乳児の突然死撲滅キャンペーン

―かけがえのない我が子を守るために―


乳児突然死症候群(SIDS)について


 突然の予期しない1歳までの子供の突然死で、その死因は明らかにされていない。生後1カ月未満、1歳以上ではまれで、大半は6カ月以下の乳児である。米国で、7000-10000人/年、わが国では1995年579人(男341人、女238人)が死亡している。

SIDS発症率(出生 1000対)

オーストラリア  1.9~3.7
アイルランド      2.5
イギリス     2.0~2.8
スウェーデン      1.0
デンマーク       1.7
フィンランド   0.3~0.5
ニュージーランド 0.3~0.5
 ホンコン   0.3
 ベルギー   1.7
 オランダ   1.3
 フランス   2.7
 カナダ    1.5
 アメリカ   1.7
 日本     0.5

(戸刈 創先生、乳幼児突然死症候群 LISA別冊'97, p.66-77より)

 上記のごとく日本の発症率は低い。うつぶせ寝禁止キャンペーンの後、世界的な発症率は0.6以下に低下。日本では乳児の突然死の大半はSIDSによる。

原因

 肺、呼吸中枢の反応性異常、自律神経系の機能異常、overheating、覚醒障害、再呼吸等が考えられているが、現在までのところ不明である。

重要危険因子

 睡眠時の体位

 母親側の危険因子
  1)喫煙
  2)若年妊娠(20歳以下)
  3)コカイン、麻薬常用者
  4)早産
  5)妊娠中の病気
  6)低所得者、低学歴
  7)未婚
  8)頻回の妊娠
  9)多胎

 赤ちゃん側
  1)子宮内発育不全、
  2)早産(38週以下)
  3)低出生体重(2500g以下)
  4)男

 他の因子
  1)冬
  2)屋外

防止策

 1)うつ伏せ寝を止め、仰向きに寝かせる。

 横向きもだめ。病態によっては、うつ伏せの方が良い事もある。 SIDS発症率 3.5/1000であったが、キャンペーン後 0.3/1000に減少。

 2)妊娠中、授乳期の禁煙

 ヘビースモーカの母親程、 SIDS発症の危険性が高い。両親が禁煙すると、発症は2/3まで減少する。

 3)添い寝はだめ。母親が起きているのであれば、問題なし。

 添い寝中、母親と赤ちゃんの顔と顔が接近。母親の呼気中の炭酸ガスを吸う可能性が高い。

 4)柔らかすぎるマットレスを使用しない

 柔らかいと赤ちゃんが沈み、エアポケットができ、高濃度の炭酸ガスを吸う可能性がある。また、吐いた物が貯まり、窒息する危険性もある。

 5)妊娠中は早めに検診を。

 6)両親の教育(病院、保健所等で教育が必要)

 7)おしゃぶりの使用?

 おしゃぶりを使用した赤ちゃんでは、SIDSは少ない。
 全国的なおしゃぶり使用率は、いつもおしゃぶり使用が25%、夜間のみ24%、日中のみが23%あるのに比べ、SIDSでは10%と低い(ノルウェイ)。

 8)乳児の隣に子供を寝かせない。

 姉の足が胸にのっかった状態での心停止(窒息?)有り。

 9)母乳で育てる。

 母乳児に少ない。somoke exposed SIDSは哺乳力が弱いために、母乳で 育てることが困難な事が多い。


乳児の緊急事態への対処


乳児の特徴

1)乳児(特に新生児)の呼吸は鼻呼吸が主である。

  1. 風邪等で鼻が詰まっていると、呼吸困難になりやすい。
    鼻が詰まっているときはこまめに吸引を。

  2. 扁桃腺、アデノイドが大きくなると容易に呼吸困難(呼吸パターンが 変化します)に陥る。

2)脱水になりやすい。熱があるときは、外出は控え、こまめに水分の補給を(熱性けいれんを防止)。

乳児に対する注意点

★注意すべきサイン

1)機嫌が悪いとき。

2)熱があるとき。

3)いびきをかく。ヒューヒュー音がする(喘息)。

4)ちょっと前に、ピーナツ等を食べていた(気管内異物の可能性あり)。

5)呼吸パターンがおかしい(上気道閉塞、気道狭窄のサイン)。

  1. 息を吸う時、腹は上昇するが、胸は引っ込む。息を吐くときは逆の動き (シーソー呼吸)
  2. 息を吸うとき、胸骨の上部(胸骨上窩)が陥没し、のど仏、下顎も下が る。

6) 冷や汗をかいているとき。

7)脈が普段より速い、遅いとき。

8)チアノーゼがあるとき。

9)刺激しても反応がないとき。

★5)の様な症状が出現したら

  1. 上気道閉塞、狭窄症状であれば、慌てずに病院へ。状態によっては119 通報。

  2. 寝ているのであれば、起こしてみる。舌根部によって気道閉塞を起こ している場合は、起こせば消失する。

★起こしても症状がとれなければ、

  1. 口の中を覗いて、異物が詰まってないか確認する。

  2. なければ、気道確保(あご先を持ち上げる)。

  3. 呼吸が弱い、少ない場合
     1歳未満であれば、口―口鼻人工呼吸か口―鼻人工呼吸を。

  4. 脈を確認(わきの下の動脈で)
    • 脈が触れなければ、心マッサージを
    • 慌てず、自信をもって、人工呼吸と心マッサージを1:5で、救急車が到着するまで。
    • 幼児100回/分、乳児100回/分、新生児では1:3、120回/分


お母さん達に御願い:
親の不注意による事故を防止しましょう


親の不注意による事故は未然に防ぎましょう。

 家庭の中は危険でいっぱいです。子供はパケツ、洗面器でも溺れます。浴槽の水は抜きましょう。気管異物は豆類が多いので、乳児に豆類は与えない。また、食事中、びっくりさせないことも重要です。

 熱いお湯がかかったときは慌てず、すぐに水を衣服の上からかけてから衣服を脱がしましょう。熱は皮膚の奥まで漫透していきますので、皮膚の深いところまでの熱による障害を防ぐために15分程度は水で冷やしましょう。低体温には注意が必要です。

 喘息児のお母さんへ:喘息発作時の吸入は非常に有効ですが、1日に何回も使用しますと、危険な場合があります、先生の指示通りに使用してください。

 小児は脱水になりやすいので、水の補給は十分に。ジュース、スポーツドリンク等には糖が、スナック類には食塩が含まれています。子供のおやつには注意が必要です。

お子さんだけでなく、ご主人、ご両親にも気配りを。

 狭心症、高血圧、糖尿病、動脈硬化があれぱ、心筋 梗塞になる可能性が高いですので、早めに治療をしてください。心筋梗塞は発症1時間以内の亡くなる方が多いです。狭心症のある方は発作が頻回になった、胸痛の時間が長くなった、安静時にも胸痛が出現した場合はすぐに病院へ。夜間では病院に行きにくいですが、病気は朝まで待ってくれません。40歳以上で胸痛がある男性は病院に行くのが賢明です。

 高齢者は夜間トイレに行くのを嫌がり、水を控えますが、水を控 えることは血液の流れを悪くし、脳梗塞、心筋梗塞等を起こしやすくします。寝る前のコップ1杯の水は飲むようにしましょう。

 子供にはいざというときは、まず119番通 報するように教えましょう。これは大事です。

 いざというときのために、心肺蘇生法 を覚えましょう。

ちょっとした家族の気配りで安心して暮らせる家庭を

■円山啓司のプレホスピタルケア・ホームページ