農薬中毒2(7月12日 14:30-15:30 司会:大島徹)


29  グルホシネート(GILF)とその代謝物の中枢神経系に対する作用 
                       筑波大学基礎医学系 浜 裕

LーGLFとその主代謝物3‐metbyl‐phosphinicopropio
nicacid(MPA)の中枢神経系に対する作用について検討した。〔方法と結
果コ1)ラットにL‐GLF50mg/kgを皮下注した。3−4時間後より全例に
寡動、運動失調、wetdogshakeが出現した後、横臥、h前bicmoto
rseizures、呼吸抑制が出現した。生存例の脳の組織所見には明らかな異常
はなかった。MPAの皮下注により行動異常は出現しなかった。2)胎生ラット海馬
由来の培養神経細胞にしGILFを添加したが細胞の生存に対する影響はなかった(
M丁rassay)。3)新生ラットの摘出脊髄標本に対ししGLFを潅流適用した
が脱分極作用はなく、脊髄反射に対しても影響はなかった。MPAについても同じ結
果を得た。〔結論コ1)L‐GLFが直接グルタミン酸受容体に作用し中枢興沓を惹
起するとは考えにくい。2)しGIJF自体は強い細胞毒性を持たない。3)代謝物
のMPAを介し申枢作用が発現する可能性は低い。


30  グルホシネート含有除草剤の急性経口中毒に対する血液浄化法の有効性                         筑波大学臨床医学系 小山完二 【方法】グルホシネート(GLF)含有除草剤中毒の自験ll例を含む32例を対象 に血液浄化法(H)の施行と呼吸停止、痙撃など遅発性症状(S)の出現との関係を 検討した。【結果]DHPが単独で施行された12例のうち11例はDH脚施行後に Sが出現し、1例ではSが出現しなかった。HDが単独で施行された1例は施行後に Sが出現した。DHPとHDが同時に施行されたのは5例で、2例は施行後にSが出 現し、3例ではSが出現しなかった。Hの種類によらずH施行後にSが出現しなかっ た症例はすべて推定服毒量(A)が40ml以下であり、服毒後の時間を考慮した初 診時の血申GLF濃度(G)が低値であった。H施行後にSが出現した症例のAは1 00ml以上であることが多く、:Gが高値であった。【結論】HのSの出現に対す る抑止効果は不完全であり、Aが多い症例やGの高い症例ではHを施行してもSが出 現する可能性がある。


31 自殺企図による有機リン中毒のl症例                     昭和大学藤が丘病院薬局 金子有子 [目的]有機リン中毒患者1症例において血清コリンエス〒プゼ(ChE〉値、瞳孔 、意識レペルと濃度の関係を見るために、血液中有機リン濃度を測定した,[方法] 搬入時、DHP施行前後の血液中有機リン濃度をGC/MSで、ChE値をpヒドロ キシペンゾイルコリン法で測定し、意識ペルはG.C.S.で、瞳孔は瞳孔径を測定 した。[症側]患者は49歳男性。自殺目的でスミソン乳剤(マラチオン、フェニト ロチオン)を服用し当院救命救急センタに搬入された。来院時、瞳孔は縮瞳、呼名反 応なく、分泌物は多量、ChE値は4U/Lであった。胃洗浄、DHPを施行しPA M、硫酸アトロピン、輸液等を投与した。第24病日軽快し転院した。[結果]血液 中有機リン濃度の低下(マラチオン4.6μg/mlから0.002μg/mlヘ、フェニトロチオン 9.2μg/mlから0.03μg/mlヘ)に伴い、CHE値は178U/Lへ、縮瞳は改善し、 意識レベルは回復した。[考察]血中有機リン濃度の測走は治療法を決める一つの指 標になると思われ、今後も治療法を含めた検討が必要と思われた。


32 グルホシネート中毒の検討  自治医科大学腎臓内科 丹波嘉一郎 1993年から3年間でグルホシネート中毒を4例経験した。4例とも女性で年齢は63± 17.6オで、推定内服量は、288土140ml だった。いずれの症例にも胃洗浄、強制利尿 、血液透析療法を施行した。3例は血液吸着療法も併用した.2症例は活性炭を投与 され、未投与の2例中比較的大量(350ml〉に内服した症例が死亡した。4症例とも 、初診時には意識はほぽ清明であったが、徐々に低下、無呼吸、痙畢発作を起し、人 工呼吸管理を必要とした。死亡例のみ血圧低下が第2病日からみられた。生存側は, 第7病日までに人工呼吸器から離脱できた。生存例ではも頭痛1例、健忘2例の後遺 症を残した。また死亡例の剖検所見では、小腸、大腸の粘膜に広範囲に壊死を生じて おり、腹膜炎を併発していた。脳には小軟化巣と急性壊死巣が認められたが、動脈硬 化性病変と考えられた。血中アミノ酸鼻析では、グルタミンの減少、グルタミン酸の 増加が示峻され、グjルオシネートのダルタミン合成酵素阻害作用と考えられた。


33 有機リン剤とH2受容体拮抗薬の相互作用:ラットChEアイソザイムに対する フェンチオンおよびシメチジンの相互作用  麻布大学獣医学部薬理学 坂口和子 有機リン剤フェンチオンとH2受容体拮抗薬シメチジンとの相互作用による毒性の増 強について、血清ChEアイソザィムおよびChE活性値を指標として検討した。S D系ラット(雌)を用い、実験は二元配置実験とし、5%アラビアゴム溶液(対照群 )、シメチジン(1,500mg/kg)およびフェンチオンLD50量(2451 11g/kg)の1/5量(投与方法の違う2つの群)、1/10重、1/20量の 各組合せ10群を設けた。フェンチオンは、第1回目の投与日を0日目とし14日間 投与、シメチジンは第7日目より、7日間投与した。最終投与後、3時問目に採血し illlj定した。ChE活性値および血清ChEアイソザイムパターンは、シメチ ジン単独投与群では有意な抑制はみられなかったが、フェンチオン単独投与群では有 意な抑制が認められた。一方、シメチジンとフェンチオンを投与した群では、ChE 活性値、血清ChEアイソザイムパターンはフエンチォン単独投与群に比べ著しく阻 害されており、実験期間中に死亡する例もみられた。


34  異なる温度における活性炭へのパラコ一ト,ジクワットの吸着特性                            近畿大学薬学部 中村武夫 パラコ一ト,ジクワットの混合製剤の誤飲,誤用等による急性農薬中毒事故における 初期処置を指向して、活性炭への農薬成分の吸着特性に対する溶液温度の影響につい て検討した。農薬成分の活性炭に対する吸着量は、ジクワットよりもパラコートに対 して優れており、また精製水中よりも生理食塩水かららの吸着の方が高値であった。 吸着温度の違いによる活性炭へのパラコート,ジクワット吸着量の差ついては,音頭 が低いほど高吸着量を示し,活性炭に対する農薬成分の温度依存性が認められた。急 性農薬中毒における活性炭によるパラコ一ト,ジクワットの除去に関し、生理食塩水 を洗浄液として用い,低い溶液温度で消化管洗浄することにより,活性炭の中毒物質 吸着能を増大させることのできることが推察された。


第18回日本中毒学会総会・抄録集(目次)
第18回日本中毒学会総会・会告