第3回地域防災民間緊急医療ネットワーク・フォーラム 資料集より

東京都の災害時応急体制と医療救護体制

東京都衛生局医療計画部救急災害医療課

課長  小室 匠


 都の地域に地震災害が発生した場合、東京都は、防災機関及び国、他府県と協力し、応急対策を実施するとともに、区市町村の行なう応急対策を支援する。応急対策には、医療救護をはじめとして様々な対策がある。

 ここでは、医療救護活動を支援する主要な応急対策について「東京都地域防災計画」から紹 介し、東京都の医療救護体制の概要について記す。


1 東京都の災害時応急体制の概要
  (医療救護活動への支援対策)

 東京都において地震災害が発生し、その必要があると認めた場合、知事を本部長とする東 京都災害対策本部を設置し、区市町村及び関係防災機関等との協力のもと応急対策を実施す る。特に、医療救護活動を支援する主要な対策は以下のとおりである。

主要な応急対策実施機関内 容 等
情報連絡体制都、区市町村、警視庁
東京消防庁、その他防災機関
防災行政無線を基幹として各種情報手段を用いる。
その他東京都災害情報システム、画像通信システム(警視庁、東京消防庁ヘリコプタ−画像受信システム)
救助・救急活動東京消防庁、警視庁、東京海上保安部 各機関連携し、市民組織の協力を得て救出救護活動を実践
医療救護所開設までは、仮救護所・現場救護所で傷病者救護(東京消防庁)
重症者からの優先的搬送の実施
緊急輸送路確保
(緊急道路啓開)
都建設局・港湾局
警視庁、関東地方建設局
道路公団等
緊急輸送ネットワーク(応急対策拠点間の輸送路)の構築

 第1次:都庁、市町村庁舎、輸送管理機関、港湾・空港
 第2次:警察・消防・医療機関・ヘリ緊急離発着場等連絡輸送路
 第3次:広域輸送拠点等

141医療機関(東京都災害時広報医療施設と国公立の総合病院等)が道路啓発第1優先順位とされる。

輸送車両等の確保 都、区市町村
関東運輸局
警視庁
 都各局は、第1次的に各局保有車両を使用。不足する場合は協定締結団体より調達(トラック役5000台、バス113台)
 船舶、ヘリコプタ−についても協定団体等より確保
 緊急車両の確認及び緊急輸送路の交通環境整備(警視庁)
ライフライン対策:水都水道局  飲料水の確保対策として居住場所から 2 kmの距離内に1ケ所応急給水槽を設置している(53ケ所、充足率92%)
 広報医療施設となる病院については、原則として所在地区の要請により車両等で応急給水を行う。
同:電気東京電力応急工事は人命に係る箇所を優先。配電における復旧順位は病院は高い。
同:ガス東京ガス非常対策本部を設置し、対応する


2 東京都の災害医療体制

 被災地の医療救護活動の中心は、区市町村である。東京都は広域的な立場で区市町村の活動を支援する。この災害医療体制が有効に機能するために、災害時の拠点病院となる「東京都災害時後方医療施設」60施設)の整備、備蓄医薬品等の供給体制の見直し、災害時医療従事者研修(トリアージ、医療救護活動等)、各種マニュアルの策定など様々な施策を打ち出してきた。

【医療救護活動の流れと体制の概略】

区分負傷者対策重傷者対策医療制約者対策
実施主体区市町村(東京都は支援)東京都医療機関
医療救護体制 避難所等に医療救護所を設置し、医療救護活動を行う。状況によっては、各医療機関を救護所として使用する場合がある。  被災地外にある後方の医療施設において、救護所では対応できない重傷者に対する収容治療を行う。また、収容力を拡大するため会議室等を利用。  医療機関の被害により医療に制約を受ける患者の治療を行う。空床を利用する外に、会議室・講堂等の空きスペースを利用し、収容力を拡大する。
実施方法 (1)初動医療救護
・区市町村 2,218班(必要数)
・地区医師会中心の医療救護班編成
(2)広域的な立場からの応援医療救護班編成
・東京都による整備数 234班
・東京都医師会班 98班
・日本赤十字社東京都支部 40班
・国立病院等 30班
・都立病産院 45班
(3)他府県との協定による応援医療救護班要請
・他府県医師会、日本赤十字社等
(4)国への応援要請
(1)三次救急医療施設(21)
(2)東京都災害時後方医療施設(60)
 (三次救急医療施設はすべて含む)
(3)残存医療機関(病院)
(4)広域搬送による他府県医療機関
 (協定及び国への要請)
残存医療機関 病院及び診療所等

(1)応援医療救護班への備蓄医薬品等の要請
(2)被災地外医療機関との連携
(3)透析医療ネットワーク等の活用

搬送体制*医療救護班、医薬品・医療資器材の搬送
 東京都及び区市町村ともに、自己の保有する車両、船舶を使用し、不足する場合は地域防災計画に定める輸送計画により車両を確保し搬送を行う。
 なお、区市町村において調達不能となった場合は、東京都財務局へ調達斡旋を要請する。
傷病者の搬送
 (1)東京消防庁への搬送要請
 (2)医療救護班等の使用した車両による搬送
 (3)自衛隊等への搬送要請
 (4)搬送優先順位に従い、後方医療施設の受入体制を確認して搬送
医薬品・医療資器材の備蓄 (1)区市町村:災害用医療資器材セット(7点セット)他
(2)東京都 :災害用医療資器材セット(7点セット)、救急箱(4点セット)、単品補充用医療品等

 なお、97年度に医薬品等の備蓄供給体制、備蓄内容を見直し、新7点セット、現場携行セット、セルフケアセット等新たに備蓄することとし、医薬衛生材料団体等と供給協定を締結した。

集中備蓄倉庫(1,359,000人分)
 東京都災害時後方医療施設用資器材の補充
 区部 災害対策職員住宅柏木住宅内集中備蓄倉庫等
 市部 立川地域防災センター内集中備蓄倉庫等

 薬剤師班の編成(1班3名、計 300班)


3 東京都衛生局の対応

 東京都地域防災計画では、災害時における初動医療体制をはじめとする医療救護活動の事務については衛生局が所掌している。平成10年7月衛生局は、「衛生局災害活動マニュアル」を作成し、災害時において衛生局職員がとるべき組織体制・行動等を明らかにした。

特に、発災後24時間以内は、参集職員の状況に応じて班体制をとる(現行組織にとらわれない)こととし、災害に対し機能的に対応するようにした。

【衛生局班体制と機能】

 医療救護活動をはじめとする災害発生後の応急対策活動は、いかに早くその活動を立ちあげるかにその効果がかかっている。そのためには、迅速な情報の収集と分析・整理が必要である。衛生局では、都災害対策本部と密接に連携するとともに、これらの班体制で初動期の情報を収集し分析する。そして、後述の「情報連絡等系統図」をとおして関係機関等への要請を行ない効果的な災害医療救護活動の実現を支援していく。

【医療救護活動の命令、要請及び情報連絡系統図】

 (図は省略させていただきます)


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