第5章 生活衛生に係る対策-
第1節 遺体の火葬等(図7参照)
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第1 広域的な火葬に関する計画の実施への支援
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厚生省生活衛生局は,遺体の搬送及び
火葬の支援について,必要に応じ,被災
地の近隣都道府県に対し,被災都道府県
への協力を要請する。また,大規模搬送
が必要な場合には,被災都道府県と連携
を図りつつ,関係省庁に対し協力要請す
る。
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厚生省生活衛生局は,被災市町村によ
る迅速な火葬許可事務の実施が困難であ
ると認められる場合には,戸籍確認の事
後の実施等実態に応じた事務処理を行う
よう,市町村及び関係機関に周知する。
3被災都道府県は,あらかじめ整備され
た広域的な火葬に関する計画に基づき,
被災市町村と連携して,広域的な火葬の
実施を支援する。
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被災都道府県等は,多数の遺体の搬送
を円滑に行うため,葬祭業者との連携に
よる霊枢車等の確保,関係省庁等の協力
によるヘリコプターの活用等の措置を講
ずる。
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被災都道府県等は,遺体の保存及び円
滑な火葬の実施のため,民間事業者の協
力のもと十分な量のドライアイス,柩,
骨壷等を確保する。
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被災地の近隣都道府県は,被災都道府
県の広域的な火葬に関する計画の実施に
協力する。
第2 火葬データベースの活用
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厚生省生活衛生局は,被災都道府県,
社団法人日本環境斎苑協会等の協力を得
て,死亡者数,火葬場の被災状況,火葬
場の利用状況その他の広域的な火葬に必
要な最新の情報を収集し,火葬データ
ベースを通じて被災都道府県等に情報提
供を行う。
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被災都道府県は,広域的な観点から遺
体の円滑な火葬を支援するため,前項の
火葬データベースを活用する。
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被災地の近隣都道府県は,被災都道府
県に協力するに当たり,第1項の火葬
データベースを活用する。
第3 火葬相談窓口の設置
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被災市町村等は,速やかな火葬を要望
する遺族のため,必要に応じ,火葬相談
窓口を設置し,火葬場,遺体の搬送体制
等に関する適切な情報を提供することに
より,円滑な火葬の実施を支援する。
第2節 飲料水の確保
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第1 被災地の状況把握
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厚生省生活衛生局水道環境部は,発災
直後から,都道府県を通じて,水道施設
の被災状況,断水状況等について定期的
に情報収集を行う。
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第2 応急給水及び応急復旧
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被災水道事業者等は,地域防災計画及
びあらかじめ定めた行動指針に基づき,
応急給水及び応急復旧を実施する。
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被災水道事業者等は,応急給水及び応
急復旧の実施に必要な人員・資機材が不
足する場合には,相互応援協定等に基づ
き,都道府県を通じて,他の水道事業者
等に支援を要請する。
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被災都道府県は,地域防災計画及びあ
らかじめ定めた行動指針に基づき,都道
府県内の水道事業者等及び関係団体に対
して,広域的な支援を要請し,支援活動
の調整を行う。
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厚生省生活衛生局水道環境部は,被災
都道府県からの要請があった場合又は被
災状況から判断して必要と認める場合に
は,都道府県を通じて全国の水道事業者
に対し支援を要請し,調整等を行うとと
もに,現地に対策拠点を設置する。
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厚生省生活衛生局水道環境部は,防災
基本計画第2編第3章第2節第1項等の
規定に基づく水道施設の復旧に係る作業
許可手続の簡素化について,必要に応
じ,関係省庁に要請する。
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第3 被災者への情報伝達
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厚生省生活衛生局水道環境部,都道府
県及び水道事業者等は,被災者に対し,
掲示板,広報誌等の活用,報道機関の協
力,パソコンネットワーク・サービスの
活用により,水道施設の被災状況,二次
災害の危険性,応急給水及び応急復旧状
況,復旧予定時期,飲料水に関して保健
衛生上留意すべき項目等について的確な
情報提供を行う。
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第3節 廃棄物の処理
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第1 被災地の状況把握
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厚生省生活衛生局水道環境部は,発災
直後から,都道府県を通じて,施設の被
害状況,仮設便所の必要数,生活ごみの
発生量見込み,建物被害とがれきの発生
見込み等について情報収集を行う。
第2 災害による廃棄物の処理
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被災市町村は,地域防災計画に基づ
き,災害により生じた廃棄物の処理を適
正に行う。
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被災市町村は,廃棄物の収集・処理に
必要な人員・収集運搬車両が不足する場
合には,被災都道府県に対して支援を要
請する。
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被災都道府県は,都道府県内の市町村
及び関係団体に対して,広域的な支援を
要請し,支援活動の調整を行う。
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厚生省生活衛生局水道環境部は,被災
都道府県からの要請があった場合又は被
災状況から判断して必要と認める場合に
は,全国的な支援の要請等を行い,派遣
可能な人員・機材のりストを都道府県に
提供する。
また,被災都道府県が他の都道府県に
対して支援を要請する場合には,必要な
調整を行う。
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第3 仮設便所等のし尿処理
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被災市町村は,被災者の生活に支障が
生じることのないよう,し尿のくみ取り
を速やかに行うとともに,仮設便所の設
置をできる限り早期に完了する。なお,
仮設便所の設置に当たっては,障害者へ
の配慮を行う。
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被災市町村は,水道や下水道の復旧に
伴い水洗便所が使用可能になった場合に
は,仮設便所の撤去を速やかに進め,避
難所の衛生向上を図る。
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第4 生活ごみの処理
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被災市町村は,発災後の道路交通の
況などを勘案しつつ,遅くとも発災数
後には収集を開始し,一時的に大量に
生した生活ごみを早期に処理するよう
める。
第5 がれきの処理
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被災市町村は,危険なもの,通行上の
支障のあるもの等を優先的に収集・運搬
する。また,選別・保管・焼却のできる
仮置場の十分な確保を図るとともに,大
量のがれきの最終処分までの処理ルート
の確保を図る。
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応急活動後は,処理・処分の進歩状況
を踏まえ,がれきの破砕・分別を徹底
し,木材やコンクリート等のリサイクル
を図る。また,アスベスト等の有害な廃
棄物は,廃棄物の処理及び清掃に関する
法律(昭和45年法律第137号)等の規定
に従い,適正な処理を進める。
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第4節 食品衛生の確保
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第1 食中毒の未然防止
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被災都道府県(政令市及び特別区を含
む。次項及び第3項において同じ。)
は,食品衛生監視員を食品の流通拠点に
派遣し,食品の配送等における衛生確保
の状況を監視させ,必要に応じ指導を行
わせる。
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被災都道府県は,食品衛生監視員を避
難所筆に派遣し,食品の衛生的取扱い,
加熱調理,食用不適な食品の廃棄,器
具・容器等の消毒等について必要に応じ
指導を行わせる。
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被災都道府県は,食品関係営業施設の
実態調査を実施し,施設の構造,食品取
扱設備,給水等の点で衛生上著しく劣る
場合には,改善を指導する。
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被災地の食品衛生協会は,被災都道府
県(指定都市を含む。)と協力し,食品
関係営業施設に対し,加熱調理等,食品
の衛生的取扱いについて相談に応じ,指
導を行う。
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厚生省生活衛生局は,被災都道府県
(指定都市及び中核市を含む。)との連絡
体制を確保し,必要に応じ,近隣都道府
県等に対し衛生確保のための支援要請を
行う等必要な支援を行う。
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第2 食中毒発生時の役割分担
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食中毒患者が発生した場合,被災都道
府県(政令市及び特別区含む。)は,食
品衛生監視員に所要の検査等を行わせる
とともに,食中毒の原因食品,原因施設
を調査して,被害の拡大防止に努める。
また,政令市(指定都市及び中核市を除
く。)及び特別区にあっては,調査結果
につき,被災都道府県に報告する。
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被災都道府県(指定都市及び中核市を
含む。3において同じ。)は,食中毒被
害が拡大する懸念のある場合について
は,厚生省生活衛生局に報告する。
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厚生省生活衛生局は,食中毒の被害が
甚大で,被災都道府県のみでの処理が困
難であると認められる場合には,被災都
道府県の要請に基づき,近隣都道府県等
に支援要請を行う等被害拡大防止のため
の必要な支援を行う。
第6章 社会保険に係る対策-
第1節 災害対策本部及び災害対策支部の設置
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被害状況に応じて,必要と認められる場
合には,可及的速やかに社会保険庁に社会
保険災害対策本部を設置する。
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被災都道府県の保険主管課及び国民年金
主管課は,都道府県が定める防災計画等に
沿った対応を行うとともに,これと十分な
連携を図り,社会保険災害対策支部を設置
する。社会保険災害対策本部及び支部は,
相互に緊密な連携を図りながら,社会保険
業務の機能回復のための対策を実施する。
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第2節 緊急業務処理体制の整備
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社会保険災害対策本部は,社会保険業務
を円滑に実施するため,具体的な情報を収
集するとともに継続的に情報収集を行う。
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社会保険災害対策支部は,速やかに社会
保険業務復旧のため,庁舎及び職員の確保
を図る等の緊急業務処理体制を整備する。
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社会保険災害対策本部及び支部は,関係
機関との充分な連携を図り,被保険者証を
紛失した場合の保険医療機関への受診,支
払通知書等を紛失した場合の年金受給方法
等円滑な社会保険業務の実施に努める。
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厚生省保険局は,社会保険災害対策本部
及び被災都道府県とともに,健康保険組合
等の保険者,社会保険診療報酬支払基金及
び国民健康保険団体連合会と充分な連携を
図り,円滑な審査・支払体制の確保に努め
る。
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第3節 行政サービスの確保
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社会保険災害対策本部及び支部は,被災
地の被保険者及び年金受給者等に対して,
できる限りの行政サービスを確保するた
め,災害復旧対策として次に掲げる事項に
ついて,必要に応じて,弾力的かつ機動的
な対応を行う。
厚生省保険局は,国民健康保険及び組合
健康保険について,同様の措置を採ること
ができるよう,被災都道府県・市町村に対
し,指導・助言等を行う。
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医療保険関係
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医療保険における健康保険被保険者証再
交付業務などを迅速に処理するほか必要に
応じ,健康保険被保険者証の提示の手続き
の簡素化,一部負担金等の支払に係る特例
措置等について,厚生省保険局とともに,
関係団体への速やかな協力要請を行うなど
迅速に対応する。
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年金関係
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郵政省及び金融機関等と調整を行い,被
災地の年金受給者が確実に年金を受給でき
るように努める。
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船員保険関係
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船舶所有者の事業所等が被災したことに
より,休業し,報酬を受けることができな
い被保険者について,失業保険金の支給の
特例等の立法措置が行われる場合には厚生
省保険局とともに,運輸省との連絡調整を
図りつつ,必要な運用方針を疋める。
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保険料関係
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保険料に係る納期限の延長や,免除につ
いて,必要に応じ,措置を講ずる。
なお,健康保険等の保険料の免除につい
て,立法措置が行われる場合は,厚生省保
険局,年金局及び児童家庭局とともに速や
かに運用方針を定める。
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その他
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(1)各種届書の添付書類の簡素化を図るな
ど弾力的な運用に努める。
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(2)社会保険事務所が被災により機能が麻痺した場合においても,被保険者等への
迅速な対応が図られるよう,必要な職員
の派遣,社会保険事務所の機能を代行す
る等の対応に努める。
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(3)災害による特例措置の実施等につい
て,チラシ,ポスターの作成,政府広報
の活用,フリーダイヤルを設置するなど
により,被災地の被保険者及び年金受給
者に対し,的確な情報を提供する等サー
ビスの向上を図る。
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