以前に建設された病院施設に全壊または半壊したものがみられたことから,昭和56年以前の基準によって建設された病院の耐地震性能の診断を進めることが必要である。 次に,道路の被害や被災者の避難等で陸路が大混乱した場合には,空路,海路等の活用が期待され,特にへリコプターによる広域搬送は非常に有用と考えられる。 へリコプターは,現在いくつかの行政機関によって運用されているが,被災息者の搬送を一義的な任務としているものはなく,災害発生時には他の優先する任務を行うため,どのくらいのヘリコプターを,どのような手続で被災患者の搬送に使用できるかが予め予測できない現状にある。従って,災害時に救急医療用として優先的に使用出来るヘリコプターの整備と指揮系統の明確化,手続の簡素化,民間へリコプターの活用等へリコプター搬送システムの構築が必要である。 また,ヘリコプターによる広域搬送が災害時において活用されるためには,全国的規模において平時からのへリポートの確保に加え,例えば災害の拠点の近隣の公園やグランド等を災害
時における緊急へリポートとして選定しておく等により緊急ヘリポートの確保が必要である。 そのため,災害時の医療関係者の役割,トリアージ技術,災害時に多発する傷病の治療枝術等に関して,訓練・研修を実施し,災害医療の専門家の養成を図る必要があるとともに,医療関係職種の養成カリキュラムに災害医療・医学が盛り込まれることが望まれる。また,医療ボランティアの活用のため,災害時における窓口の確保等の検討が必要である。
[I]検討会の趣旨及び報告書の性格
[II]災害に備えた事前対策
(l,2参照)[III]大規模災害発生後の対応
震災時における医療対策に関する緊急提言
阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する研究会