救急処置シミュレーションに関する論議

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【き】

Date: Sat, 24 Apr 1999 22:10:48 JST
From: Genro Ochi
Subject: [SEML:388] CPRの手順

 愛媛大学の越智です。

 さてCPRの手順の話題です。私は王道はABC(気道確保、人工呼
吸、心マッサ−ジ)であり、それを覆すためにはきちんとした研究成果
を蓄積する必要があると考えています。福井先生のCだけの蘇生やCA
Bの蘇生法のこともよく存じていますが、これを市民教育のレベルにま
で持ち込む場合には、混乱を招かないようなわかりやすい話し方が必要
だと思います。その根本は、以下の3点だと思います。

1.呼気吹込み式人工呼吸法への抵抗感から、心肺蘇生法を実施しない
  市民がたくさんいる。
2.心マッサ−ジだけでも、心停止直後で重要臓器の低酸素状態が進ん
  でいない段階ではかなりの蘇生効果が見込まれる。
3.人工呼吸がいやな人は心マッサ−ジだけでも施行してほしい。

*できるだけ蘇生効果の高い方法を学びたい市民には何を教えるか?
  → ABCです。American Heart Association でも、European
      Resusciation Council でも ILCORでもほぼ一致している世界標
   準から、山陰だけ眼をそむける手はないでしょう。勝手な亜流を
   教えられる市民が迷惑。

*酸素投与も気管内挿管も、すべての医療行為を行うことができる医療
 機関においてはどのような蘇生手順をとるか?

 ・適切な気道確保の上で十分な酸素化をはかる、これは当然。
 ・心マのストロークは 80回/分よりも、100回/分の方がより効果的か
  も知れません。しかし100回/分を 80/回にして、20/回の心マの分
  の時間を人工呼吸に充てる方がさらに有効。これが現在の ABCの考
  え方と思います。

*様々な状況で様々なひねりわざを考えるのは構わないと思います。但
 し基本の基本が何かを忘れることがあってはいけないと思います。

*気道内異物の除去法については American Heart Association では
 ハイムリック法の一点張りです。一方、ILCORは心マッサージと同様の
 前胸部圧迫を推奨しています。これは奇しくも鳥取西部消防の入江さ
 んが(多分ILCORを意識せずに)書かれたのと同じ方法です。出雲消防
 の竹田さんや私共の今回の気道内異物に関する調査は、ある意味では
 肉を食する欧米人と、米や餅を食べる日本人とでは、最適の異物除去
 法は異なるかも知れないということを客観的に示すことを目的にして
 います。

*以下、私共のホームページにある蘇生関係の資料をご紹介します。前
 半はCAB法を提唱している福井先生の資料、後半は蘇生法の統一を
 提唱している私共の資料です。皆様ぜひご参照下さい。

○
「圧すだけの蘇生」<気道確保と人工呼吸を行わない救急蘇生法の可能性>
福井道彦ほか:麻酔 第46巻第3号, 1997(5/21/97、eml 3515より)
http://ghd.uic.net/97/h524sose.html

「蘇生の優先順位はABCでよいのか?: CPR開始手順の最適化に向けて」
福井道彦 LiSA Vol.3 No.4(別刷), 1996年(5/21/97、eml 3515より)
http://ghd.uic.net/97/h525sose.html

○
わが国における心肺蘇生法 指導法の統一を望む
http://ghd.uic.net/98/ib20cpr.html

一次救命処置の指導法に関する疑問
http://ghd.uic.net/98/i914eml.html

【く】

Date: Sat, 24 Apr 1999 23:22:12 JST
From: "安田 康晴"
Subject: [SEML:389] RE: CPRの手順

越智さん今晩は、安田@出雲消防です。
越智さんの仰る通りです。これらABCはEBMに基づき確立されたもの
である事は十分承知しております。

越智さんwrote;
| さてCPRの手順の話題です。私は王道はABC(気道確保、人工呼
|吸、心マッサ−ジ)であり、それを覆すためにはきちんとした研究成果
|を蓄積する必要があると考えています。福井先生のCだけの蘇生やCA
|Bの蘇生法のこともよく存じていますが、これを市民教育のレベルにま
|で持ち込む場合には、混乱を招かないようなわかりやすい話し方が必要
|だと思います。その根本は、以下の3点だと思います。
|
|1.呼気吹込み式人工呼吸法への抵抗感から、心肺蘇生法を実施しない
|  市民がたくさんいる。
|2.心マッサ−ジだけでも、心停止直後で重要臓器の低酸素状態が進ん
|  でいない段階ではかなりの蘇生効果が見込まれる。
|3.人工呼吸がいやな人は心マッサ−ジだけでも施行してほしい。

蘇生法は限られた講習時間の中でいかに効果的に伝えるかがポイントある
ことは皆さん同じ考えであろうと思います。
さてダミーではうまくいってもいざという時にどれだけできるかですよね。
ABCを覆そうとは思っていませんしかし一般の方に100%の手技を求める
講習を行うことは救急隊員の教育以上時間をかける必要があると思いますが。
ですから心マだけでもして頂ければ何もしないよりいい、ただそれだけです。
講習時に心マは3.5〜5センチと細かく説明してもうまくできるでしょうか。
我々も実際行う時はそこまで考えて行っていません。強く、総頸動脈が触れる
までと・・・
また救急隊の活動でも同じです。搬送や活動環境によりABCとは行かない場
合もありますが常にABCしか頭になかった場合はA・BがなければCはしない
これでは困るわけです。救急隊の(研修所も)シミュレーションを見るといつにな
ったら心マするのと疑問を抱きます。
ABCを否定はしませんがDo or Don’tならどうゆう形でもDoでと考えま
す。


【け】

Date: Sun, 25 Apr 1999 00:43:21 JST
From: "真誠会"
Subject: [SEML:391] Re: CPRの手順

米子真誠会小田です。安田さん、入江さん、そして皆さん、こんにちは。

差出人 : 安田 康晴
|また救急隊の活動でも同じです。搬送や活動環境によりABCとは行かない場
|合もありますが常にABCしか頭になかった場合はA・BがなければCはしない
|これでは困るわけです。救急隊の(研修所も)シミュレーションを見るといつにな
|ったら心マするのと疑問を抱きます。
|ABCを否定はしませんがDo or Don’tならどうゆう形でもDoでと考えま
|す。

小田:ABがだめならCもだめではなく、ABが明らかにだめであるときにABの邪魔
にならない範囲と、タイミングではCを始める事は禁じられていないと思います。
しかしやはり人工呼吸が出来ない時点でのマッサージは効果が少ないのです。しな
いよりましというべきでしょう。
しかもCから始める蘇生の、蘇生率が統計的に有為の差が無ければ意味が無いので
す。もちろん中には例外的に成功する例はあると思います。むしろAB出来ない事
が多いのでもっとCから始める方法を一般化させるより、ABの早期確立のための
技術の習得が重要ではないでしょうか。なぜなら心マッサージよりは気道確保、正
確な人工呼吸の方がはるかに技術の習得が難しいのです。
気道が確保されず、心マッサージを開始された症例で、動脈血酸素濃度が本当に順
調に上がり、蘇生に成功されたのでしょうか。
入江さんの症例は蘇生できませんでした。そして例えその手技で成功しても、成功
の理由はほかに要素があるかもしれません。
Cから初めてもほぼ同じ蘇生率、あるいはそれ以上の蘇生立である事を、統計的に
証明して現在のガイドラインの基本を変えるためには今後また10年ぐらいデータの
分析が必要となります。でもそれは事実上終了している討議事項だと思っておりま
す。

 小田 貢

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