ただ今ご紹介いただきました県立中央病院の上田です。今日1時からいろんな方のお話しをお聞きいたしまして、本当に愛媛救友会を中心として私なりに医師の立場で強調してまいりました、プレホスピタル・ケアという、現場の最も大事な救急医療が愛媛県でもうまく運用されてきているのだなあ。という事を感じました。
今日は特に呼吸器系、呼吸管理というテーマでお話しが色々あった訳ですが、総括という事に値するかどうか分かりませんが、一応私自身が今までやって参りました呼吸不全に在宅酸素療法。これは医療形態が随分変わって参りました。そして今の医療が在宅医療という方向性になって参りました。特に救急救命士の方のお仕事の中に在宅療法。その中でも今日お話しいたします呼吸不全の在宅酸素療法をお受けになっている患者さんへの対応といったような事も、ひとつ具体的な事例として挙げられているのではないかと思います。
それから、喘息の方も私自身今まで随分やって参りましたけれど、喘息の救急医療の具体的な対応という事で、先程から少しご紹介がございましたけれど、酸素投与の問題だとかあるいは喘息というのは非常にある意味では厳しい難しい病態だと思います。
救急に対する対応が喘息死を防ぐためにどうあるべきかという事が問われています。国の方もそういった問題を色々検討している訳ですが、私自身がそういった所でやってきた事。あるいは、救命センターで経験した事。そして最終的には喘息死を防ぐためにはどうあるべきか。これは医療行政を含めて色々提示する事があろうかと思いますが、その事を後半少しまとめてお話ししたいと思います。
時間が迫ってございますので、要領よくお話ししたいと思いますので、一応スライド60枚くらい用意いたしておりますけれど、不必要な所はカットいたしますので、お疲れでしょうがこれから40分ほどお付き合い頂ければ幸いだと思います。
なぜ在宅医療かといった事、今の医療制度の事を若干触れていきたいと思います。特に救急隊員の方のお仕事の中にも、例えば老健施設だとかいった新しいと言いますか、救急の現場で行かざるを得ない施設が増えて参りましたけれど、そんな事も含めまして、今の医療の中には在宅医療がとにかく推進されているのだという事をご認識頂きたいと思います。そして、そのためには制度のいろんな編成がございますが、これはもう少し後で具体的にお話しいたします。
診療報酬、これは医者あるいは医療機関にとって大事な事になっている訳ですが、在宅医療の誘導といった事が大きく捕らえられるのではないかと思います。65歳以上を高齢者といたしますと90年で12%あったのが、2025年には25.8%、4人に1人は高齢者という事になります。高齢者社会という事は避けられない事実でございまして、そういたしますと65歳が本当に老人かどうか問題はありますけれど、いまのところ老齢医学とかの学会でも65という一線を引いていますので、そうすると今度新しく、今回の国会でも問題になっていました介護保険の問題が当然出て参ります。そして、要介護老人の増加と疾病構造の変化として、急性期疾患患者が減少して行く。小児科等がその典型ですが、慢性期疾患の増加。この中でこれからお話しします呼吸不全の患者さんが非常に増えている。そうした方が在宅へどういう風に持って行くか。といった問題が今日お話しする事でございます。
こういった現状に関して今度は財源問題といった事が大きくクローズアップされてきている訳です。今日の新聞でしたか、日本の医療費は年々増大いたしております。28兆円、これは国の予算に占める割合は極めて大きいですね。そして医療費の高騰というのが結果的には国の財政を圧迫するという事で、当然の事ながら厚生省を中心に行政レベルではこの医療費をいかにして押さえるかといったような事も、やむを得ない現実ではないかと思います。
この中でいろんな事がありました。今私共で言われている事は、入院日数の短縮化、長期入院の是正、こういった事を具体化するために在宅医療という事が経済的な面からも、非常に強く強調されてきた訳ですね。そして医療費の効率化という風な言葉で言っている訳です。そうしますと、そのような流れは既に出ている訳ですね。何となく皆さん聞いているゴールドプラン。愛媛県であれば県の保健環境部等で盛んにゴールドプランと言う事を言っておられたと思います。それから老健法、それに対して新しい新ゴールドプランと言ったような事で医療というのは、先程申し上げましたような背景を中心にどんどん変遷してきていると言うのが現実な訳であります。
そして、在宅医療に誘導するためにはいろんな事をやっている訳ですけれど、在宅療養指導管理料。これは特にこれからお話しをします在宅酸素療法はすごいお金をこれに掛けています。在宅指導管理料を含めて諸々入れますと、1回の診療でだいたい原則的に月1回の外来診療と在宅に持っていって月1回の診療ですけれども9千数百点。1回の診療で9万円以上のお金が掛かる訳です。そう言った財源的な裏付けを指導管理料という形で努力している訳です。それで大幅引き上げ、そして在宅医療へ誘導して行こう。それから“掛かり付け医”。最近は開業医と言う言葉よりも“掛かり付け医”と言う言葉で表現する事が多い訳ですけれども、開業医の先生方の機能を重視して掛かり付けの先生方が中心になって、在宅医療を推進して行こう。そしてそのためには、病院と診療所、病診連携という事になります。そして先程申し上げましたように医療資源の有効な利用と、あるいは医療資源の軽減といった事も含めまして、社会医療資源の有機的な連携をやって行きましょう。と言ったような事で今の医療の大きな流れの中に在宅医療という事が強く問われてきている所でございます。
それで今日お話しする救急の事は、救急隊員の講義の中で私はよく使う訳ですが、呼吸器の場合には呼吸不全病態という事が中心になって参ります。この病態に対しては最小限の情報から最大限の効果を得られるような迅速な診療体系が必要で、例えば我々のような救命センターを持っている三次医療機関とはいえ、基本的にはプライマリーケアーを中心とした救急医学であって欲しい。あれが無いと出来ない、これが無いと出来ない。要するに医療器具が無いと医療は出来ないというお医者さん方の意向だけではなく、現場で最小限の情報から最大の効果が得られるような、そういった診療体系、いわゆるプライマリーケアーを重要視して欲しいという事を強調いたしております。そして私共としては救急隊員を含むプレホスピタルケアの重要性を特に医療の現場では重要視したい。そのためには、それぞれの地域医療、松山なら松山。今治なら今治地区のそれぞれの地域医療の特性に応じた包括的な対応という事を考えないといけないだろうと。個々に医療機関と行政と救急隊員との間のいわゆる縄張り合戦的な事があってはいけない。そういった事を強調しています。 それともうひとつ大事な事は、今日お話しする在宅酸素療法の場合は、急性期を脱した後のアフターケアーの医療という事も非常に大事だという事。そういった事が比較的うまくいっているのが在宅酸素療法ではないかと考えていますし、実際もっとも在宅医療の中でアカデミックであり極めて理論的に事が進んでいるのが在宅酸素療法であるという評価が現在得られています。今日本で約5万人の方がこの治療を受けられておられます。
今日は在宅酸素療法の事につきまして、なるべく身近な例としまして、愛媛県における在宅酸素療法の現状というものをある時調べた事がございますので、そういった事も少しご紹介していきたいと思います。
先程言いましたそれぞれの地域医療という事でございますけれど、松山市における救急医療体制これは93年の5月に医師会が作りましたが、一次、二次、三次といったシステムとしては、非常にきれいな形で出来ております。三次の中に我々のような救命センターが存在している訳ですけれど、システムとしては松山市はまずまずよく出来ているのではないかと考えられています。ただし、これを他所でお話ししますと、後送ベッド150床 というように公にはそうなっているのですが、実際はこんな後送ベッドを持っている施設はございません。地元の方はよくご存じだと思いますが、センターとしては30床ございますが、後送ベッドは救命センターの3階、4階、5階を含めて50、50、50の 150という事です。実質的には各専門領域の一般病床も兼ねているという事です。表向きには後送ベッドと称しております。こういった形で、そしてここへ松山市の救急隊が関与しているのだという事でございます。システムとしては一応出来ているという事です。
これから具体的に在宅酸素療法のお話しを若干進めて参りますが。「HOT」と書いておりますけれど、Home Oxygen Thehapy で、これを在宅酸素療法と略しまして、現在は「HOT」と略してホット、ホットと言っていますので一応この言葉を知っておいて下さい。患者さんもホット、ホットと言っておられます。
もともと「HOT」の意義というのは3つに分けられますが、病態的には長期持続酸素療法の病態というのは、肺高血圧症と肺姓心。これらは表裏一体な訳ですけれども、これを抑制することが出来るんだ。それから、二次性の赤血球増多症の改善につながる。そして、運動能力の解発、再解発がこれによって出来る。中枢神経機能の改善、予後の改善。こういったことは在宅酸素療法をやり始めた当初から言われている事ですが、これが現在もひとつの意義として強調されています。そして二番目に大事な事は、これを受ける患者さんというのは自ら呼吸不全という病態がベースにあってお受けになるのですが、そんなに楽なことはないですね。特に呼吸困難感の強い患者さんがお受けになる治療ですから、患者さんが悪いなりにQOLが酸素療法を受けることによって改善されるかどうかと言った事が非常に重要視されています。これも私自身長年関係しました厚生省の呼吸不全研究班の中で、こう言った治療がこれの改善に明らかに結び付いたという結果が出ております。 それからこれは行政側から言う事ですが、医療資源の有効活用という事。要するに長期入院を避けるためには在宅へ。そして国から医療的な財源の補償がかなりある訳ですけれども、結果的にはそれだけの財源を投与しても、医療資源に対しては有効的な医療法であると言う事。この3つがHOTの意義として強調されています。
適用としては、保険上の適用としてこのように決められています。慢性呼吸不全でも高度という言葉は一応付けますけれども、症状が安定している。これが条件ですね。あまり不安定な人はいけません。これはあくまでも通院が出来るという事が条件になりますから、空気吸入下で安静時のPAO2 動脈血のガス分析が55トール以下、もしくは酸素分圧が60トール以下で寝ている時、あるいは運動負荷を掛けた時に、著しい低酸素血症を来すもの。という風に定義付けられています。そしてこの中で、呼吸不全という病態はよくご存じだと思いますけれど、一型の呼吸不全と二型の呼吸不全の二つに分ける訳ですね。一型というのが低酸素血症のみ呈して、高炭酸ガス血症を伴わないタイプ。代表的な病気として、間質性肺炎のような病気。あるいは肺梗塞と言われるような病気がありますけれど、大体が普通は二型の呼吸不全と言われまして低酸素血症があって、尚且つ高炭酸ガス血症を伴う呼吸不全ですね。この病気の方が圧倒的に多い訳ですけれど、高炭酸ガス血症を呈した場合に、炭酸ガスにどう対応するかといった事が臨床的には極めて問題になってきますが、先程シンポジュウムで渡辺先生のコメントにもございましたが、救急隊員の現場での役割としては高炭酸ガス血症でそく死につながる事はない。という事を再認識して頂いて、酸素をいかに有効に充分投与するか。要するに脳の酸欠状態を防ぐためにはどうするか。と言ったような視点の方が大事で、それは現場でただ悪戯に酸素を与えるだけでなくて、あくまでも状態が悪い状態に対して患者を搬送するという業務が原則であります。搬送という事を抜きにして考えてはいけないと言う事です。その間の10分、20分の時間帯を何とか維持して、しかるべき施設に送るという事を原則とすれば、炭酸ガス血症という病態に対してはその時間的には少し目をつぶってもよろしい。という風な考え方になろうかとは思います。よく CO2ナルコーシスという事で、低流量酸素だとか酸素の投与は極めて慎重でないといけない。これもまた事実な訳ですけれども、実際は搬送という事を原則とすれば、炭酸ガス血症よりも基本的には低酸素血症に対する対応の方がはるかに重要であるという風に考えるべきではないかと思います。
それから、肺高血圧症を呈する病態。それから、これ循環器の病気に対してはこの適用というのはあまりございません、チアノーゼ型の先天性心疾患という比較的限られた病態に対しての適用であります。従いまして原則的には呼吸器障害を中心とする慢性の高度の呼吸不全というのが対象になってきます。肺高血圧症も原発性肺高血圧症というのもございますけれど、やはりどちらかと言うと、二次的に呼吸器障害で肺性心の状態になって、そして肺高血圧症という病態を呈する症例が圧倒的に多い訳ですね。こう言った疾患群がHOTの適用になるのだと言う事でございます。
ただし、これだけの対象疾患がございましたら何でも良いのかと言うと、そうではなくてもう1回その基礎疾患、あるいは病態を明確に把握しておきましょう。そしてこの治療法の意義と方法について患者、家族、医療関係者の理解が充分で有る事が必要である。ですから一方的に医者側の都合でこういった治療を持っていくのではなくて、患者さん側ときちんとお話しをした上で、理解して、納得して理解する。すなわち今我々に問われているインフォームドコンセントをきちんとやった上でこの治療を受けて頂くという事も必須でございます。
そしてそれぞれの地域医療におけるそれぞれのシステムというのがございます。その連携が密接であることが必要であります。この事は例えばいま“掛かり付け医”の役割が非常に大事になってきたと申し上げましたけれど、ただこういった治療をやった場合に、いざと言う時に対応する体制がもしとれていなければ極めてこういった治療を導入する事は危険であると言う事になります。この事は後でもう少しお話しいたします。
私自身が9年間やって参りました呼吸不全の研究班のまとめですが、1994年の時点でまとめたのが38,000人ですが、去年の集計では5万人を越えているという事でございまして、約3分の1から半分近くの方がお亡くなりになっています。そして毎年約5千人の方が新たにこの在宅酸素療法の適用をお受けになっておられます。適用疾患としてはCOPDと書いております。主としてこれは肺気腫でございます。いわゆる煙草病と言われる病態でありますけれど、これが大体全国の累積調査でいきますと約40%。以前は結核の後遺症による低酸素血症、低肺機能低酸素血症の方が随分多かったのですが、これは段々減って参りまして約20%だと言う事で、今は肺気腫の方が倍くらい多い。それから最近増えてきているのが間質性肺炎が約12%。それと肺ガンの患者さんの適用が増えて参りました。
肺ガンの事に関しましては、酸素を使わざるを得ないような病態になりますと、これはいわゆるターミナルケアーと言う状態に入っている訳ですけれど、1日でも在宅でと言う配慮の元で肺ガンの患者さんが段々と増えて来ています。
それから酸素をどうやって供給するかと言う事ですけれども、今日のお話しにもありましたけれど、これはオキシゲンエンリチャーと言いまして酸素濃湿器と言う機械を現在主に使っています。全体の酸素供給源の中で約90%近くがこの濃湿器を使っています。一時液体酸素というのが登場してこれは保険上でも行政的にも認められた液体酸素に対する期待度が我々非常に大きかった訳ですけれども、実際応用してみますと色々な面で繁雑であると言う事。あるいは患者さん自身の評判ももうひとつよく無かったと言う事で思ったほど伸びておりません。酸素濃湿器という機械を使ってやっているのが現状だと言う事になります。
死亡率が高いですよ、と申し上げましたけれど、どれくらいの患者が5年間この治療を受けて存在しているか、5生率で見てみますと間質性肺炎というのは非常に厳しい病気であります。我々の所でも救命センターにこの病気で入った方は1週間ないし10日足らずで亡くなって行く方が多い訳ですが、5生率で見ましても男性で18%、女性で26%と言う事で5年間生きられる方はこれくらいしか居ないのだと言う事です。
それに引き換え肺気腫の人、この病気だと42%、52%、両方併せて約50%。でも肺気腫と診断がついて、そして在宅酸素療法を受けざるを得ない患者さんの場合は5年間生きられる確立は約5割であると言う事になります。結核の後遺症もほぼ似たり寄ったりですが、やっぱり半数の方は結核の後遺症で低肺機能、そして低酸素血症、在宅酸素療法をお受けになっている方はやはり半分の方は5年以上生きる事は難しいと言う事でございました。
面白い結論が出ましたのは、肺高血圧症は病態が進めば合併して参ります。去年約4万人の方の追跡調査をいたしますと、女性で高炭酸ガスの合併を持った人の方が予後が良かったと言う興味有る結果が得られています。これに対する解釈と言うのは色々ありますが、事実はそうであったと言う事で、このお話しはここで止めておきます。
これから先の事を長年の調査結果から検討した事なのですが、本当に在宅酸素療法をする基準をPAO2 の動脈血レベルで55あるいは60と言うレベルでよろしいか。実は保険上も適用の中に先程からもお話しのありました酸素オキシレーターを使った酸素飽和度で評価しても良いのではないかと言う事ですね。PAO2の55トールという値はSPO2で換算すると約88と言う数字が出て参ります。87と言う方もおられます。そこへ一線を引いてそれ以下の場合は明らかな低酸素血症であるから、それでもって在宅酸素療法の適用と決めてよろしいという風に現在なっている訳ですね。ところが色々な問題がございます。患者さんは PAO2が例えば65であっても一寸動いたらとてつもない息苦しさを訴えます。その方に酸素を使う事によって動かすと極めて快適に動きが出来るような患者さんの対処はどのようにするか。これは運動負荷を掛けた時の低酸素血症、あるいは夜間寝ている時は酸素分圧が下がって参ります、と同時に酸素飽和度も下がって参ります。これが寝ている時ある一定の限界より下がってくる場合に夜間のみ酸素を使ったらどうだろうか。しかし昼間は基準から言えば低酸素血症で無い。しかし寝ている時に明らかに酸素が下がってくる人はどうしたら良いか。こう言ったものの基準を再検討しょう。それからとてつもない呼吸困難感を訴える方に対してどうするか。更に話題になっているのが、胸腔健下レーザー治療と同時にボリュムリダクションサーベルと言いまして、肺の気腫性の変化の部分を取って残っている比較的動きの良い肺の機能を伸ばしてやろうと言ったようなやり方が今話題になっています。これも呼吸器の専門施設が段々やる医療法として注目されています。
それからもうひとつ我々が欠けていたのが栄養対策ですね。一般的に呼吸の低肺機能の患者さんというのはやせていると言う事で、それは結果的にそうなんだと思ってい訳ですが、意図的に呼吸数に力をつけてあげるべきではないかと言う事で、栄養管理の事をこれからも大きな問題点として対応していこうと言う事になっています。
それからシステムの問題としては、今日も色々なお話しを聞きまして感激した事は、それぞれの地域医療における医療と言うのはある程度医師が指導権を握るべきな訳ですけれど、いろんな方との連携、いわゆる地域医療と言うシステムを作らなければならないと言う事になろうかと思います。こんな事が今後呼吸不全の患者さんを通じまして色々考えられる事ではないかと思います。
次に、これは古いデーターですが、現在我々の施設で70例程の在宅酸素療法をされている方がいらっしゃいますが、その中の疾患例を見てみますと、肺気腫が約40%、結核の後遺症が約20%、間質性肺炎が約12%、拡張症が約7%それから肺ガンが3%程度ですが最近は増えて来ている。主にこう言った病気が在宅酸素療法をお受けになる方の背景の疾患であると言う事になります。
在宅酸素療法の問題点が出てきました。パルスオキシメーターを使用する事によって、HOTの適用を決めてもよろしいと言う事になった訳ですけれど、ただしこれでもってどの施設でも簡単に出来るようになった反面先程申し上げましたように、“いざ”と言う時の対応の配慮が無いと、どこでも誰でもと言ったものが結果的には患者さんに非常に迷惑をかけてしまうと言う事が最近は問題として出ています。我々研究班でやった事では、改善51%、不変45%、悪化4%、全体的に満足度90%であったと言う良い結果が得られています。
時間の都合もありますので、ここから病態的な事になりますが簡単に触れておきます。呼吸不全と言う病態に関しましては、いろんな臓器の障害を伴うのだと言う事。これは私自身ドクターに対して盛んに教育している訳ですけれど、呼吸器の障害は結果的には中枢神経系、肝臓、循環、消化器、じん臓、血液。従いまして人間の体のいろんな所に障害を起こす病態であると言う事を認識して、そうすると全身管理と言う配慮が大事であるといつも強調しております。
この呼吸困難とは Hough-Jonesの呼吸困難度分類と言いますが、この定義は未だに変わっていません。これは 〜 度に分けますけれど、普通は平地は問題無く動けると言うのが 度です。平地は歩けても坂道、階段は健康者並に出来ないのが 度。平地でさえ健康者並に歩けないが、自分のペースなら 1.6 以上歩けるのが 度。休みながらでなければ50 以上歩けないのが 度。会話、着物の着脱にも息切れがする、息切れのため外出が出来ないが 度。高炭酸ガスの事が先程も問題になりましたが、どちらにしても低酸素血症、高炭酸ガス血症は頭痛と言う事を重要視して下さい。“羽ばたき振戦”と言うのが以外と見落とされていますが、高炭酸ガス血症の場合は重要なサインです。こう言った臨床所見をある程度重要視して患者さんを診て行きたいと言う事であります。
それから急性の高炭酸ガス血症の症状の中で、実はこの炭酸ガスの基礎値を見ておけばCO2 が50トールとすれば10トール上がれば60ですね。60上がっても上がった時点で脈拍増大を伴う発汗、そして65になれば“羽ばたき振戦”30トール以上になれば意識障害のこん睡を伴う訳ですけれども、しかし普通 型の呼吸不全は50なんて言うのは当たり前ですね。その方が基礎値が60、あるいは70と言う値であった場合にはその方が80になった85になったと言っても必ずしもそんなに慌てなくても良いのだと言っている訳です。従いまして炭酸ガスの値は、その人その人の病態によって違うんだと言う事を再認識する。これは医者側の判断ですけれど、従って先程言ったように値が70だからと言う事で必ずしも慌てなくてよろしい。70でちゃんとその人なりに一応生活が出来る方がいらっしゃる訳ですね。その当たりをちゃんと見てあげましょう。そのためには10、15、30と言ったような形で臨床症状がひとつに対してそれ以上起こる事を認識しておけばよろしいのではないでしょうか。もちろんこのレベルになれば、あるいは傾眠状態になればこれは人工呼吸管理を考慮すべき状態である事は間違いありません。
肺性心の事も少しお話ししようとして用意したのですが、これも古いスライドの様ですが、この理論と言うのはほとんど変わっておりません。従いまして、皆様方に今知っていただきたい事は慢性の肺疾患があってそして低酸素血症、あるいは機能的な障害があって低酸素血症を呈した場合には、肺高血圧症と言う病態と多血症と言う病態があるのだと言う事ですね。そして結果的には右心不全と言う病態を作ると言う風に理解しておけばよろしいのではないかと思います。
次に、これは先程もお話しがありました酸素飽和度の問題ですけれど、血液が流れ出ている所の指に発光ダイオードから光を発して受光ダイオードでもって酸性ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの量を計る事によって、その方の酸素がどれくらい飽和されているかと言う事を見る器械です。パルスオキシメーターと言うのはいろんな所で使用されていますのでこれは省きます。
そして先程渡辺先生がお話しされていましたけれど、PO2と酸素飽和度、今はSPO2と言う言葉を使った方が良いかと思いますけれど、例えば PO2でぎりぎり50のところが83、これはもちろん曲線が一定していると言う条件で計算しているのですが60で89、そしてこの間をとって先程言いました55と言う酸素飽和度で87とか88と言う数値が出て来る訳ですね。このあたりを中心に考えていきましょう。しかし PO2が50以下になりますとここから先はドーンと下がって参ります。その計算の仕方が色々ある訳ですけれども、ここから下がってくればどうしても動脈血が50以下で危険であると言う事で酸素飽和度が70になったら、50になったからと言う事でこの値でもって的確な評価をしようと思っても当てになりません。こうなったらもうとにかく病院に運ぶしか無いと言う事しかしここから上だったら最低限89とありますけれど90を目安としておけば酸素飽和度は60は出来ていると言う事になります。少なくとも60以上有れば、いわゆる低酸素血症で命を失う事は無いだろうと言う事になります。だからこの値90あるいは88あたりを重要視していただきたいと言う事になります。
次に急性増悪の時にいろんな問題が出て参りまして、いずれにしても慢性呼吸不全と言う病態は急性増悪が生命の予後を一番決定いたします。その中には感染症そして心不全と書いていますが、これは右心不全そのものが悪くなったものです。それから低酸素血症および高炭酸ガス血症などの場合には呼吸中枢を抑制する事を作った場合には注意しないと、そしてそう言った場合には高濃度酸素投与は注意して下さい。こう言った事を悪くなった時にはどう言った事が言えるかと言う事を検討する必要があると言う事です。
次に極々簡単に現状をお話しします。昨年まとめたものですが、平成5年から平成9年まで色で分けていますがこれは中四国の地区で呼吸不全研究会と言うのを毎年行っています。広島で毎年やる訳ですけれども、私は四国地区の責任者と言う事で毎年とっている訳です。いろんな医療機関にまずアンケートしてみましたが回収率がいいという事です。愛媛県は特によろしくて91%の回収率で 195施設から頂いています。ではどれくらいやっているかですが、5年間の累計で広島では4400例、愛媛県では2039例の方が在宅酸素療法を受けている。現在の症例数が平成9年では 742例と言う事になっています。広島が倍弱ですかね。こう言った傾向であります。でも毎年どの県も在宅酸素療法を受けられる方が増えている。
CO2 の場合ですが、中四国の場合酸素濃縮器が81%、液体酸素が3%くらいであったと言う事です。全国平均でいくと7%です。ボンベが約16%と言う事です。
HOTをやる時の実施率ですが愛媛県では施設数に関してどのくらいやっているかと言う事ですが、42%の方が呼吸不全に関してこう言った治療をお受けになっていると言う事です。
基礎疾患は肺気腫を中心としたCOPDと言う状態、結核は段々減っています。肺気腫が増えています。これは私共の施設のデーターと同じような結果ではないかと思いますけれど、少しずつ肺ガンの症例が増えて来ていると言う事になります。
こういった治療をする場合には訪問看護と言うのが必要な訳ですけれど、中四国全体的に見ますと半数の施設が訪問看護を行っていると言う成績が得られています。残念ながら我々の施設では訪問看護が現在出来ていません。愛媛県は全体的に見ますと56%の施設で訪問看護を行っています。しかし一番沢山やっている我々の施設ではこれをやっていないと言う事で、その辺が今後の大きな問題点ではないかと思います。で誰がやっているかと聞いて見ますと、医師と看護婦が一緒にやっていると言うのが圧倒的に多いようです。看護婦さんが単独と言うのは思ったほど無いですね。医師が一緒に行くと言う事が多いようです。
パルスオキシメーターの使用頻度も全体的に見ますと、愛媛県で79%と毎年増えながら患者さんの管理を行っていると言う事です。県病院だけで見ますと一昨年の3月の時点で中央病院が190例、新居浜はもともと呼吸器の病院が多いのですが130例、今治が79例と言った感じで実施していると言う事です。愛媛県全体で見ますと決して少なくは無い、全国10万単位で見ますと40ですが愛媛県は46で全国平均より少し上回っていると言う事です。そう言った患者さんに対しては、わたくし10数年やって参りましたが、患者さんの教育と言う事でその中には医師のみならず、看護婦さんたちと一緒に2週間に4日の繰り返しでやっています。個々の患者さんの指導を医学療養士さんの指導で、その人に応じた酸素濃度の設定で在宅療法へと言う事でやっております。
国際的な問題として、喘息は1億5千万人で増加している。過去10年間に20%から50%増加して医療費が膨大になる。そして100万人の方が喘息死している。日本ではどうかと言うと数値は減っているのですがここ10年間はほとんど変化が無いと言う事になっています。若干減少傾向にありますけれど、医療は喘息に対する考え方、病態管理いろんな面で進歩しているのですけれど、喘息死と言うのは変わっていないと言うのが社会的な問題になって来ています。
これも私がやった事ですが、喘息で命を失った方と挿管をして助かった人とを比較検討した訳ですね。かなり詳細な分類をして見ました。その結果はどう言う事かと言いますと、要するに受診のタイミングが悪かった。来院時CPAOAの状態では喘息の患者さんを助ける事は出来なかった。すると分の単位で受診までにCPAOAにならないように連れて来た人は助かったと言う結果が出ました。
先程日赤の中橋先生が説明されましたけれど、喘息発作死は窒息である。そして急速型、不安定型とし、在宅死あるいは搬送中の死亡が高く、病院前治療が重要である。従ってCPAOAの状態ではあまり助からない。そこに本人、家族あるいは周辺住民、救急隊員の役割が極めて重要であると言う事になろうかと思います。
先程ご紹介がありましたように、喘息死を防ぐための喘息救急医療の在り方として厚生省の救急災害医療研究機構と言う所で救急隊向けのマニュアルを作りました。これは救急救命士制度に基づいて救急隊がどこまで喘息の現場に対応出来るかと言う事でマニュアル作りをしています。極力救急救命士の方が出来る仕事を最大限導入して作ったものでございます。そして酸素吸入の問題だとかまだ問題はございますけれど、基本的には搬送すると言う事を原則とすれば一応酸素をあげるべきであると言うのが今の皆様方のコンセンサスが得られている。しかしいつも問題になります炭酸ガスが蓄積する状態 CO2ナルコーシスに対する配慮はその都度対応する事が原則であろうかと思います。これが一番大事なのは、救急隊員の現場医療が行われるためには、医師の指示と言う事もありますけれど、それぞれの地域医療における医師会あるいは二次、三次の医療機関、消防署もですけれど、こう言ったいろんなグループがひとつの連携と言う事を本当に考えないと“絵に書いたもち”と言う事になるのではないかと言う懸念がいつもございます。
日本の喘息に関するガイドライン作成委員会の委員としてやっていますけれど、そう言った喘息に対してどうするかと言った一般的な知識を普及すれば喘息死の減は期待出来る。そして会員への喘息救急医療への積極的参加と各自治体の救急体制に応じた喘息教育。これ実はエジンバラとパリでこう言った喘息の救急医療マニュアルを作ったそうです。論文として発表されているそうですが、喘息死はこれにもって半分以下に減らす事が出来たと、フランス、イギリスでもデーターとして出て来ています。
今日は過去の事をお話ししましたので、少し時間が超過いたしましたけれど、こんな事を考えながらやっているのだと。これを実現するためにはやはり先程からも強調いたしましたとおり争いでなくて、いつもそれぞれの地域における新医療システムを確立しなければならないのではないか。特に救急医療に関してはそう言う事が一番大事ではないか。喘息と言う病態を通じて色々考えております。本日は何かお役に立てばと思っています。ご静聴ありがとうございました。
長時間にわたりまして、終始、熱心にご指導いただきました顧問の先生方をはじめ、発表者の皆様ありがとうございました。
会場にお集まりの会員の皆様、本日の松山大会いかがだったでしょうか。
手前みそにはなりますが、今後それぞれの立場における活動の参考になるものと確信いたしております。
本大会を開催するにあたり、竹村会長はじめ、実行委員、中予地区の会員の皆様には、御支援、御協力いただきまして、無事大会が終了できますことを、この場をお借りしまして厚くお礼申し上げます。
最後に私自身の願いを申し上げます。未熟な私ではございますが、実行委員長として、大会を計画・実行し、また、このステ−ジに立てたことについて、今、大きな充実感を味わっています。皆さんには是非、演者の一人となり、ステ−ジに立ってこの感動を味わっていただきたいというのが願いです。
秋に予定されている次回今治大会も、皆様の御支援により充実したものとなりますよう祈念いたしまして、大会を終わらせていただきます。本日はありがとうごさいました。
5.閉会あいさつ
大会実行委員 織 川 真 二