20 リズミック大量服用により多彩な症状を呈した一例 公立昭和病院救命救急センター 西森茂樹 【症例】22歳女性。3年前から1欝病で精神科通院。【現病歴】自殺目的でリズミ ック(メチル硫酸アメジニウム)50錠(500mg)を服用。嘔吐・下痢以外著変 なかったが、翌目、立位保持不能となり、救急搬送。来院時、取縮期圧80台のショ ック状態で、胸部X線で両側肺門部を中心とする著明な浸潤影、jl胸部CTで背側 優位の肺胞性陰影と多量のjli胸水を認めた。【経遇】低心拍出量状態は輪液と昇 圧剤で改善したが、呼吸状態が悪ィヒし人工呼吸管理を要した。BALで好酸球68 .9%ょり急性好酸球性肺炎を疑って施行したステロイドパルス療法が奏功し、第1 1病日に軽快退院した。【考察1リズミックは交感神経内MAO阻害とノルアドレナ リン再取り込み抑制作用による問接的交感神経刺激薬である。大量服用の報告は本例 が初であるが、肺水腫は交感神経遇剰刺激、ショックは循環血液量滅少とノルアドレ ナリン枯渇、急性好酸球性肺炎は薬剤アレルギーが原因と考えられた。21 コカイン誘発性脳内出血の発症機序 熊本大学医学部 法医学講座 木林和彦 コカイン乱用者には脳内出血と動脈瘤破裂が頻発する。動脈瘤破裂はコカインのノル アドレナリン様作用による一過性高血圧によって生じるが、脳内出血の機序は明らか でない。ニューヨーク市監察医務院症例の内、コカイン乱用中の脳内出血と動脈瘤破 裂各26例の解剖所見を比較検討した。脳内出血では高血圧性病変の頻度が有意に高 く、その危険因子と判明した。脳血流量は血圧変動に対して血管の収縮拡張によって 一定に保たれるが、コカインのドーパミン様作用は血圧−血流曲線の定血流部の上限 血圧を下げる。高血圧者がコカインを乱用すると、定血流部の上限血圧が自己血圧よ り低くなり、脳血流量が増加し脳内血管の破綻を招くと考えられた。また、脳内出血 は大脳皮質下に好発し、コカインの脳血管収縮作用による虚血再環流、コカインの血 小板凝集抑制による出血傾向、コカイン乱用者のHIV感染による脳内小動脈の肥厚 や血管内皮細胞障害の関与も考えられた。
22 防水スプレーに入っているシリコン樹脂による肺障告について 日高病院救急部 田中淳介 防水スプレーによる肺障害の原因は,フッ素樹脂による肺胞,界面活性の低下による と考えられている。同様の目的でシりコン樹月旨も使用されており,吸入した場合の 肺胞への影響について検討したので報告する。方法:一定容量の箱を作成しその中に マウスを入れ,シりコン樹月旨のみの入った防水スプレノを間欠的に吸人させた。試 験したポンベは,それぞれシりコン樹月旨を0.7,1.4,2.8,5.6g含ん だもので ,ミスト粒子径は,粒子径50%積算値は40ミクロンである。一定のプロ トコールで 吸入させた後,頚椎脱白により屠殺し,肺をホルマリンで固定し,病埋学 的に検討 した.結果:5.6g入ったものでは,肉眼的に肺全体にうっ血の認めたれ たものが40 %認められ,顕徴鏡的にも肺胞虚脱か認められた。シりコン樹脂でも, 大量吸入し た場合に,肺障害,呼吸障害がおこることが考えられる。