神戸市中央保健所では、出勤できる職員が少なく、かつ援助物資の搬送など対策本部的な業務に追われ、保健所の本来業務の保健衛生医療の対応ができていないという状況だった。
中央保健所との協議の結果、医師2名・環境衛生技師1名・保健婦2名の計5名を保健衛生医療チ−ムとして編成し20日に神戸入りした。
2)避難所での保健衛生指導
インフルエンザの蔓延予防(うがい薬の配置・感染防止を目的とした病室の設置指導・喫煙環境のチェック)、トイレ、廃棄物の処理状況、手洗い状況、配給食品の管理などの指導を行なった。
3)中央保健所ニュ−スの発行
保健衛生や医療について必要な情報を避難者や住民に提供するため、保健所スタッフとともに中央保健所ニュ−スを作成し配布した。
1)中央保健所ニュ−スの発行
保健・医療情報、生活での留意点、環境衛生などを記事にして全避難所に配布し、3月末までに17号発行した。
2)宮本小学校を活動拠点として、次のような保健活動を行なった。
保健婦活動は1)避難所における巡回健康相談、2)仮設住宅の家庭訪問を中心に6月末まで継続する予定。
2)現場サイドの判断と実行
現場と本庁では災害時の認識の違いが大きいため、現場独自で判断・実行する体制や機能が望まれる。
3)災害時の保健所の役割
保健活動だけでなく、他から入った医療チ−ムや保健チ−ムをコ−ディネ−トする機関として保健所の役割は大きく、地元の医師会や病院との連絡調整や医療体制の復元など災害時の保健所の役割は大きい。
この資料は自分自身家を持ち家族を持つ被災者である、宝塚市在中の救急医の方(宝塚市健康センター所長)が、震災直後に行った医療活動の内容及び問題点について書かれたものである。
野戦病院と化した17日に比べ、18日目からは後片付けなどの際に生じた創傷の訴えが中心となり、救護所(仮設診療所)への移行を要求したがなかなか聞き入れて貰えなかった。19日午後になってようやく救護所が体育館に開設された。市の救護所の特徴は、入院する程でもないが点滴治療など数日の経過観察を必要とする患者に、入院に準じた医療を提供する機能をもつこと、24時間体制で各診療所へ医療を提供すること、トリアージの機能をもつことであった。
これとは別に、県が派遣した医師団による避難所での巡回診療が1月20日にスタートした。スタート当初は、県の救護所と市の救護所の間には連携や情報交換もなく、別々の医療活動を展開していた。著者らが「市と県の救護所・救護活動の連携と今後の救済活動を再検討すべきである」ことを何度も提言し、1月24日にやっと図のようなシステムが確立した。
本部と現場が密接に情報交換を行うことのできる、システムづくりが大切である。
パフォーマンス的な医療関係者もおり迷惑であった。
家が無事であったにもかかわらず避難所にたむろする若者のグループや、物資目当てのホームレスの人々などは迷惑であり、何とか対策が望まれる。
災害時救急医療:被災地域の社会構造のハード・ソフトともに損害を受け破壊されるため救急医療の流れがストップする。
救出救助・救急医療の需要と供給のバランスの不均衡
<災害発生時の行動優先順位>
・家庭にいるとき
・現場救護所(図1)
・現場救護所での医療
・災害現場救急医療の最大の目的 生存者数を最大にする。
・現場における救出救護をスムースに行うポイント
・患者搬送手順
・救出時医療
・救出時医療の方法
・部位・損傷別災害時応急処置の実際
1 災害間期(静止期)
この時期は災害予防策を講じ、発生時の被害を最小限に止めるように努める。実行可能な法律の整備を行なうのもこの時期である。
災害間期における準備には、計画、訓練、備蓄の3つが必要である。まず計画であるが、これはどこにどのような災害が発生する可能性があるか、自然災害においてどんな被害が生じやすいかを検討し、予防策を考えるとか、それが難しい場合には災害対策計画のなかで効果的な対処法を立案しておくことが肝要である。
訓練は、災害発生時の対処マニュアルの作成、改訂と実地訓練を行なう。特に定期的にマニュアルのチェックおよび実地訓練を行なっていないと、いざというときに役に立たないことが多い。3番目は備蓄である。災害発生時に利用可能な医療資源の所在を確認するとともに、その効率的な運用や補給路が途絶えた場合に備えての備蓄を行なっておく。地域内の診療施設と人員や専門性などの対処能力、機能分担、搬送手段や後送施設の確保、代替電源や代替水源、食料、医療品や医療材料の備蓄が大切である。
2 災害前期(切迫期)
現時点では難しいが、地震の予知や台風の大雨警報などを行なう時期に相当する。避難時期、場所、救援物資(種類、量など)に関する的確な情報伝達が必要とされる。
3 災害発生期(インパクト期=緊急期)
予想される早期の災害者に対する1)捜索、救助、救援活動(treatment)、2)患者の選別(triage)、3)生存者の病院搬送、後方病院への転送(transportation)の、いわゆる3Tsの時期をいう。この3Tsをいかに迅速かつ的確に行なうかが重要で、これにすみやかに対応できる医療従事者を育成する災害医学教育が、最近の大災害の多発によって叫ばれている。
一般にこの災害発生期は、外部からの救援がワンポイント遅れるため、被災者の自助、被災者同志の互助、ついで外部からの援助を得ることとなる。3Tsのうちtriageという語は、もともとコーヒー豆を選別することを意味するが、災害においては患者の重傷度と治療優先度を決めることである。このことで現在の医療能力で最大多数を救出することを目的とする。しかしこのことは、助かる見込みのない被災者を切り捨てることになり、日本で当てはめると倫理的な葛藤が残る。
4 救助期
災害が起こってから災害救護の行なわれるまでの時間をいかに短くするかが救助のポイントである。普通は道路が寸断され、通信は途絶している。そのため今後は、救急ヘリコプターの活用を積極的に考えていかねばならない。
5 復興期
災害者の安定した自立生活のための支援、ライフライン(電気、水道、電話、LPガスなど)の復旧をはじめとする。あらゆる復興活動が行なわれる。この時期は被災住民の精神衛生を含む保健衛生問題の解決、治安の維持が課題となる時期である。
関東地方に再び大地震が起こることが予想されている現在、自分の地域は安全という保障はなく、この災害医療サイクルを学び、被害の減少に努めなければならない。阪神・淡路大震災時における保健医療活動
加藤晴実、公衆衛生 59: 477, 1995(担当:稲倉)1。救護所の設置と活動
2。問題点
3。まとめ
救助期
二宮宣文、エマージェンシー・ナーシング 新春増刊 69, 1996
(担当:中浜)
はじめに
→ 被災者自らの救出救助の必要性1.救出救助現場における多数患者の取り扱い
→ 負傷者,死傷者数の増加で認識できてくる
1)家族を助ける 2)隣人を助ける 3)地域を助ける
・現場へ最初に到着した救援救急隊のスタッフ2.現場救護所での活動
あくまでも救急病院への転送前の応急処置である。
1) 中等症,重症患者のバイタルサインチェック 2)止血処置
2) 開放創の処置(消毒,ガーゼなど) 4)骨折のシーネ固定
5)ショックの患者に対する輸液
1) 重要な情報は反復して言え 2)重要事項は警告トーンで話せ
3)ハンドスピーカーを使え 4)分担役割を決めて自分の役割に専念する
1) 患者搬送ポストの設定
2) Cattle Chute Technique(図2)を使う
乗車点では患者名,搬送先などを必ずチェック
3) 搬送車両は1列に並び交通の混乱を避ける
4) スムーズな患者搬送に配慮する
(患者搬送救急車両の通行道路は一方通行,通行車両制限)
5) ヘリコプターなどの航空機の使用
(ヘリポートは、安全で患者搬送ポストより遠くない所に設置)3. 救出現場での医療
救出救助活動の原則:安全,確実,迅速
救助の優先順位:要救助者の救命を優先
次に、救出,苦痛軽減,財産保全
救助スタッフの安全を損なう場所での救出作業は行わない。
安全の確認と安全の確保を行ってから。情動的な行動はしない。
短時間により多くの現場情報を収集し、2次災害に充分留意する。
<救出時に医療が必要となる場合>
まとめ
時系列別医療期―災害医療サイクル―
浅井康文ほか、エマージェンシー・ナーシング 新春増刊 59, 1996
(担当:吉村)
T1.災害の特徴
U2.災害医療サイクル
終わりに