寝ている乳児の呼吸がいつのまにか止まる。年間 600人が犠牲になるという SIDS(乳幼児突然死症候 群)。広島市安佐南区で託児所を経営する中村徳子さん(38)=写真=が18日、母 親や保育関係者を対象に、乳幼児の蘇生(そせい)法の講習会を同区中筋 一丁目の安佐南区民文化センターで開く。
3年前の夏。託児所で預かっでいた乳児がSIDSで亡くなった。うつぶせに寝ていた小さな四カ月の命の、呼吸が静かに止まったのに気づかなかった。
警察の事情聴取、マスコミの殺到。「人殺し」「虐待」との非 難。だが、何よりも「もっと早く気づいていたら」。自分を責めて自殺も考えた。そ んな中村さんを救ったのは、母親の「子どもの死を無駄にしな いでほしい」の一言だった。
英語版のインターネットのホームページを作り、最新の情報を国内と世界に発信し続ける。全国の自治体にも資料を送った。幼稚園や保育園 、保護者から問い合わせの電話、手紙が来るよらになった。
託児所の一室には、亡く なった乳児の写真が飾られている。託児所を利用する保護者には、事情を隠さず 話す。託児室の壁は、SIDSの予防法を説明する手書きのポスターがあふれる。
朝夕、仕事と活動、四児育児に追われる。今でも三年前のフラツシュバックに悩 む。「亡くした命は取り戻せない。けど、一人でも多くの人にSIDSのことを知っても らいたい」。講習会では、市立秋田総合病院の円山啓司医学博土が、SIDSの予防法や 救急蘇生について講習する。受講料無料。申し込み、問い合わせは、8日までに中村 さん(082・878・9219)へ
お断り:この記事は1998年4月7日の朝日新聞広島版(朝刊)より、同社の承諾を得て転載させていただきます。朝日新聞社に無断で複製、翻訳、送信、出版、頒布、するなど著作権を侵害する一切の行為を禁止します。また記事本文の改変を禁止します。 |
眠っている間に赤ちゃんが突然死亡する、乳幼児突然死症候群(SIDS)を防ぐための救命講習会が18日、広島市内である。市内の無認可保育園「託児マママミーサービス」(中村徳子園長)が、秋田市から医師を招き開く。
SIDSは、元気だった赤ちゃんが突然死亡してしまう病気。原因ははっきりしていないが1歳未満の赤ちゃんに多く、うつぶせ寝や暖め過
ぎなどが関係しているとみられる。日本では年間約600人がこの病気で亡くなってい
る。
一昨年から予防を呼び掛けている中村さんは、三年前、託児中の乳児をSIDSで亡
くした。「この病気のことが気になりながら、予防方法などを深く知ろうとしなかったことが悔やまれた。多くの人にSIDSのことを知ってもら
いたい」。予防と同様、起きた場合の的確な処置も大切と、今回の講習会を計画した
。
講師の円山啓司さんは、秋田市立秋田総合病院の医師。救急車が到着するまでの応
急処置を電話で伝える口頭指導(秋田方式)のマニュアル化を手掛けた。SIDSの予防や、口鼻人工呼吸などの救命方
法について話す。広島市安佐南消防署の救命講習もある。
午前 9時15分から午後 2時半まで。場所は安佐南区民文化センターで、受講無料。参加申し込みは同保育園 電話 082(878)9219、ファクス(878)7923まで。乳幼児突然死予防しよう
18日に広島市で無料講習会
人工呼吸など救命指導も
(中国新聞、980412)