農薬中毒3(7月12日 15:30-16:20 司会:後藤京子)


35  来院時の一般的血液検査所見を用いたパラコート中毒の予後予測について
 
                     川崎医科大学救急医学 鈴木幸一郎

パラコート(Pq)中毒の予後は、Proudfootらの報告した来院までの時間とその時の血
中Pq濃度から判定する方法が優れていることがよく知られている。しかし、血中Pq濃
度の測定がルーチン化されていることはまれであり、代わりに一般的血液検査所見を
用いた重症度評価が行われることもある。そこで、来院時の一般的血液検査所見を用
いた場合の問題点を検討した。【方法】川崎医科大学救急部救命救急センターに入院
したPq患者を対象に、来院時のCBC、血液生化学、血液ガス、血清電解質、来院まで
の時間とその時の血中Pq濃度、生命予後を検討した。【結果および考察】来院時の血
液検査値を用いた生命予後の予測では、Crnが高く、高齢者で、B.E.とPaCO2が低いも
のほど予後不良であることが分かった。しかし、その的中率はせいぜい30%程度であ
り、予後予測の指標としては不十分であると思われた。これは、検査値が服用後の時
間経過とともに変動するためと考えられた。


36 パラコート中毒生存症例の遠隔期における臓器機能障害の検討  久留米大学高度救命救急センター 最所純平 【目的】パラコート中毒生存例の遠隔期の臓器機能障害を検討。【対象】1991年〜95 年に当センターに搬入され軽快退院し、96年3月に再診した4症例(搬入時血中濃度2. 9、2.9、1.3、0.014g/ml)。【方法】血液生化学、胸部X腺・CT検査、血液ガス、 肺機能検査を入院時と比較。【結果】入院時、軽度の肝機能異常を認めた2症例は正 常化した。賢機能異常(BUN/Cr:25.1〜50.5/1.1〜4.lmg/d1)を認めた3症例はBU N、Crは正常化するも全例で尿中NAG(11.8−15.81U/L)は高値を示した。胸部X腺 ・CTは入院時、誤嚥による肺炎像3例、慢性気管支炎像1例を認めるも再診での間質異 常陰影は認めなかった。血液ガスは2例に代償性代謝性アシドーシス(HCO3=18.4、18 .5 mmHg)、呼吸機能検査では%肺活量に異常はなかったが1例に1秒率の低下(65% )を認めた。【結論】尿中NAGの高値、代謝性アシドーシスを示したことからパラコ ート中毒による腎機能障害の遷延化の可能性が示唆された。


37 ラウンドアップ中毒時の血清クレアチニン測定について   川崎医科大学附属病院救急部救命救急センター 河口豊 当院救急部救命救急センター検査室では、富士ドライケム5000(富士メディカル)を 用いて生化学検査を行っている。今回、除草剤であるラウンドアップ中毒の2症例に おいて、血中クレアチニン(Crn)値に著しい異常値を認めたので報告する。なお、 ドライケムによるCrnの測定は、ブロムフェノールブルー(BPB)比色法である。症例 は、ラウンドアップ25mlの試供品6本分を服用した41歳男性と、市販品約150mlを服用 した36歳男性である。来院時のCrn値はそれぞれ11.2および15.4mg/dlであったが、こ の検体を後日酵素法により再検すると両症例ともに正常範囲内であった。そこで、ラ ウンドアップによる影響を疑い添加試験を行った。盲検試料1.0mg/dlに対し、添加濃 度0.004〜0.02%でCrn測定値は2.5〜9.8mg/dlと用量依存性に高値を示した。従って 、ラウンドアップがBPB比色法に影響を及ぼしていることは明かであり、ラウンドア ップ中毒にこの方法を用いたCrn測定には注意が必要である。


38  当院における急性有機リン中毒42例の検討                       北里大学病院中毒センター 浅利靖 急性有機リン中毒は、その服用量の推定が困難であり血中濃度測定にも時間がかかり 、来院時に重症度を評価するのは困難である。そこで重症度評価に役立つ因子の検討 を行った。【対象及び方法】当院に来院した有機リン服用42症例のうち、人工呼吸 管理を必要とした重症群13例と、必要としなかった軽症群29例について、既往歴 、来院までの時間、来院時意識レベル、バイタルサイン、1瞳孔径、動脈血ガス分析 、自血球数、LDH、CPK、血清、血漿、赤血球コリンエステラーゼ活性(ChE )について比較検討した。【結果】精神科既往歴があり、来院時に意識障害、低体温 、縮瞳、アシドーシス、高LDH血症を呈しているものが重症例に有意に多く、以上 の因子が重症度評価に有用と思われた。ChEについては、服用例の91.3%(血 漿ChE)で低下が認められたが、両群間に有意差は認められず、服用の根拠にはな ったが重症度の指標としては有用でなかった。


39  有機リン剤により遷延性の神経筋接合部の障害を示した症例                         公立昭和病院神経内科 佐野元規 症例は50歳女性、自殺企図のためMalathionを約100ml服用。来院時、深昏睡、縮瞳 。ムスカリン作用に対しては硫アトとプロタノール併用により次第に軽快。 第5病日に行なった筋疲労試験で10HZ以上の高頻度刺激で高度のwaningを認めエド ロフォニウムは無効であった。第12病日にはwaningの程度は著明に改善し第19病 日には消失した。第23病日退院したが以後も骨格筋の易疲労性が持続するため第42 病日に再検査すると高頻度刺激でwaningを再度認め、エドロフォニウムで改善した。 本例では遅発性に神経筋接合部の障害が発生したと考えられCh-E活性は正常化してい るのでAch受容体の変化など他の要因が寄与していると思われる。


第18回日本中毒学会総会・抄録集(目次)
第18回日本中毒学会総会・会告