乳児の心肺蘇生法について |
■乳児における心肺蘇生法
(プレホスピタルケア・ホームページ)
■1歳未満の小児での口・口鼻人工呼吸は可能か
(第24回日本救急医学会、1996年・抄録)
1歳未満の小児への心肺蘇生では、口・口鼻人工呼吸が推奨されている。しかし、現
実に口・口鼻人工呼吸が可能であるかどうか十分に検討されていない。そこで、今回
、母親が1歳未満の子供に対して口・口鼻人工呼吸が行なえるかどうか検討したので
報告する。
消防本部の小児心肺蘇生法の講習会に参加した92名の母親とその
子供を対象として小児では口を閉じた状態で下記の場所の測定を行なった。母親の口
の横径の測定では、口紅を付け、マネキン(レサシーベイピー)上にガーゼを置き、
実際に人工呼吸を行なってもらい、ガーゼ上についた口紅から口の横径を測定した。
また、口を開けた状態で母親の口の横径も測定した。
母親の口の横径(A)は 4.5 ± 0.6 cmで、実測した横径は 4.3 ± 0.6 cmであった。口・口鼻人工呼吸を行な
うのに必要な小児の B + C + D の長さは 6ヵ月以下(38名)では、5.6 ± 0.8 cm,12ヵ月
以下(54名)では、5.5 ± 0.4 cm、マネキンでは、5.5 ± 0.4 cm であった。口・鼻人
工呼吸を行なうのに必要な小児の B + C の長さは 6ヵ月以下では、3.8 ± O.6 cm,12ヵ
月以下では、3.8±0.6 cmであった。また、母親が我が子に口・口鼻人工呼吸が可能
であったのは 92名中 7名(7.6%)で、口・鼻人工呼吸が可能であったのは 92名中 74
名(80.4%)であった。
口・口鼻人工呼吸は不可能に近く、1歳未満の小児
の人工呼吸として、口・口鼻人工呼吸よりも口・鼻人工呼吸をもっと啓蒙普及させる
必要がある。
上記の知見より、乳児の人工呼吸法は以下のように行うのがよいと考えられます。
1)鼻の上部に、お母さんの口角を置く。
2)そこから、口を大きく開ける。
3)あご先を上げる(気道確保)
4)人工呼吸
◎赤ちゃんの口を完全に被えなくても、あご先の挙上で口を塞ぐので、空気の漏れは少ない。また。入り過ぎの時は、漏らすことで調節可能
注:先にお母さんの口角を赤ちゃんの下唇に置かない。お母さんの口が赤ちゃんの鼻翼までしか被えない場合がある。この場合、鼻翼は柔らかいので、鼻を塞ぎ、人工呼吸が困難になる場合がある。
1歳未満の小児での口・口鼻人工呼吸は可能か
秋田大学医学部救急医学講座 円山 啓司 他
(第24回日本救急医学会総会、1996年・抄録)A 4.5 cm(ガーゼ)、4.3 cm(実測)
B 2.6 cm(6ヵ月未満)、2.7 cm(6〜12ヵ月)
C 1.2 cm(6ヵ月未満)、1.2 cm(6〜12ヵ月)
D 1.5 cm(6ヵ月未満)、1.8 cm(6〜12ヵ月)
E 1.9 cm(6ヵ月未満)、1.8 cm(6〜12ヵ月)B+C+D 5.4 cm(6ヵ月未満)、5.6 cm(6〜12ヵ月)
→ 母親の口で赤ちゃんの口鼻を塞ぐのは困難B+C 3.8 cm(6ヵ月未満)、3.8 cm(6〜12ヵ月)
→ 母親の口で赤ちゃんの鼻を塞ぐことは可能