救急処置シミュレーションに関する論議

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【す】

Date: Sun, 25 Apr 1999 20:10:56 JST
From: Genro Ochi
Subject: [SEML:399] CPRの手順(消防のシミュレーション)

 安田@出雲消防さん、竹内@十和田消防さん、入江@鳥取西部消防さ
ん、小田@米子真誠会さん、皆様、愛媛大学の越智です。私が先に投稿
した "[SEML:388] CPRの手順" は、主にCPRの市民指導の観点から
書きました。救急隊員の活動、特に気道異物+心肺停止という状況で救
急隊員(複数の隊員が到着)がどのような手順で処置を行うかという皆
様の論議とは、多少食い違う点がございました。しかし私の結論は「ABC
を基本として、状況に応じて救急隊員による様々な応用が可」というも
ので、semlでの皆様のご意見とは大きく異なるものではない筈です。

 本メールでは、何回か言及されました消防本部や救急救命士養成学校
における救急業務シミュレーションについて、私見を書かせていただき
ます。まず昨秋、・・市で開催された「・・・・会」における救急業務
シミュレーションに関する私の意見(emlへの投稿原稿)を読んでいただ
けますと幸いです。

 この中で書きたかったのは、救急隊員(救急救命士)による2次救命
処置においては「早期の電気的除細動」を主眼におき、シミュレーショ
ンでもそれを可能とする技術や手順、連携などを磨いてほしいというこ
とです。その意味で、心肺停止例の前例に自発呼吸確認前に口腔内異物
確認をすること、バックマスク換気を開始したら補助者よって聴診器を
左右胸壁に当てさせ呼吸音を確認すること(その間まだ心マッサ−ジは
開始していない)などは、シミュレーションでもやめてほしいと思いま
す。

 私が・・・・会で見たのは、・・救命救急所のシミュレーションと全
く同じものということでした。・・でもほぼ同様に行われているとお聞
きしました。emlで・・救命救急所の教官からお聞きした所では、最近
シミュレーションの内容を変えているということです。この話題は、引
用メールにも名前が出てくる秋田市立病院の円山啓司先生や、救命救急
所の教官がおられる、emlの方でもアピールが必要ではないかと考えてい
ます。

              ☆ ☆

      Subject: [neweml: 04973] Re:愛媛救友会の 
      From: Genro Ochi 
      Date: Mon, 02 Nov 1998 01:54:07 +0900 

 おち@愛媛です。

(中略)

 この中で焦点となったのは「デモンストレーション:特定3
行為(・・消防)」でした。ちなみに救友会で演じられたデモ
は「・・救命所でやっているのとそっくり」であり、恐らくは
「・・救命所」でやっているのもほぼ同じであろうとのことで
す。それゆえ、・・・・会での問題ではなく、わが国の普遍的
な問題だとお考えいただければ幸いです。

・狭心症の既往歴のある老人男性がテレビを見ていて意識を失
 ったという119通報により高規格救急車が派遣される
・現場到着、現場に患者の息子が居るがCPRは実施していない。
 5分前に発症したと。
・意識確認、口腔内異物確認、呼吸と脈拍の同時確認(2人の
 隊員が)
・バックマスクで人工呼吸、他の隊員が片方ずつ聴診器で呼吸
 音聴取。呼吸音聴取が済んだら聴取をした隊員が心マ開始。
・蘇生開始1分後の自己心拍、自発呼吸の確認
・隊員の1人が心電図モニターの準備をしていたが、その波形
 の種類について特にチームに報告せず。
・喉頭鏡で口腔内確認
・バックマスクでの換気が十分でない(という設定)
・医師に電話、患者の病状報告、このときの心電図波形を(初
 めて?)目でみて医師に報告(設定では心静止)。医師から
 特定3項目のうち、ラリンジアルマスクエアウエイ挿入(の
 み)の了解を得る。
・医師の返事「・・のプロトコールに沿って実施しなさい」
・ラリンジアルマスク挿入
・輸液実施について医師の了承を得る。医師の返事「・・のプ
 ロトコールに沿って実施しなさい」
・末梢静脈路確保。家族が点滴を持つ。
・心電図波形が心室細動に変わったという想定。医師に除細動
 の了承を得る。医師の返事「・・のプロトコールに沿って実
 施しなさい」
・除細動実施
・現場を出発したのは到着後10分以上たっていた。家族はほと
 んど口をきかず、感情もみせず、静かに立っている。依頼を
 されて点滴を持つ。

○
 円山さんが・・・・会で指摘されたことと重なりますが、私
が思ったことを書きます。

* 救急活動の目標を心拍再開ではなく、社会復帰に置くとすれ
 ば、心室細動の早期検出と電気的除細動の早期実施を具体的
 な目標にすべし。そのためには

 1.callから現場到着、callから最初の心電図確認、callから
  電気的除細動実施(必要な場合)の3つの指標の短縮を目
  指せ。それぞれの所用時間を記録せよ。心電計/除細動器
  には時間的要素も記録できるように。

 2.現場に到着するまでにできるだけの病因予測を(通信官の
  協力)。外因による心肺停止(外傷、窒息、溺水)、内因
  性でも脳血管障害などでなく、心疾患による心肺停止が考
  えられる場合は特に、早期の心電図確認と除細動器実施を。

 3.上をかなえるためにはテキストのプロトコールやマニュア
  ルを超えて、柔軟に実施せよ(AHAにもどれ!)。虚血性
  心疾患が予想される例で、
  ・口腔内異物確認 → いらない
  ・バックマスク換気による両肺呼吸音を部下が確認 → 不要
  ・先にラリンジアルマスク挿入や気管内挿管 → 除細動が先
  ・救急救命士による病院外での輸液 → 薬剤が使えないの
           なら時間の無駄。搬送を急いでほしい。

 4.最初の心電図が心静止で、のちほど心室細動に変わる想定
  の訓練はやめたらどうでしょう。時間短縮の緊迫性がゆる
  む。現実にも心肺停止後、早い時間ほど心室細動の率が高
  く、またそのエネルギー(振幅)も大きいはず。

 5.1つの処置(特定行為)ごとに医師の許可を取るようにと、
  救急救命所などで教えるのはやめてほしい。医師の返事も
  一言でよい。

 6.市民への2次救命処置についての啓蒙も。119コールをする
  ことが、「心肺停止であれば特定行為が行われること」を
  前提とするような社会的合意を形成したい。救命士:「緊
  迫した状態であったのでご説明する時間を取れませんでし
  たが、責任医師の指示のもとに電気的除細動を実施しまし
  たので。。」、家族「有り難う。その処置のことは知って
  います」が理想ではないか。

  ちなみにほとんどの医師は「DNR(本人や家族の意思により
  あらかじめ蘇生を実施しないという指示が出ている場合)」
  を除き、救急外来での蘇生処置の前に家族から、電気的除
  細動や気管内挿管、気管内エピネフリン投与などの許可を
  得たことはない筈です。それは急ぐ処置だから、余りに当
  たり前のことだからです。しかも家族は患者さんから離さ
  れ、治療の場にはいませんし(家族の前で処置を行う救急
  救命士はこの点がシビアですね)。。

【せ】

Date: Sun, 25 Apr 1999 21:17:16 JST
From: "安田 康晴"
Subject: [SEML:401] RE: CPRの手順(消防のシミュレーション)

越智さん皆さん今晩は、安田@出雲消防です。

越智さんその通りです。私が常々言っているのは現場で使えない
訓練を何千回やっても時間の無駄、現場に則した訓練をせよです。
つまり何が必要で何が優先されるか、そこには患者だけでなく家族
関係者も存在することを忘れるなです。
実際の現場でCPA患者を前に「もしも〜し、呼びかけ反応なーし」
ってやられた日にゃもう勘弁してくれですよね。
しかしながら研修所の訓練は救急隊教育の最高峰であって全てが
バイブルとして受け継がれます。ですからこのバイブルを変えたい
この意見が九州研修所Hさんとの出会いでした。以後個人的に
現場救急活動について現状をメール交換しています。しかしシミュレ
ーションの時間が少な過ぎるとのことで、財団の研究助成で救急活動
のコンピューターシミュレーションのソフトを開発されその開発に私も
お手伝いすることになりました。(余談でスイマセン)
せっかくですがこの件emlでも論議しませんか。救急シンポジウムでの
想定シミュレーションをみていい加減にしてくれと思っているのは私だけ
ではないと思います。

出雲消防救命士・・さんどう思うかね。救命士なりたての君の意見を・・・

【そ】

Date: Sun, 25 Apr 1999 22:02:50 JST
From: "Y.Takeda"
Subject: [SEML:403] RE: CPRの手順(消防のシミュレーション)

越智さん、皆さん、こんばんは竹田@出雲消防です。

確かにCPRの基本は重要だと思います。しかし、市民指導に対するCPRの
基本と救急隊員が行なうCPRの基本とは必然的に違っていいと思います。
現在、救命士の研修所で行なわれているシミュレーションは、「もしも〜し」
「呼掛け反応無し」「痛み刺激、反応無し」「CPA、CPR実施」「口腔内
確認」・・・・等々、余りにも市民指導に対するCPRの基本と近過ぎるので
はないでしょうか?
我々、救急隊員はプロです。意識の有無は一目見れば分かります。いきなり脈
の確認し、そして無ければすぐにCPR、心電図の確認に行ってもいいのでは
ないでしょうか?(私はCPA患者の場合は気道確保、痛み刺激、脈の確認、
呼吸の確認を一人で一度に全部行ないます)
越智さんの言われるように早期徐細動、社会復帰を目標にし、そこから基本を
考えていくべきだと思います。
今後も沢山の人が救急救命士研修所を卒業してきます。できるだけ市民指導に
対する基本はもちろん、実践的なシミュレーションを行なってもらいたいし
現場で応用が利く救命士を育ててもらいたいですね。
救命士はCPA(心肺停止)患者だけでなく心肺機能停止患者を救わなければ
ならないのですから。

そうそう、一度semlで「我々のところの基本的CPR操法はこうだ」と提
示してもいいですね。

****************
竹田 豊   出雲消防署 東部分署

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