岩崎さん、受付ほんとにごくろー様でした。あっ、発表の中でわかんない言葉があ ったので今度教えてください。(覚知、T課程、II課程、バイスタンダー) 山口労災病院 手術室 中村由美子
***岩崎@宇部消防です。*** 中村さんからの質問内容ですが、たぶんこれでよいと思います。 *覚知=119番通報方法のことで、入電方法としてはつぎのようなものがあります。 1 119専用 家庭電話や公衆電話等で直接ダイヤル119で入電したもの。 2 警電 警察とのホットラインから入電したもの。 3 加入 119の専用ではなく、消防本部や署の電話番号(一般の電話 と同じものです)例:宇部消防21-6111又は21-6115等 4 自己 消防職員等の消防関係者が勤務中(救急自動車が走行中に交通 事故現場に負傷者がいるのを発見し、活動を行った場合や消防 署から直接事故の発生を見て出場した場合に使います。) けっして、怪我をした人の自分ではありません。 5 駆けつけ 直接、消防署に負傷者がいると言って、走ってきて通報があっ たもの。 6 防災無線 県の消防防災無線やその他の機関からの同様の無線で通報があ ったもの。 などです。つぎのご質問ですが、 最初の課程=救急1課程 消防職員が救急隊員になるために必要な資格で、救急隊員として の基礎を学ぶ教育です。 教育時間は135時間以上(約1か月弱)を医師や看護婦さん等 から教育されます。試験もあります。 次の課程 =救急2課程 先の救急1課程教育を終了した、救急隊員が教育されるもので、 平成3年に新たに設けられた教育です。 教育時間は115時間以上(約1か月弱)を先の先生方により教 育されます。やっぱり試験はあります。 この二つの課程を合わせて今は標準課程という教育が始まっています。 この1課程・2課程(標準課程)を修了してから、救急隊員として現場活動の 経歴が5年以上又は実務時間5000時間以上をクリアした救急隊員が初めて 救急救命士養成所に入校する機会が与えられ、835時間(約6か月)の教育 を終え、国家試験を受けて無事合格すれば救急救命士となります。 よって、この救急1課程・救急2課程(標準課程)は消防職員への救急隊員教 育期間なのです。 これによって、すでにご存じでしょうが、以下の応急処置ができるようになります。 救急1課程修了者(一般人でも可能です。) 用手法による気道確保(下顎挙上法や頭部後屈法等) 胸骨圧迫心マッサージ(心臓マッサージ) 呼気吹き込み法による人工呼吸(口対口等) 圧迫止血(直接圧迫止血・間接圧迫止血・緊迫止血等) 骨折の固定(副子固定・マッジクギブス(バキューム)〜陰圧固定 ハイムリック法及び背部叩打法による異物の除去 必要な体位の維持、安静の維持、保温 救急2課程修了者(標準課程修了者) 救急1課程修了者が行う応急処置+次の応急処置です。 口腔内の吸引(吸引器での吸引等) 経口エアウエイによる気道確保 バックマスクによる人工呼吸 (以下、拡大9項目応急処置ともいいます。) 酸素吸入器による酸素投与 聴診器の使用による心音・呼吸音の聴取 血圧計の使用による血圧の測定 心電計の使用による心拍動の観察及び心電図伝送 鉗子・吸引器による咽頭・声門上部の異物の除去 経鼻エアウエイによる気道確保 パルスオキシメーターによる血中酸素飽和度の測定 ショックパンツの使用による血圧の保持及び下肢の固定 自動式心マッサージ器の使用による胸骨圧迫心マッサージの施行 特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持 救急救命士 救急1課程+救急2課程の応急処置に下記の救急救命処置が行えます。 精神科領域の処置 小児科領域の処置 産婦人科領域の処置 (特定行為〜医師の具体的指示を必要とします。) 半自動式除細動器による除細動 (セミオートで、Vfの時にしかできませんし、 Vfの解析は除細動器が行い、女性の声でメッセージ が流れます。他の操作(ボタンを押す等は救命士が行 います。よって、マニュアル操作はできません。) 厚生大臣の指定する薬剤を用いた静脈路確保のための輸液 (薬剤は乳酸加リンゲル液のみです。) 厚生大臣の指定する器具による気道確保 ラリンゲアルマスク(手術室にもありますよネ) 食道閉鎖式エアウエイ EOA/EGTA コンビチューブ
おち@愛媛です。 eml 3595 で中村さんが質問された「バイスタンダー」は心肺停止患者さん が発症した時にその周囲にいる一般市民のことで、bystander と書きます。 消防職員の間では定着した言葉らしく、私の周りの救急隊員も英語で「バイ スタンダー」と言っているようです。このバイスタンダーがするべきことは、 ・患者さんの評価:まず意識の確認 ・意識がなければ119番/近くの人の応援を求める ・患者さんを近くの安全な所に移す/固い平らな物の上に仰向けにする。 ・評価の続き:呼吸の有無の確認 ・呼吸がなければ呼気吹き込み人工呼吸を2回 ・評価の続き:頸動脈の拍動確認 ・拍動がなければ胸骨圧迫心マッサ−ジ開始、人工呼吸と交互に すなわち発見者による心肺蘇生法 bystander CPR を開始していただく必要 があります。人工呼吸は無しで、心マッサ−ジだけでもやって貰いたいという 考え方もありますが、現時点で一般的に教えられているのは上記の通りでしょ う。 この bystander CPR がわが国でどの位の割合で行われているかというと、 大部分の地域では10%未満だと思います。すなわち90%の病院外心肺停止患者 は、救急隊員到着時に何の処置もされずに「放置」されています。学会などで bystander CPR 施行率が15%とかいう数字が出ると「高いねー」というよう な感想が出ます。例外的に秋田や兵庫のような熱心な地域では50%を越えるよ うな所もあります(正式な数字は今手元にありません)。 米国では(全国的な平均が)30%位ですが、わが国が ・ほとんど単一民族、単一言語による均一な国民による平和な社会であること ・HIV(エイズ)などの保有率が圧倒的に低いこと ・識字率が高く、文盲の人がほとんどいないこと などを考えあわせると、日本人の間では bystander CPR が例外的にしか行わ れていないと言わざるを得ません。 中村さんの中国四国地方会の印象記([eml:03586] 日本救急医学会中四国 地方会レポート)の中で、高校生による bystander CPR の事例報告(救急隊 員の発表)が出てきました。 このお話は確かに感動的ですが、逆にわが国全体のレベルを思い知らされ、 残念に思う点もあります。 ・市民による CPR施行が今だに単発的、例外的なできごとで、英雄的な行為 として取り上げられる。 ・大人の野次馬の中には自動車運転免許証取得時にCPRを習った人もいたでし ょうに、女子高生とともに処置をしようとした(勇気のあった)人がいな かった。 ・若者への教育の効果があったことを証明していますが、逆に一般社会人への 教育が全く不十分であることも証明しています。 ・この現状は私共、救急医学の教育にたずさわる者、救急隊員、日赤関係者、 保健関係者にとって厳しい評価、現時点では敗北ということでしょう。 ・私は何万人にCPRを教えたということでなく、何百人の心肺停止患者がCPR を受けたということを評価基準に置くべきだと考えています。 後半は少し皮肉な読み方になりましたが、中村さんにもご賛同いただける と思っています。それでは中村さん、皆様、また。