横浜市の園芸店が、食用ハーブとして誤って有毒のチョウセンアサガオのケースを売り、これを食べた市内の夫婦二人が、ろれつが回 らなくなるなどの中毒症状を起こしていたことが8日判明。店はこの夫婦のほかに13ケースを売った。
この店では、商品にラベルなどの表示をしていないため、植物の種類は店員が口頭で説明している。チョウセンアサガオのケースのそばに食用ハーブの苗が置いてあったことから、店員が間違って「食用ハーブ」と説明したもの。
中毒症状を起こした夫婦は、4日午前8時半ごろ、葉をごまあえにして食べた。2、30分後に、のどの乾きやろれつが回らない、脱 力感などの症状が出たため、病院で治療を受け、7日午後には回復した。連絡を受けた店が5日に苗を回収し、チョウセンアサガオで あることを確認。
チョウセンアサガオはアジア原産のナス科の植物。葉、根、種子など全体が有毒で、食べるとおう吐やけいれん、呼吸まひなどを起こ す。大量に食べると、脱力、けいれん、こん睡などを起こして死ぬことも。江戸時代に華岡青洲が日本で初めて乳癌の手術をした時に、麻酔に使ったことでも知られる。1983年から92年まで、全国で22人の食中毒患者が出たが、死亡者はいない。
愛媛大学医学部救急医学の越智元郎です。
ご紹介いただいた記事にありますが、チョウセンアサガオといえば華岡青洲による世界初の全身麻酔に用いられました。彼の通仙散は明治時代まで、青洲の弟子によって実際に全身麻酔に使用されていました。日本麻酔学会ではこのチョウセンアサガオを学会のロゴマークにしています。
チョウセンアサガオの主成分はベラドンナアルカロイド(アトロピン、スコポラミン、ヒオスチンなど)で副交感神経系の神経節の伝達を遮断します。その結果、脈拍数が増えたり口腔内の分泌物が減少するため、これを麻酔開始前に前投薬として広く使用されています。眼科では眼底検査の時に散瞳させるために用います。
中枢神経系への作用もあり鎮静作用や(逆向性)健忘などをもたらすわけですが、多量に使用にすれば外科手術をも可能にするというのが青洲の通仙散ということになります(有吉佐和子の「華岡青洲の妻」は面白かったですね)。この薬では患者さんは手術のあと1日こんこんと眠りつづけるようで、切れのよい現在の全身麻酔からは想像もつきませんね。麻酔状態に陥る前の段階の興奮状態を「自白剤」と
して利用する、というような話も聞いたことがあります。
ここまで書いて、内藤裕史先生の「中毒百科(南江堂)」をみてきました。以下、興味深かったところを抜き書きしてみます。
以下、わが国の中毒例
愛媛大学の越智元郎です。
有吉佐和子の「華岡青洲の妻」について追加します。主題は青洲を挟んでの嫁と姑との相克ですが、米国ロング医師の初めてのエーテル麻酔による手術(1842年)に先立つこと37年も前に、通仙散による本格的な全身麻酔手術(乳ガン摘出)を施行した青洲の執念に打たれました。小説ですので史実とは違う点もあろうかと思いますが、
ボリジ(Engl.:Borage,和名:ルリジサ,学名:Borago officinalis L.)は
どちらかといえば薬用植物の色彩の濃いもので,
ボリジとチョウセンアサガオの仲間は同じシソ目に分類されることのある
ボリジの花はどちらかといえば,ナス(所謂「なすび」)の花に
チョウセンアサガオの仲間は白い大きな花を葉の付け根につけます.
これらは時として栽培地から逸出し,帰化植物として全国各地で自生状態に
さて,問題のボリジとチョウセンアサガオの仲間との区別ですが,
普通の苗程度の大きさだと,間違える可能性があるのかも
また,私見ですが,チョウセンアサガオ類の葉は揉んでにおいをかぐと
一方,ボリジは葉を揉んでも,花を揉んでも,あまり匂いは感じられませんでした.
「心を浮かせるハーブ」とされているのは,効能によるところ
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日本中毒情報センター、本部事務局の黒木です。
趣味でハーブの栽培をしています。
我が家の小さな庭に20種類位のハーブがありますが、ボリジは私のお気に入りのハーブの一つでして、つい2−3日前に花が咲き始めました。花びら(5枚)は濃いめのスカイブルーで、中央は少し紫がかった直径1−1.5cm位の小さな可憐な花です。
(みなさんにお見せできないのが残念なくらいです。)
薬効については、先にメールがありましたので省略しますが、
生の若葉を食用にしますが、キュウリのような香りがします。
葉に産毛のようなものがあり、ちょっとチクチクします。
花は砂糖づけにして(青い星のような感じになります)紅茶のお茶うけ
にしたり、サラダとして食べます。花の味は、ちょっとかわっていて、
沖縄地方で食べるシャコ貝のさしみの独特な後味に似ていて不思議
な感じがします。
話が、だいぶ脱線しましたが、植物を知っていれば、チョウセンアサガオとは葉も花も間違えることはないと思うのですが、お店で「これが○○○だ」と言われると、疑わずに(or新種かと思って)口にするかも知れませんね。
チョウセンアサガオによる中毒、文献より
Date: Sat, 09 May 1998 19:15:54 +0900
Subject: [neweml: 02840] Re: チョウセンアサガオチョウセンアサガオ・追加
Date: Thu, 14 May 1998 23:33:55 +0900
Subject: [neweml: 02926] Re: チョウセンアサガオボリジ(ハーブ)とチョウセンアサガオ
Date: Sun, 10 May 98 22:05:37 +0900
From: seiichi@ms.toyama-mpu.ac.jp
Subject: [poison:01551] ボリジ(ハーブ)とチョウセンアサガオ
[poison:01684] ボリジとチョウセンアサガオについての訂正稿
ボリジとチョウセンアサガオについて私見も交ぜて
少しコメントさせていただきます.
著名なハーブの一つでヨーロッパで民間的に使われてきたものです.
伝統的には母乳量の増加,抗抑鬱などの目的で使われているようです.
また熱湯で抽出したものは風邪に効く,などとも
されています.(咳止めのようです).
植物ですが,ボリジはムラサキ科(Boraginaceae,学名のBoragoと同じ語源),
チョウセンアサガオはナス科(Solanaceae)になります.チョウセンアサガオは
その名の通り「アサガオ」の形態に似ており,分類群でもアサガオの仲間である
ヒルガオ科に近縁だとされています.
似ていますが,ナスのように葉の付け根に咲くのではなく,
花の集まりが一つの穂を形作ります.
色は白だけでなく紫や少しうすい褐色の線のあるものもありますが,
ブラジルの種類などは花がオレンジに色づいて
いるものもあります.これらはいずれの種類も大きく美しいことなどから
観賞用によく栽培されています.日本ではシロバナチョウセンアサガオ,
ヨウシュチョウセンアサガオなどが有名です.
近いものが見られます(私自身,愛知,広島県などで採集したことがあります)
結論から言いますと,花があれば,大きさ,色といい全く違いますので
区別はごく簡単です.
しれませんが,ボリジの方が毛がやや硬く少し指にまとわりつく感じがあります.
またボリジの葉の縁は細かく波打っていますが,チョウセンアサガオの仲間は
葉の縁はなめらかで,たまに大きな切れ込みがある程度です.
強くはありませんが,ごま油の匂いの混じったような特有の臭みがあります.
少なくとも自分はくさいと感じました.
なのかもしれません.
Seiichi YAMAJI, Ph.D.(山路誠一/ヤマジセイイチ)
富山医科薬科大学 和漢薬研究所 資源開発部門
Research Institute for Wakan-Yaku,
Toyama Medical and Pharmaceutical University
TEL:+81-764-34-2281 ext.2809/FAX:+81-764-34-5055
seiichi@ms.toyama-mpu.ac.jp/seiichi@mra.biglobe.ne.jpボリジ(ハーブ)の香りについて
From: JPIC 黒木
Subject: [poison:01554] ボリジ(ハーブ)の香りについて