日本の救急医療について教えて

(980122. neweml 1359)


 O'malleyさんとおっしゃる米国人の方から日本の救急医療についてご質問をいただきました。これは私には大変難しいご質問でしたので、ホームページを見られた皆様にも、ご意見や情報をいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 なお本資料を作成するにあたり、日本救急医学会事務局のご協力をいただきました。この場合をお借りして、御礼申し上げます。

愛媛大学医学部救急医学教室 越智元郎(連絡先


質問内容

How many Emergency Medicine hospitals are there in Japan?
(救急病院は日本にいくつある?)
What is the difference between an emergency hospital(kyukyu shitei byouin)and a regular hospital?
(救急指定病院とそれ以外の病院の違い)
What is an emergency medicine physician in Japan? What are Nintei-i and Senmon-i ? How many EM physicians exist in Japan?
(日本の救急医の特徴? 認定医とは? 救急医は日本に何人?)
What kind of training dose a person need to do in order to become an emergency medicine physician?
(救急医になるためにはどのようなトレーニングが必要か)
After a doctor completes emergency medicine training ,what so they do? Where do they work?
(トレーニングを受けたあと、救急医はどのような施設で働くのか。)
What are the responsibilities of an emergency medicine physician?
(救急医の守備範囲は?)
How many hospitals in Japan have independent emergency medicine department?
(独立した救急部門を持つ病院は日本にいくつある?)
Are Japanese emergency medicine physicians required to do continuing medical education?
(救急医には生涯教育や資格取得後の研修といった制度があるか)
When was your association established? How many members do you hold?
(日本救急医学会はいつできたか。会員数は何人か)


1.救急病院は日本にいくつある?

 救急告示病院などの告示状況(1992年4月1日現在)によると
 ・救急告示病院 公的機関1179、私的機関3222 合計4401
 ・救急告示診療所 公的機関5 私的機関1205 合計1210
 両者を合わせて5611医療機関が救急告示医療機関ということになります。

  参考)小濱啓次:救急医療システム、日本救急医学会(編)
 「救急認定医のための診療指針」、へるす出版、1994年、p11-15

 なお第え次救急医療機関である救命救急センターについては、全国135ヶ所(1997年10月現在)となっています。


2.救急指定病院とそれ以外の病院の違い

 救急病院を定める省令(昭和39年厚生省令第8号)には以下のように定められています。

消防法(昭和23年法律第186号)第2条第9項の規定に基づき、救急病院を定める省令を次のように定める。

救急病院を定める省令

(第1条) 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第9項に規定する救急隊により搬送される傷病者に関する医療を担当する医療機関は、次の基準に該当する病院又は診療所であって、その開設者から都道府県知事に対して救急業務に関し協力する旨の申し出のあったもののうち、都道府県知事が、当該病院又は診療所の所在する地域における救急業務の対象となる傷病者の発生状況等を勘案して必要と認定したもの(以下「救急病院」又は「救急診療所」という。)とする。ただし、疾病又は負傷の程度が軽易であると診断された傷病者及び直ちに応急的な診療を受ける必要があると認められた傷病者に関する医療を担当する医療機関は、病院又は診療所とする。

  • 救急医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること。
  • エックス線装置、心電計、輸血及び輸液のための設備その他救急医療を行うために必要な施設及び設備を有すること。
  • 救急隊による傷病者の搬送に容易な場所に所在し、かつ、傷病者の搬入に適した構造設備を有すること。
  • 救急医療を要する傷病者のための専用病床又は当該傷病者のために優先的に使用される病床を有すること。


3.日本の救急医の特徴? 認定医とは? 救急医は日本に何人?

   日本における救急医とは何かというご質問などに、個人的な考えを書かせていただきます。

 わが国では様々な領域の臨床医師が救急診療にあたっています。最も 広義の救急医にはこれらの医師すべてが含まれるかも知れませんが、通 常は救急専門の医療施設か救急部門を有する病医院で、救急専従で働く 医師という捉え方がされていると思います。

 認定医は日本救急医学会認定医の略称です。認定医の資格を取得する には3年以上日本救急医学会に所属し、また同学会が定めた高水準の救 急医療機関において勤務し、なおかつ同学会から救急医学に関する知識 あるいは技量をある水準以上に習得していると評価される必要がありま す。

 専門医は通常、認定医とほぼ同義に使われていますが、救急専従医と いう意味で使用されることもあります。認定医のすべてが救急専従医で はありませんので、その場合は2つの言葉が違った意味合いを持ちます。


4.救急医になるためにはどのようなトレーニングが必要か

 救急医として必要なトレーニングは大学病院や救命救急センターにお いて行われています。救急部門でのトレーニングのみならず、他の関連 臨床部門(集中治療部、脳神経外科、整形外科、消化器外科、循環器科、 放射線科など)での研修を行う場合もあり、一方で基礎医学部門におい て研究を実施する場合もあります。


5.トレーニングを受けたあと、救急医はどのような施設で働くのか。

 救急医としてのトレーニングを受けた医師のうちの多くは、救急専門 の医療施設か救急部門を有する病医院で救急専従医として働きます。ま た一部の医師は救急関連の臨床部門の一つを選び、その診療科の医師と して勤務したり、病医院を開業する場合もあります。


6.救急医の守備範囲は?

 日本の救急医の守備範囲は必ずしも決まってはいません。日本救急医 学会・編による「標準救急医学」というテキスト(医学書院、東京 1995) には以下のような記載があり、これが一応のコンセンサスではないかと 思います。

 救急医学は基本的には救急来院するすべての救急疾患の診療、教育、研究を行う医学ということができる。しかし、特に救急医学で重要なのは重症救急疾患の診療、教育、研究を行う医学ということができる。そしてこのなかには領域として外傷学(traumatology)、侵襲学(aggressology)、重症治療学(critical care medicine)、中毒学(toxicology)、症侯学(symptomatology)などがあると考えられる。


7.独立した救急部門を持つ病院は日本にいくつある?

 これについてはよい資料を持っておりません。


8.救急医には生涯教育や資格取得後の研修といった制度があるか。

 認定医の資格を更新するためには、日本救急医学会に引き続いて所属 し、学会総会に参加することなどが求められています。また同学会では 認定医に対するセミナーなども行っています。


9.日本救急医学会はいつできたか。会員数は何人か。

 日本救急医学会の設立は 1973年、会員数は1997年11月の時点で約 11,400 人(医師 8,700人、医師以外 2,700人)となっています。


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