大規模地震対策特別措置法(抜すい)

昭和53年6月15日、法律第73号


(地震防災対策強化地域の指定等)

第3条  内閣総理大臣は,大規模な地震が発生するおそれが特に大きいと認められる地殻内において大規模な地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため,地震防災に関する対策を強化する必要がある地域を地震防災対策強化地域(以下「強化地域」という。)として指定するものとする。

4 内閣総理大臣は,第1項の規定による強化地域の指定をしたときは,その旨を公示しなければならない。

<政令・告示>


告示

大規模地震対策特別措置法第3条第1項の規定に基づき地震防災対策強化地域を指定

〔昭和54年8月7日総理府告示第26号〕


大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73号)第3条第1項の規定に基づき地震防災対策強化地域を次のとおり指定したので,同条第4項の規定により公示する。

東海地震に係る地震防災対策強化地域

県名 神奈川県

区域 平塚市,小田原市,茅ケ崎市,奏野市,厚木市,伊勢原市,海老名市,南足柄市,高座郡,中郡,足柄上郡及び足柄下郡の区域

県名 山梨県

区域 甲府市,富士吉田市,塩山市,都留市,山梨市,大月市,韮崎市,東山梨郡春日居町,同郡牧丘町,同郡勝沼町,同郡大和村,東八代郡,西八代郡,南巨摩郡,中巨摩郡,北巨摩郡双葉町,同郡明野村, 同郡自州町,同郡武川村,南都留郡及ぴ北都留郡上野原町の区域

県名 長野県

区域 飯田市,伊那市,駒ケ根市,上伊那郡飯島町,同郡中川村,同郡宮村,下伊那郡鼎町,同郡松川町,同郡高森町,同郡阿南町,同郡上郷町,同郡阿智村,同郡下条村,同郡天竜村,同郡泰阜村,同郡喬木村, 同郡豊丘村及び同郡南信濃村の区域

県名 岐阜県

区域 中津川市の区域

県名 静岡県

区域 全域

県名 愛知県

区域 新城市の区域

備考 この表に掲げる区域は,昭和54年8月7日における行政区画その他の区域によって表示されたものとする。


阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(抜すい)

平成3年3月1日、法律第16号


第5章 厚生省関係

(病院の災害復旧に関する補助)

第18条 国は,次項各号に掲げる病院の開設者に対し,阪神・淡路大震災により著しい被害を受けたその開設する病院の災害復旧に要する費用(次項第2号に掲げる病院にあっては,政令で定める施設の災害復旧に要する費用)について,他の法令の規定にかかわらず,予算の範囲内において,その一部を補助する。

2 前項の規定により国が行う補助の割合は,次の各号に掲げる病院の区分に応じ,それぞれ当該各号に定める割合とする。

1 特定被災地方公共団体の開設する病院 3分の2

2  その他政令で定める病院2分の1

第88条 第81条から前条までの規定は,平成7年1月17日から適用する。

政令

阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第2条第1項の特定被災地方公共団体である市町村を定める政令をここに公布する。 御名 御璽 平成7年3月1日

内閣総理大臣 村山富市

政令第40号

阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第2条第1項の特定被災地方公共団体である市町村を定める政令

 内閣は,阪神,淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成7年法律第16号)第2条第1項の規定に基づき,この政令を制定する。

 阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第2条第1項の政令で定める市町村は,豊中市,神戸市,尼崎市,明石市,西宮市,芦屋市,伊丹市,宝塚市及び川西市並びに兵庫県津名郡津名町,淡路町,北淡町,一宮町,五色町及ぴ東浦町並びに三原郡緑町とする。

 附則

この政令は,公布の日から施行する。

内閣総理大臣 村山富市  
  大蔵大臣 武村正義  
  文部大臣 与謝野馨  
  厚生大臣 井出正一  
農林水産大臣 大河原太一郎
通商産業大臣 橋本龍太郎 
  運輪大臣 亀井静香  
  建設大臣 野坂浩賢  
  自治大臣 野中広務  

政令

 阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の厚生省関係規定の施行等に関する政令をここに公布する。

御名御璽

平成7年3月1日

内閣総理大臣 村山富市

政令第42号

阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の厚生省関係規定の施行等に関する政令

 内閣は,阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成7年法律第16号)第18条第1項及び第2項第2号,第21条,第22条,第23条第2項並びに第54条第3項並びに厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第129条第3項の規定に基づき,この政令を制定する。

(政令で定める病院及びその施設)

第1条  阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(以下「法」という。)第18条第2項第2号の政令で定める病院は,次の表の上欄に掲げるとおりとし,同条第1項の政令で定める施設は,同表の上欄に掲げる病院ごとに,それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。

病院

医療法(昭和23年法律第205号)第31条に規定する者(都道府県,市町村及び地方自治法(昭和22年法律第67号)第284条第1項に規定する一部事務組合を除く。)の開設する病院国及び地方公共団体の救急医療の確保に関する施策に協力して,休日診療又は夜間診療を行っている病院及び救急医療に係る高度の医療を提供している病院(国,労働福祉事業団及び医療法第7条の2第1項各号に掲げる者の開設する病院を除く。)の開設する病院

施設=当該病院の有する施設

病院

国および地方公共団体の救急医療の確保に関する施策に協力して、休日診療又は夜間診療を行っている病院及び救急医療に係る高度の医療を提供している病院(国、労働福祉事業団及び医療法第7条の2第1項各号に掲げる者の開設する病院を除く。)

施設=当該病院の有する施設のうち,救急医療を行うために必要なもの

病院

精神保健法(昭和25年法律第123号)第5条の規定による指定を受けている病院

施設=当該病院の有する施設のうち,精神障害の医療を行うために必要なもの


地震防災対策特別措置法(抜すい)

平成7年6月16日、法律第111号


(地震防災緊急事業5箇年計画の作成等)

第2条 都道府県知事は,人口及ぴ産業の集積等の社会的条件,地勢等の自然的条件等を総合的に勘案して,地震により署しい被害が生ずるおそれがあると認められる地区について,災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第40条に規定する都道府県地域防災計画に定められた事項のうち,地震防災上緊急に整備すべき施設等に関するものについて平成8年度以降の年度を初年度とする5箇年間の計画(以下「地震防災緊急事業5箇年計画」という。)を作成することができる。

(地震防災緊急事業5箇年計画の内容)

第3条 地震防災緊急事業5箇年計画は,次に掲げる施設等の整備等であって,主務大臣の定める基準に適合するものに関する事項について定めるものとする。

7  医療法(昭和23年法律第205号)第31条に規定する公的医療機関その他政令で定める医療機関のうち,地震防災上改築又は補強を要するもの。

第4条  地震防災緊急事業5筒年計画(最初に作成されたものに限る。)に基づいて当該計画期問内の各年度分の事業として実施される事業のうち,別表第1に掲げるもの(主務大臣の定める基準に適合するものに限る。)に要する経費に対する国の負担または補助の割合(以下「国の負担割合」という。)は,当該事業に関する法令の規定にかかわらず,同表のとおりとする。この場合において,これらの事業のうち,別表第2に掲げるもの(都道府県が実施するものを除き,主務大臣の定める基準に適合するものに限る。)に要する経費に係る都道府県の負担又は補助の割合(以下「都道府県の負担割合」という。)は,同表に掲げる割合とする。

(財政土の配慮等)

第6条  国は,この法律に特別の定めのあるもののほか,地震防災対策の強化のため必要な財政上及び金融土の配慮をするものとする。

別表第1(第4条関係)

国の負担割合
事業の区分
へき地における公立の診療所であって政令で定めるものの改築 国の負担割合2分の1

政令

政令第295号

平成7年7月14日

地震防災対策特別措置法施行令

第1条地震防災対策特別措置法(以下「法」という。)第3条第l項第7号の政令で定める医療機関は,国及ぴ地方公共団体の救急医療の確保に関する施策に協力して,休日診療若しくは 夜間診療を行っている病院又は救急医療に係る高度の医療を提供している病院(これらの病院のうち,国,労働福祉事業団及び医療法(昭和23年法律第205号)第7条の2第1項各号に掲げる者の開設するものを除く。)とする。

告示

○厚生省告示第87号

地震防災対策特別措置法(平成7年法律第111号。以下「法」という)第3条第l項及び第4条第1項の規定に基づき,同法第2条第1項の地震防災緊急事業5箇年計画に定める施設等の整備等及び国の補助の特例の対象となる地震防災緊急事業に係る主務大臣の定める基準を次のように定める。

平成8年3月19日

厚生大臣 管直人

第1 法第3条第l項の地震防災緊急事業5箇年計画に定める施設等の整備等に係る主務大臣の定める基準は次のとおりとする。

1 法第3条第1項第7号の医療機関のうち,構造耐力,保存度及び外力条件にかんがみ,大規模な地震の発生により倒壊その他の事故による被害を受けるおそれがある施設及び設備の改築又は補強であること。

告示

○厚生省告示第88号

 地震防災対策特別措置法施行令(平成7年政令第295号)第2条第2項の規定に基づき,厚生大臣が定める公立の診療所を次のように定める。

平成8年3月19日

厚生大臣 管 直人

次に掲げる要件を満たす診療所

1 当該診療所からの距離が4キロメートル以内の区域に他の医療機関が存しないこと。

2 市町村の区域内の町又は字であって,前号に規定する区域内にその全部の区域が含まれるものの人口(当該診療所に係る地震防災対策特別措置法(平成7年法律第111号)第4条第1項の事業の実施年度の前年度の3月31日において住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)に基づき住民基本台帳に記録されている住民の数をいう。)の合計が干人以上であること。

3 当該診療所から最寄りの医療機関に通常の経路及び方法により30分以内に到達することができないこと。


建築物の耐震改修の促進に関する法律

平成7年10月27日、法律第123号


 平成7年10月27日

法律第123号

 建築物の耐震改修の促進に関する法律

目 次

第1章  総則(第1条)
第2章  特定建築物に係る措置(第2条―第4条)
第3章  建築物の耐震改修の計画の認定(第3条―第10条)
第4章  雑則(第11条―第13条)
第5章  罰則(第14条―第16条)
附 則


第1章  総則

(目的)

第1条  この法律は,地震による建築物の倒壊等の被害から国民の生命,身体及び財産を保護するため,建築物の耐震改修の促進のための措置を講ずることにより建築物の地震に対する安全性の向上を図り,もって公共の福祉の確保に資することを目的とする。

第2章  特定建築物に係る措置

(特定建築物の所有者の努力)

第2条  学校,体育館,病院,劇場,観覧場,集会場,展示場,百貨店,事務所その他多数の者が利用する建築物で政令で定めるものであって政令で定める規模以上のもののうち,地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和25年法律第201号)又はこれに基づく命令若しくは条例の規定(第5条において「耐震関係規定」という。)に適合しない建築物で同法第3条第2項の規定の適用を受けているもの(以下この章において「特定建築物」という。)の所有者は,当該特定建築物について耐震診断(地震に対する安全性を評価することをいう。以下同じ。)を行い,必要に応じ,当該特定建築物について耐震改修(地震に対する安全性の向上を目的とした増築,改築,修繕又は模様替をいう。以下同じ。)を行うよう努めなければならない。

(耐震診断及び耐震改修の指針)

第3条  建設大臣は,特定建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るため,特定建築物の耐震診断及び耐震改修に関する指針を定め,これを公表するものとする。

(指導及び助言並びに指示等)

第4条  所管行政庁(建築主事を置く市町村又は特別区の区域については当該市町村又は特別区の長をいい,その他の市町村又は特別区の区域については都道府県知事をいう。ただし,建築基準法第97条の2第1項又は第97条の3第1項の規定により建築主事を置く市町村又は特別区の区域内の政令で定める建築物については,都道府県知事とする。以下同じ。)は,特定建築物の耐震診断及び耐震改修の適確な実施を確保するため必要があると認めるときは,特定建築物の所有者に対し,前条の指針を勘案して,特定建築物の耐震診断及び耐震改修について必要な指導及び助言をすることができる。

2  所管行政庁は,病院,劇場,観覧場,集会場,展示場,百貨店その他不特定かつ多数の者が利用する特定建築物のうち,地震に対する安全性の向上を図ることが特に必要なものとして政令で定めるものであって政令で定める規模以上のものについて必要な耐震診断又は耐震改修が行われていないと認めるときは,特定建築物の所有者に対し,前条の指針を勘案して,必要な指示をすることができる。

3  所管行政庁は,前項の規定の施行に必要な限度において,政令で定めるところにより,特定建築物の所有者に対し,特定建築物の地震に対する安全性に係る事項に関し報告させ,又はその職員に,特定建築物,特定建築物の敷地若しくは特定建築物の工事現場に立ち入り,特定建築物,特定建築物の敷地,建築設備,建築材料,書類その他の物件を検査させることができる。

4  前項の規定により立入検査をする職員は,その身分を示す証明書を携帯し,関係人に指示しなければならない。

5  第3項の規定による立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

第3章  建築物の耐震改修の計画の認定

(計画の認定)

第5条  建築物の耐震改修をしようとする者は,建設省令で定めるところにより,建築物の耐震改修の計画を作成し,所管行政庁の認定を申請することができる。

2  前項の計画には,次に掲げる事項を記載しなければならない。

1 建築物の位置

2 建築物の階数,延べ面積,構造方法及び用途

3 建築物の耐震改修の事業の内容

4 建築物の耐震改修の事業に関する資金計画

5 その他建設省令で定める事項

3  所管行政庁は,第1項の申請があった場合において,建築物の耐震改修の計画が次に掲げる基準に適合すると認めるとき は,その旨の認定(以下この章において「計画の認定」という。)をすることができる。

1 建築物の耐震改修の事実の内容が耐震関係規定又は地震に対する安全上これに準ずるものとして建設大臣が定める基準に適合していること。

2 前項第4号の資金計画が建築物の耐震改修の事業を確実に遂行するため適切なものであること。

3 第1項の申請に係る建築物,建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分が耐震関係規定及び耐震関係規定以外の建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に適合せず,かつ,同法第3条第2項の規定の適用を受けているものである場合において,当該建築物又は建築物の部分の増築(壁のない部分に壁を設けることにより建築物の延べ面積を増加させるものに限る。)大規模の修繕(同法第2条14号に規定する大規模の修繕をいう。)又は大規模の模様替(同条第15号に規定する大規模の模様替をいう。)をしようとするものであり,かつ,当該工事後も,引き続き,当該建築物,建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分が耐震関係規定以外の同法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に適合しないこととなるものであるときは,前2号に掲げる基準のほか,次に掲げる基準に適合していること。

イ 当該工事が地震に対する安全性の向上を図るため必要と認められるものであり,かつ,当該王事後も,引き続き,当該建築物,建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分が耐震関係規定以外の建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に適合しないこととなることがやむを得ないと認められるものであること。

ロ 工事の計画に係る建築物及び建築物の敷地について,交通上の支障の度,安全上,防火上及び避難上の危険の度並びに衛生上及び市街地の環境の保全土の有害の度が高くならないものであること。

4 第1項の申請に係る建築物が耐震関係規定に適合せず,かつ,建築基準法第3条第2項の規定の適用を受けている耐火建築物(同法第2条第9号の2に規定する耐火建築物をいう。)である場合において,当該建築物について壁を設け,又は柱若しくははりの模様替をすることにより当該建築物が同法第27条第1項,第61条又は第62条第1項の規定に適合しないこととなるものであるときは,第1号及び第2号に掲げる基準のほか,次に掲げる基準に適合していること。

イ 当該工事が地震に対する安全性の向上を図るため必要と認められるものであり,かつ,当該工事により,当該建築物が建築基準法第27条第1項,第61条又は第62条第l項の規定に適合しないこととなることがやむを得ないと認められるものであること。

ロ 次に掲げる基準に適合し,防火上及び避難上支障がないと認められるものであること。

(l) 工事の計画に係る壁又は柱若しくははりの構造が建設省令で定める防火上の基準に適合していること。

(2) 工事の計画に係る壁又は柱若しくははりに係る火災が発生した場合の通報の方法が建設省令で定める防火上の基準に適合していること。

4 第1項の申請に係る建築物の耐震改修の計画が建築基準法第6条第1項の規定による確認又は同法第18条第2項の規定による通知を要するものである場合において,計画の認定をしようとするときは,所管行政庁は,あらかじめ,建築主事の同意を得なければならない。

5 建築基準法第93条の規定は所管行政庁が同法第6条第1項の規定による確認又は同法第18条第2項の規定による通知を要する建築物の耐震改修の計画について計画の認定をしようとする場合について,同法第93条の2の規定は所管行政庁が同法第6条第l項の規定による確認を要する建築物の耐震改修の計画について計画の認定をしようとする場合について準用する。

6 所管行政庁が計画の認定をしたときは,次に掲げる建築物,建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分(以下この項において「建築物等」という。)については,建築基準法第3条第3項第3号及び第4号の規定にかかわらず,同条第2項の規定を適用する。

1 耐震関係規定に適合せず,かつ,建築基準法第3条第2項の規定の適用を受けている建築物等であって,第3項第1号の建設大臣が定める基準に適合しているものとして計画の認定を受けたもの

2 計画の認定に係る第3項第3号の建築物等

7 所管行政庁が計画の認定をしたときは,計画の認定に係る第3項第4号の建築物については,建築基準法第27条第1項,第61条又は第62条第1項の規定は,適用しない。

8 第1項の申請に係る建築物の耐震改修の計画が建築基準法第6条第1項の規定による確認又は同法第18条第2項の規定による通知を要するものである場合において,所管行政庁が計画の認定をしたときは,同法第6条第1項の規定による確認又は同法第18条第3項の規定による通知があったものとみなす。この場合において,所管行政庁は,その旨を建築主事に通知するものとする。

(計画の変更)

第6条 計画の認定を受けた者(以下この章において「認定事業者」という。)は,当該計画の認定を受けた計画の変更(建設省令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは,所管行政庁の認定を受けなければならない。

2 前条の規定は,前項の場合について準用する。

(報告の徴収)

第7条  所管行政庁は,認定事業者に対し,計画の認定を受けた計画(前条第1項の規定による変更の認定があったときは,その変更後のもの。次条において同じ。)に係る建築物(以下・この章において「認定建築物」という。)の耐震改修の状況について報告を求めることができる。

(改善命令)

第8条 所管行政庁は,認定事業者が計画の認定を受けた計画に従って認定建築物の耐震改修を行っていないと認めるときは,当該認定事業者に対し,相当の期限を定めて,その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(計画の認定の取消し)

第9条  所管行政庁は,認定事業者が前条の規定による処分に違反したときは,計画の認定を取り消すことができる。

(住宅金融公庫の資金の貸付けの特例)

第10条  住宅金融公庫が,認定建築物である住宅の耐震改修をしようとする認定事業者に対し,住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号)第20条第4項の規定による限度において同法第17条第5項の規定により資金を貸し付ける場合における当該貸付金の同法第21条第1項の表1の項に規定する当初期間の利率は,同表5の項の規定にかかわらず,年5.5パーセント以内で政令で定める率とする。


第4章  雑則

(資金の融通等)

第11条  国及び地方公共団体は,建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るため,資金の融通又はあっせん,資料の提供その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

(研究開発の促進のための措置)

第12条  国は,建築物の耐震診断及び耐震改修の促進に資する枝術に関する研究開発を促進するため,当該技術に関する情報の収集及び提供その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(国民の理解を深める等のための措置) 第13条  国及び地方公共団体は,教育活動,広報活動等を通じて,建築物の耐震診断及び耐震改修の促進に関する国民の理解を深めるとともに,その実施に関する国民の協力を求めるよう努めるものとする。

第5章  罰則

第14条  第4条第3項の規定による報告をせず,若しくは虚偽の報告をし,又は同項の規定による検査を拒み,妨げ,若しくは忌避した者は,30万円以下の罰金に処する。

第15条  第7条の規定による報告をせず,又は虚偽の報告をした者は,20万円以下の罰金に処する。

第16条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関し,前弍条の違反行為をしたときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても各本条の刑を科する。

附 則

(施行期日)

1  この法律は,公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(建設省設置法の1部改正)

2  建設省設置法(昭和23年法律第113号)の一部を次のように改正する。

第3条 第45号中「及び高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成6年法律第44号)」を「,高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成6年法律第44号)及び建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)」に改める。

建設大臣 森 喜朗
内閣総理大臣 村山 富市


政 令


 建築物の耐震改修の促進に関する法律の施行期日を定める政令をここに公布する。

御名 御璽

 平成7年12月22日

内閣総理大臣 村山富市

政令第428号

建築物の耐震改修の促進に関する法律の施行期日を定める政令

内閣は,建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)附則第1項の規定に基づき,この政令を制定する。

建築物の耐震改修の促進に関する法律の施行期日は,平成7年12月25日とする。

建設大臣 森喜朗
内閣総理大臣 村山富市


建築物の耐震改修の促進に関する法律施行令をここに公布する。

御名 御璽

 平成7年12月22日

内閣総理大臣 村山富市

政令第429号

 建築物の耐震改修の促進に関する法律施行令

内閣は,建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)第2条,第4条第1項から第3項まで及び第l0条の規定に基づき,この政令を制定する。

(特定建築物の要件)

第l条  建築物の耐震改修の促進に関する法律(以下「法」という。)第2条の政令で定める建築物は,次に掲げるものとする。

1  ボーリング場,スケート場,水泳場その他これらに類する運動施設

2  診療所

3  映画館又は演芸場

4 公会堂

5  卸売市場又はマーケットその他の物品販売業を営む店舖

6  ホテル又は旅館

7  賃貸住宅(共同住宅に限る。),寄宿舎又は下宿

8  老人ホーム,保育所,身体障害者福祉ホームその他これらに類するもの

9  老人福祉センター,児童厚生施設,身体障害者福祉センターその他これらに類するもの

10  博物館,美術館又は図書館

11  遊枝場

12  公衆浴場

13  飲食店,キャパレー,料理店,ナイトクラブ,ダンスホールその他これらに類するもの

14  理髪店,質屋,貸衣装屋,銀行その他これらに類するサービス業を営む店舗

15  工場

16 車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場を構成する建築物で旅客の乗降又は待合いの用に供するもの

17  自動車車庫その他の白動車又は自転車の停留又は駐車のための施設

18  郵便局,保健所,税務署その他これらに類する公益上必要な建築物

2法第2条の政令で定める規模は,階数が3で,かつ,床面積の合計が干平方メートルとする。

(都道府県知事が所管行政庁となる建築物)

第2条  法第4条第1項の政令で定める建築物のうち建築基準法(昭和25年法律第201号)第97条の2第1項の規定により建築主事を置く市町村の区域内のものは,同法第6条第1項第4号に掲げる建築物(その新築,改築,増築,移転又は用途の変更に関して,法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定により都道府県知事の許可を必要とするものを除く。)以外の建築物とする。

2 法第4条第1項の政令で定める建築物のうち建築基準法第97条の3第1項の規定により建築主事を置く特別区の区域内のものは,次に掲げる建築物(第4号から第6号までに掲げる建築物にあっては,地方自治法(昭和22年法律第67号)第281条の3第3項の規定により都知事が第4号から第6号までに規定する処分に関する事務を特別区の長に委任した場合における当該建築物を除く。)とする。

1  都市計画法(昭和43年法律第l00号)第8条第1項第4号に掲げる特定街区内の建築物

2  建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第146条第1項第1号に掲げる建築設備を設ける建築物で延べ面積(同令第2条第1項第4号の延べ面積をいう。)が5000平方メートルを超えるもの

3  地価の工作物内に設ける建築物で居室(建築基準法第2条第4号の居室をいう。)の床面積の合計が1500平方メートルを超えるもの

4  その新築,改築,増築,移転又は用途の変更に関して,法律並びにこれに基づく命令及ぴ条例の規定(建築基準法第44条,同法第47条,同法第48条(同法第87条第2項及び第3項において準用する場合を含む。)同法第52条,同法第54条の2,同法第55条,同法第56条の2,同法第59条及ぴ同法第59条の2の規定を除く。)により都知事の許可を必要とする建築物

5  都市計画法第12条の4第1項第2号に掲げる住宅地高度利用地区計画の区域(同法第12条の6第2項第3号に規定する任宅地高度利用地区整備計画が定められている区域に限る。)内の建築物で次のイ又はロに掲げるもの

イ、その新築,改築,増築,移転又は用途の変更に関して,建築基準法第48条第1項から第4項まで(同法第87条第2項及び第3項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定により都知事の許可を必要とする建築物

ロ、その新築,改築,増築又は移転に関して,建築基準法第68条の4第1項から第3項までの規定により都知事が交通上,安全上,防火上及び衛生上支障がないと認めることを必要とする建築物

6  都市計画法第12条の4第1項第3号に掲げる再開発地区計画の区域(都市再開発法(昭和44年法律第38号)第7条の8の2第2項第3号に規定する再開発地区整備計画が定められている区域に限る。)内の建築物で次のイからハまでに掲げるもの

イ、その新築,改築,増築又は移転に関して,建築基準法第44条第1項第3号の規定により都知事が安全上,防火上及び衛生上支障がないと認めることを必要とする建築物

ロ、その新築,改築,増築,移転又は用途の変更に関して,建築基準法第48条第1項から第12項まで(同法第87条第2項及び第3項において準用する場合を含む。)の規定により都知事の許可を必要とする建築物

ハ、その新築,改築,増築又は移転に関して,建築基準法第68条の5第1項の規定により都知事が交通上,安全上,防火上及び衛生上支障がないと認めることを必要とする建築物

(所管行政庁による指示の対象となる特定建築物の要件)

第3条  法第4条第2項の政令で定める特定建築物は,次に掲げるものとする。

1  体育館(一般公共の用に供されるものに限る。),ボーリング場,スケート場,水泳場その他これらに類する運勤施設

2、 病院又は診療所

3、 劇場,観覧場,映画館又は演芸場

4、 集会場又は公会堂

5、 展示場

6、 百貨店,マーケットその他の物品販売業を営む店舗

7、 ホテル又は旅館

8、 老人福祉センター,児童厚生施設,身体障害者福祉センターその他これらに類するもの

9、 博物館,美術館又は図書館

10、 遊枝場

11、 公衆浴場

12、 飲食店,キャバレー,料理店,ナイトクラブ,ダンスホールその他これらに類するもの

13、 理髪店,質屋,貸衣装屋,銀行その他これらに類するサービス業を営む店舖

14、 車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場を構成する建築物で旅客の乗降又は待合いの用に供するもの

15、 自動車車庫その他の自動車又は白転車の停留又は駐車のための施設で,一般公共の用に供されるもの

16 郵便局,保健所,税務署その他これらに類する公益上必要な建築物

2  法第4条第2項の政令で定める規模は,床面積の合計2000平方メートルとする。

(報告及び立入検査) 第4条  所管行政庁は,法第4条第3項の規定により,前条第1項の特定建築物で同条第2項に規定する規模以上のものの所有者に対し,当該特定建築物につき,当該特定建築物の設計及び施行に係る事項のうち地震に対する安全性に係るもの並びに当該特定建築物の耐震診断及び耐震改修の状況に関し報告させることができる。

2  所管行政庁は,法第4条第3項の規定により,その職員に,前条第1項の特定建築物で同条第2項に規定する規模以上のもの,当該特定建築物の敷地又は当該特定建築物の工事現場に立ち入り,当一特定建築物並びに当該特定建築物の敷地,建築設備,建築材料及び設計図書その他の関係書類を検査させることができる。

(認定建築物に係る住宅金融公庫の貸付金の利率)

第5条 法第10条の政令で定める率は,年3.1パーセントとする。


附 則

(施行期日)

1  この政令は,法の施行の日(平成7年12月25日)から施行する。

(建設省組織令の一部改正)

2  建設省組織令(昭和27年政令第394号)の一部を次のように改正する。

第9条第9号中「及び高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成6年法律第44号)」を「,高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成6年法律第44号)及び建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)」に改める。

第34条第5号中「第71条第9号」を「第71条第10号」に改める。 第71条中第11号を第12号とし,第8号から第10号までを1号ずつ繰り下げ,第7号の次に次の1号を加える。

8  建築物の耐震改修の促進に関する法律の施行に関すること。

建設大臣 森 喜朗
内閣総理大臣 村山富市


1. 外傷

金田正樹 (聖マリアンナ医科大学東横病院)

*以下は「集団災害時における救急医療・救急搬送体制のあり方に関する研究」報告書より抜すい


1.地震災害の疾病構造

 地震災害による外傷者は地震の規模,強さ,震源の位置,深さ,季節,天候,時間帯,人口密度,場所,地盤,建物の強度などの条件によって影響される。また二次災害の火災,津波,山崩れおよび土石流,有毒ガスなどの発生によっても疾病構造が変わる。1970年以降の日本における震度5以上の負傷者の疾病構造を調べてみると(資料参照),

  1. 震度5以上になると必ず人的被害が発生する。
  2. 直下型,都市型地震は負傷者が圧倒的に多くなる。
  3. 高齢者ほど負傷率が高い。
  4. 負傷者の約80%は四肢外傷で,その60%以上はガラス片,落下物,転倒が原因。
  5. 重症例は負傷者全体の約10〜20%。
  6. 重症例には挫滅症候群が含まれる。
  7. 津波による負傷者に肺水腫例をみる。
  8. 軽症例は打撲,挫創,切創,捻挫が多い。
  9. 冬期は熱傷例が多い。
  10. 夏期は食中毒,伝染病が発生する。

 以上のようになる。

 世界最大の地震災害は1976年の中国唐山地震M7.8で,死者24万人,負傷者17万人を出し,日本では1923年の関東大震災M7.9で14万人が死亡している。昔と比較して建物の材質,耐震構造,建築基準などが変わったので,同じ規模,震度の地震であっても死者の数は明らかに減少している。しかし負傷者の数は死者の数ほど減少していない。軽症という部類のその数はまだまだ多いように思われる。これは屋内での受傷例がほとんどで,本棚,食器棚,電気製品,装飾品などの落下,転倒によるものであるが,昔と比べて家具類が多くなったためと思われる。

 人的被害は人口密度によって大きく変わるが,同じ震度5であっても大都市周辺では必ず負傷者が出るのに比べて,公園や空き地が多く,家々が密集していない地域では同じ震度5であっても負傷者が出ない場合もある。都市型地震災害では直接的な家屋の倒壊がなくとも,これに付属している家具,ガラス窓,看板,塀などが落下,倒壊して大きな人的被害を引き起こす。各地で起こった地震災害の疾病の特徴は,次のようである。

(1) 宮城県沖地震(表1)

 仙台市を中心とした被害ではビル内外でのガラスの破片による切創が約50%を占めた。また負傷の原因は20%以上が落物によるものだった。死者の多くは新興開発地でプロック塀,石塀が倒壊し,その下敷きになった子供と老人であり,重症率は10%以下であった。

(2) 日本海中部,北海道南西沖地震(表2)(表3)

 この2つの地震の人的被害のほとんどは津波による外傷である。地震そのものによる外傷は10%前後であり,日本海の場合は地震とともに公園や広場へ避難することができたためであったが,海岸線にいた人達が津波にのまれて受傷している。北海道南西沖の場合は震源地が近く,地震後津波の来る時間が早かったために多くの犠牲者を出した。離島での災害時には負傷者をヘリコプターで後方病院へ搬送するのが最も重要である。

(3) 釧路沖,三陸はるか沖地震(表4)(表5)

いずれも同じ規模の地震で,人口,季節,時間なども同じであり,その人的被害もまったく似かよったものである。冬期は熱傷が多く,釧路では外傷の30%が熱傷であり,八戸でも10%にみられた。三陸はるかでは12月28日の御用納めの夜に起こったために飲食店街でガラスによる切創が50%を占めた。釧路におけるガス管破裂による死者も特徴的であった。

(4) 兵庫県南部地震(表6)

大都市に直下型の地震が発生するとライフラインが途絶し,医療機関もその機能を失ってしまうことをまざまざとみせてくれた災害であった。4万人以土の負傷者は屋内で受傷し,その多くは四肢外傷であった。頭頸部,胸部,腹部などの多発外傷を合併すると死亡率は高くなる。特徴的であったのは家屋の工敷きになった負傷者に控滅症候群が多くみられた点である。挫滅症候群の患者は350例以上あったとされている。これらの患者は集申治療が必要であり,被災地以外の3次救急のできる病院へ速やかに搬送するべきである

2.地震災害の主な外傷と処置

1) 挫創,打僕

鈍的外力による四肢などの組織が圧挫されたもので骨折,筋肉の断裂などが伴わないものをいう。局所所見としては腫脹,皮下出血,発赤などをみる。治療として冷湿布,抗炎症剤投与などがある。軽症例が多く,早期に帰宅させることができる。しかしその範囲が広範な場合は安静を要する。

2) 捻挫

関節を構成する関節包や靱帯が過度に仲びたために起こる。関節周囲が腫れ,皮下出血,疼痛などをみるが,重症になると靱帯の断裂や剥離骨折をみることがある。治療は局所の安静,冷却,固定などであるが,腫れが著明なものは副子固定が必要。これらも帰宅可能であるが,高度の靱帯損傷が疑われる場合は再来を要す。

3) 挫滅創

表皮剥脱があり,筋肉,神経,血管の損傷などを伴う。地震に よる場合は創の汚染がみられ,感染の危険性が高い。

 創の処置としては十分な洗浄とdebridementを行う。

止血を行い骨折の有無も確かめなければならない。

創傷の程度によっては入院が必要であり,抗生物質や破傷風トキソイドの投与を要す。

4) 切創

地震災害ではガラスによる切創の割合は大きい。地震後の跡片付け中に受傷する例もある。ガラスによる切創は神経,血管,腱などの損傷もある。

5) 骨折

 骨折には皮下骨折と開放性骨折がある。開放性の場合は骨への感染の危険性が高くなるので緊急手術が必要となる。また骨祈が単一なのか多発なのか,単純なのか複雑なのかによってもその取り扱いは達ってくる。(図1参照)

 骨折と思われる患者が来院してもレントゲンを撮ることが不可能な場合があり,四肢の肢位,腫脹,血行状態,圧痛,知覚などを注意深く観察しながら診断しなければならない。

 トリアージによって分類される骨折例は生命に影響がないので中等症や軽症に分けられる。しかし皮下骨折の場合でも骨析した場所によっては筋肉による短縮変形が起こるため緊急に率引を必要とする。受傷1週間後に手術する場合でも短縮変形をとっておかないと手術そのものが非常に困難になる。地震災害時の負傷者への救急医療はどうしても生命に直結する患者にその精力を注ぐことになるが,人間の機能を回復させる骨折などの整形外科的疾患にも十分な配慮をしなければならない。

6) 挫滅症候群(Crush syndrome)

 広範な筋肉の鈍的な損傷を受けると控滅した筋肉の申から腎毒性物質であるミオグロビンが遊離し,腎不全を起こし,不幸な転帰をとることがある。地震による家屋の倒壊で長時間,大腿部などが柱や家具で工敷きになっていると起こる可能性がある。生き埋め状態から救助された負傷者にはこのことを念頭に入れ,十分な観察を要す。

 長時間大腿部などが圧迫されて救出された患者は尿所見やCPK値を注意して,集申管理が必要と判断したら直ちにそれのできる施設へ搬送すべきである。

7)Compartment syndrome

 鈍的な外力や皮下骨折で内出血が大きくなると閉鎖腔の内圧が高くなり,筋肉の壊死,神経麻痺,循環障害を起こす。症状が進行する場合は緊急に筋膜切開を行い除圧しなければならない。内圧が30−50mmHgになったら筋膜切開の適応となる。

 地震災害時の外傷はその90%が外科および整形外科的疾患である。したがって外傷の処置にはたくさんの医薬品と衛生材料を使うことになる。治療にあたっては一つ「流れ」を作るようにすればよい。そのためにはまずトリアージをしっかりとやること,次に医療チームを結成し役割分担を決めること,経験の豊かな外科系医師がメディカルコーディネーターとなって指揮をとること,そして医薬品や医療器材の補給と管理ができる人がいることである。これまでの調査によれば災害医療を最も阻害したものは「水不足」であり,最も消費したのはガーゼ,包帯の「衛生材料」である。局所麻酔薬,創洗浄のための生理的食塩水,消毒薬,縫合セット,点滴,ギプス,抗生物質,鎮痛薬,破傷風トキソイドなども不足になる。

 外傷のガイドラインを考える時,治療に伴う医薬品や衛生材料なども念頭に入れて考えていかなければならない。


2.挫減症候群(Crush syndrome)

甲斐達郎(大阪府立千里救命救急センター)


はじめに

 阪神・淡路大震災で注目を浴びた症候群の一つに挫滅症候群がある。この症候群は,地震・炭坑事故・列車事故などの災害時に,四肢の圧迫挫滅を伴う負傷者が救出されるのが遅れるような状況で多発し,救急医療体制の整った日常の救急医療現場では,比較的稀な外傷である。

 第二次世界大戦中,ロンドンはドイツ軍の空爆を受け多くの市民が建物の下敷となった。数時間後に瓦礫より救出された負傷者は,病院収容後,一見軽微な四肢外傷以外に外出血や内出血がないにもかかわらず,挫滅肢の浮腫・低血圧の出現に伴い数時問後に突然に全身状態が悪化していった。急速輸液に反応し全身症状は改善したが,急速に無尿となり数日後には死亡した。1941年にBywatersらl)が,これらの症例をまとめて発表したのが挫滅症候群(Crush syndrome)のはじまりである。その後の研究で,初期の低血圧は挫滅筋に伴う浮腫形成による循環血漿量の低下が原因,無尿はこの低血圧と挫滅筋より溶出されるミオグロビンによる腎尿細管障害に基づく急性腎不全が原因であることがわかった。しかし,挫滅症候群の動物実験モデルが作成できないことと,災害時には医療機関が混乱しており十分な医学データが集積できないことが多く,病態生理は十分に解明されていない。また,治療法,特に筋膜切開を行うか否かは施設により異論のあるところである。

1.地震災害による挫滅症候群の頻度

 地震による家屋倒壊の割合・構造物の種類,人口密度などで発症率は異なるが,1976年に,家屋の96%が倒壊し死者242,000人,負傷者164,000人を出した中国・唐山地震では,3,300〜8,200人(負傷者の約2〜5%)に挫滅症候群が発生したといわれている2)。1988年に死者24,800人,負傷者13,000人を出したアルメニア地震では,Nojiらの調査では約11%に挫滅症候群が発症したと述べている3)。この地震では,600名の挫滅症候群による急性腎不全が発症し,アメリカ・イギリスより人工透析器を携えた医療チームがアルメニアに派遣され活躍した4),5)

2.病態生理6), 7), 8), 9)

 挫滅症候群の病態生理は,完全に解明されたわけではない。そこで,理解しやすいように挫滅外傷(Crush injury),コンパートメント症候群,挫滅症候群,挫圧解除後急性死症候群(Crush release death syndrome)に分けて,病態を説明する。

 長時間にわたり建物の倒壊物などによる圧迫が,四肢・臀部などの筋容量が多い筋に加わることにより,圧による直接の筋挫滅損傷・筋内の静脈潅流障害・血流障害のため筋虚血を起こす。同時に直接加わった圧力あるいは血流障害のため精神虚血障害を起こす(挫滅外傷)。上腕・前腕の筋群は,それぞれ3区画・2区画,大腿・下腿の筋群はそれぞれ2区画・4区画のコンパートメントで包まれているので,上記の障害のため浮腫を形成し,コンパートメント内圧は上昇し,さらに潅流障害が加わる悪循環を形成する(コンパートメント症候群)。虚血あるいは挫滅による壊死筋細胞には,水分・塩化ナトリウム・カルシウムが取り込まれ,循環血漿量の低下からショックヘ,さらに腎前性腎不全へと移行する。低カルシウム血症は,高カリウム血症の催不整脈性を高める。また細胞内の高カルシウム濃度は,細胞毒性のプロテアーゼを活性化さす。壊死筋細胞より血中に溶出するカリウムは催不整脈性を,プリンは腎毒性を,ミオグロビンは酸性尿あるいは乏尿のもとで腎毒性を示す。乳酸は代謝性アシドーシスを,トロンボプラスチンはDICを惹起する。このように,全身症状を呈する挫滅外傷を挫滅症候群という。上記の病態は救出により四肢の圧迫が解除されると急速に進行する。動物実験(ラット)では,最短2時間の圧挫後に,ショック・アシドーシス,高カリウム血症のために急性死が起こりうることが確かめられている10)(Crush release death syndrome)。

3.症状

 救出直後の負傷者は,救出されたことに対するほっとした心理状態になり,患肢の痛みなどの肉体的な苦痛を訴えることが少なく,また筋の損傷に比べ皮膚の損傷が少ないため,軽症と判断され治療が遅れることがあるので,注意が必要である。

 救出後しばらく経過すると,患肢の弛緩性麻痺・感覚障害,特に痛覚消失・触覚消失が出現する。患肢の浮腫は,救出直後はないが,時間とともに進行し著明な浮腫を形成する。その間,末梢動脈は触知可能であり,触知不能な時は血管損傷など他の原因を捜す必要がある。輪液を十分にしなければ,容易に低血圧・ショック・腎不全へと移行,乏尿・無尿となる。

 尿は,ミオグロビン尿を示す。色調は,尿のpHによるが,ピンク色から黒褐色を呈す。尿検査試験紙では,ミオグロビン尿は潜血反応が陽性を示し,色調も類似しているので間違えないようにする必要がある。特に,腰部圧迫のため骨盤骨折が合併している症例では注意が必要である。

4.血液生化学検査

 血中のミオグロビン・燐酸・CPK・乳酸・クレアチニンなどの上昇,血中カルシウムの低下がみられる。

5.治療

1)初期の治療

 初期治療は,急性腎不全の予防が中心である。可能なら救出前より災害現場で輸液を行う。時間尿量300ml以上を目標に乳酸加リンゲル液の大量輸液を行う。ミオグロビンの腎毒性を低下させる目的で,尿pHを6.5以上に保つように適時に炭酸水素ナトリウムを投与する。腎血流量増加の目的で,ドパミンの投与。高カリウム血症が存在する場合は,糖インシュリン輪液・カリメートの経腸投与・カリウム製剤投与が必要となる。

2)筋膜切開

 コンパートメント内圧(正常では-6mmHg)が,30−40mmHg以上になると,毛細血管の血流が途絶し筋細胞の崩壊が起こる。そのため,一般には内圧が40mmHg以上になると筋膜切開を行い,減圧をはかるとともに,術後の感染予防のため壊死筋の徹底したdebridementを行う11), 12), 13)

 一方,筋膜切開を行えば,皮下組織・筋組織からの出血の制御が非常に困難であること,創感染より敗血症に移行し,逆に死亡率が上がるなどの理由により,筋膜切開は適応はないとする考えもある14)。  筋膜切開の是非を決めるには,筋膜切開施行群と非施行群の予後比較データや長期の機能予後のデータの集積が望まれる。

 開放性損傷を伴う挫滅症候群に対しては,筋膜切開と創洗浄・汚染筋や壊死筋の徹底したdebridementが,絶対適応である。

3)四肢切断  壊死筋の徹底したdebridementにもかかわらず,敗血症が制御できないとき,血液浄化法(HD,CHDH)を行っても,代謝性アシドーシスや高カリウム血症が制御できないときは,救命のために四肢切断の適応がある。


おわりに

 毎年,世界のどこかで大きな地震が発生し,多くの挫滅症候群の負傷者が発生し,その多くが死亡している。しかし,災害時には十分な検査・治療が行えないため,発表される論文も少なく,治療法も確立されていない。

 不幸にも,阪神・淡路大震災では多くの挫滅症候群の負傷者が生じたが,これを機会に施設間の予後比較のための重症度判定基準や長期の機能予後をも考慮した統一された治療法の確立が望まれる。


[参考文献〕

l)Bywaters,E.G.L,Beall,D.:Crush injuries with impairment of renal function.Br.Med.J.1:427,1941.

2) Zei Yong,S.;Medical support in in the Tangshan earthquake.A review of the management of mass casualities and certain major injury. J Trauma. 10:1130,1987.

3)Noji,E.,Kelen.G.,Armenian H.et al:The 1988 earthquake in Soviet Armenia:A case study‐Ann.Emerg‐Med.19:891,1990.

4)Collins,A.J.: Kidney dialysis treatment for victims of the Armenian earthquake.N.Engl.J.Med.320:1291,1989.

5)Richards,N.T.,Tattrsall,J..MacCann.M.et al:Dialysis for acute renal failure due to crush injuries after the Armenian earthquake.BMJ 298:443,1989.

6)Kikta,M.J.,Meyer,J.P.,Bishara,R.A.: Crush syndrome due to limb compression.Arch.Surg‐122:l078,1987.

7)Better,O.R.,Stein.J.H.:Early management of shock and prophylaxis of acute renal failure in traumatic rhabdomyolysis.N.Engl.J.Med.322:825,1990.

8)Oden,M.:The role of reperfusion induced injury in the pathogenesis of the crush syndrome.N.Engl.J.Med.324:4417,1991.

9)Better,O.,Rubinstein.I,Winaver.J.:Recent insights into the pathogenesis and early management of the crush syndrome.Seminars in Nephrology‐12:217,1992.

10)Kai.T.,Pretto,E.,Safar,P.et al:Development of a crush injury research model in therat.Proceeding of the Second International Urban Emergency Medicine Symposium,October 27-29.1993,Beijing,China.

11)Stantangelo,M.L.Usberti,M..Di Salvo,E.:A study of the pathology of crush syndrome.Surg. Gynecol. Obstet. 154:372,1982.

12)Jone.R.N.:Crush syndrome in a Cornish tin mine.In‐jury 15:282,1984.

13)Crush injury‐In:Emergency War Surgery‐T.E.Bowen,R.E.Bellamy,editors,Washington,D.C.United State Government Printing Office,1988,p‐241.

14)Michaelson,M.:Crush injury and crush syndrome.World J.Surg. 16:899,1992.


3.感染予防

友保洋三 (国立病院東京災害医療センター)


 災害時に起こる感染予防は大きく3点に分けることができると考える。

  1. 創の感染予防
  2. 処置中に起きる患者から医療従事者への感染予防
  3. 環境の変化による感染の予防

1.創の感染予防

1)この最大のポイントは汚染創を感染創にしないことであり,創に着いた菌が,組織(細胞)内に侵入増殖をしないうち(Golden time)に徹底 した洗浄とdebridementを行うことである。災害初期の医療材料不足のため,洗浄とdebridementが不十分となることも考えられるので,創の2次的閉鎖を行うことを原則 とする(次項参照)。

2)抗生剤の創感染予防に対する効果は様々の議論があるが, 受傷後2時問内(Golden time,第1次大戦当時は12時間とされていたが徐々に短くなっ てきた)に静脈内広範囲スペクトル抗生剤投与を行うことがよいとされている。十分 な抗生剤があれば,抗生剤人りの生食水による洗浄,抗生剤の局注なども考えられる が,効果に関してははっきりしない。

3)破傷風に対する予防。発症すれば致命的病 態となりうるので,予防処置を講ずる必要がある。10年以内に破傷風トキソイド接種 を受け,完全免疫となっている例には追加免疫としてトキソイド接種を,それ以外の 例にはトキソイドと破傷風免疫グロブリンの投与を行う。

2.処置中に起きる患者から医療従事者への感染予防

 医療従事者が患者の血液,体液 等から感染を受ける注意すべきものとして,B型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルス,成人T 細胞白血病,AIDS,梅毒等が考えられる。したがって患者に接する時の基本的事項と して

1) 体液,ことに血液に直接触れないよう留意すること。

2)ゴム手袋をかならず 着用すること。特に手指に創や炎症がある場含は必ず用いる。

3)血液の飛沫を浴び る可能性がある場合は予防衣,マスク,ゴーグル,帽子等を着用すること。

4)注射 針の取り扱いは特に注意を要する。注射針のキャップを元にかぶせることは針刺し事 故のもとになるので,そのまま廃棄できる容器を用意する。そして容器ごと処理を行 うこと。

3.環境の変化による感染の予防

 環境の変化によって起こる感染源となるものとして は,飲食物,排泄物,廃棄物,等があるがこれらの管理,処理も重要な感染予防の要 素となる。また,菌を媒介する昆虫,動物等への対策も必要となる。また,災害時に は環境の変化等による免疫力の低下がみられるので,全体の環境レベルをできるだけ 良好に保つことが感染予防にもつながると考えられる。


4.汚染創

友保洋三(国立病院東京災害医療センター)


 災害医療の特徴は医療供給が,医療需要に対して非常に少ないことである。このこと は医療材料についても同じであり,医療機器,薬品,洗浄水等は非常に不足するもの と考えるべきである。ここでは最低限のものがあるとして汚染創の治療ガイドライン を述べる。

 汚染創とは創面に菌が付着した状態をいい,感染創とは創面から菌が侵入 して組織内(細胞内)で増殖を始めた状態をいう。したがって汚染創の治療は,創を 感染創にしないことが最大のポイントとなる。創が感染創となるか,ならないかは, 創の初期治療によって大きく左右される。すなわち,受傷初期の段階でまだ組織内( 細胞内)に菌が侵入していない時期(Golden time)に異物や,壊死組織等とともに創 内の細菌をできるだけ洗い流すことが必要である。

1)具体的にはまず大量の生食水 (なければ水道水等の清浄水)で異物や組織片を創内から洗い出す。この際プラッシ ,ガーゼ等でかなり丹念に行うことが必要である。固いブラッシで創内をゴリゴリこ することは組織の挫滅を大きくするのでよくない。創内がよく観察できない場合は創 の拡大も必要である。パルス状に洗浄水を噴射する器具を使用すると効率がよい。

2)次いで壊死組織や,壊死となりそうな組織を鋭的に切除するdebridementを行う。この 操作に関してはかなり経験が必要であるが,鋭的に切除したときの組織からの出血を 目安にするとよい。

3)dejbridementが終了した段階で,滅菌生食水で繰り返し創内 を清浄化する。

4)次に止血を行うが,大きい出血部位は糸による結紮止血を行うと しても,小さいものは電気凝固を行う。しかしいずれ にせよ異物,凝固による壊死を作るので,これらによる止血は最小限として,圧迫止 血を行うのがよい。逆に止血が不十分であれば血腫を形成し感染を起こす可能性が高 くなることにもつながる。また死腔を残しておくことは,血腫の形成につながるので できるだけつくらぬ様心がける。止むをえぬ場合はドレーンを人れておく。

5) 駆血帯の使用は他の止血法が可能になるまでの短時間以外には使用してはならない。

6) 止血あるいは縫合に使用する糸は吸収糸あるいはモノフィラメントの合成糸を使用す べきである。

7)骨折等がある場合,その固走等のための異物はできるだけ使用しな いこと。

8)創の閉鎖は原則として行わず創縁の消毒後に滅菌ガーゼを当て,包帯固定 を行う。

9)創の経過を毎日観察し4−5日後に感染の傾向がなければ2次的に創を閉鎖 するのがよい。

10)感染創とならない自信がある小さな創に関しては1次的に創を閉 じてよいが初期の医療不足等を考えると,絆創膏固定,ステープラー等の使用を考えてよい。

[文献]

1) 川井真;救急のための基本技術:創処置,綜合臨引木42:l096‐1100,1989.

2) 杉本毒,田端孝:創処置の基本.救急医学13(10):1989

3) 星秀逸:四肢外傷とその対応.救急医学1310:1525-1532,1989.

4) 藤井干穂:救急医療システム:感染防御.綜合臨休42:1289-1293,1989.

5) Burkle.F.M.Jr.,Sanner,P.H.,WolcottB.W.:大災 害と救急医療,青野允等訳,情報開発研究所.Gustilo,R.B.and Anderson,J.T.:Prevention of infection in treatment of one thousand and twenty five open fractures of long bones.J.Bone Joint Surg‐58-A:453-458,1976.


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