救急処置シミュレーションに関する論議

な〜の


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【な】

Date: Tue, 27 Apr 1999 00:28:55 JST
From: "Y.Takeda"
Subject: [SEML:421] RE:CPRの手順(消防のシミュレーション)(長文注意)

入江さん、皆さん、こんにちは竹田@出雲消防です。

> シミュレーションは私どもの時代には、出来たものは全く無く、症
 例の想定が与えられ、自分たちで動きを作りました。それぞれの基本
 的な取り扱いは教わりました。つまり、除細動の時は、離れて感電し
 ないようにとか、針は感染の危険が有るとか、それを聞いて、あとは
 自分たちの経験と知識で、動きを作っていったのです。そのビデオを
 もとに、また後で来られた主査(教官)のやり方などが合わさり出来
 たものでしょう。
  少なくとも、私たち救急救命中央研修所1期のときは、それぞれの
 症例の、隊長になった研修生が主になり、隊員役の研修生と打ち合わ
 せをして、シミュレーションをしました。決められたものではなかっ
 たのです。ただ、教授からのアドバイスと質問などは有りました。現
 在はどうなのでしょうか。

そういうシミュレーションがいいのではないでしょうか。色々と検討しより的
確に迅速にできるようになればいいと思います。
私が研修所に居た時には教官より「色々なやり方があると思うが、ここではこ
のやり方で統一してもらいたい」と言われました。
このやり方は教える側としては非常にやり易いとは思いますが、これではポン
プ操法です。(消防団の行なうポンプからホースの延ばし放水するという動作
を一つ一つの動きと言動が決められ、その正確性を争う競技の様なものです)
こういうシミュレーションは型にはまってしまい一つ一つの手技は大変いいん
ですが、全体では間が伸びてしまい無駄な動きが多く時間がかかってしまいま
す。


> 口腔内の確認とその呼称などは、まさに消防の操法なのですが。全
 く必要が無いのかと言うと、残念ながらあると思います。なぜ残念な
 のか、嘔吐物に気づかず、人工呼吸をし嘔吐物を気管の奥に押し込ん
 でも、全く気がつかない人もいるかもしれないからです。「まさか、
 そんな馬鹿な。」といった事まで考えて付け加えられたのでしょう。

日本のCPRの市民への指導は消防は口腔内確認を指導しますが、日赤、AH
Aの示すBLSでは口腔内の確認はありません。人工呼吸がうまくゆかなけれ
ば気道確保をやり直して人工呼吸をやり直す。それでもうまくいかなければ上
気道の異物がないか確かめる。です。
私の考えるシミュレーションはこのAHAに添えばいいのではないかなと思い
ます。
救急隊員でもCPA患者に対する口腔内の確認は「する」「しない」で二つに
分かれるでしょう。
私の場合は気道異物による窒息の疑いがある場合、嘔吐が外見から分かる場合
など以外は口腔内確認はせずいきなり人工呼吸に入ることが多いです。


広辞苑によると本来シミュレーションとは

シミュレーション【simulation】
物理的・生態的・社会的等のシステムの挙動を、これとほぼ同じ法則に支配さ
れる他のシステムまたはコンピューターの挙動によって、模擬すること。

となっています。
ということは、実際に現場でありえる想定を模擬してみること、すなわち現場
と同じようにする必要があるのではないでしょうか。
一つ一つの手技も重要なんですが、それを組み合わせた全体について見る必要
があると思います。(例えば搬送開始時間など)

シミュレーションの動きとしての理想は今でも脳裏に焼きついているんです
が、平成6年にあった神戸での救急隊員シンポジュームでパラメディックが
行なったシミュレーションです。(確か入江さんもいらっしゃいましたよね)
神戸消防局さんも同じ想定でシミュレーションを行なわれ、テキパキとした動
きで操法的には良かったんですが、流れからいうとパラメディックはゆっくり
やっているようですが無駄な動きが無く、現場到着から搬送までの時間はパラ
メディック8分、神戸消防局13分でした。(パラメディックは2人でやって
いたんですけどね)
こういう我々が見ても唸るようなシミュレーションを見てみたいものですね。

以上、長々失礼しました。
****************
竹田 豊   出雲消防署 東部分署

【に】

Date: Tue, 27 Apr 1999 08:34:09 JST
From: 入江 幸史 "Kousi Irie" 
Subject: [SEML:422] Re:CPRの手順(消防シミュレーション)

 おはようございます竹田さん、semlの皆さん。
 口腔内の確認についてです。私も、常に口腔の中を確認してはいないと思います。
曖昧な表現ですが。いちいち意識して口腔の中を確認しているわけではなく、無意識
に確認しているので。おそらく、竹田さんも無意識に観察されていると私は思うので
すが。しかし、無意識に確認する事が出来るようになる前の人には、動作と言葉で確
認しすることを、身につくまで行う必要が有るのではないでしょうか。

 確かに、消防ポンプ操法的に『周囲の状況よし。』などは、抵抗が有ります。これ
も、上記と同様な理由で意識を持たせるといった効果をねらっているのでしょう。し
かし、ただ口にだしているだけで全く周囲の安全を確かめていない隊長を見るとがっ
かりします。まあしかし、訓練会などで緊張して体が固まっているのかもしれません
が。

 境港消防署では、年に1度。済生会境港総合病院で、救急の訓練指導会を行ってい
ます。その席で、医師や看護婦の方から、操法的な言葉と動作について。「患者に威
圧的なのではないか。」とか、「そんなに時間をかけずに早く搬送しなさい。」など
の指摘が有り。実際に有った症例を用い、かなり実戦的な訓練を次の年に行ったとこ
ろ、好評でした。(完全に実戦だと、慣れたチームの訓練ほど、ほとんど無言で、な
にをしているのか、見学者にはわかりずらいものになる。)

 消防シミュレーションが理想の実戦だと勘違いしなければ、あれはあれでいいん
じゃないのかな。というのが私の意見です。

【ぬ】

Date: Tue, 27 Apr 1999 21:37:33 JST
From: "曽田 康司"
Subject: [SEML:425] シミュレーションについて

SEMLの皆さん はじめまして、曽田@出雲消防署です。
今後ともよろしくお願いします。

>越智さん皆さん今晩は、安田@出雲消防です。
>越智さんその通りです。私が常々言っているのは現場で使えない
>訓練を何千回やっても時間の無駄、現場に則した訓練をせよです。
>つまり何が必要で何が優先されるか、そこには患者だけでなく家族
>関係者も存在することを忘れるなです。
>実際の現場でCPA患者を前に「もしも〜し、呼びかけ反応なーし」
>ってやられた日にゃもう勘弁してくれですよね。
>しかしながら研修所の訓練は救急隊教育の最高峰であって全てが
>バイブルとして受け継がれます。ですからこのバイブルを変えたい
>この意見が九州研修所Hさんとの出会いでした。以後個人的に
>現場救急活動について現状をメール交換しています。しかしシミュレ
>ーションの時間が少な過ぎるとのことで、財団の研究助成で救急活動
>のコンピューターシミュレーションのソフトを開発されその開発に私も
>お手伝いすることになりました。(余談でスイマセン)
>せっかくですがこの件emlでも論議しませんか。救急シンポジウムでの
>想定シミュレーションをみていい加減にしてくれと思っているのは私だけ
>ではないと思います。
>出雲消防救命士曽田さんどう思うかね。救命士なりたての君の意見を・・・

 私は3年前より救急専従隊に任務しており半年前に救急救命研修
所を卒業しました。現在、シミュレーションについて思うことを書
きます。研修所ではシミュレーションを21回にわたり行なわれてい
ます。基礎である観察から特定3項目の手技まで様々な事を学び知
識を得る事が出来ました。そして夕方、各部屋のテレビに流される
手本となる教官のシミュレーションを何度も何度も繰り返し見て頭
にたたき込みました。

 ところが、実際現場に戻り救急活動をすると体が思うように動か
ない、他の隊員と流れが違う、あれほどシミュレーションの訓練を
したのになぜ?研修所でやっていた想定実習に基づいて救急活動し
ようとしますが、どうしてもうまくいかず肝心な患者さんが後手に
なってしまう。当分悩みました。ある日、思いました。今まで自分
でやってきたシミュレーションはすべて忘れよう。目に前にいるの
はダミーではなく患者なのだから・・。私自身反省するところで研
修中は患者のためでなく教授、教官に見てもらうためのシミュレー
ションをやっていました。大きな声で「〜よし。」、「機関員にあ
っては・・・」とハキハキ言い、マニュアルとおりする隊員が『優』、
そう思っていたのは私だけではなかったと思います。研修生からす
れば教官は手本であり、書いてあることはバイブルとして受けとめ
順応しやすい時期だと思います。一つ一つの手技は大変勉強になり
ました。しかし、想定実習は基本であり・・と言われてもそれの応
用が実践につながるとは思えません。結局、研修期間中のもので終
わったような気がします。

 私は消防吏員になり10年目で若輩者ですが4月より救急隊長で
出動することもあります。現場では患者さんだけでなく関係者、隊
員、機関員の行動も短時間で把握しなければならず正直難しいと実
感しています。そのためなるべく救急現場をイメージした実践的な
訓練をするように心がけています。『現場で動ける、患者さんのた
めの救急隊員。』を目指して頑張って行きたいと思います。

   乱文ですみませんでした。

【ね】

Date: Wed, 28 Apr 1999 12:42:31 JST
From: "小村正明"
Subject: [SEML:428] RE: シミュレーションについて(長文)

小田さん、越智さん、藤山さん、みなさんこんにちは 小村@松江消防です

救急隊員のシミュレーションですが、私も救命士の養成所で現在余り評判のよくない
シミュレーションをやりました。
たしかに救急の現場で全てが、役に立つかというと、疑問があります。やはり、シ
ミュレーションの基本は

越智さんが[SEML:399]の中で書かれたように
 →  救急活動の目標を心拍再開ではなく、社会復帰に置くとすれば、
    心室細動の早期検出と電気的除細動の早期実施を具体的な目標にすべし。

だと思います。しかし、

竹内@十和田消防さん[SEML:411]で書かれた
 →研修所での入校時のレベルはまちまちですので教える側としてはなかなか難しい
問題でしょうね。

と言うこともあります。そのためには、今のシミュレーションが全てだめとも言いき
れないのではないのでしょうか。
消防隊の訓練でも最初は、基本訓練から始まり次に個人訓練、そして部隊訓練、さら
に総合訓練とそのレベルを上げて行くのが一般的です。
救急隊でも同じだと思います。基本的な技術からマスターして徐々に現場に即応した
シミュレーションへとそのレベルを上げていくのがよいのではないでしょうか。その
途中経過として「周囲の状況よし」や「もしもし」があっても、その意味が2次災害の
防止や意識確認であると理解できればよいのではないでしょうか。
しかし、最終的には現場で使えるシミュレーションに到達しなければ、未完成のシ
ミュレーションを現場に持ち込むことになります。これが現在の状況ではないでしょ
うか。そのため多くの人が研修所のシミューションはだめとと思っているのだと思い
ます。
私個人的には、あのシミュレーションの中からいろいろのことを学んだことも事実で
す。
シミュレーションは、それを覚えることよりも考えることのほうが大切だと思いま
す。

シミュレーションの完成度を高めるためには[SEML:415]で竹田さんが提言されたよう
に、シミュレーションのプレテストがあってもよいと思います。
入所時のレベルをある程度で合わせておけば、より高レベルのシミュレーションが完
成されると思います。

【の】

Date: Wed, 28 Apr 1999 18:59:31 JST
From: "Y.Takeda"
Subject: [SEML:430] RE: シミュレーションについて

小村さん、入江さん、皆さんこんにちは竹田@出雲消防です。
越智さん消防のシミュレーションについて偉く盛り上がりましたね。
消防以外の皆さんには退屈な話題ですみません。・・・m(_ _)m

昨日のことですが・・地区の救命士の同期に電話することがあり、そこでの話
です。
彼は毎年、救命士の研修所の救急車同乗実習を見に行っているそうです。その
感想を聞きました。

「今、研修所でやっている救急車同乗実習(シミュレーション)我々がやって
いたころと全然違うぞ。」
「今では「もし、も〜し」もなくなったし、インフォームドコンセントもすご
く自然になった。」
「我々がやってきところとは違い、あわててないでゆっくりと患者を観察しな
がら処置をする。すごく現場に近い形になったぞ。」と言っておりました。
研修所でのシミュレーションもどんどん進歩し、我々が研修所でイメージして
いるシミュレーションとは違ってきているようです。

小村さんより
>消防隊の訓練でも最初は、基本訓練から始まり次に個人訓練、そし
 て部隊訓練、さらに総合訓練とそのレベルを上げて行くのが一般
 的です。救急隊でも同じだと思います。基本的な技術からマスタ
 ーして徐々に現場に即応したシミュレーションへとそのレベルを
 上げていくのがよいのではないでしょうか。その途中経過として
 「周囲の状況よし」や「もしもし」があっても、その意味が2次
 災害の防止や意識確認であると理解できればよいのではないでし
 ょうか。
 
 しかし、最終的には現場で使えるシミュレーションに到達しなけ
 れば、未完成のシミュレーションを現場に持ち込むことになりま
 す。これが現在の状況ではないでしょうか。そのため多くの人が
 研修所のシミューションはだめとと思っているのだと思います。

もちろん、初期の段階の訓練はあくまで基本手技、基本的行動だと思って
います。
しかし消防でも操法からいきなり現場には出ませんよね。消防でいう現場想定
訓練をしてから現場に出ます。
これと同じように救急でもシミュレーション=現場想定訓練をしてから現場に
出るはずです。そのシミュレーションが操法的過ぎるのではないかということ
です。これでは操法からいきなり現場の様なものではないでしょうか。
しかし、その研修所のシミュレーションも日々進歩しているようです。我々、
先輩救命士もいつまでも昔やったシミュレーションを追いかけていてはいけな
いのではないでしょうか。

入江さんより
> 境港消防署では、年に1度。済生会境港総合病院で、救急の訓
 練指導会を行っています。その席で、医師や看護婦の方から、操
 法的な言葉と動作について。「患者に威圧的なのではないか。」
 とか、「そんなに時間をかけずに早く搬送しなさい。」などの指
 摘が有り。実際に有った症例を用い、かなり実戦的な訓練を次の
 年に行ったところ、好評でした。(完全に実戦だと、慣れたチー
 ムの訓練ほど、ほとんど無言で、なにをしているのか、見学者に
 はわかりずらいものになる。)

消防人にとっては操法は教え易くキビキビ動いているように見えます。これも
消防の常識であっても医療関係者などから見ると常識? かもしれません。
私がいう現場に即応したシミュレーションは皆さんのところでも実際にやって
おられると思います。それを実際に展示することにより、それに対する指摘が
生きて来るのではないでしょうか。
いつもはやらない行動に対し指摘してもらっても意味がありません。見学者は
分かりづらくても手技をきちっとやりスムーズに流れればこれが一番のPRで
はないでしょうか。
例えばショックパンツのシミュレーションを現場で「右足加圧」「左足加圧」
というように操法的に10分かけるより、見ている人が分からなくても現場で
ショックパンツを履かせ、すぐ車内収容、搬送しながら両足加圧するなどしス
ムーズな流れで8分でやった方が、「そんなに時間をかけずに早く搬送しなさ
い。」という声も出ず一般の人には効果的だと思います。


> 消防シミュレーションが理想の実戦だと勘違いしなければ、あれ
 はあれでいいんじゃないのかな。というのが私の意見です。

ところが操法が我々のところでは現場で出てしまいます。これが怖いのです。
基本を追求して現場で時間がかかっては何にもなりません。普段から迅速な現
場活動を目指しシミュレーションし、そして進歩していかなければならないと
思います。

****************
竹田 豊   出雲消防署 東部分署

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