放射線災害の話題 (3) |
From: "・・"
Date: Mon, 22 Jun 1998 00:05:30 +0900
From: Tosifusa Toda
Subject: [neweml: 03353] Re:放射線線量限度について
老人研の戸田です。
At 11:09 PM 98.6.21 +0900, 水野 義之 (Y.Mizuno, Osaka wrote:
>越智さん、水野です。
>
(中略)
>
>■プルトニウムは毒ではなく内部被爆が危険であること
>
>ついでに、例のプルトニウムが怖いのは、ああいった重い元素は、骨髄に
>蓄積されまして、そこでアルファ線を出し続けるからです(これも内部被爆)。
>
>プルトニウム別に、毒ではないようですが。世間では猛毒とかいってますけど、
>あれは多分間違いであると、私は疑っております。少なくとも、私が調べた限りでは、
>おそらく、プルトニウムは化学的な毒ではないでしょう。しかし確認出来ていません。
>
>世間でいうところの「プルトニウムは毒」という説は、本当なのか、嘘なのか。
>私がどこまで調べて、どこで止まっているかについては、ここに一応「公開」
>しております^^;;。
>http://www.yo.rim.or.jp/~ymizuno/physicist-eye-8-Pu.html
>答えをご存じの方、教えてください。
>
私も気になったので、手元の資料を調べてみました。
あまり詳しいものはなかったのですが、南山堂の医学大辞典の「プルトニウム中毒」
に、次のような記載がありました。
・・・・・ここから・・・・・
プルトニウム中毒:プルトニウム化合物の毒性は、化学的毒性よりも放射性毒性の方
が重要である。特に 239Pu は極めて危険な物質であり、生体内の存続時間が特に長
く、半減期も 24,300 年と長く、生体内では骨、肝臓に沈着し、長年にわたって肝腫
瘍、骨線維症、低形成性貧血、白血病、肉腫などを惹起させる。体内における許容濃
度は 0.04 μCi となっている。
・・・・・ここまで・・・・・
なお、もしプルトニウムに化学的毒性があるとすると、カドミウムやクロム、鉛、水
銀などのように、有機物とのコンプレックスになった場合か、キレートの形で酵素な
どの蛋白質に強く結合して離れなくなった場合が考えられます。通常重金属の毒性は
、金属単体のイオンの状態より、有機金属となったときの方が高まります。プルトニ
ウムが、有機物とのコンプレックスを作る性質があるかどうかは、今調べています。
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東京都老人総合研究所
遺伝子情報部門
戸田年総
173-0015 東京都板橋区栄町35−2
研究所のHP http://www.tmig.or.jp/
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Date: Mon, 22 Jun 1998 00:14:09 +0900
From: ttoda@tmig.or.jp (Tosifusa Toda)
Subject: [neweml: 03354] Re: 放射線線量限度について
老人研の戸田です。
At 11:52 PM 98.6.21 +0900, ・・ wrote:
>皆さんこんにちは、・・@東海村です。
>水野さん、越智さん、戸田さん詳しい解説及び関係HPの紹介ありがとうござ
>いました。
>
(中略)
>私たちは放射線従事者のカードを持っていませので、被爆した場合は関連施設
>でホールボディ後、被爆数値を書面で送付していただいております。
>
私たち研究者が放射性物質を取り扱うときは、常に「フィルムバッチ」を身に付けて
作業をするように義務づけられていますが、消防関係者が原子力関連施設の火災等で
出動するときは、このような「被爆記録装置」を身に付けて作業することにはなって
いないのでしょうか。多分、そばでうろちょろしている原子力施設関係者はみんな身
に付けていると思いますが、出動した人たちが身に付けていないのは理不尽です。
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東京都老人総合研究所
遺伝子情報部門
戸田年総
173-0015 東京都板橋区栄町35−2
研究所のHP http://www.tmig.or.jp/
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From: "・・"
Subject: [neweml: 03357] Re: 放射線線量限度につい
Date: Mon, 22 Jun 1998 01:36:45 +0900
皆さんこんにちは、・・@・・です。
>>私たち研究者が放射性物質を取り扱うときは、常に「フィルムバッチ」を身
に付けて
ちょっと私の表現が悪かったようですいません。
フィルムバッチ、及びポケット線量計は出動時に装着します。
ホールボディは一応内部被爆を検査すると言うことで肺モニターというそうち
で検査してもらっています。
ですから、何も身につけていないわけではありません。
・・(・・ ・・)
http://member.nifty.ne.jp/ems/
Date: Mon, 22 Jun 1998 09:09:07 +0900 (JST)
From: 水野義之 (Y.Mizuno, Osaka)
Subject: [neweml: 03362] Re: 放射線線量限度について
・・の・・さん、大阪大学の水野です。 もうちょっと補足します。
At 11:52 PM 98.6.21 +0900, ・・ wrote:
>>>つまり(と、以下は、水野の推測ですが)、全身に浴びた場合、死亡する原
>因は、
>>>このあたり(消化器系からの出血 and/or 骨髄の造血機能障害)でしょう。
>>>これは(これも推測であすが)鉛のスカートなどで、かなり防げる、という
>ことも
>>>意味するでしょう。
>
>とても有益な情報ありがとうございます、状況に応じて半面マスク(防毒マス
>ク)を装着しますので内部被爆については防げそうですが、放射線防御につい
>ては距離、遮蔽物、時間位しか考えていませんでした、鉛のスカートが防御活
>動時に使用できるか今度実験してみます。
頭と、手足は、被爆しても、それほど怖くはない(もちろん、少ない方がいいに
きまってますが)、しかし、腹と背中を守る必要がある、ということでしょう。
(水野の推測ですが)。
では、例えば背中だけ守っていればいいか(骨髄の造血機能障害が防げるか)、
というと、残念ながらそうではないです。それは、ガンマ線は、それこそ
X線写真を撮れることからも、わかるように、人体を「かなり」貫通すると思って
下さい。(貫通のしやすさは、エネルギーによっていろいろ差がありますが、
背中だけ守ればいい、ということにはなりません。背骨の、前、も守ってください)。
従って、しかも斜め上からくることもあるでしょうから、理想的には、
首から下(とか肩あたり)から始めて、足のつけね、あたりまで、全部
守る必要があると、私ならば、判断します。まあ、全身守れれば、
それが一番理想的でしょう。ちょうど、中世の騎士の鎧みたいなスタイル、
あれを鉛で作るのが一番いいでしょう。
材質は、鉛がいいか、鉄がいいか、ですが、全体の重さのことを考えても、
やっぱり鉛がいいです(本当は、ウランの方が効果的ですが)。
鉛の厚さ 6mm と、鉄の厚さ 1.7 cm とが、同じ効果があると思ってください。
しかし密度の違いが鉛は鉄の2倍もないです。従って、全体が同じ重さでいっても、
鉛の方が、いいです。鉛のものを使ってください。
どっちが効果的か、というのは、放射距離という数字で表現されます。上記は
それのことをいっているだけです。放射距離を [g/cm2] の単位で表現して、
その数字が小さい材質を使う方が、(同じ重さの「服」でも)効果的です。
以上は、X線、ガンマ線、電子線(ベータ線)の場合ですが、まあ、原子力関係
施設での被爆の大部分はそうでしょうから、それで判断していいと思います。
エネルギーの高い重粒子線が大部分である、という場合には、関係が逆転します。
(この場合、鉄の方が鉛よりも、効果的です)。しかし、そういう場合は、
原子力施設の場合、ないはずです(水野の推測ですが)。
>防弾チョッキではどうでしょうかね。
材質が鉄でしょうから、鉛よりは「効果/重さ」比、でいって、効率が悪いです。
でもないよりはいいでしょう。あと、ちょっと短いような。もうすこし、下まで、
あってほしい。
材質が鉄でなくて、例えば、チタン合金とかであったとすると、もっと効率が悪い、
ということになります。
物質の、原子番号をZ として、質量数をAとしますと、おおざっぱには、
L= A /(Zの2乗) を計算して、それが小さい方が、効果が大きいと
思ってください。チタンはZ=22, A=50, 鉄でZ=26, A=58(平均でいいです)、
鉛はZ=82, A=208 、として、鉛がもっとも、L= A /(Zの2乗)が
小さいことがわかります。これが鉛がいい理由です。
ウランの場合を計算しますと、これがもっと小さく、鉛よりも効果的であること
がわかりますが、ウランを使う人はいない、と思うでしょう?でも、そういう
目的に、使われることも実は、あったりします。
ここでのL= A /(Zの2乗)、というのが、非常に大ざっぱには、
放射距離という数字に、比例しています。詳細は、もっとちゃんと調べる
(計算する)ことが必要ですが、大ざっぱな理解にはこれでいいでしょう。
この L(放射距離、radiation length)というのは、放射線が、物質中で
吸収される(反応を起こす)確率の、逆数になっています。反応確率が大きいと、
効果的です。その時、L は小さい数字になります。radiation lengthという
のは、放射線を防げる厚さ、と、理解してください。それは短い方が効果が
高いです。(以上、X線、ガンマ線、電子線(ベータ線)の場合に限ります)。
>今までは事故をいかに防ぐかということが最大のテーマでしたが、現在は事故
>後の対応が最大のテーマになっております、施設関係者も絶対事故は起こさな
>いと豪語してましたが、昨年だけで放射線が外部に漏洩する事故が3件発生し
>ておりますので事故は起きるものだ、という考えになりつつあります。
私の(物理学の)観点からいいますと、なぜ、そういう防御が効果があるのか、
という基礎を理解していただきたいと思います。それがわかりますと、判断、
が出来るし、なによりも理由がよくわかって、妙な(それを知らないから「恐れる」
だけ、というような)心配がなくなっていくことと思います。しかし、だからと
いって、安心していい、ということには、まったく、なりません。
放射線を物理的に防ぐことは、可能です。測定も比較的、簡単ですから、
たとえば環境ホルモンなどよりも、よっぽど扱いやすい、
(はるかにわかりやすい、素性がわかっている)と言えます。
でも、それがわかっても、現場活動が出来るかどうかはわかりませんので、
けっきょく、私はなにも言ったことにも、ならないです。でも、それでも、
原理を理解してほしいと願っております。それは、自分で(何が危険なのか、
なぜなのか、だからどうすればいいのか、ということを)判断が出来るように
なってほしいと思うからです。
***
おっと、そういえば、骨髄の造血機能は、手足の骨にもあるんですよね?
だとすれば、全身を守った方がいいでしょうね。
でも、それでは活動できないかな。。。
鉄の厚さ1.7 cm の服(鉛の厚さ6mm の服)で、約3分の1に減らせますが
あまり薄いと、効果はないです(エネルギーが高くて防御が薄い場合には、
かえって増えることもあります。それは放射線のエネルギーは減るけれど、
低いエネルギーの放射線の数が増えることもあるからです)。
めちゃくちゃのことを言わせていただきますと、まあほとんど、ドラエモン
とか鉄腕アトムの世界ですが、ロボットにさせるか、あるいは人間がロボットを
操縦しながら、内部へ行き、作業する、という形態を考えるべきであると、
私は思いますね。あるいは人間の運動機能を補強した服でないと。
そういう意味では、消防作業でも、そうではないでしょうか?
人間の体だけでもって、全部やることは、無理があるように、私には思えます。
以上、最後は、とんでもない放言でした。あまり本気には、しないでください。
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Yoshiyuki MIZUNO 水野 義之 (大阪府 茨木市 大阪大学)
http://www.yo.rim.or.jp/~ymizuno/
http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~ymizuno/
Date: Mon, 22 Jun 1998 10:35:13 +0900
From: Tosifusa Toda
Subject: [neweml: 03364] Re: 放射線線量限度について
老人研の戸田です。
At 1:36 AM 98.6.22 +0900, ・・ wrote:
>皆さんこんにちは、・・@・・です。
>
>>>私たち研究者が放射性物質を取り扱うときは、常に「フィルムバッチ」を身
>に付けて
>
>ちょっと私の表現が悪かったようですいません。
>
>フィルムバッチ、及びポケット線量計は出動時に装着します。
>ホールボディは一応内部被爆を検査すると言うことで肺モニターというそうち
>で検査してもらっています。
>ですから、何も身につけていないわけではありません。
>
納得しました。
外部被爆、内部被爆の記録がきちんと残っていれば、累積線量が多い人は、次回の作
業から外れる等の処置ができますので、必ず被爆記録簿を作って管理されると宜しい
かと思います。
線量と影響との関係には、一応「閾値」や「限度」はありますが、放射線による遺伝
子変異の発生頻度は「確率的」であり、線量の増加とともに「直線的」に増加するも
のと理解して下さい。但し、「障害除去酵素」の働きはありますので、生物は「放射
線に対して全く無防備」ではありませんが、あまり過信はしないほうが良いと思いま
す(前に述べたように個人差があります)。
それから、越智さん、私も「救急医療メモへの掲載」はOKです、実名で載せていただ
いて結構です。
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173-0015 東京都板橋区栄町35−2
東京都老人総合研究所
遺伝子情報部門
戸田年総
http://www.tmig.or.jp/
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