医療機関に来院する心肺機能停止に関する用語を下記の通り定める。
1. 医療機関外
○院外心肺機能停止(out-of-hospital cardiopulmonary arrest) =医療機関外で心機能,肺機能のいずれか,または両方が停止状態のもの。 この中には以下の5つの状態が含まれる。 イ.心肺蘇生法が行われず,心機能と肺機能のいずれもが停止状態 ロ.心肺蘇生法が行われず,心機能と肺機能のいずれかが停止状態 ハ.心肺蘇生法が現場,救急車,他の医療機関で行われたが,心肺機能停止 ニ.心肺蘇生法が行われたが,心または肺機能のいずれかが停止状態 ホ.心肺蘇生法が行われ,心および肺機能ともに機能している状態2. 医療機関内
○来院時心肺機能停止(cardiopulmonary arrest on arrival: CPAOA) =心肺蘇生法の有無にかかわらず,医療機関に来院時に心肺機能停止状態。 * 心肺機能停止の診断→ 以下の4項目による 意識消失 & 自発呼吸消失 & 頚動脈 or 上腕動脈拍動消失 & ECG上 心静止 or 心室細動 or 電導収縮解離 * 社会通念上 DOA (dead on arrival)を用いることがある。 ○来院時心機能停止(cardiac arrest on arrival) =心肺蘇生法の有無にかかわらず,医療機関に来院時に心機能停止状態。 * 心機能停止の診断→ 以下の2項目による 頚動脈 or 上腕動脈の拍動消失 & ECG上 心静止 or 心室細動 or 電導収縮解離 ○来院時肺機能停止(pulmonary arrest on arrival) * 肺機能停止の診断→自発呼吸の消失による ○来院直後心肺機能停止 (cardiopulmonary arrest immediately after arrival) =医療機関に来院直後に心,肺機能のいずれかまたは両方が停止 ○心機能停止(cardiac arrest)=来院時または来院直後に心機能停止 * 心機能停止の診断→ 以下の2項目による 頚動脈 or 上腕動脈の拍動消失 & ECG上 心静止 or 心室細動 or 電導収縮解離 ○心機能非停止(non-cardiac arrest) =来院時または来院直後に心機能停止を認めなかった * 心機能の確認→頚動脈か上腕動脈の拍動あり or ECG上 心静止,心室細動,電導収縮解離以外の波形 ○心拍再開(return of spontaneous circulation: ROSC) =来院後,心肺蘇生法を行って頚動脈あるいは上腕動脈の拍動を触れるよう になったもの ○心拍非再開(non-return of spontaneous circulation: non-ROSC) =来院後,心肺蘇生法を行っても頚動脈あるいは上腕動脈の拍動を触れるよ うにならなかったもの(ECG上の波形を問わない) ○蘇生(admitted ICU/ward)=心拍が再開し入院となったもの ○救命,生存(alive at one week)=入院1週間後に生存している場合 この中には以下の場合が含まれる イ.意思の疎通がなく自立もできない,ロ.意思の疎通はあるが自立ができない ハ.自立できるが社会生活ができない,ニ.自立でき社会生活ができる場合 ○社会復帰(full recovery)=意思の疎通があり自立して社会生活ができる3. 備考
1) 心停止(cardiac arrest)には心静止,心室細動,電導収縮解離が含まれる。 2) ここでいう肺機能は呼吸機能を意味する。 3) "near DOA"は使わない→来院直後心肺機能停止(CPAAA),来院時心機能停止, 来院時肺機能停止などを用いる。 4) DNR (do not resuscitate)とは癌の末期などで,本人または家族の希望で心 肺蘇生法を行わないこと。これに基いて医師が指示する場合を DNR指示(do not resuscitate order) という。 5) 医療機関外での蘇生例を医療機関内での蘇生例を加える場合はその数を明示。 6) 救命(例)と生存(例)は同義で用いる。 7) 来院時心肺機能停止(CPAOA)の予後評価 イ. 心拍再開率 =100 x 心拍再開例/来院時心肺機能停止例 ロ. 蘇生率 =100 x 蘇生例/来院時心肺機能停止例 ハ. 救命(生存)率=100 x 救命(生存)例/来院時心肺機能停止例 ニ. 社会復帰率 =100 x 社会復帰例/来院時心肺機能停止例 (注意. 来院時心機能停止,来院時肺機能停止,来院直後心肺機能停止例は イ. 〜ニ.の分母,分子に含めない)