回答 1-4:エイ刺創の治療(eml 3745)
Subject: [eml:03745] RE: [eml:03743] Re: エイとクラゲ、夏の海岸小救急
Date: Mon, 30 Jun 1997 14:58:22 +0900
追加です。
この類の疾患は全く診たこともなければ、調べたこともなかったので、無責任な
発言で申しわけないと思い、以下のごくごく教科書的な内容を調べましたので
ご参考下さい。
エイによる刺創(stingray sting)
Emergency Medicine 2nd Ed. Ed in chief HL May,Little, Brown and
Company,Boston,1992
Dee Hodge III,83 Dangerous Marine Bites, Stings, and Ingestions, pp932
より要約
北米で年間750件の発生がある。あさい海底に生息し、砂などの中に身を潜めている 。
知らずに踏みつけてしまったときに、反射的に尾を突き立てるために尾の先、背側
にあるノコギリ状の針で刺される。毒は針の外被にある分泌細胞で作られる。刺され
るとこの外被が破れ毒が放出される。
毒素の成分は少なくとも15種類あり、serotonin,5-nucleotidase,phosphodiesterase
が含まれ、熱には不安定である。生理作用として、呼吸中枢を抑制し、心伝達系を障
害し、強い疼痛を起こす。臨床的には、創は3.5〜15cmの裂創で針の外被が残存する
ことがある。疼痛は90分ほどでピークに達し、悪心嘔吐、下痢、不安感、脱力感、失
神を起こし患肢の筋肉の筋攣縮を起こす。全身痙攣、低血圧、不整脈から死に至るこ
とがある。
現場での初期治療は、冷たい食塩水(あれば清潔な生食)で創を洗浄する。止血は圧
迫止血。医療施設では、創内に残存する針の外被を除去しデブリドマンを行なう。患
肢は温水(38℃〜46℃)に30分から90分浸ける。疼痛にはmeperidine(メペリジン:麻
薬鎮痛剤)、破傷風の予防処置、二次感染に対する予防的抗生剤投与を推奨している。
と言うわけで、エイの毒素が熱に不安定であることはその通りのようですが、このテ
キストでは、『38℃〜46℃の温水に30分から90分浸ける』ことを推奨しているようで
す。
どう考えても70℃は熱傷を起こし、治療とはならないと思われます。
やはり大切なのは、創部のデブリドマンと感染に対する処置であり、疼痛にも適切な
対処が行なわれるべきなのでしょう(SU)。