愛媛大学医学部附属病院

病院防災マニュアル

(マニュアル策定のためのワーキンググループ・案)




目 次

 前書き

 I. 災害対策本部設置

  1.非常事態宣言
   1)宣言者
   2)非常事態を宣言する場合の基準
   3)非常事態宣言後の病院体制
   4)非常事態を宣言するまでの連絡体制と宣言後の周知徹底

  2. 災害対策本部の設置
   1)災害対策本部の人員構成
   2)設営場所
   3)災害対策本部の設営
   4)各班の業務内容

  3.非常事態宣言直後の指揮命令系統
   1)時間内緊急時における職員の配置・連絡体制
   2)時間外緊急時の職員の確保・連絡網の確立
   3)情報収集と発信

 II. 避難体制

  1.避難時の対処方法
   1)避難を指示する基準について
   2)避難判定の責任について
   3)避難場所について
   4)避難経路について
   5)避難誘導方法について
   6)非常持ち出し物品

  2.避難後の対処方法
   1)避難場所での患者確認
   2)病状、受傷状況などの確認
   3)避難後の最終確認

  3.避難待機時の対処方法
   1)待機を指示する基準について
   2)待機判定の責任について
   3)避難待機の具体策について

 III. 診療体制

  1.緊急外来患者に対して
   1)トリアージセンターの開設(受付業務を含む)
   2)傷病者の動線と患者の誘導について
   3)初療スペースについて
   4)患者等の一時収容スペースについて
   5)中央部門の診療体制
   6)他施設への患者転送ならびに他施設からの患者受け入れ
   7)ボランティアの診療現場への受け入れ
   8)ライフライン等途絶時の対策

  2.既入院患者に対する診療体制

 IV. 中央部門の防災マニュアル
  1.中央手術部
  2.薬剤部
  3.中央材料部
  4.栄養管理室

 V. ライフライン等と物的対応

  1.ライフライン途絶に対する対応
   1)管理部門による対応
   2)診療現場での対応

  2.物的対応
   1)医薬品
   2)医療材料
   3)医療機器
   4)医療ガス
   5)食料
   6)寝具、衣類、一般リネン
   7)その他

  3.通信に対する対応
   1)電話
   2)院内における緊急連絡体制
   3)その他

 VI.行政ならびに地域医療機関との連携

 VII.院外への医療救護班の派遣体制

  1.院外への医療救護班の派遣手続き
  2.院外へ医療救護班を派遣する基準
  3.医療救護班の編成
  4.救護班員の任務
  5.召集等
  6.備品

 VIII.その他

 IX.資料集

  1.各部署で用いるチェックリスト
  2.災害対策本部で用いるチェックリスト
  3.災害資料
  4.地域防災計画ならびに各種協定等(準備中)
  5.要望事項(ワーキンググループ案)



前書き


 「愛媛大学医学部附属病院・病院防災マニュアル(案)」は病院施設安全対策委員長の御下命のもとに、愛媛大学医学部附属病院・病院防災マニュアル策定ワーキンググループが作成したものです。

 本案は以下のような方針のもとに作成されました。

 1、 様々な種類の大規模災害のうち、まず大地震時の病院防災マニュアルを作成し、次年度以降に他の種類の災害に備えたマニュアルについて検討する。

 2、 愛媛大学医学部附属病院防災マニュアルと愛媛大学医学部防災マニュアルとの整合性については、愛媛大学医学部の関連委員会において調整を御願いする。

 3、 本マニュアル案においては災害対策本部の活動方針や病院全体に共通する取り決めを中心として定め、中央部門を含む各部署の災害時の活動指針については各部署それぞれにおいて策定していただく。

 なお当院の防災計画を推進するにあたって必要な事項につきましては、「要望事項(ワーキンググループ案)」として別紙のようにまとめておりますので、御検討のほどよろしくお願い申し上げます。

1998年5月

「愛媛大学医学部附属病院・病院防災マニュアル」
策定のためのワーキンググループ       
        救急部副部長 越智元郎
看護副部長  三瀬直子
管理係長   宮川和明


要望事項(ワーキンググループ案)

1. 購入物品

イ、 非常用格納物品(病棟)

  1. ヘッドライト         各セクション2個(計 40個)
  2. 懐中電灯付ラジオ       各セクション1台(計 17台)
  3. 非常用持ち出し袋(リュック型)各セクション5枚(計 75枚)

ロ、 非常用格納物品(災害対策本部)

  1. トランシーバー        各フロア1台+本部、救急外来など
                           (計 12台)
  2. 懐中電灯                本部用 5個
  3. 拡声器                 本部用 2個
  4. ヘルメット                   20個
  5. 作業衣(医療班派遣用)             10組

ロ、診療関係

  1. 担架(簡易なもの) 各セクション1台+外来玄関(計20台)
  2. 簡易搬送用具                  計45枚
  3. 酸素ボンベ、流量計 内科および麻酔科蘇生科外来(計2台)
  4. ポータブル便器                 計20個
  5. 大人用紙オムツ                 計20袋
  6. トリアージタッグ                計800枚

ハ、表示関係

  1. 腕章、タスキ                  計40枚
  2. 院内、構内用掲示板               計20枚
    (立入禁止場所、危険区域、避難場所、診療場所、本部など)

ニ、通信関連

  1. ポータブル衛星通信装置              1組
  2. アマチュア無線 送受信装置            1組

ホ、その他

  1. ボトル等の転倒防止ボックス(ボックストレイ)  計40個
  2. 簡易テント                   計4組

2. 設備関係

  1. 窓ガラスに飛散防止フィルム貼付
  2. 病棟浴槽に手すりを取り付け

3. 医学部防災マニュアルとの調整

 愛媛大学医学部防災マニュアルと附属病院防災マニュアルと間の整合性をはかる必要があり、関連委員会などで検討を御願い致します。また「愛媛大学医学部及び同附属病院消防計画」との調整も必要と考えられます。

4.ボランティア受け入れ体制の整備

  1. 非災害時における病院ボランティア受け入れの推進
  2. 同窓会員、学生などのボランティア登録
  3. 災害ボランティア団体やNGOなどとの事前打ち合わせ等

5. 常設小委員会などで防災計画を推進

 施設安全対策委員会内または独立した形で、災害対策小委員会を常設し、災害マニュアルの更新や防災訓練の立案・実施などを継続していただければ幸いと存じます。

6. 自治体、関連医療機関等との協議の推進

 温泉郡医師会、重信町など関係機関との協議のための窓口作り、災害協定の締結等。


p.1

【I.災害対策本部設置】


 本章においては、震度5弱以上の地震などの大規模災害時において、災害対策本部を設置するための手順とその構成、設置後の活動指針等について定める。なお発災から災害対策本部設置直後にかけての病院全体の動きについては、図1. 地震発生後の対応・フロ−チャート
に示す通り。

1.非常事態宣言

 大規模災害の発生に臨み、災害時の取り決めに沿って対処すべきことを宣言し、直ちに災害対策本部を設置する。

1)宣言者


イ.病院長(勤務時間内)

ロ. 病院長の業務代行者(勤務時間内)

 病院長が不在、または連絡が取れない場合は以下の職の者が代行する。

 1.事務部長、2.看護部長、3.病院施設安全対策委員長、4.事務部次長

ハ. 在院職員代表による仮宣言(時間外)

 勤務時間外において、病院長またはその代行者による非常事態宣言が行われるまでに、以下の職の者の判断により、非常事態の仮宣言を行い、災害対策本部の設置を求めることができる。

 1.事務当直者、2.救急部当直医師、3.夜勤婦長

2) 非常事態を宣言する場合の基準


イ.大規模災害等による病院建造物や施設の破損や倒壊などのために、院内の患者あるいは職員の安全が脅かされた場合

ロ.周辺地域などから多数の傷病者が来院あるいは搬入される恐れがある場合

ハ.その他、病院長またはその代行者が必要と認めた場合

3)非常事態宣言後の病院体制


イ、職員は自身の安全を確認後、あらかじめ定められた災害時の業務を実施する。

ロ、日常業務はできる限り縮小または中止する。

ハ、院外にいる職員は原則として、全員登院するものとする。

ニ、緊急患者を除き、外来患者の受付ならびに診療は中止する。

ホ、施行中の手術等はできるだけ速やかに終了し、新たな手術は緊急性の高い場合を除き開始しない。

ヘ、他の医療施設等からの患者受け入れ、当院から他院への患者転送、空床利用等は、原則として災害対策本部が統括して実施する。

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4) 非常事態を宣言するまでの連絡体制と宣言後の周知徹底


イ.大規模災害時等においては、附属病院庶務係員は病院長または代行者に病院内外からの災害情報を集約し、その意志決定を助ける。病院長不在時は平行して病院長へ連絡を取る。

ロ.非常事態の宣言がなされたことについては、直ちに院内放送により院内職員に周知徹底をはかる。停電等により院内放送が使用できない場合は、伝令による連絡網、垂れ幕などにより連絡を取る。同時に、あらかじめ決められた手順により院外職員の呼び出しを実施する(表1. 職員緊急呼び出しリスト)。


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表1、職員緊急呼び出しリスト(災害対策本部用)

(*印は医学部担当の責任者)

氏 名職 名災害時の
担当部署
内線自宅住所電話番号等
     医学部長*災害対策総本部長          
 附属病院長災害対策本部長   
 事務部長災害対策副本部長   
 看護部長災害対策副本部長   
 病院施設安全
対策委員長
災害対策副本部長   
 事務部次長災害対策副本部長   
 総務課長総務連絡班長   
 医事課長消火防火班長   
 管理課長避難誘導班長   
 救急部長救護班長   
 学務課長*搬出班長   
 医事課長補佐搬出班長   
 管理課長補佐警備班長   
 施設係長施設班長   
 第2用度係長用度班長   
 給食係長給食係長   
 薬剤部長薬剤班長   
 輸血部長輸血班長   
 検査部長検査班長   
 機器センター長*RI班長   
 放射線部長RI班長   
 病理部長検死班長   

各科科長をはじめとする各部署の職員緊急呼び出しリストは、部署単位で作成する。


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2. 災害対策本部の設置

1) 災害対策本部の人員構成(
表2. 災害対策編成組織と業務内容

2) 設営場所

 発災直後においては、外来棟医事課内に災害対策本部を設営する。被災状況によっては、事務当直室・職員食堂、または管理棟中会議室に本部を設置する。そして事態の収拾とともに、発災後24〜72時間をめどに、本部を管理棟中会議室に移すものとする。

 なお災害対策本部の設営は、総務連絡班が担当する。

3)災害対策本部の設営

イ、災害対策本部の設営のための必要備品リスト

長机 6、椅子 24、腕章、ヘルメット、懐中電灯、筆記具、被災状況チェックリスト、職員連絡先リスト、関連機関連絡先リスト、トリア−ジタッグ、電話機、携帯電話、無線機、拡声器、応急処置セット、院内掲示用ボード、カラーテープ、色付き模造紙など

4)各班の業務内容(表2. 災害対策編成組織と業務内容


p.6

表2. 災害対策編成組織と業務内容

(*印は医学部担当の責任者)

班・職名責任者副責任者
(代行者)
業務内容
災害対策本部医学部長*

附属病院長

事務部長総本部長ならびに本部長は災害対策の業務全体の統括を行う。なお総本部長は主に医学部、本部長は附属病院の業務を指揮するものとし、両者間でつねに連絡、調整を行うものとする。
看護部長
病院施設安全対策委員長
事務部次長
総務連絡班総務課長総務課長補佐 1.各班の要員の確保
2.職員の配置
3.各班の業務の調整
4.通信手段の確保
5.情報収集(災害情報,他の医療機関の受け入れ状況など)
6.病院内各部署への情報の伝達
7.医師、看護婦、学生ボランティアの受付、登録と配分
8.外部へのボランティアを希望する者の調整と支援
9.職員の安否の確認と、家族家屋等の被災状況の調査
10.他の班に属さない事務
副看護部長(総務担当)
消火防火班医事課長学務課長1.初期消火活動
2.二次災害の恐れのある施設について立ち入り禁止の処置と応急処置
3.各施設の巡回と保安
4.他の班の応援
管理課長補佐(施設担当)
避難誘導班管理課長副看護部長(教育担当) 1.入院・外来患者、その他の在院者の避難場所の確保、誘導
2.災害により負傷した在院者の救出
3.入院・外来患者の治療継続のための病棟・外来の管理、運用、環境整備
4.患者の院内搬送(入院患者の搬出、院外からの搬入)
5.他の班の応援
救護班救急部長集中治療部長1.災害時救急医療(トリア−ジ、応急処置など)

2.病棟及び外来診察室の管理、運用

3.手術室、ICUの運用

手術部長
副看護部長(業務担当)
搬出班学務課長*
医事課長補佐
収入係長重要物品、備品、患者記録などの搬出および保管
外来係長
入院係長
警備班管理課長補佐司計係長1.部外者の立入規制、混乱防止、搬出物品の保管及び盗難予防、公設消防隊及び関係者の誘導
2.病院内の保安
施設班施設係長管理係長1.ライフラインの復旧、確保
2.被害状況の把握
用度班第2用度係長第1用度係長1.物品の被害状況の把握
2.不足物資の把握
3.災害医療に必要な物品を優先して調達する
4.物資の調達と適正な配分
給食班給食係長 1.患者給食に必要な物品な物品の調達及び保管
2.食材の確保
3.炊き出し
薬剤班薬剤部長薬剤部副部長1.薬剤の調達と配備
2.救護班の薬剤業務の応援
輸血班輸血部長輸血部副部長1.血液製剤の調達と配備
2.輸血に必要な検査
細菌処理班検査部長検査部副部長細菌等による汚染の防止
RI班機器センター長*
放射線部長
放射線部副部長RIの測定、検出、防御、管理区域設定
検死班病理部長法医学助教授搬入患者等の検死

注)各班の人員については、原則として責任者または副責任者の所属部署の人員を充てる。余剰人員については災害大災本部の調整により、他の班の応援に当たる。


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3.非常事態宣言直後の指揮命令系統

1)時間内緊急時における職員の配置・連絡体制

イ、部署別:看護部,事務部,各中央部門,各診療科

ロ、救護班(表3. 救護班の構成

ハ、応援人員の配置

医学部教官(基礎系,看護学科)
医学部事務官
学生(医学科,看護学科)

2) 時間外緊急時の職員の確保・連絡網の確立

イ、災害対策本部設置のための緊急連絡網
表1.職員緊急呼び出しリスト

ロ、部署別:看護部,事務部,各中央部門,各診療科

ハ、応援人員確保のための連絡網配置

3) 情報収集と発信

 災害対策本部からの指示や命令の伝達と並行して、院内外からの災害情報の集約と発信、伝達を行うもので、総務連絡班が担当する。

イ、院内各部署からの被災状況の報告


1. 災害対策本部への報告

 発災後においては、各部署から災害時チェックリスト(資料集 p. 〜 p. )にもとづいた初期報告を受け、患者・職員の被災状況チェックリスト(資料集 p. 〜 p. )および施設・設備の被災状況チェックリスト(資料集 p. 〜 p. )を作成する。その後は原則として1日2回程の報告を行うものとする。但し避難実施、新たな被害など、大きな状況の変化があった後は臨時に報告を行う。

2. 院内職員への情報提示

 災害対策本部前に掲示板を設け、院内外の災害情報を職員のために掲示する。並行して印刷物による院内回覧および配布を行う。

ロ、病院周辺ならびに広域レベルでの被災,救援情報の収集


 報道情報、行政や周辺医療機関との通信で得た被災,救援情報を、イ-1およびイ-2と同様の手順で、災害対策本部長ならびに院内職員へ提示する。通信を確保すべき対外機関等のリストは(別表)に示す。

ハ、病院の被害状況等を対外的に報告・発信


 病院の損壊状況、入院患者や職員の安否、収容患者数・氏名などを対外的に発表する。情報伝達は院内掲示、関係機関への通報(電話、FAX)、インターネットによる通報・掲示などによって行う。


p.8

表3、救護班の構成

 
グループ名責任者所属メンバー応援要員備 考
救護班長救急部長   
トリアージ班集中治療部長
(西暦年度
 奇数)
手術部長
(西暦年度
 偶数)
救急部医師1名
麻酔科蘇生科医師1名
看護部副部長
看護部2名
外来係4名
麻酔科蘇生科
外来係
 
重症外来班

(赤タッグ)

第1外科科長
(西暦年度
 奇数)

第2外科科長
(西暦年度
 偶数)

救急部医師
集中治療部医師
外科各科医師
看護部6名
放射線部2名
薬剤部2名
検査部2名
外来係1名
入院係1名
外科系各科
内科系各科
看護学科教官
 
中等症外来班

(黄タッグ)

整形外科科長
(西暦年度
 奇数)

脳神経外科科長
(西暦年度
 偶数)

整形外科医師
脳神経外科医師
救急部医師
外科各科医師
看護部6名
放射線部1名
薬剤部1名
検査部1名
外来係1名
入院係1名
外科系各科
内科系各科
基礎医学教官
(形態系)
 
軽症外来班

(緑タッグ)

第2外科科長
(西暦年度
 奇数)

第1外科科長
(西暦年度
 偶数)

外科各科医師
内科系各科医師
看護部6名
放射線部1名
薬剤部1名
検査部1名
外来係1名
外科系各科
内科系各科
基礎医学教官
(機能系)
 
【検死班】

(黒タッグ)

検死班班長
(法医学教授)

法医学教室員
精神科医師
内科系各科医師
看護部2名
外科系各科
内科系各科
基礎医学教官
(形態系)
 
入院患者
救護班

第1内科科長
(西暦年度
 3の倍数)

第2内科科長
(西暦年度
 3の倍数+1)

第3内科科長
(西暦年度
 3の倍数+2)

内科各科医師
外科系各科医師
看護部6名
入院係2名
外科系各科
内科系各科
基礎医学教官
(機能系)
 

注1.各グループの責任者が不在または対応困難な場合は、同一教室の者が代行する。
(例、科長 → 副科長 → 診療医長 → 外来医長 → 病棟医長 → 医局長)

注2.救護班長が責任者、所属メンバー、応援要員等を指名する場合もある。


p.9

【II.避難体制】

 非常事態宣言の後、被災状況によっては災害対策本部などの判断で、患者を病院内外の安全な場所に退避させる必要がある。ここで「避難」とはその指示が出た後、できる限り速やかに、病院全体あるいは一部の部署の患者を安全な場所へ退避させることを指す。また「避難準備(待機)」とはその後に「避難」の指示が出た場合に、所定の場所への退避を直ちに開始できるように準備することをいう。なお、避難時あるいは待機時における受傷患者等への対応については「
III. 診療体制(p.15)」を参照。

1、避難時の対処方法

1)避難を指示する基準について


イ)避難を指示する基準

  1. 建物の損傷が著しく、天井に亀裂が入ったり、窓枠が歪んだ場合

  2. 火災、ガス漏れなどを来した場合

  3. その他、その場所にとどまることが危険と判断される場合


ロ)避難準備(待機)を指示する基準

  1. ある程度の建物の損壊が認められ、再調査によって避難が必要と判定されうる場合。余震などによって一層の損壊を来たす恐れがある場合。

  2. 火災やガス漏れの恐れがあり、安全性が未確認の場合。

  3. その他の原因により避難が必要となりうる場合

2)避難判定の責任について

イ、災害対策本部の判断、責任において避難を指示する。

ロ、病棟など現場の責任者の判断により避難を開始する場合もある。

3)避難場所について図2

 災害対策本部が避難場所を決定し、総務・連絡班が避難場所を設営、同時に対象部署の職員ならびに患者に連絡し、避難を開始させる。避難場所の候補は以下の通り。

イ、病院南東側の植え込み(愛信レストランの南側)
ロ、病院南西側の植え込み(医学部棟の南側)
ハ、運動場
ニ、体育館

4)避難経路について図2

イ、原則として、東西の非常用階段を使用し、エレベ−タ−は使用しない。

ロ、避難誘導班は避難が可能かどうかを確認し、避難経路を確保する。また避難経路の表示をする。

p.11

5)避難誘導方法について

イ、誘導要員の確保


  1. 避難誘導班が避難誘導を指揮する。

  2. 誘導要員が不足する場合は、総務・連絡班が要員の確保をする。

ロ、避難誘導時の留意点


  1. 原則としてエレベ−タ−は使用しない。

  2. ハンドマイク及び誘導旗で避難者を誘導する(夜間は懐中電灯を使用)。

  3. 独歩患者、護送患者、担送患者の順に避難を行い、グル−プ毎に担当者をつける

  4. 病院日直・当直者は、入院患者名簿を携帯する。

  5. 避難誘導班、医師及び看護婦は患者が落ち着いて行動できるように誘導する。また単独行動をとらないように指導する。

  6. 浴室、便所等に患者がいないことを確認する。

  7. 屋内に煙が発生した場合は、タオル等で鼻、口をふさぎ、低い姿勢で行動する。

  8. 避難の途中で患者が忘れ物に気付いても後戻りさせない。

  9. その他,状況を的確に判断して,弾力的な行動を行う。

ハ、避難誘導の具体的な方法


1)避難開始の時点で病棟内に救助を要する者がいる場合、直ちに災害対策本部に連絡をする。連絡を受けた総務連絡班が人員を確保して救助にあたる。

2)独歩患者、護送患者、担送患者の順に避難させる。

3)担送,特殊治療患者の対処方法

  1. チュ−ブ, カテ−テル類などはロック又は除去する。

  2. 中心静脈栄養(IVH)カテーテルや末梢静脈ラインは身体に近い所でヘパリンロックする。

  3. 人工呼吸器は除去し,アンブ−バック等に切替える。その際できるだけ吸入酸素濃度や終末呼気陽圧(PEEP)などを人工呼吸器接続中に近い条件で維持する。

  4. ラジウム針など使用中の患者は,タスキ等で明示し,避難後隔離する。

  5. 手術中の場合はできるだけ速く創部を閉鎖し、創部保護のもとに搬送・避難をする。

  6. 感染症患者や易感染者は避難後,隔離する。

  7. 保育器収容ベビ−は毛布,リネン等で包んで保温に努める。

p.12

6)非常持ち出し物品

イ)患者書類に関するもの

  1. 入院患者名簿(持ち出し担当:入院係または事務当直者)
  2. 病棟日誌(救急部日誌、ICU日誌、NICU日誌等も含む)
  3. 患者指示一覧(カーデックス)
  4. 手術台帳,分娩台帳
  5. 看護部管理日誌

ロ)治療に関するもの

  1. 薬剤は各科の特殊な薬品ですぐに使用するもの(救急薬品、特殊薬品)に限る(一般的な薬剤は、原則として薬剤部が対応する)。
  2. 蘇生、救急診療器材も必要最小限のものに限る(救命用具の配備は、原則として救急部が担当する)。


p.13

2.避難後の対処方法

1)避難場所での患者確認

 総務連絡班が避難場所において、各患者の氏名、所属病棟名などの確認をする(入院係又は事務当直者は入院患者名簿を持参する)。

2) 病状、受傷状況などの確認

 避難患者の中に緊急処置を要する者がいるかどうかを、病棟担当医と看護婦が確認する。

イ. 緊急処置を要する患者

  1. 原則として避難場所で処置を行う。

  2. 継続して治療を行う必要のある患者は入院患者の治療場所へ誘導する。入院患者の治療場所は体育館、福利会館、臨床講義棟などを候補とし、被災状況の確認ののちに災害対策本部で決定する。

  3. 必要に応じて、収容可能な近隣の医療施設へ搬送する
ロ. 処置不要の患者

  1. 避難場所で入院病棟ごとに待機し、対策本部からの指示を待つ。

3)避難後の確認

 病棟毎に患者の人数と病状、さらに退院または外泊可能か、継続治療を要するかを把握し、避難者名簿を作成する。病棟チェックリストをまとめ、災害対策本部へ提出する。


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3.避難準備(待機)時の対処方法

1)避難準備(待機)を指示する基準について

 待機とは直ちに避難を開始できる準備をして、災害対策本部または病棟責任者の指示を待つことである。待機を指示する基準については「避難を指示する基準について」(p.9)に示す。

2)待機判定の責任について

 避難判定の責任(p.9)に準ずる。

3)避難待機の具体策について

イ、避難路の確保

 避難誘導班ならびに各部署の職員は以下の準備をして、避難に備える。

  1. いつでも避難できるように避難路を整える。

  2. 避難経路の表示をする。

ロ、患者への対応

軽症者
a)避難準備をして、即、行動できるように態勢を整えておく。

b)状況に応じて、各病棟の非常口近くの病室に集合、待機する。

重症者
a)応急処置後、避難準備をして待機しておく。

b)状況に応じて、各病棟北側のナ−スステ−ションの近くに集める。

不在者
a)病棟内の全患者について他科受診、検査などの行き先を明確にしておく。

b)病棟が落ち着けば、探索に行く。

災害による受傷者
a)原則として、病棟内で処置をした後、避難に備える。

ハ、避難待機中の一般的留意事項


  1. 患者と在院職員等の安否の確認

  2. 病棟内の被災状況の把握

  3. 職員各自の安全確保

    a)頭部の保護
    b)破損物品や危険物等の整理整頓
    c)露出している電気コ−ド類に触らない

  4. 出火防止対策

    a)不要なコンセントを抜く
    b)ガスの元栓を閉める
    c)生命に危険を及ぼさない範囲で酸素を止める


p.15

【III.診療体制】

1.緊急外来患者に対して

1)トリアージセンターの開設(受付業務を含む)

イ、場所:外来正面玄関
(被災状況によっては災害対策本部の指示により、他の場所に開設する)

ロ、準備物品

机、椅子、「受付」の看板を設置する。拡声器、トランシバー、
トリアージタッグ、災害用カルテ、災害用患者リストなど。

図3.トリアージセンター及び周辺の配置図

1. 進入路(正門)   2.トリアージ・スペース(降車位置)
3. 赤タッグ患者受付
4. 黒タッグ患者受付(破線はトリアージ後の黒タッグ患者の搬送経路)
5. 黄タッグ患者受付  6.黄タッグ患者受付  7.緑タッグ患者受付
7. 黒タッグ患者搬送車両 停車位置
8. 赤タッグ患者の搬送経路  9. 一般車両の退出経路

p.16

ハ、人員と業務内容

職 種人 員業務内容
責任者集中治療部長
(西暦奇数年)
手術部長
(西暦偶数年)
トリアージ
医 師 救急部医師 1名
麻酔科蘇生科医師1名
(必要時は麻酔科蘇生科医師が応援)
トリアージ補助
緊急処置
患者搬送
看 護看護部副部長1名
看護婦(士)2名
トリアージ補助
緊急処置介助
患者搬送
事務官 外来係 4名

(必要時は医事課員が応援)

a)総務連絡班と共にトリアージセンターを設営

b)トリアージセンター前の通行制限と患者の誘導

c)患者受付

d)トリアージタッグ、災害用カルテの管理(事務欄を記載)

e)患者搬送・補助

2)傷病者の動線と患者の誘導について図3図4表4

イ)トリアージセンターまでの動線

 トリアージセンター前の道路は医学部正門から病院正門(西から東)への一方通行とし、患者専用駐車場への進入路は進入禁止とする。自動車で来院した患者はセンターの手前で降車させ、歩行または担走によりセンターへ向かわせる。救急車で搬送された患者は原則として車内でトリアージを行う。

ロ)トリアージセンターからの患者動線

 トリア−ジセンターから初療スペースへの患者の搬送・移動は原則として、各群の担当スタッフによって行う。


1. 最優先治療群(赤タッグ)

 最優先治療群と判定された患者には赤色タッグを付け、病院外東側通路を移動の主経路とし、車両または担架などにより初療スペースへ移動させる。この群では、氏名など最低限の患者情報のみをトリアージタッグに記録し、後に患者収容スペースにおいて受け付け手続きを完了する。状況によっては、トリアージ責任者の指示により病院内経路を併用し、ストレッチャーまたは担架などによって初療スペースへ移動させることもある。

2. 死亡患者および不処置群(黒タッグ)

 死亡患者または不処置群と判定された患者は黒タッグを付け、研究棟西側通路を移動の主経路とし、車両などにより収容スペースへ移動させる。

3. 他の患者は担架、自力歩行などにより、外来入口経由で初療スペースへ移動させ る。

p.17

3)初療スペースについて(図5、表4

 原則として以下を各重症度の患者の初療スペースとし、変更が必要な場合は総務連絡班が関係職員に速やかに通知し、臨時治療スペースの設営にあたる。


イ、最優先治療群(赤タッグ)
救急外来、救急外来前通路、血管造影室など

ロ、非緊急治療群(黄タッグ)

整形外科外来並びに放射線科外来

ハ、軽処置群(緑色タッグ)

内科外来並びに麻酔科外来

注)外来棟2階の安全性が確認できた場合は、2階の各科外来も初療スペースとして適宜使用できる。

4)患者等の一時収容スペースについて(図5、表4

 原則として以下を各重症度の患者の一時収容スペースとし、変更が必要な場合は総務連絡班が関係職員に速やかに通知し、臨時収容スペースの設営にあたる。


イ、最優先治療群(赤タッグ)
理学療法室、血管造影室など

ロ、非緊急治療群(黄タッグ)

放射線科読影室、院内学級室など

ハ、軽処置群(緑色タッグ)

内科外来並びに麻酔科外来

ニ、死亡患者および不処置群(黒タッグ)

霊安室並びに病理解剖室周辺

注)外来棟2階の安全性が確認できた場合は、2階の各科外来も一時収容スペースとして適宜使用できる。

5)救護班の構成

 各初療スペース、一時収容スペースなどにおける救護活動は表3(p.8)または表3抜粋(p.18)に示す救護班によって行う。


p.18

表4、外来傷病者治療ならびに一時収容スペースについて

重症度トリアージセンター(TC)
からの経路
(搬送方法)
初療スペース一時収容スペース収容後の流れ
最優先治療群
(赤タッグ)
TC →
 病院東側通路 →
(車両または担架)
救急外来
救急外来前通路
血管造影室など
理学療法室
血管造影室など
中央手術部へ
・集中治療部へ入院
・一般病棟へ入院
・他院へ転送
非緊急治療群
(黄タッグ)
TC →
 外来入口 →
(担架、ストレッチャーなど)
整形外科外来
放射線科外来
放射線科読影室
院内学級室など
軽処置群
(緑色タッグ)
TC →
 外来入口 →
(歩行、車椅子など)
内科外来
麻酔科外来
内科外来
麻酔科外来
・帰宅
・一般病棟へ入院
・他院へ転送
死亡および不処置群
(黒タッグ)
TC →
 研究棟西側通路→
(車両など)
 霊安室
病理解剖室
・死亡帰宅
・公民館など

 注)外来棟2階の安全性が確認できた場合は、2階の各科外来も初療または一時収容スペースとして適宜使用できる。

p.19

表3抜粋、救護班の構成

グループ名責任者所属メンバー応援要員備 考
トリアージ班集中治療部長
(西暦年度
 奇数)
手術部長
(西暦年度
 偶数)
救急部医師1名
麻酔科蘇生科医師1名
看護部副部長
看護部2名
外来係4名
麻酔科蘇生科
外来係
 
重症外来班

(赤タッグ)

第1外科科長
(西暦年度
 奇数)

第2外科科長
(西暦年度
 偶数)

救急部医師
集中治療部医師
外科各科医師
看護部6名
放射線部2名
薬剤部2名
検査部2名
外来係1名
入院係1名
外科系各科
内科系各科
看護学科教官
 
中等症外来班

(黄タッグ)

整形外科科長
(西暦年度
 奇数)

脳神経外科科長
(西暦年度
 偶数)

整形外科医師
脳神経外科医師
救急部医師
外科各科医師
看護部6名
放射線部1名
薬剤部1名
検査部1名
外来係1名
入院係1名
外科系各科
内科系各科
基礎医学教官
(形態系)
 
軽症外来班

(緑タッグ)

第2外科科長
(西暦年度
 奇数)

第1外科科長
(西暦年度
 偶数)

外科各科医師
内科系各科医師
看護部6名
放射線部1名
薬剤部1名
検査部1名
外来係1名
外科系各科
内科系各科
基礎医学教官
(機能系)
 
【検死班】

(黒タッグ)

検死班班長
(法医学教授)

法医学教室員
精神科医師
内科系各科医師
看護部2名
外科系各科
内科系各科
基礎医学教官
(形態系)
 

p.22

5)中央部門の診療体制

救急部/集中治療部/中央手術部/中央放射線部/検査部/薬剤部/材料部

<各部門ごとに検討していただく>

6)他施設への患者転送ならびに他施設からの患者受け入れについて


イ)非常事態宣言後においては、他の医療施設等からの患者受け入れ、当院から他院への患者転送、空床利用等は原則として災害対策本部が統轄して実施する。

ロ)他施設への患者転送、他施設からの患者受け入れについては、県内の医師会や災害基幹病院と連絡を取る。遠隔の医療機関を含めて患者転送を考慮する場合は、国立大学病院相互支援協定にもとづき患者受け入れの依頼をする。

ハ)搬送手段や臨時ヘリポートの設置については別表を参照のこと。

7)ボランティアの診療現場への受け入れ

 総務連絡班が担当する。ボランティアの学外からの受け入れ、学外への派遣については愛媛県、重信町、国立大学病院相互支援協定にもとづく幹事大学などとも連絡を取り合う。


イ)学内ボランティア

  1. 学内の医師、看護婦(士)、学生ボランティア(医学科、看護学科、他学部)などの受付、登録と配分を行う。事前登録者のリストについては別表を参照。

  2. 学内ボランティアのうち、学外でのボランティア活動を希望する者の調整と支援

ロ)学外ボランティア

  1. 学外からの医師、看護婦(士)、学生ボランティアなどの受付、登録と配分を行う。事前事前登録者のリストについては別表を参照。

8)ライフライン等途絶時の対策

 「IV.ライフライン等と物的対応」(p.23)を参照


2.既入院患者に対する診療体制

II.避難体制、 2.避難後の対処方法(p.13)を参照。


p.23

【V.ライフライン等と物的対応】

1.ライフライン途絶に対する対応

1)管理部門による対応
表5

表5. 管理部門による対応

区分通常の供給源外部からの供給が停止した場合の対応

イ、上水

重信町からの給水と院内井戸水を混合して、上水として使用

受水槽  500トン 2基
高架水槽 50トン 2基

ロ. 中水

高架水槽 50トン 2基

ハ.防火水槽

地下タンク 40トン 3箇所


A.自家発電機が正常な場合

  1. 井戸水(看護婦宿舎南東庭)により約22トン/Hの給水が可能。

  2. 受水槽が破損していなければ、約700トンが残るものと思われる。優先順位を決め、節約してゆけば1日分は何とかまかなえる。


B.自家発電機が被害を受けた場合と配管が破損した場合には受水槽から高架水槽への揚水が停止する。

  1. 受水槽(エネルギ−センター東側)から給水

  2. 井戸水給水

どちらの場合でもトラックにポリタンクを乗せて配給する

電気
四国電力(株)より 6,600V 受電

A.自家発電機及びCVCF(注)が正常な場合は、非常用電源で対応する。

イ) 自家発電機が使用可能の場合

1,500 KVA (1,200 KW) で72時間程度送電できる。

燃料(重油)、冷却用水の確保が必要。

ロ)CVCFが使用可能な場合

150 KVA (120 KW) 10分間程度の送電、加えて50 KVA ( 40 KW) 10分間程度の送電が可能。

中央手術部、集中治療部及び各病棟の重症室に送電する。


B. 自家発電機及びCVCFが被害を受けた場合は、非常用電源による電力供給は不能となる。

ガス四国ガス燃料(株)より供給
配管等に損傷を受けた場合は、供給が停止される。

  1. ガスコンロと携帯ガスボンベを使用する。

  2. 停電でなければ可能な限り電力を熱源とする。


p.24

2)診療現場での対応
表6表7

表6.診療現場での対応(水)

項目対応方法
飲料水
<物的対応>5.食料を参照
患者が脱水状態にならないように注意する(特に小児と老人)。

医療用水
A.清拭

  1. 濡れタオルやウエットティッシュを利用する。
        → 電子レンジやホットボックスで暖めて使用

B.洗髪

  1. 洗髪車、ポットでお湯を沸かして使用する。
    → アルコ−ルなど消毒効果のあるものを使用

C.手指の消毒

  1. ウエットティッシュを使用する。

  2. ウエルパスなどアルコ−ル系の消毒薬で擦り込みのものを使用する。

  3. 手術室では、貯水・イソジンソープで手洗い後、ウエルパスなどで擦式消毒し、二重手袋をする。

D.手術、処置器械の消毒

  1. 血液や体液をペーパーで拭き取った後、マスキンWに5分間またはステリハイドに30分間浸漬し、蒸留水で洗い流す。

    → 器械の使用を最小限にする。減菌手袋や綿棒を用いて処置をする。必要に応じ、縫合、消毒、抜糸などのためのディスポーサブルセットを使用。

生活用水
A.トイレの処理

  1. 固形物(便)、液体(尿)、ペーパー類の3種類に分けて処理をする。
  2. 仮設トイレの早期依頼
  3. 断水をした場合は、汚物槽を必ず空にしておく
    → 固形物は新聞紙や紙おむつに包んで、汚物入れに捨てる。液体のみトイレに流す。

B. 吐物の処理

  1. ガーグルベースンにナイロン袋を敷き、そのまま汚物として捨てる。

C. 環境整備

  1. 上水からの漏水を溜めるておき、環境整備に利用。

D.食器類の洗浄

  1. 食器や箸、スプーンなどはティッシュペーパーやウエットティッシュで拭く。ディスポーサブルの食器に切り替えたり、ラップやアルミホイルを利用する。

E.その 他

  1. 浴槽には水を張っておく。
  2. 各部署で新聞紙をストックしておく。


p.25

表7、診療現場での対応(電気、ガス)

電気
A. 停電時に自家発電装置が使用できない場合

 人工呼吸中の患者など、停電によって生命を脅かされうる患者に集中的に対処をする。総務連絡班は集中治療部、中央手術部など重症患者の多い部署の対処状況を確認し、必要により応援を派遣する。
 → 表.具体的な対処法

B. 自家発電装置によって電力が供給されている場合

  1. 電力を要する機器の使用は、生命維持に必要な最低 限のものに限る。

  2. 使用中の機器については、電圧低下などによる誤作動がないかを確認する。

C. 防寒対策

  1. 使い捨てカイロ、毛布などにより保温をはかる。

  2. 湯を沸かすことができる場合は湯たんぽを使用。

ガス
 病院建造物の破損等が認められる場合は、ガス管の破損やガス漏れがないことが確認されるまでは、原則として配管からのガスは使用しない。


p.26

2.物的対応

 医薬品、医療材料、食料などについては、発災後48時間分の需要を念頭に備蓄をはかるものとする。

 1)医薬品

 <具体案については薬剤部などで検討していただく>

2)医療材料表8

イ、医療材料は初療スペースに集中的に配備する。その集積場所は救急外来(赤タッグ)、整形外科外来(黄タッグ)および内科外来(緑タッグ)とする。

ロ、中央材料部や院内各部署から初療スペースへの器材等の移送は、総務連絡班が担当する。

ハ、不足器材は業者から至急取り寄せる。これについては用度班が担当する。

ニ、手術器械などはオートクレーブ、薬液消毒などによって回転を図る。停電、断水などにより消毒ができない場合はディスポーサブルの縫合セットなどを使用する。

ホ、日常診療で必要とする以外に病院全体で備蓄する医療材料については表9に示す。

 <具体案については中央材料部などで検討していただく>

3)医療機器

 発災当初に必要と考えられる医療機器は表10に示す通りである。これらも総務連絡班によって初療スペース、患者収容スペースならびに入院患者の避難場所に適正に配備する。

4)医療ガス表10表11

5)食料

 <具体案については給食係などで検討していただく>

6)寝具、衣類、一般リネン

 <具体案については第二用度係などで検討していただく>

7)その他


p.30

表10、医療ガス途絶への対応

項目通常の供給源外部からの供給が停止した場合の対応
液体酸素 松山酸素(株)より供給

満杯状態で2,970 L  1基

 1日の使用量 約200〜300L


  1. 配管設備等に損傷がない場合、タンク残量の供給が可能

  2. 現有の酸素ボンベで対応(予備ボンベ数45〜50本)

  3. 予備ボンベに頼らざるを得ない場合は、その使用は重篤な患者に限る。また総務連絡班により院内各部署に適正に配置する。

  4. 通常の予備ボンベの配備状況は表25に示す通り。


p.31

3.通信に対する対応

1)電話

 愛媛大学本部、文部省、国立大学病院災害時ネットワーク、愛媛県庁、重信町、松山保健所、所愛媛県立中央病院、愛媛県医師会、温泉郡医師会などと緊密な連絡を保つ。これらの機関の電話番号リスト(別表)は災害対策本部ならびに必要部署に常備する。

イ.電話が完全に不通になった場合


 衛星電話、携帯電話(個人用のものを転用)、消防無線(救急車搭載のものなど)、アマチュア無線(院内ボランティアの協力を要請)等を用いて災害対策本部から外部への連絡を行う。

ロ. 輻輳などのために電話がつながりにくい時

  1. 災害時有線電話回線(病院長用、総務課長用、管理課長用)を用いる

  2. 院内の公衆電話のうち、災害対策本部が指定したものは業務用電話として使用する。

  3. 衛星電話、携帯電話、消防無線などの利用についてはイ.に準ずる。

ハ.対外連絡用の補助的手段

 インターネット:災害対策本部のメールアドレスを用いて、対外的な連絡を 行う。また収容患者数などの対外的な情報は医学部ネットワークを通じ、ウェッブ情報として発信する。

2)院内における緊急連絡体制


イ.院内放送

 外部からの電気の供給が停止し、かつ自家発電機が被害を受けた場合は、非常用発電機を用いて院内放送を行う。

ロ.拡声器、トランシーバー

 避難連絡班は災害用拡声器ならびにトランシーバーを必要部署に配備する。

ハ.総務・連絡班による院内巡回と通報用フラッグ

 停電などのために院内放送が不可能になった場合は、総務・連絡班による院内巡回や通報用フラッグなどによって対処する。 。

3)その他


p.32

【VI. 行政ならびに地域医療機関との連携】

 大災害時においては、地域行政機関、医師会、地域の医療機関、医師会、国立大学病院災害時ネットワークなどと密接に連絡を取り、連携をはかるべきものとする(
表12)。

表12、大災害時に連携をはかるべき機関

分類機関名連絡先協定等備考
行政
機関
愛媛県
 交通課
 環境保健課
 1), 3) 
重信町 2), 3) 
医師
愛媛県医師会 3) 
温泉郡医師会  
医療
機関
愛媛県立中央病院
救命救急センター
  災害基幹病院
東予救命救急センター  地域の災害基幹病院
南予救命救急センター  同上
松山赤十字病院   
国立療養所愛媛病院   
徳島大学 4) 四国地区
幹事大学
香川医科大学  
高知医科大学  
大阪大学 中国・四国地区
幹事大学
岡山大学 同上 
副幹事大学
その
日赤愛媛県支部 1)  

協定等

1)愛媛県地域防災計画

2)重信町地域防災計画

3)災害時の医療救護に関する協定

4)災害時等における国立大学病院相互支援に関する協定


p.33

【VII. 院外への医療救護班の派遣体制】

1、院外への医療救護班の派遣手続き

 災害対策本部設置後は本部長の判断により、院外への医療救護班の派遣を決定する。災害対策本部が設置されていない場合は、病院長またはその代行者の責任で決定するものとする。

2、院外へ医療救護班を派遣する基準

 医療救護班の派遣は,次の各号の場合による。

イ、当院周辺地域における災害で重大と認めたとき
ロ、愛媛県内外における災害で重大と認めたとき
ハ、あらかじめ締結された協定などにより派遣を求められた場合
ニ、その他必要と認めたとき

3、医療救護班の編成

 医療救護班の1班当たりの編制は次のとおりとし、班長には事務職を当てるものとする。

イ、医師     若干人
ロ、薬剤師    若干人
ハ、看護婦    若干人
ニ、事務職員   若干人
ホ、自動車運転手 若干人
ヘ、その他必要とする者

 なおこれらの班員は、各診療科(部),薬剤部,看護部及び事務部等において医療救護のた めに,あらかじめ登録をしている別紙登録者名簿をもとに、災害対策本部長または病院長が委嘱する。このうち医師については外科系、内科系診療科を中心に選任する。

4、召集等

 医療救護班の召集及び出動は,災害対策本部長または病院長の命による。

 招集を受けた班員は、それぞれ分担の準備を整え管理棟入り口に集合し、出動命令があれば直ちに被災地に到達の上、救護にあたる。

6、備品

 医療救護班に医療救護のため常時,次の器具及び材料等を備えるほか,診療用薬 品,機械器具,衛生材料及び事務用品等については,別に準備する。

イ、標識旗         2
ロ、通信機器        6
ハ、ヘルメット       6
ニ、軽便担架(毛布を含む) 3
ホ、非常用袋(リュック)  6
ヘ、携帯電灯        6
ト、作業衣上下・手袋    6
チ、腕章          12
リ、その他救急セットで必要とするもの

 なお器具,材料等の保管は,管理課第2用度係において行う。また、医療救護班の事務は,総務課が担当するものとする。


p.34


【VIII. その他】









【IX. 資料集】





資料集・目次

1.各部署で用いるチェックリスト

2.災害対策本部で用いるチェックリスト

4.トリアージセンターで用いるチェックリスト

5.ボランティア受け入れ手続き

6.災害資料

7.地域防災計画ならびに各種協定等(準備中)

8.要望事項(ワーキンググループ案)