警察(自動車教習)の教育資料にも記載
17日の参院決算委員会で公明党の渡辺孝男氏は、日本における乳幼児の事故死亡率が欧米諸国に比べて高いことを踏まえ、幼い生命を一人でも多く救う観点から、乳幼児に適した救急蘇生法である「口対口鼻人工呼吸法」を広く国民に普及するよう訴えた。
「口対口鼻人工呼吸法」とは、乳幼児の口と鼻を大人の口で同時にふさいで行う人工呼吸法。大人の場合は口対口人工呼吸を行うが、乳児の場合は平時から鼻で呼吸しており、大人と違って口に息を吹き込んでも空気が入りにくい特徴がある。
口と鼻を同時に塞ぐことができれば、鼻から送り込んだ息が口から抜けるのを防ぐことができ、理想的な人工呼吸が可能になる。もし、口と鼻を同時に塞ぐことができない場合は、赤ちゃんの鼻全体を大人の口で覆(おお)う「口対鼻人工呼吸法」が有効。ポイントは顎(あご)の先をしっかりと上げることで、これにより赤ちゃんの気道が確保される上、口がふさがれることになるので、空気漏(も)れを防ぐことができる。
委員会で渡辺氏は「成人に対する救急蘇生法は学ぶ機会がそれなりにあるが、乳幼児に適した『口対口鼻人工呼吸法』や『口対鼻人工呼吸法』は、若いお母さんや保母に知られていない」と指摘し、さまざまな機会を通して啓蒙するよう主張。具体的に、1)自動車教習所の教習の中で教える、2)母子手帳の副読本などに図解入りで紹介し、若い父母に周知する、3)認可、無認可を問わず保育所の職員研修で取り入れる―の3点を強く要望した。
これに対して警察庁の玉造敏夫交通局長は、「乳幼児の交通事故増加の実態を踏まえ、乳幼児に対する救急蘇生法についても教育資料に盛り込むことを検討したい」と前向きに取り組む姿勢を示した。
また、宮下創平厚相は、母子手帳の副読本への紹介について「図解入りで情報提供することを検討し、実現してまいりたい」と明快に答弁。保育所職員への研修については、「『口対口鼻人工呼吸法』を含め、保育に携わる職員に対し、救急蘇生法の普及、啓発に努める」と答えた。
乳児への人工呼吸法 | |
1. あご先に人さし指を当て持ち上げる(あご先挙上法での気道確保)。 | |
2. 鼻の上部に一方の口角を当てる。 3. 鼻と口が覆えるように口を大きく開ける(口―口鼻人工呼吸)。 | |
4. 口と鼻が覆えなくても鼻だけは覆える(口―鼻人工呼吸)。 5. 息を吹き込む。 |