Capnography - Principles and Practice Good ML,ASA 1996 Annual Refresher Course Lectures,226(1006、1997)
Sidestream capnograph は呼吸回路から気体を吸引して分析を行う。一方,mainstream capnograph は呼吸回路に組みこまれており,呼気を採取しないで測定できる。表1に両者の利点と欠点を示した。 成人症例が多い施設では sidestream capnograph が他の呼気ガスの分析ができ,挿管していない患者 の呼吸のパターンをモニターすることもでき,便利である。新生児や乳児を主に扱う施設では,呼吸 回数が多いので,より早い反応時間を持ち,水分の問題が少ない mainstream capnograph が便利である。
呼気中に CO2 が存在しないときには,換気ができていないのではないかとまず疑う。他の原因とし て,食道挿管,回路の接続不良,抜管,無呼吸が考えられる。
気管内 tube は気管内にあるか?
挿管 tube が正しい位置にあることを証明する最も重要な器具が capnograph である。しかし,稀に 擬陽性や擬陰性がある。
擬陽性(気管内挿管ができていないのに,CO2 の波形が得られる)
擬陰性(気管内挿管ができているのに,CO2 波形がでない)
心停止時の capnograph
正常な capnograph は換気と適正な肺血流の両者を必要とする。呼気中の CO2の欠如は,食道挿管ではなく,肺血流の不足を意味する。心停止時に挿管して呼気中の CO2 がわずかか全然無い場合は,喉頭鏡で tube が声帯を越えていることを確認しなければならない。心マッサージ等の処置で tube の位置がずれて食道へ落ち込むことがあるので,喉頭鏡による tube の確認操作は繰り返して行う必要がある。
心臓が動き始めると,肺血流が増加して,呼気中 CO2 の急速な増加がみられる。
心電図や末梢での脈拍触知と違い,capnograph は CPR 中の機械的 artifact に反応しないので,CPR の中止はこの徴候をみるまではすべきではない。心停止患者では,呼気中の CO2 濃度が10〜15mmHg 以上あると蘇生率が良い。
Inspiratory baseline の上昇(図4c)
Expiratory upstroke の延長(図4a)
Expiratory plateau の異常
Expiratory plateau の分裂は,患者の自発呼吸を示す(図4c)。この場合は患者が低酸素血症になっていないか,高炭酸ガス血症になっていないか注意する。
多くの臨床医がこれ curare cleft と誤って称して不適切な筋弛緩を示すと 考えていた。筋弛緩薬の投与は末梢神経刺激装置を指標にすべきである。麻酔が浅い場合にも自発呼吸が出る。
呼吸回路に漏れ(カフ周り等)がある場合,expiratory plateau は最後が なだらかな slope になる(図5)。Cardiogenic oscillations (図4e)は, expiratory plateau が心臓の拍動を反映してゆれながら減少する。
肺のコンプライアンス,気道抵抗,換気血流比が両肺で異なる場合には,二 相性の expiratory plateau がみられる。例…重症の kyphoscoliosis (図 6)や片肺移植時(図7)。
Inspiratory downstroke の延長(図4b)
CO2 濃度の最少値と最大値は?
動脈血中の CO2 と呼気中の CO2 の較差は?
動脈血中の CO2 と呼気中の CO2 の較差は3〜5 mmHg (04〜13mmHg)といわ れている。較差を広げる要素は,1.換気血流不均等,2.CO2 採取部位と混合静脈血の較差,3.器械の故障である。
動脈血中 CO2 が呼気中 CO2 より低値の場合
帝切時にみられる。FRC の減少による肺胞内 CO2 の変化による。呼気ガス中のCO2 は動脈血中の CO2 より低値だが,呼気の後期では CO2 が急激に上昇して動脈血中 CO2 を越える。
高炭酸ガス血症と低炭酸ガス血症の原因の追求
高炭酸ガス血症(呼気中 CO2 > 45 mmHg)は,a)肺胞内低換気,b)再呼吸,c)CO2 産生の増加に大別される。a)は麻酔中では,呼吸回路の漏れ,接続不良,閉塞,人工呼吸器の作動不良等がある。b)は capnograph で容易に見つけられる。c)は内因性と外因性がある。呼気中 CO2 の急激な増加(70〜90 mmHg)は悪性高熱(MH)時にみられる。多くの医師がこれを MH の最初の徴候とみなしている。熱性疾患も代謝を増加し,CO2 の産生が増えるが,1℃の上昇で10%代謝が増加するので程度は軽い。他の原因は,血管のクランプやターニケットの解除時である。外因性では laparoscopy 時の腹腔内への CO2 の吹き込みと,HCO3-の静脈内投与がある。
呼気中 CO2 の低値は,1)過換気,2)動脈血中 CO2 と呼気中 CO2 の較差の拡大がある。麻酔中の人工呼吸では過換気が普通である。CO2 の排出の低下は低体温の患者では代謝の低下を反映する。肺胞換気が一定なら,CO2 の排出量は心拍出量の変化に並行する。